カニエ・ウェスト(Kanye West、1977年6月8日-)は、シカゴ出身のアメリカの音楽プロデューサー、ラッパーである。
検索の際はこちらのほうが引っかかる。 → Kanye_West タグを含む動画
概要
アメリカのヒップホップ界の大物プロデューサーにして、プロデューサー出身としては最も成功したと言われるラッパー。
その実績は、わかりやすいところでは
といったものがある。
2000年代・2010年代のアメリカ音楽シーンで、特に大きな人気と影響力を持つミュージシャンと言ってよい。
その一方、現代の音楽シーンにおいて随一の問題児・トラブルメーカー・問題発言製造機としても知られ、しょっちゅう騒動を起こしている。
略歴
1977年アトランタに生まれる。3歳の時に両親が離婚し、大学教授の母とシカゴに移り住む。子供の頃に母の転勤で中国で暮らし、いじめを受けていた。この頃アートに興味を持つようになる。
美大在学中の2000年にプロデューサーとしてJay-ZのRoc-a-Fella Recordsと契約。
音楽活動に専念するため大学を中退し、2001年のJay-Zの名盤「The Blueprint」に携わり名が知られるようになる。以後様々なアーティストに曲を提供し、トッププロデューサーとして第一線で活躍するようになる。
2004年には「The College Dropout」(大学中退)で自らもラッパーとしてデビュー。G.O.O.D. Musicという個人レーベルを設立する。
2005年の2ndソロアルバム「Late Regstration」が全米1位を記録。グラミー賞でも8部門にノミネート、3部門を受賞した。
ここから、チャート1位とグラミー賞の常連となっていく。
2007年に最愛の母ドンダ・ウェスト博士を美容整形手術中の事故で無くす。婚約者とも破局し、パパラッチへの暴行騒動などでも批判を浴びるなど、私生活がまさに暗転。
翌年、そんな暗い生活を反映した欝っぽいアルバム「808's & Heartbreak」をリリース。やっぱり全米1位。
2009年、MTVビデオミュージックアワードで、ステージに乱入する大騒動を巻き起こす。詳細は後述。
しかし翌年リリースした「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」では、批評家や音楽ファンから大絶賛をかっさらい、グラミー賞のラップ部門4つを独占するなど、批判をはじき返さんばかりの実力を見せつけた。
2013年にリリースした6枚目のソロアルバム「Yeezus」も同様に高評価で、自身最多の5ヵ国(アメリカ・イギリス・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド)でチャート1位を達成した。
2015年には7枚目のソロアルバムとなる「So Help Me God」の制作を報告。タイトルは「SWISH」「Waves」と二転三転したが、2016年に「The Life of Pablo」として発表した。
なおこのアルバムはJay-Zが代表で自身も株主であるストリーミングサービス『Tidal』限定での公開となったが、Tidalは日本からは利用できないため、当初日本人はこのアルバムを聴くことが出来なかった。その後Tidal以外の多くのストリーミングサービスやダウンロード販売で公開されたが、CDなどフィジカルではリリースされていない。
2018年、双極性障害の診断を受けたことを公表。あまり驚かれなかった。
同年、自身のニックネームを冠した8枚目のソロアルバム「ye」をリリース。またしても全米1位を獲得。
2019年、異色作「Jesus is king」をリリース。かねてより信仰心の厚さで知られていたカニエだが、今作でとうとうそれを全面に押し出し、全編ラップ・ゴスペルという内容に仕上げた。
その様変わりっぷりに面食らうファンも多かったが、やっぱり全米1位を獲得。またメインチャートに加えてゴスペルチャートも制し、グラミー賞では最優秀コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック・アルバム賞を獲得した。
2020年、アメリカ大統領選挙へ出馬。イーロン・マスクなどが支持を宣言して話題を呼んだが、得票率0.03%で敢え無く落選した。ちなみに立ち上げた政党の名前はバースデー党(=バースデー・パーティー)だった。
2021年、yeに改名。芸名だけじゃなく本名もyeになった。ミドルネームとかファミリーネームとかも何もなく、ただye。もっとも、いつもの奇行の一部としてみなされたことや、あまりにも汎用的すぎる言葉(「あなた達」と言う意味の二人称)であることから、あまり浸透はしていない。
8月にはソロアルバム「donda」を発表し、またもや全米1位を獲得。収録曲「Jail」は自身15年ぶりのグラミー賞最優秀ラップソング賞を受賞したが、SNS上での奇行や暴言が悪化していたことを理由に、授賞式でのパフォーマンスを取り消されてしまった。
2022年以降
2022年は、カニエによって悪い意味で飛躍の年となってしまった。この年を境に、世間からの扱いが決定的に変わったと言ってよい。
この年、7月には妻のキム・カーダシアンとの破局が報じられ、11月には正式に離婚が成立した。
双極性障害への理解を社会に呼び掛けるなど、夫を根気強く支えてきた彼女だが、この頃のカニエは彼女やその家族にも攻撃的になってしまったらしく、とうとう破局に至ってしまったようだ。
そして10月、白人至上主義者の間で用いられることの多い「HLM(=白人の命は大事)」を自身のファッションショーで掲げたのを皮切りに、白人至上主義的・反ユダヤ的な陰謀論を次々とぶち上げ、それまでとは比較にもならないレベルで大炎上。
アディダス・GAP・バレンシアガといったパートナー企業が一斉に関係を解消し、芸能プロダクションとの契約も打ち切られる事態となった。[1]
以降、カニエはすっかり「名前を呼んではいけないあの人」的な扱いになっている。
2023年1月時点では、作品の配信停止や回収にこそ至ってはいないものの、大手サブスクでは「一応聴ける」程度の最低限の扱いにとどまっており、一切推されなくなっている。エージェントとの契約が解除されたことで、従来と同じような音楽活動を行うことも難しいと思われ、今後の見通しは全く立っていない。
キャラクター
自他共に認める大変な自信家で、エゴイストだと批判されることも少なくない。
あまりにも頻繁に「自分は天才だ」と公言するため、サウスパークでネタにされたこともある。
一方、激情的で、感情のコントロールが出来ていないところもあり、パパラッチに暴行したり、自分の公演に悪い評価をつけた評論家に暴言を吐いたりと、物議をかもす激しい言動でなにかと注目される。
特に、前述した、2009年MTVビデオミュージックアワードでの騒動は、彼のやらかしたことのなかでも最も悪名高い事件である。
最優秀女性アーティストビデオ賞を受賞したテイラー・スウィフトのスピーチの最中に、泥酔した状態でステージに乱入し、「おめでとうテイラー。でもビヨンセのビデオがベストだ!」と叫び妨害。テイラーはショックを受け涙ぐんでしまい、観衆からはブーイングを浴びた。
これにより、まさに全米中の顰蹙を買ってしまった。ミュージシャンや批評家はもちろん、同じシカゴ出身で尊敬しているオバマ大統領までが「あいつバカだ」と毒づいていたことが明らかになってしまったほどであった。
さすがにカニエも、ファンやテイラーに向けて謝罪したものの、以降はすっかり問題発言が常態化しており、グラミー賞の選考に毎年のようにケチをつけたりしている(グラミー賞がヒップホップを軽視しているという真面目な批判もしているのだが、ほかの問題発言と一緒くたにされていることが多い)。
最近ではこのトラブルを自らネタにしており、グラミー賞のステージに乱入すると見せかけてそのまま去るというギャグも披露した。だだすべりだったが。
ちなみにこれでも、ドラッグやDVといったシャレにならないスキャンダルとは今のところ無縁である。問題発言だけで問題児に上り詰めた稀有な存在であるとも言える。
が、2016年10月3日、妻でタレントのキム・カーダシアンがパリ滞在中強盗に遭い、バスルームで縛られた状態で発見されるというショッキングな事件が起こる。
以降いつに増して不穏な言動が目立ち始め、11月の大統領選挙後には自身が黒人でありながらドナルド・トランプを支持していると発言し物議を醸した。11月19日に行われたライブではパフォーマンスそっちのけでヒラリー・クリントン支持者やビヨンセを批判し、さらに兄貴分であるJay-Zに対し「お前が殺し屋を雇っているのは知っている。俺に殺し屋を送らないでくれ」と発言した後、わずか2曲しか歌わず30分でライブを切り上げた。
そして11月21日、彼の奇行を目撃した医師の勧めにより精神科に入院。前述の事件のショックに加え、ツアーやファッションデザインなどで極度の疲労と睡眠不足の状態にあったとのこと。
トレードマークとしてクマのマスコット「ドロップアウトベアー」を使っており、アルバムジャケットやビデオによく登場する。
また、アルバムジャケットに村上隆を起用したり、Bapeとコラボしたり、お忍びでよく遊びにきたりと、日本とのかかわりも深い。「Can’t Tell Me Nothing」のジャケットでは自身の名前を蟹江西と漢字で表記した。
「Stronger」のビデオには東京の町並みや不思議なカタカナ、AKIRAへのオマージュがちりばめられており、必見である。
音楽
電子音を使った、サンプリングを使わないトラックメイキングが流行していた時期に、サンプリングを大胆に使った曲で当時のラップシーンに変化をもたらした。特に有名なのはソウルミュージックを使った早回しサンプリングで、多くの模倣者を生んだ。
参考動画
あまりヒップホップに馴染みが無い人でも聞きやすいサウンドだと言われ、ヒップホップ関係以外の音楽メディアでも取り上げられたり、高い評価を受けている。ロックミュージックを使った曲が結構あり、ロックリスナーのファンも多い。
ただ、プロデューサーとしては一流だが、ラッパーとしての実力には懐疑的な声がある。
ラッパーとしてデビューした当初は、ラップのスキルは決して高くは無いというのが大方の評価であった。(もっとも、当時の彼にも「ヘタウマ」「味がある」と好意的な人も多い)。
キャリアを積むにつれラップスキルは向上してきている。リリックの面白さにも定評がある。
ディスコグラフィー
- The College Dropout(2004)
- Late Resistration(2005)
- Graduation(2007)
- 808's & Heartbreak(2008)
- My Beautiful Dark Twisted Fantasy(2010)
関連動画
関連商品
関連コミュニティ
関連項目
脚注
- *問題発言連発のカニエ・ウェスト、アディダスなど各社が相次ぎ契約解消 2022.10.26
- 4
- 0pt