サクラエイコウオー(Sakura Eiko O)とは、1991年生まれの日本の元競走馬である。鹿毛の牡馬。
生まれた世代が違えばクラシックを勝った…かもしれないけどやっぱり気性面でやらかしてたかもしれない、そんな馬。
主な勝鞍
1994年:報知杯弥生賞(GⅡ)
1996年:七夕賞(GⅢ)
血統背景など
父はスーパーカー・マルゼンスキー、母は谷岡牧場の誇る名牝・*スワンズウッドグローヴの孫サクラハツユキ、母の父は日本でヘロド系を広めた伝道師・*パーソロンという血統。
近親にはサクラトウコウ・サクラチヨノオー・サクラホクトオーの三兄弟、叔父にはサクラセカイオー(父サクラユタカオー)、半弟には*サンデーサイレンス二期生幻の素質馬…とする向きもあったサクラケイザンオーがいる。あとアルフィーとアルフィーセカンド。[1]
1991年6月1日、静内町の谷岡牧場で誕生。馬主は「サクラ」冠名で知られたさくらコマース。
谷岡牧場は上記の近親たちをはじめ、同期のサクラローレルなどサクラ軍団の数々の名馬たちを生産してきた牧場である。所属ももちろん、サクラ軍団のメイン厩舎である境勝太郎厩舎であった。
競走生活
対ナリタブライアン:接触篇
(以下、断りがない限り旧馬齢表記)
血統背景にも書いた通りの良血馬で、調教の動きも良かったためこの年のサクラ軍団・境勝太郎厩舎のエース格として1993年9月の中山1200m戦でデビューを果たすこととなった。
当然のごとくサクラの主戦騎手である小島太を配し必勝!で臨んだのだが、最終コーナーで曲がりきれず逸走し競走中止という大変残念な結果に終わる。母父が*パーソロンというあたりでお察しの読者もいらっしゃっただろうが、エイコウオーは気性が大変に荒く幼い馬であったのだった。
その後10月の未勝利戦を逃げて勝ち上がると京成杯3歳S(現京王杯2歳S)に出走。快調に逃げるも4角で膨れるわ最後の最後でモタれて内ラチに接触、大失速し5着と敗れる。相変わらずの気性であった。
その後、牝馬限定戦になる前の赤松賞で大物○外のタイキパイソンやマックスビューティの息子マックスワイザーを相手に逃げ切って勝利し、迎えた朝日杯3歳S(現・朝日杯フューチュリティステークス)。ここまで結構な使い詰めで来たためか7番人気と軽視され、スタートの出でもエイシンワシントン・馬っ気大王タイキウルフら人気した○外より良くないスタートであった。
が、カメラが全体を映し終えて再び先頭馬群に切り替わったタイミングでは先頭に立っていた。もちろん暴走であり、マイル戦とは言え入りの1000mを57.6で突っ走ればそりゃあ失速する。前述の前を行った人気馬を巻き込んでの最下位14着惨敗であった。
このレースを勝ったのはナリタブライアン。楽な手応えでエイコウオーの作ったバカみたいなペースを悠々と追走し圧勝してみせたのであった。まあ本当に強かった。当時のファンは口あんぐり、何だありゃってなった。
対ナリタブライアン:発動篇
境勝太郎師はエイコウオーをなんとかナリタブライアン対抗の一番手として育てるべく、京成杯(当時は1600m戦)に出走させるが○外の3歳女王ヒシアマゾンとそのヒシアマゾンすら差したビコーペガサスの豪脚にブッ差されて3着。粘り込みはしたがここで粘れないとブライアン相手にはどうか?とはなった。
今度は2月の府中マイル4歳限定オープンのヒヤシンスステークスでフィールドボンバーやファイヴナカヤマといった評判の○外と激突するが、3番手で上手く折り合って抜け出して勝利するという新境地を見せた。
賞金は稼いだが皐月賞出走確定のためにそのまま弥生賞へ。ここには対ナリタブライアン1番手と名高い、ラジオたんぱ杯3歳Sとシンザン記念を連勝してきた後の高知の黒王・ナムラコクオーやOP時代のホープフルステークスを含むOP2勝のエアチャリオットらが出走していた。しかしその2頭が激しくせめぎ合うのを後目にエイコウオーは2馬身半前で逃げ切って重賞初勝利。
堂々と3番人気を背負って臨んだ皐月賞。ハナを切ったエイコウオーは入りの1000mを58.8で通過した。ちょっと早かったかもしれない。しかし1番人気ナリタブライアンは3角付近ではもうエイコウオーの背中に張り付いており、その圧倒的プレッシャーに負けたかのように4角回って失速。1.6秒差の8着に敗れた。
勝ったナリタブライアンは皐月賞レコードの1:59:0で駆け抜けたが、その立役者は前半早めに入ったエイコウオーであったとは言える。ほんの慰めくらいにもならない。
この決定的完敗とブライアンの圧勝劇を見た境勝太郎師はエイコウオーでの対抗を諦めて、未完の大器サクラローレルを担ぎ出す決意を固めてしまったのであった。
しかしその大器ローレルは脚元が固まる気配がなく、青葉賞でダービー出走権は確保したが脚部不安でアウト、見どころある末脚で皐月賞2着に突っ込んだサクラスーパーオーも父サクラチヨノオー譲りの脚元の弱さで2年近いの休養を余儀なくされたため、結局エイコウオーがエースとして日本ダービーに出ることとなった。
折り合いを重視してハナを切らず先団前方で進めたが、逃げたメルシーステージ、それに突っかかったアイネスサウザー諸共に迫るナリタブライアンのプレッシャーに叩き潰されたかのごとく轟沈。11着に敗れた。
春のレースっぷりからおそらく菊花賞路線からは撤退となっただろうが、何にせよ菊花賞路線には参戦しなかった。いや、出来なかった。
マルゼンスキー産駒の宿痾である脚部不安で長期の休養を余儀なくされたからである。ナリタブライアンともダービーが最後の対峙となった。
栄光の架橋を探して
復帰したのは1995年4月、当時スプリント戦であったダービー卿チャレンジトロフィーであったが、特徴であった前進気勢も見せられないまま後ろで特に見どころなく回ってきて12着。また脚部不安を発症し都合一年の休養を強いられた。
1996年4月、卯月ステークスで復帰すると引退した小島太に変わって新しい鞍上に横山典弘を迎え2着に入り復活か?と思われたがサクラの2番手・代打のプロ東信二を迎えた京王杯スプリングカップとエプソムカップでは潰れて見どころなし。
福島競馬場改修で中山開催となった七夕賞に出走したが、ノリもシンジマンも確保できず当時デビュー2年目であった西田雄一郎を乗せてなんと圧勝。55キロと2位タイのハンデを背負っての勝利なので褒めていい勝ちであった。
このときの鞍上西田雄一郎は一項目書けるくらいのやらかし波瀾万丈紆余曲折を経て、再び重賞勝利を挙げたのは14年後のこととなる。
華麗な逃げ切り勝ちでかつての素質馬が復活した!と思われたがまたも脚部不安で長期休養となってしまい、今度は快方に向かう様子がなく、休養中に小島太厩舎に転厩したりと色々あったが1997年12月についに現役断念、登録抹消となった。
能力は確実にある馬であったが、マルゼンスキー譲りの脚の弱さ、そして何より荒い気性とめったに騎手の言うことを聞かない我の強さが出世を大きく阻んでしまった。
小島太が致命的に合わないタイプだったようにも思う。合う合わないがはっきりしてる騎手なので…
引退後と余談
種牡馬入りするには実績が足りなかったが、なんだかんだ人気のあった馬であったため引退後は功労馬として新和牧場で過ごしていた。初稿当時御年32歳であったがまだまだ元気者であり、時折動画が撮影されたりしていた。
我が強く暴走するのが常であった現役時代とは一転、大変穏やかになっていたという。
しかし2023年12月30日に亡くなったことが2024年の年明けに公表された。老衰であったため穏やかであっただろうと推察できるのがせめてもの慰めだろうか。
個性派だったためか2023年放映の『大病院占拠』というドラマで、我が強く上の命令を聞かない主人公(演:櫻井翔)を例えて「サクラエイコウオーみたいだね」というセリフがあった。脚本家が競馬好きだったのだろうか。
また『ウマ娘 プリティーダービー』ではサクラローレルを主人公にしたコミカライズ『スターブロッサム』にて、変名ウマ娘「ヨシノプリヴェール」として登場している。
血統表
マルゼンスキー 1974 鹿毛 |
Nijinsky II 1961 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Lady Angela | |||
Flaming Page | Bull Lea | ||
Our Page | |||
*シル 1970 鹿毛 |
Buckpasser | Tom Fool | |
Busanda | |||
Quill | Princequillo | ||
Quick Touch | |||
サクラハツユキ 1980 鹿毛 FNo.16-a |
*パーソロン 1960 鹿毛 |
Milesian | My Babu |
Oatflake | |||
Paleo | Pharis | ||
Calonice | |||
サクラジョオー 1970 黒鹿毛 |
Alcide | Alycidon | |
Chenile | |||
*スワンズウッドグローヴ | Grey Sovereign | ||
Fakhry | |||
競走馬の4代血統表 |
関連動画
大暴れ
やればできる子
関連項目
- 競馬
- 競走馬の一覧
- サクラ軍団
- マルゼンスキー(親父)
- サクラチヨノオー(親戚のおじさん)
- 1994年クラシック世代
- ナリタブライアン(勝てねえ)
- サクラローレル(俺とお前は同期の桜、無理をさせた)
- ヒシアマゾン(京成杯3歳Sと京成杯で2敗しているが、ヒシアマゾン自身は2着敗退)
- ビコーペガサス(負けた)
- ナムラコクオー(弥生賞では勝ち、ダービーでは敗れた)
脚注
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