ETCとは、
- その他(et cetera:エトケーテラ、エトセトラ)の略称。etc.と表記される。
- 電子料金収受 (Electronic Toll Collection)の略称。
- ETC(Europe Touring Car Championship)。ヨーロッパでかつて行われていたツーリングカーレース。現在のWTCC、WTCRの前身。
この記事では、2番目の電子料金収受(ETC)について記述する。
概要
ETCは、日本の高速道路に於いて、料金所をノンストップで通過することができるシステムのことである。5.8GHz帯の無線通信を利用して料金精算を行っている。車載器と料金所の間で料金精算に必要な情報がやりとりされ、情報に問題がなければ料金所のゲートが開いてそのまま通過できる。
ETCの導入のきっかけは、高速道路民営化前に日本の高速道路の運営管理をしていた「日本道路公団」等の道路公団4法人が発売していた「ハイウェイカード」という磁気プリペイドカードの偽造問題への対処法とも言われている。
1997年に小田原厚木道路の小田原本線料金所にて試験が開始され、2001年から自動二輪車を除く自動車用途での一般利用が解禁された。2005年には自動二輪車用ETCの試験が開始され、2006年に一般利用が解禁された。
2009年からは次世代型ETCの試験が開始され、ETC通行機能の他に渋滞情報・安全運転情報等を提供するようになった。2014年からは「ETC2.0」という正式名称が付与され、2016年からはETC2.0専用割引が開始された。
一般利用解禁となった2001年には愛称の公募も行われ「イーテック」に決まったが、既に「ETC」自体の知名度が高かったためか愛称は全く普及しなかった。ちなみに当時の2ちゃんねるでは「ETCの愛称を『行ってよし!』にするスレ」が立ち、大量投票が行われたという。
ETC利用に必要なモノ
ETCを利用するには、「車載器」と呼ばれる通信機と「ETCカード」が必要である。
車載器は、四輪車用であれば自動車販売店や、オートバックスなどの量販店で入手可能であり、取付工賃や各種登録費用を含めても2.5~3万円でお釣りが出るぐらいの価格で売られている。たまに、クレジットカード新規発行を条件に車載器プレゼントキャンペーンも行われているのでチェックされたし。
ETC車載器は必ず、「セットアップ」と呼ばれる登録作業が必要で、その際には、自動車の種別・ナンバープレート情報等を登録する。もし、車載器を他人に譲ったり、車体の売却・再登録等でナンバープレートが変更になった時、車体の乗換でETC車載器を他の車体に移設した場合は再度セットアップが必要となる。
もしも再セットアップを怠った場合、不正通行として取り締まられたり、ETCマイレージ・利用状況照会サービスへの登録ができなかったりと不利益も多くなるため再セットアップは速やかに行うこと。
自動二輪車用のETC車載器は、四輪車と比べて過酷な環境に晒されることを考慮しており、振動対策や防水対策が徹底的に行われ、本体が2~3万円・取付工賃が国産車で2万円~、輸入車で4万円~と非常に高価になっている。ラインナップも非常に少なく、日本無線とミツバサンコーワの2社しか製造していない。
ETCカードは、表面にICチップが埋め込まれたカードで、クレジットカードと同じサイズである。ICチップには利用履歴情報が残るようになっている。利用履歴のデータは、高速道路のパーキングエリア・サービスエリアに設置している利用履歴プリンターで印字することが可能となっている。
ETCカードの入手方法は、一般的なクレジットカードを既に所持していれば、簡単な申請を行うだけで2週間程度で入手可能。かつてはETCカード機能が一体化したクレジットカードが存在したが、2018年の改正割賦販売法の施行に伴い発行禁止となり現在では本カードと物理的に分離することが義務付けられている。
このほかにも、クレジットカードを発行できない人向けの救済措置として、デポジット(預託金)を入金したうえで利用出来る「ETCパーソナルカード」や、法人向けの利用を見込んだ「ETCコーポレートカード」も存在する。
ETCマイレージサービス
ETCカード、パーソナルカード利用者向けのポイントサービス。事前にWebサイトか郵送で登録申し込みを行うと各道路会社の定める還元率に応じてポイントが付与される。付与されたポイントはそのままでは使えず、一定数貯まる毎に無料通行分への還元手続きを行う。
申し込みにはETCカード・パーソナルカードの番号の他、車載器管理番号が必要になる。
- NEXCO3社・宮城県道路公社・本州四国連絡高速道路:通行料金10円につき1ポイント
- 愛知県道路公社・福岡北九州高速道路公社・広島高速道路公社:通行料金100円につき1ポイント
- 神戸市道路公社:通行料金50円で3ポイント
後述するが、NEXCO3社の平日朝夕割引の適用を受けるためにもマイレージへの登録が必要である。
ETC限定割引システム(2022年1月現在)
高速道路事業者はETCの導入を推し進めるため各種割引を用意している。
東京・大阪近郊エリア(大都市近郊区間)は、
東京の場合→八王子・東松山・加須・谷田部・成田・厚木など⇔東京中心街
大阪の場合→西宮北・西宮・岸和田和泉・天理・大津・瀬田東⇔大阪中心街
となる。詳しくは、ここを参照されたし。
なお、割引は割引率の一番高いものが優先的に適用される。
- 平日朝夕割引
ETCマイレージサービス会員のみ、NEXCO東日本・中日本・西日本が管理する道路で、東京・大阪近郊エリア・第二神明道路・第二阪奈道路・関門トンネルを除くエリアを走行時、料金所(入口・出口どちらでも良い)を午前6時~午前9時or午後5時~8時に通過すると適用される。1ヶ月のうち5回~9回で30%、10回以上で50%分をポイント還元する。適用は車両1台につき午前・午後それぞれの各1回だけ。走行開始から100km分のみ割引が適用される。 - 深夜割引
NEXCO東日本・中日本・西日本が管理する道路で、料金所(入口・出口どちらでも良い)を通過した時刻が曜日を問わず午前0時~午前4時なら30%割引される。 - 休日割引
NEXCO東日本・中日本・西日本が管理する道路で、土日祝および1月2日~3日に適用される。対象車種はバイク・軽自動車・普通車のみ。東京・大阪近郊エリアを除くエリアを走行時、2014/04/01~2014/06/29までは50%割引、2014/07/05以降は30%割引となる。 - ETC2.0限定割引
ETC2.0車載器を搭載する車両のみ適用される割引。以下の割引が存在する。
- NEXCO東日本
圏央道・新湘南バイパス通行時、高速自動車国道の普通区間の料金水準(圏央道の普通車の場合29.52円/km→24.6円/km)に割引。 - NEXCO中日本
東海環状自動車道通行時、高速自動車国道の普通区間の料金水準(圏央道の普通車の場合29.52円/km→24.6円/km)に割引。 - 道の駅一時退出システム(社会実験)
指定のインターチェンジから一時退出し、特定の道の駅に立ち寄った場合、3時間以内に再度そのインターチェンジに帰ってきて同一方向に乗り直しすれば、通行料が途中で降りずに利用した料金と同じになるように調整される。対象は以下のとおり。
- 八戸自動車道九戸IC~道の駅おりつめ
- 東北自動車道村田IC~道の駅村田
- 磐越自動車道猪苗代磐梯高原IC~道の駅猪苗代
- 首都圏中央連絡自動車道五霞IC~道の駅ごか
- 関越自動車道高崎玉村SIC~道の駅玉村宿
- 富津館山道路鋸南保田IC~道の駅保田小学校
- 首都圏中央連絡自動車道木更津東IC~道の駅木更津うまくたの里
- 中部横断自動車道白根IC~道の駅しらね
- 北陸自動車道親不知IC~道の駅親不知ピアパーク
- 舞鶴若狭自動車道小浜IC~道の駅若狭おばま
- 新東名高速道路新城IC~道の駅もっくる新城
- 名神高速道路栗東IC~道の駅アグリの郷栗東
- 舞鶴若狭自動車道春日IC~道の駅丹波おばあちゃんの里
- 中国自動車道千代田IC~道の駅舞ロードIC千代田
- 中国自動車道戸河内IC~道の駅来夢とごうち
- 中国自動車道六日市IC~道の駅むいかいち温泉
- 米子自動車道江府IC~道の駅奥大山
- 山陽自動車道徳山西IC~道の駅ソレーネ周南
- 高知自動車道新宮IC~道の駅霧の森
- 徳島自動車道美馬IC~道の駅みまの里
- 九州自動車道えびのIC~道の駅えびの
- 九州自動車道人吉球磨SIC~道の駅人吉
- 長崎自動車道東そのぎIC~道の駅彼杵の荘
- NEXCO東日本
- 外環道迂回利用割引
首都高都心環状線(C1)・東京高速道路⇔東北自動車道・関越自動車道・常磐自動車道・東関東自動車道・京葉道路・首都高埼玉大宮線へ抜ける場合、東京外環自動車道を1ジャンクション間のみ利用した場合、迂回せずに利用した場合と同じ料金に調整される。 - 東京湾アクアライン料金割引社会実験
東京湾アクアラインをETC車載器搭載車で通行すると、どの車種も約75%の割引を受けられる。大口・多頻度割引も重複適用される。 - 関越特別区間割引
関越自動車道水上IC~湯沢IC間は普通車で39.36円/kmの特別料金(加算運賃)を課しているが、ETC車載器通行に限り24.6円/kmに割引される。 - 恵那山トンネル区間・飛騨トンネル区間の料金水準の引き下げ
恵那山トンネル(中央自動車道園原IC~中津川IC)・飛騨トンネル(東海北陸自動車道飛騨清見IC~白川郷IC)の通行はETC車載器通行に限り高速自動車国道の普通区間の料金水準(普通車24.6円/km)に割引される。 - 中央自動車道(八王子IC~高井戸IC間)特別料金
この区間内のみを利用する、あるいは中央道を上記区間のみで利用したうえで首都高・外環道で通行を終了する場合はETC車載器通行の場合、中央道区間の上限料金が現金車から3~4割割り引かれる。 - 本四高速ETC割引
本四高速でもNEXCO東日本・中日本・西日本と同一の割引を実施している。 - 首都高速ETC割引
→詳しくは首都高速道路の記事を参照。 - 大阪都心流入割引
阪神高速1号環状線~12号守口線・13号東大阪線・14号松原線~第二京阪道路(寝屋川東IC~巨椋池IC)・第二阪奈道路・西名阪自動車道・南阪奈道路間をETC車載器で通行した場合、どのルートを通っても一番最安の料金に調整される。 - 広島呉道路連続利用割引
広島呉道路と広島高速道路1号線・2号線広島東IC~大州出入口・3号線宇品出入口~観音出入口を連続して利用する場合、ETC車載器で通行すれば広島呉道路仁保JCT~坂IC間の料金を約75%割引。 - 神戸都心流入割引
第二神明道路明石西IC~阪神高速3号神戸線生田川出入口間を利用する場合、7号北神戸線や31号神戸山手線、32号新神戸トンネル経由でも、ETC車載器で通行した場合であれば一番最安の料金に調整される。 - 阪神高速11号池田線時間帯割引
池田木部 · 川西小花~神田間のみを平日の6時~9時、17時~20時の間にETC車載器で通行すれば割引。 - 阪神高速環境ロードプライシング割引
2号淀川左岸線北港JCT~大開間、5号湾岸線六甲アイランド北~天保山間を特大車・大型車は無条件で、中型車はETCコーポレートカード使用者に限り3割引。 - 阪神高速短距離区間利用割引
1区間かつ4.3km以内の通行の場合、ETC車載器で通行すれば割引。 - 名古屋高速ETC都心環状割引
名古屋高速都心環状線から放射状に伸びる路線⇔都心環状線を通行する場合、都心環状線内に4つある出入口のうち接続ジャンクションから数えて3・4つ目の出入口を利用した場合でも2つ目の出入口を利用した場合と同じ料金に調整される。 - 名古屋高速ETC夜間割引
中型車・大型車・特大車限定で、22時~24時の間に名古屋高速に進入すれば1割引、翌日0時~6時だと2割引される。 - 福岡高速ETC割引
通常時は普通車:630円 大型車:1260円だが、平日・土曜日の22時~翌朝7時および日祝の終日は普通車:560円 大型車:1130円に、土曜日の7時~22時は普通車:590円 大型車:1190円に割引される。 - 北九州高速ETC割引
通常時は普通車:520円 大型車:1050円だが、平日・土曜日の22時~翌朝7時および日祝の終日は普通車:500円 大型車:950円に、土曜日の7時~22時は普通車510円 大型車:1000円に、日祝の終日は普通車:480円 大型車:950円に割引される。
料金所通過時に注意すべきこと
まず、料金所の表示を確認する。ETCによるノンストップ通過は「ETC専用」もしくは「ETC/一般」と表示されたレーンに入ること。なお、「ETC/一般」のレーンではETCを搭載しない車両が進入してくることがあるため、前方に車両が停止していることがあるので注意されたし。
もし、ETCレーンのバーが開かなかった場合は、四輪車の場合はレーン上のインターフォンで係員を呼び指示に従うこと。二輪車の場合はバーを避けてそのまま通過し、すみやかに高速道路事業者に連絡し指示に従うこと。
最近はETCレーンのバーが開くタイミングをわざと遅くしている。何故そうしているのかというと、ETCレーンの通過速度を落とすためであり、追突事故を未然に防ぐためにしているからである。
料金所手前数百メートルや、パーキングエリアなどには、「ETCレーンは20km/h以下で通過すること!」という啓発看板が多数設置されている。
あと、車間距離を充分にとること。前車の急停車に対応できる程度の車間距離は空ける必要がある。
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