中部横断自動車道(ちゅうぶおうだんじどうしゃどう)とは、静岡県静岡市清水区の新清水JCTから、長野県小諸市の佐久小諸JCTに至る、高速道路(高速自動車国道)である。略称は中部横断道(ちゅうぶおうだんどう)。路線番号は E52 。
現在、六郷IC - 双葉JCT、八千穂高原IC - 佐久小諸JCTが開通している。
概要
高速自動車国道 (有料/無料) |
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E52 中部横断自動車道 | |
基本情報 | |
総距離 | 84.2km(開通済区間) |
開通年 | 2002年 - |
起点 | 静岡県静岡市清水区 |
終点 | 長野県小諸市 |
重要な経過地 | |
道路テンプレート |
新東名高速道路の新清水JCTを起点とし、国道52号やJR身延線にほぼ沿って、中央自動車道の双葉JCTまで通る。そして長坂JCT(計画中)まで中央自動車道と重複し、長坂JCT以北は八ヶ岳高原付近を通る。長坂JCT - 佐久市にかけてJR小海線(八ヶ岳高原線)や国道141号と並行し、佐久小諸JCTで上信越自動車道と接続する。
開通区間のうち、八千穂高原IC - 佐久北IC、六郷IC - 下部温泉早川IC、南部IC - 富沢IC は新直轄区間のため無料、その他の区間は有料である。また、ほぼ全線が暫定2車線となる。
長坂JCT - 八千穂高原ICは基本計画区間となっており、ルートが決定していない。
横断…?(名称について)
中部横断自動車道は、南北を通る路線であるが、日本の国土軸としては横断する路線となるため、名称に「横断」がつく。
中部地方を縦断するように路線があるのに、何故"横断"自動車道か?それは、中部地方ではなく、本州、または日本列島を"横断"していると考えれば合点がいくだろう。同じような考え方の高速道路に中部縦貫自動車道がある。
開通によるメリットとデメリット
メリット
デメリット
- 並行鉄道路線問題
- 南部区間では国道52号線・中部横断道経由で静岡(静岡駅・新静岡)と甲府(甲府駅・竜王駅)を結ぶ山梨交通・しずてつジャストラインの高速バスが設定された。開設当初は1日2往復であるが、開通区間が伸びた場合増発が見込まれ、それに煽りを食う形で身延線で同じ区間を結ぶ「ふじかわ」の利用者が激減するのではという危惧が構想の段階から挙げられており、ネット上では「ふじかわの格下げ(快速化)」から「身延線の廃止」までさまざまな論調が行われている。
- 2019年3月の開通区間延長に合わせ静岡⇔甲府間の高速バスのルート変更が行われ、これにより運賃に加え所要時間も「ふじかわ」より優位になった(高速バス:約2時間10分、ふじかわ:約2時間20分)。しかし実際は高速バス側は増発どころか運転日が土日のみと縮小されている。理由として高速バスは区間乗降が期待できない(静岡から甲府までの間の停車は身延のみ。高速上にバス停を設置できず、一度下道へ降りないといけないためその分タイムロスになる)、また2社とも慢性的運転手不足(しずてつジャストラインは路線バスの廃止や減便、山梨交通も子会社を合併して中央高速バスの運転手を確保しているほど深刻な状況である。)と思い通りに運行できない状況である。
- 一方で「ふじかわ」は区間利用を目論んだダイヤを組んでいるうえ、JR東海の新幹線マネーを使い 本数を減らすどころか逆に多客期は臨時列車を設定し、さらに急行「ゆるキャン△梨っ子号」など各種イベント列車を運行するなど、知名度や本数の面で優位性を保っている。
- また、運行会社のJR東海は廃止の基準とされる輸送人員を公表しておらず、さらに身延線より収支が悪いとされる飯田線や紀勢本線、名松線も収支や輸送人員による廃止の議論を行なっていない(紀勢本線はJR東海区間の話でJR西日本区間の白浜駅以東はかなり危機的状況。名松線は災害復旧を巡り自治体と折り合いがつかず、一部区間で廃止になりかけたが結局存続している)ため、よほどのことがない限り身延線が廃止されることはないと思われる。
- さらに中部横断道は静岡県富士宮市と山梨県中央市を通っておらず、特に富士宮市は最寄りである新東名高速道路新富士インターチェンジでも(甲府市および静岡市からの)所要時間に大差がない。中央市もインターチェンジのある南アルプス市からは近いが道路事情がよいとはいえず、甲府静岡間は不利でも間に富士宮市や中央市を挟めばどうにか存続できるレベルにあるとされている。
- 北部区間についてJR東日本管轄の小海線が並行して走っているがこちら北部区間の残区間の進捗が進んでいないこともあり、廃線の議論になることはないとされていた。しかし2022年にJR東日本は小淵沢駅から小海駅までの利用人数が2千人に達しておらず年間赤字額が15億円に達していることを公表し、沿線自治体と路線存続の協議を行なうとしている。
開通後の効果
交通量の増加
2004年に双葉IC - 南アルプスICが供用中の交通量調査では全高速道路中ワースト(2500台/日)で、「作る意味があったのか」などの批判に晒されていた。しかし延伸していくうちに交通量は増えていき、2021年は平日で7000台/日、休日では11000台/日にまでなっている。沿道の国道52号は減っているが、合算ベースでは平日1割、休日3割増となっており、開通により新たな交通ルートが開拓されたことが調査で明らかになっている。
企業の進出
2021年の全通後、特に南部区間の沿道では工場や倉庫の進出が相次いでいる。当該区間の全通に合わせて化粧品会社のコーセーや医療品会社のサンスターが沿道への進出を発表。2014年に撤退していた半導体メーカーのルネサスエレクトロニクスも新型コロナウイルスによる半導体不足を解消するため中部横断自動車道から近い場所に再進出を発表している。そして極めつけはコストコの進出で、2024年に南アルプスICに隣接する形で倉庫店開業を発表するなど中部横断自動車道の効果が想定以上になっている。
諸問題
先述の予想以上の効果がある一方で、中部横断自動車道は様々な問題を抱えている。
難工事
- 北部区間の長坂JCT - 佐久小諸JCT間は、八ヶ岳高原のど真ん中、つまり山の中を突き抜けるため、長大トンネル工事の増加など難工事が予想されている。また、環境保護を訴える住民(但し別荘地を貫いていることから、本来の住民ではなく移住してきた別荘民)の反対運動が起きており、当該区間はいまだ着工の目途すらたっていない。
- また、南部区間長坂JCT - 新清水JCTについても新直轄区間の六郷IC~富沢IC間において軟弱地盤や自然由来の重金属に苦しめられており、工事中の死亡事故も相次いでいる。そのため工法の見直しや追加工事が行われ、当初より5年半遅れての全面開通となった。
構造
- 名目上は暫定2車線で建設されているが、この場合完成2車線と比較し路肩幅が狭くなる。これは中央分離帯や路肩幅が片側分しか確保されておらず、道路幅は完成2車線は12m分なのに対し暫定2車線は10.5mしかない。またセンターラインにポストを設置しているため緊急車両の通行時に一般車両を回避して通行することが困難であると消防署や警察署から懸念されている。また、双葉JCT - 増穂IC間は高架区間であるが、降雪時に路肩に雪を寄せることができず、2013年の大雪時は復旧に2日以上を要したことがある。暫定2車線の場合安全面から最高速度が70km/hに制限されることや、当該区間の交通量の予測から「(路肩や中央分離帯の幅が充分に確保され、最高速度が80~100km/hに設定できる)完成2車線でよかったのではないか」という意見もある。
- 佐久南IC - 佐久北IC間では、地上道路のボックスカルバートにより上下線が分離されている箇所がある。さらに、佐久中佐都IC - 佐久北IC間の北陸新幹線と交差する箇所では線路の高架下を通過しており、上下線が新幹線の橋脚で分離され、狭隘かつ急勾配・急カーブとなっている。このため、佐久中佐都IC - 佐久北IC間は高さ4.5m以上の車両は通行できない。これは、当初は高架構造の予定だったものが、経費削減のために盛り土構造となり、地平を通る構造となったためである(このため、4車線化のための拡幅もやや困難な構造となってしまっている)。同様に橋脚で車線が分離されている構造の道路として、首都高速都心環状線がある。
費用
- 南部区間のうち、新直轄区間の六郷IC - 富沢IC間について当該区間の工事費が3000億円を超えている。これはキロ換算で110億円となり、双葉JCT - 増穂IC間の倍以上の費用を要している。当該区間は新直轄区間のため、工事費のうち25パーセントは沿道の都道府県が負担することになり、山梨県に対する工事費は本来であれば約750億円となる。これに対し山梨県は県費用負担の減額を陳情し、2020年の時点で1億円まで減額されている。なお、山梨県の負担減額分は国が負担(つまり山梨県から全都道府県へ分散)という形になる。
有料化
- 南部区間が全通した場合、新直轄(無料区間)で建設された六郷IC - 富沢IC間の有料化が検討されている。
- 新直轄化が決定した後にETC割引が導入されたが、新直轄区間が挟むと割引ならないケースが発生したり、逆に料金が割高になるケースが発生している。そのため割引目当てのドライバーが当該区間を避けるケースも発生している。
- 無料という理由で普通のバイパス感覚で利用できるため、お年寄りが運転する軽トラックが30~40km/hで走行している(高速道路の最低速度は渋滞や緊急車両通行時を除き50km/hで走行しなければならない)というケースが発生し、渋滞やあおり運転の要因になっている。
- 名目上は暫定2車線であるが、新直轄区間の場合公共事業の兼ね合いから4車線化は先送りになる公算が高い。そのため管轄を国土交通省からNEXCO中日本に移管させ、4車線化を実現させたいという狙いがある。
- 当該区間のみ新直轄化した背景には当時の山梨県知事が地元からの早期着工を実現するため国土交通省ならびに日本道路公団(当時)の要求を丸呑みしたたであるが、知事が交代した後の再検証により「まともな議論が行われていない」「早急に新直轄化を結論すべきではなかった」としており、山梨県も有料化に含みを持たせている。
- 但し、以下の理由で有料化は容易でないと見られている。
- 新直轄化後設計の見直しでインターチェンジをY字ランプ化してしまった六郷ICや、身延山ICおよび中富ICといった新直轄前提の地域振興ICついては有料化の際大幅な改修が必要になる。特に後者については費用対効果の面からスマートIC化の可能性もある。
- 基本計画時点で身延町内にPAの設置が検討されていたが、新直轄化によって設置が白紙化された。このため南部区間は増穂PAから南は50km以上にわたりSA/PAがない状況となる(有料区間の場合、50km間隔でSA、15km間隔でPAが設置されるのが基本である)。これについては南部ICに隣接している道の駅なんぶをハイウェイオアシス化で対応するのが最善であるが、それでも大幅な改修工事が必要になる。
- 新直轄化区間内の近距離輸送(六郷IC付近にある集配局から20~30km先の身延町、南部町へ郵便物を配達するために利用している郵便局員や、学校統廃合によりスクールバスの運行を行なっている身延町、南部町)は有料化によって高速道路を避けざるをえなくなり、作業・所要時間の増加が懸念される。
路線名
- 中部横断自動車道:全線
法廷路線名と道路名が全く同一の路線である。ただし、高速自動車国道の路線を指定する政令では終点は佐久市となっているが、実際の終点(佐久小諸JCT)の所在地は小諸市となっている。
富沢IC - 六郷IC、八千穂高原IC - 小諸御影料金所は新直轄方式で整備される(基本計画区間の長坂JCT - 八千穂高原ICは未定)。
通過する自治体
静岡県
山梨県
南巨摩郡南部町 - 南巨摩郡身延町 - 西八代郡市川三郷町 -南巨摩郡富士川町 - 南アルプス市 - 甲斐市 - (この間中央自動車道)- 北杜市
長野県
(ルート未定) -南佐久郡佐久穂町-佐久市 - 小諸市 - 佐久市 - 小諸市
接続高速道路
施設・接続道路など
新清水JCT - 双葉JCT
IC 番号 |
施設名 | キロ ポスト |
接続する道路 | 備考 | 所在地 | ||
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9 | 新清水JCT | 0.0 | E1A 新東名高速道路 E52 ・ E1A 新東名高速道路清水連絡路 |
静岡県静岡市 清水区 |
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1 | 富沢IC | 20.7 | 国道52号 | 山梨県 | 南巨摩郡 | 南部町 | |
2 | 南部IC | 27.4 | 国道52号(南部バイパス) | 道の駅なんぶに隣接 | |||
2-2 | 身延山IC | 32.6 | 山梨県道10号富士川身延線 | 身延町 | |||
3 | 下部温泉早川IC | 40.6 | 山梨県道9号市川三郷身延線 | ||||
3-2 | 中富IC | 45.4 | 山梨県道405号割子切石線 | ||||
4 | 六郷IC | 49.0 | 山梨県道9号市川三郷身延線 | 西八代郡市川三郷町 | |||
富士川TB | 南巨摩郡 富士川町 |
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5 | 増穂IC 増穂PA |
58.3 | 国道52号(甲西道路) | PAは双葉方面のみ道の駅富士川が併設 | |||
6 | 南アルプスIC | 64.5 | 山梨県道12号韮崎南アルプス中央線(新山梨環状道路) | 南アルプス市 | |||
7 | 白根IC | 67.5 | 山梨県道39号今諏訪北村線 | ||||
15-2 | 双葉JCT | 74.3 | E20 (・ E52 )中央自動車道 | 甲斐市 |
長坂JCT - 佐久小諸JCT
IC 番号 |
施設名 | キロ ポスト |
接続する道路 | 備考 | 所在地 | ||
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長坂JCT | E20 (・ E52 )中央自動車道 | 山梨県 北杜市 |
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基本計画区間(ルート未定) | |||||||
長野県 | 南佐久郡 | 南牧村 | |||||
佐久穂町 | |||||||
八千穂高原IC | 23.1 | 国道299号 | |||||
佐久穂IC | 18.6 | 佐久穂町道 | |||||
佐久臼田IC | 16.2 | 長野県道121号上小田臼田停車場線(下小田切バイパス) | 佐久市 | ||||
佐久南IC | 8.5 | 国道142号 佐久市道 |
道の駅ヘルシーテラス佐久南に隣接 | ||||
佐久中佐都IC | 5.5 | 佐久市道 | |||||
佐久北IC | 1.3 | 国道141号 | |||||
小諸御影TB | 0.5 | 小諸市 | |||||
7-1 | 佐久小諸JCT | 0.0 | E18 上信越自動車道 |
歴史
- 2002年3月30日:白根IC - 双葉JCTが開通。中央自動車道と接続。
- 2004年3月20日:南アルプスIC - 白根ICが開通。
- 2006年12月16日:増穂IC - 南アルプスICが開通。
- 2011年3月26日:佐久南IC - 佐久小諸JCTが開通。上信越自動車道と接続。
- 2017年2月20日:南アルプス本線料金所が廃止。増穂ICの料金所が開設。
- 2017年3月19日:六郷IC - 増穂ICが開通。増穂PAが開設。
- 2018年4月28日:八千穂高原IC - 佐久南ICが開通。
- 2019年3月10日:新清水JCT - 富沢IC、下部温泉早川 - 六郷ICが開通。新東名高速道路と接続。
- 2019年11月17日:富沢IC - 南部ICが開通。
- 2021年8月29日:南部IC - 下部温泉早川ICが開通。
今後の予定
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
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