タイラント・ソードとは、ホビージャパンで掲載されたガンダムシリーズのパラレル作品およびその主役機体の名称である。
正式な作品名称は「TYRANT SWORD of NEOFALIA」。
『月刊ホビージャパン』1987年9月号~1988年2月号まで連載されていた、機動戦士Ζガンダムに関わったメカニックデザイナー藤田一己主導の作品である。
フォトストーリー、イラストを交えたキャラクターと機体解説、モデラーによる作例記事で構成、全6回。
本作は宇宙世紀をベースにして、オリジナル設定を付加されたパラレルワールドを舞台としている。物語は、主人公である「キース・マクレガー」(元地球連邦軍地球連邦軍辺境守備艦隊のエースパイロットで、本作の最後に原隊復帰する)が著者であるU.C.0118年に刊行された出版物「ネオファリアの中で」からSE計画に関わるエピソードを抜粋したものとなっている。
同時期にモデルグラフィックスで掲載されていた『ガンダム・センチネル』と比較すると、センチネルが宇宙世紀に登場する既存モビルスーツのバリエーション機体の推力や出力の値をテレビーシリーズの物よりも益々にしていく作風だったのに対して、本作に登場するモビルスーツは登場勢力や性能などが異なるパラレルな物となっている。また本作の主役となる機体群は、モビルスーツに代わる「ソード」と呼ばれるカテゴリーなのである。
前回の同誌連載企画『ジオンの星』と同様に、単行本やムックなどに纏められて出版される事はなかった。また現在では、連載時のホビージャパン入手は極めて困難である。
本作の設定では、アナハイムは一年戦争後にジオン軍事体制から独立し、タイラント開発計画(後のSE計画)を始動。戦後、弱体化の極みにある連邦とジオンを、MS開発を軸とした軍需産業を中心として積極的に援助する事でその影響力を広げて、U.C.0083には経済力による地球圏支配を実質的に完了させていたという事になっている。やがてアナハイムは、連邦内部に発生した強大な軍事力を持ったティターンズを嫌い、エゥーゴ誕生の布石を打つ。一方で、アステロイド・ベルトに潜むアクシズ(ネオ・ジオン)の動き、ジュピトリス(木星圏勢力)の拡大などをして、地球圏はキナ臭さを増していき戦国状態のようになった。このように色々な勢力が跋扈する状況下で、アナハイムは表舞台に姿を現さず、影から地球圏を支配するためのはったりとして、超兵器ソードの実用化を急ぎ、戦乱真っ只中のU.C.0086にロールアウトされた機体が、タイラント・ソードだった。しかし既に充分な力をアナハイムは持っていたので、戦争終結前にタイラントは消え去る事になった。
モビルスーツに成り代わる機動兵器を開発する為、水面下で進行していた「SE計画」は革新的であったから、そこで培われた技術は様々な技術を生み出した。ソード・システムに使用された技術はあらゆる新世代モビルスーツに利用され、他にもある細かな技術の一つが全地球圏のあらゆるモビルスーツ群に影響を与えていた。
パシケファロ・ソードの実験機「ミータ」(フォトストーリー未登場)がZ計画へと繋がり、ゼータ、シータ、ギーガといったモビルスーツが誕生したという。
本作では、主流派はアナハイムの傀儡という設定である。その他にティターンズとエゥーゴが存在し、微妙なパワーバランスで成り立っている組織である。
上層部は、内包するシステムによって時空間を制御し得るソードが連邦の存亡すら脅かす事に気付いて、タイラント・ソードとジュピターズ(木星師団)を同士討ちさせようとしたが失敗に終わる。
機動戦士Zガンダムでは、まだネオ・ジオンと改名していなかったが、本作では既に改名済み。主力モビルスーツはマラサイ。
ネオ・ジオンの領域侵犯を防止する為に、地球連邦軍によって「辺境守備艦隊」が編成されるなど、精力的に活動している。
機動戦士Zガンダムと同じく、突出した軍事力を持っているという事くらいしか分かっていない。
フォトストーリーには登場しない。
本作では、連邦内部に発生したティターンズが強大な軍事力を所持している事を嫌悪したアナハイムが誕生に関わったという設定。
組織の長であるパプテマス・シロッコが地球侵攻用に、あらゆる面に於いて既存のモビルスーツを超越した存在であるメッサーラ・ディノファウストを総数86機、自身の専用機1機を開発していたという、本作でも指折りのヤバい組織となっている。
幸い、シロッコ専用機のメッサーラ・ディノファウスト・ジュピターは、タイラント・ソードとの戦闘で機体を損傷し、機動力が格段に低下。メッサーラ・ディノファウスト・ジュピター総数86機は、タイラント・ソード改”アグレス”、二機のスレイヴ・ソードとの戦闘で数を減らされ、残った84機はタイラントのSEフィールドで全滅した。
かつて『Bクラブ』では、「Ζ-MSV」という企画が連載されていた。1988年刊行の増刊ムック『機動戦士ガンダム MS大全集 「機動戦士ガンダム」から「逆襲のシャア」まで』では、連載時に登場しなかった機体が追加されその内の一つが「ディジェSE-R」と言う機体である。この機体は、形式番号と名称、頭頂高と重量、装甲材質以外は一切不明で、多彩な革新的機能が搭載されているという事しか設定がないのである。だが名称の「SE」という名前、SEジェネレータと思しき背部のユニットや「革新的機能がされた」いう設定文から『TYRANT SWORD Of NEOFALIA』に登場するSEシステムとの関連性が漂っている。2008年に発売されたゲーム『機動戦士ガンダム ギレンの野望 アクシズの脅威V』で登場した際には、図鑑の欄で「SEシステムと呼ばれる先進的技術が導入されており」との一文が書かれていた。
2006年の『月刊ホビージャパン』では、Z-MSVに登場したガンダムMk-Ⅲを岡村征璽がアレンジした機体、ガンダムMk-Ⅲ2号機“ヴィクセリオス”の作例記事が掲載。副次的に新式ジェネレータが搭載されているといった設定で、岡村が担当した機体紹介のページには「SEジェネレータ、フルドライブ!」と書かれているので、本機のジェネレータ=SEジェネレータのようである。
SE計画によって得られたセンサーシステム、機体システム、制後システム、新戦術思想の確立といった新技術と、これらの中核を為す推進システム「SEドライブ」と暫定的空間粒子消失制御システム「SEジェネレータ」の総称。
ミノフスキー物理学の権威ネイナ・ラフィット・ファルム女史が発見した、SEジェネレータの基礎理論が”SE”(Subject Effacement)の由来。
暫定的空間粒子消失制御システムとも言うべき物。特徴はエネルギー効率の高さで、それに伴う超高出力は空間を歪めて磁場を狂わせると言う。この為、SEジェネレータは反重力、反磁力システムとして機能する他、エネルギーの消失、転移現象による通信システム及び空間センサーとしても利用される。しかし、これらの機能は半ば偶然の産物で、SEシステムの全貌は未だ解明されていない。
藍田豊(以下あ)「そのSEジェネレータなんだけど、いったいどんなシステムなんでげしょ。」
藤田一己(以下ふ)「なにぃ!そんなことも知らずに原稿書いてたのか!」
あ「はい(胸をはる)。」
ふ「仕方ねーな。それでは説明しよう、SEシステムとは一種の重力ジェネレータで。
あ「で!?」
ふ「…………。」
あ「センセーどうしたんですかあ。」
ふ「と、とにかくものすげえ装置な訳だあ。」
(短期集中連載特別企画『タイラントソード』連載第2回 「藤田くんのわがままクラブ」より抜粋)
SEジェネレータによって発生する、力場。
本来は機体を推進させる事に利用されるが、周囲に発生しているこのフィールドは、敵からの攻撃を弱めるバリアーの働きをして、劇中ではメッサーラ・ディノファウスト・ジュピターが発射したメガ粒子の威力を大幅に低減、メッサーラ・ディノファウスト・アルファ部隊からのビーム攻撃を最大出力で全て弾き返すなどの活躍を見せた。攻撃に転用する場合は前方の一点に集中して放出される。フィールドのエネルギーが磁場や重力の歪み、空間その物の崩壊するエネルギーが、敵艦隊(劇中ではメッサーラ・ディノファウスト・アルファ部隊)をのみ込んで壊滅させる。
アニメ『機動戦士ガンダムUC』のユニコーンガンダム(光の結晶体)、アニメ『機動戦士ガンダムNT』のユニコーンガンダム3号機(フェネクス)は、サイコ・フィールドと呼ばれる力場を推進力にして移動、攻撃時にはこれを放出して敵のジェネレータをあたかも時が巻き戻ったかのようにバラバラするなどしている。タイラント・ソードは、架空の力場を様々な事に用いた機体として、先駆け的存在であったと言えるのかもしれない。
SE計画の提唱者兼ミノフスキー物理学の権威であるネイナ・ラフィット・ファルム女史(本作のヒロインで藤田一己の趣味で3?才という年増設定)を研究主任として、ネオファリアで開発された新機軸の機動兵器でSESとも呼ばれる。
藍田豊(以下あ)「あ、読者の皆さんからハガキが大量に届いてますよ。目立ったのが”ソード”って言葉の意味が解らないという質問なんですけど。」
藤田一己(以下ふ)「ソード(SWORD)はモビルスーツとかアーマードトルーパーと同じで、ロボットのカテゴリーを表している。逆に”タイラント”はあの機体だけのコードネーム…つまりガンダムやザクに当たる。そしてネオファリア(NF)のスタッフは『これはMSじゃない!』という気持ちを込めて”タイラント(は)ソード”と呼ぶのだあ。」
あ「なるほど、スタッフの愛情が感じられるエピソードです。あと、『なにがソードだ、MSをコケにするな!』ってのも多かったんですが。」
ふ「だってMS描いてもつまんないんだもん。もう飽きちゃったよ。(オイオイ!:i)」
(特別連載企画『タイラントソード』連載第4回 「藤田さんのラリパッパトーク」より抜粋)
本機体群では、新理論に基づいた革新的な推進システム「SEドライブ」、「SEジェネレータ」が実用化に移され、機動力と火力ともに従来兵器を凌駕している。ただし作動させる事が出来るのは、機械システム又は人工知能に対するコミュニケート能力が突出したネクスト・ワンと呼ばれる特殊な能力が必要とされる。ネクスト・ワンはニュータイプの変種あるいは亜種と考えられている。
予定されていた「SE計画」の最終段階構想では、ネクスト・ワンであるパイロットがシステムの司令部として機能し、タイラント・ソード1機に、無人の補助兵器(ニュータイプ用の兵器で言えば、ビットに相当する)である強力な火器を持った前衛「パシケファロ」3機、後方支援用「アパト」2機、情報収集の為高い索敵能力を持った「イクチオン」1機、タイラントを護衛する「スレイヴ」2機の4種8機のソードが随伴し、一つのユニットを形成するはずだった。このシステムが完成した暁には、ソードが地球圏の全モビルスーツに匹敵すると想定されていた。しかし、この強大過ぎる力こそ、ネオ・ファリアとソードが歴史から消滅した理由だったのである。U.C.0088は、ネオファリアは閉鎖。ソードに関する資料と機体群は極秘の内に処分、開発責任者のネイナ・ラフィット・ファルム女史はネオファリアが解体される直前に行方不明になって、ソードは表舞台から姿を消した。
藤田一己(以下ふ)「……まあ、それはそれとして、デザインはどんなものでげしょ。」
藍田豊(以下あ)「かっこ良いですけどなんかMSって感じと違いますね。微妙に。」
ふ「当然だよ。MS描いてるつもりないし、第一タイラントはMSじゃない。新型機動兵器”ソード”だ。」
あ「はァー。コンセプトはどんな?」
ふ「セオリー通りの突っ込み、ありがとう。ソード型機動兵器の基本思想はただ一言!無敵!最強!!こーれだっ!」
あ「ふたことじゃないですか。」
ふ「うるせ!つまり近代MSデザインの問題点を徹底的に分析し、総合的デザインクォリティの高さ、商品価値、トレンド、その他もろもろのファクター(要因)を計算しつつ、世界に誇る日本のロボットデザインの発展と未来、そして藤田一己のデザインワークの進化によって、完成したのが”ソード”なのだ。」
あ「だいじょーぶかなぁー(不安)。ZガンダムやMk-Ⅱのデザインが今頃評価されてるご時世なのに、そんな一人でつっ走ちゃって。また、みんなついて来れなくなりますよ。読者に怒られちゃう。」
ふ「いーの、いーの。業界初のインダストリアルデザイナー(これは本当)としては、常に歩み続けるしかないのだ。」
(短期集中連載『タイラントソード』連載第3回 「フジタ君のデザイナートーク」より抜粋)
| TYRANT SWORD タイラント・ソード |
|
| 型番 | SX・NFR-01SES |
|
全高 |
21.4m(頭頂高) |
| 本体重量 | 52.6t |
| 全備重量 | 82.3t |
| ジェネレータシステム | 改良型SEドライブ・ジェネレータNF・SE-05RP/2基及び熱核ジェネレータ/1基 |
| ジェネレータ出力 | 不明、Zガンダム型の5倍以上と推定される |
| メインスラスター | SEドライブ・スラスター/3基 |
| バーニアスラスター | 熱核反応ペレット/6基 |
| 構造構造 | 複合型オープンモノコック・アクティブコンポジット |
| 装甲型式 | 多層成形アクティブ・スペースドアーマー |
| 制御システム | 開放型フィードバック・コックピットシステム 暫定的思考制御 |
| 武器 | |
究極的機動兵器の開発をテーマとして開発され、超技術の集合体である本機の戦術思想は、高機動力を活かしたドッグファイト。如何なる高出力のモビルスーツであろうと、本機の前ではスローモーション以下に過ぎない。この高機動力と高出力によるパイロットと機体に異常な高Gがかかり続けてしまう。これを反重力機能の多くを慣性制御フィールドとして利用する事で、機体を分解させる程のGから守る事には成功したが、パイロットに関しては大出力を得るには多少のGには耐えなければならないと諦められている。なので実戦において、シロッコとの戦闘でキースは慣性を最低に、出力を最大にしてドッグファイトを行った結果、何度もブラックアウトを経験する羽目になった。この件は相手が既存のモビルスーツを凌駕する機体メッサーラ・ディノファウスト・アルファだったという特殊な事例であり、最低出力時のタイラントであっても、拮抗しうるモビルスーツは存在しない。
機体の性能を100%発揮させるため、本機の操縦システムには専用のパイロットスーツ、フィードバック制御と思考制御が使用されていて、パイロットの意志が忠実かつ高速に反映される。またパイロットの負担軽減の為、高速演算能力を持った自己進化形コンピュータが並列搭載されている。
藤田一己「ま、とにかく”タイラント”は強い。MSをWWⅡのレシプロ戦闘機とすると、F-14ぐらい強い。ZZですら、コンタクト(接触)後5秒ともたないぐらい強い。」
(短期集中連載『タイラントソード』連載第3回 「フジタ君のデザイナートーク」より抜粋)
武装はソード型専用のビームキャノン。高エネルギーの火球を高速で連続発射する、ビームマシンガンである。この火球はエネルギーのかたまり的なものであり、一つでも命中すると、敵機の体内で解放されたエネルギー粒子が致命傷を与える。しかし、メッサーラ・ディノファウスト・ジュピターやジュピトリスには、エネルギーが解放される前に、損傷箇所を排除されて、決定打を与えることが出来なかった。
| TYRANT SWORD CUSTOM“AGLES” タイラント・ソード改“アグレス” |
|
| 型番 | SX-NFR-01SES |
アグレス仕様とも呼ばれる本機は、パプティマス・シロッコ(パプテマス・シロッコ)の操縦するメッサーラ・ディノファウスト・ジュピターと交戦後、マイナートラブルに対応したタイラント・ソードの改修機体。
ユニットの両サイドに可動式サブジェネレータをフィールドスタビライザーとして追加し、メイン・ジェネレータ単体の負荷を軽減すると同時にトラブルの発生率を大幅に下げる事に成功。SEジェネレータも改良型であるAGタイプに換装した。
武装は火球を連射するSEジェネレータ式ビーム・キャノンを引き続き装備。新規兵装としては、Zガンダムのビームサーベルと同一の物をユニット化した頭部のオプション・メガビームポッド。Z(ゼータ)の物を流用したシールドを装備している。
タイラントの機体その物を利用した大規模破壊兵器SEシステム(SEフィールドの発生ベクトルを敵に向けて変更して解き放つもの)を用いて、84機の「メッサーラ・ディノファウスト・アルファ」を全滅に導き、彼方にいる「ジュピトリス」にまで被害を及ばせたが、ジュピトリスは破壊されたユニットを分離させてどこかへ消えた。
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最終更新:2025/12/16(火) 09:00
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