ファピアノ

ファピアノ(Fappiano)は、1977年生まれのアメリカの競走馬・種牡馬である。

競走馬としてもGI勝ちがあったが、種牡馬としてはそれ以上に大活躍し父Mr. Prospectorの父系拡大の先鞭をつけた。

概要

父は本馬の世代が2世代目で種牡馬として未知数だったMr. Prospector、母は現役時代32戦4勝のKillaloe、母父は桁違いのスピードで人気を博したアメリカ競馬史上屈指の快速馬Dr. Fagerという血統。
本馬のきょうだいは1991年イロコイS(米GIII)の勝ち馬Portroeや1995年ジャン・プラ賞(仏GI)の勝ち馬Torrentialを含めてデビューした8頭全てが勝ち上がっており、半姉Jedinaは直仔にClabber Girl(1988年トップフライトH)を、孫世代にKeeper Hill(1998年ケンタッキーオークスなど米GI3勝)を出している。また、本馬の6歳下の従弟に*オジジアンがいる。
日本においてはJedinaの仔*ノーベンバーローズの牝系が発展しており、直仔で自身も1993年のセントウルSを勝ったエリザベスローズからフサイチゼノン、アグネスゴールド、リミットレスビッドという重賞馬が出たほか、エリザベスローズの全妹クリスマスローズの孫に南関東の名牝ナターレが、同馬の仔にガイアフォースが出ている。

本馬の生産・所有者は母父Dr. Fagerなど多数の活躍馬を手掛けた殿堂調教師のジョン・A.ネルド師で、彼が運営に関わっていたフロリダ州のタータンファームで生産された。息子であるジャン・H.ネルド師に預けられ、1925～75年にかけてニューヨーク・タイムズ紙で長らく記者をしていたジョセフ・C.ニコルズの本名(Giuseppe Carmine Fappiano)から取ってファピアノと命名された。

名士の名を背に

2歳

7月22日、ベルモントパーク競馬場の6ハロンのメイドン(未勝利戦)でデビューした。ここでは翌年のエクリプス賞最優秀3歳牡馬を受賞することになるTemperence Hillも出走していたが、2着馬に3馬身半差、4着に終わったTemperence Hillには11馬身差をつけて完勝した。

その後一般競走を2連勝して12月20日のメドウランズ競馬場のモーヴェンH(6ハロン)に出走し、1:08.6のコースレコードのおまけつきで3馬身1/4差で勝利してシーズンを終えた。

当時は父の評価が定まっておらず、また母父が母父だけに本馬もスプリンターだと思われていたので、三冠競走には向かわないことになった。

3歳

ということでじっくり休んで5月1日にアケダクト競馬場の一般競走(6ハロン)で復帰し、ここをハナ差で勝って中1週でハンデキャップ競走(7ハロン)に出走したが、ここで3馬身差の2着に敗れて初黒星を喫した。

その後また少し休んで8月1日にサラトガ競馬場の一般競走(6ハロン)を1馬身1/4差で勝ち、8月30日のジェロームH(GII・1マイル)に出走した。ここでは前年のローレルフューチュリティ、当年のフロリダダービー、ウッドメモリアルSとGI3勝をマークしていたPlugged Nickleと当年のケンタッキーダービー3着馬Jaklin Klugmanという実績馬との対戦になった中、Plugged Nickle(3着)には7馬身差をつけたもののJaklin Klugmanにクビ差で競り負けて2着に終わった。続くパターソンH(GII・9ハロン)でもTunerup(*ハイフレンドコードの父)に3/4馬身差で敗れ2着となった。

続けて1ヶ月後のヴォスバーグS(GI・7ハロン)に挑戦したが、今度はPlugged NickleとJaklin Klugmanの競り合いに加わることが出来ずPlugged Nickleの2馬身半差5着に終わった。その後中1週でディスカヴァリーH(GIII・9ハロン)に出走し、3馬身1/4差で勝利してシーズンを終えた。3歳時は7戦3勝2着3回5着1回となった。

4歳

4歳時はアケダクト競馬場のボールドルーラーS(6ハロン)から始動して3着の後、7ハロンの一般競走を4馬身差で勝利して翌月のメトロポリタンH(GI・1マイル)に臨み、これを2馬身3/4差で勝ってGI初勝利をマークした。続くサバーバンH(GI・10ハロン)は実績の無い距離かつ経験に乏しい不良馬場となったが、それでも8頭立てとはいえ勝ったTemperence Hillから1馬身1/4差という僅差の4着に入った。

続いて当時ベルモントパーク競馬場の格付け無しのレースとして開催されていたフォアゴーH(1マイル)に出走した。ここではこの年最終的にエクリプス賞最優秀スプリンターに選ばれることになるGuilty Conscienceが出走していたが、同馬を3着に破って1:33.8のレースレコードで勝利した。

次走は再び距離を伸ばし、マールボロカップ招待H(GI・10ハロン)に挑戦した。当年のケンタッキーダービーとプリークネスSの二冠を制し前走ウッドワードSで古馬を既に破っていたPleasant Colonyに次ぐ2番人気タイの支持を受けた一戦だったが、Pleasant Colonyに何度となく苦杯を嘗めさせられていた3歳馬Noble Nashuaが8頭中6番人気を覆して3馬身3/4差で完勝する波乱の中、6馬身半差(4着だったPleasant Colonyとはハナ差)の5着が精一杯だった。

これが最後のレースとなり、4歳時6戦3勝で引退した。通算成績は17戦10勝・GI1勝だった。

種牡馬成績

タータンファームで種牡馬入りした本馬は1株30万ドルのシンジケートを組まれたが、フロリダ州での種牡馬入りという地理的なハンデのせいもあり繁殖牝馬の質には限界があった。

ところが初年度産駒からエクリプス賞最優秀2歳牡馬を受賞したTassoを含む4頭の重賞馬が出たのを皮切りに、2世代目からはいずれもGI複数勝を挙げたCryptoclearanceとTappianoが登場した。1987年にタータンファームが規模を縮小するとケンタッキー州のレーンズエンドファームに移動したが、その直前に産まれたUnbridledがケンタッキーダービーを勝った1990年の9月3日、かねてからの蹄葉炎のため13歳で安楽死措置となった。

産駒数は410頭だったが、その中から1割を超える48頭がステークスウィナーとなっており、後継種牡馬としてCryptoclearanceやUnbridledの系統が広がりを見せている。前者の系統ではCandy Rideやその産駒のTwirling CandyとGun Runner、後者の系統では三冠馬American Pharoah、2016年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬Classic Empire、2017年のケンタッキーダービー馬Always Dreaming辺りが多くの種付け数を確保しており、今後も活躍馬の登場が期待される。

血統表

Mr. Prospector 1970 鹿毛	Raise a Native 1961 栗毛	Native Dancer	Polynesian
			Geisha
		Raise You	Case Ace
			Lady Glory
	Gold Digger 1962 鹿毛	Nashua	Nasrullah
			Segula
		Sequence	Count Fleet
			Miss Dogwood
Killaloe 1970 鹿毛 FNo.16-a	Dr. Fager 1964 鹿毛	Rough'n Tumble	Free for All
			Roused
		Aspidistra	Better Self
			Tilly Rose
	Grand Splendor 1962 鹿毛	Correlation	Free America
			Braydore
		Cequillo	Princequillo
			Boldness
競走馬の4代血統表

クロス:Bull Dog 5×5(6.25%)

主な産駒

1983年産

• Tasso (牡 母 Ecstacism 母父 What a Pleasure)
  • 1985年デルマーフューチュリティ(米GI)、1985年ブリーダーズカップ・ジュヴェナイル(米GI)、1985年ブリーダーズフューチュリティ(米GII)
  • 1985年エクリプス賞最優秀2歳牡馬

1984年産

• Cryptoclearance (牡 母 Naval Orange 母父 Hoist the Flag)
  • 1987年フロリダダービー(米GI)、1987年ペガサスH(米GI)、1989年ドンH(米GI)、1989年ワイドナーH(米GI)、1987年エヴァーグレイズS(米GII)、1988年ホーソーンゴールドカップ(米GII)、1988・89年パターソンH(米GII)
• Tappiano (牝 母 Taminette 母父 In Reality)
  • 1986年スピナウェイS(米GI)、1986年メイトロンS(米GI)、1986年デモワゼルS(米GI)、1988年シャーリージョーンズH(米GIII)、1988年サラブレッドクラブオブアメリカS(米GIII)、1988年ガーデンステートパークブリーダーズカップH(米GIII)、1988年ジェニュインリスクS(米GIII)、1989年バーバラ・フリッチーH(米GIII)

1985年産

• Aptostar (牝 母 Stark Drama 母父 Graustark)
  • 1988年エイコーンS(米GI)、1988年ベッドオローゼスH(米GII)、1989年ヴェイグランシーH(米GIII)

1986年産

• Quiet American (牡 母 Demure 母父 Dr. Fager)
  • 1990年NYRAマイルH(米GI)、1990年サンディエゴH(米GIII)
• *サムロマンス (牝 母 Zippy Do 母父 Hilarious)
  • 1988年メイトロンS(米GI)、1988年フリゼットS(米GI)、1989年ポストデブS(米GIII)

1987年産

• Defensive Play (牡 母 Safe Play 母父 Sham)
  • 1990年マンノウォーS(米GI)、1991年チャールズ・H.ストラブS(米GI)、1992年エクセルシオールH(米GII)、1990年サンダウンクラシックトライアルS(英GIII)、1990年ローズオブランカスターS(米GIII)
• Grand Canyon (牡 母 Champagne Ginny 母父 L'Enjoleur)
  • 1989年ノーフォークS(米GI)、1989年ハリウッドフューチュリティ(米GI)、1989年ケンタッキージョッキークラブS(米GIII)
• Rubiano (牡 母 Ruby Slippers 母父 Nijinsky II)
  • 1991年NYRAマイルH(米GI)、1992年カーターH(米GI)、1992年ヴォスバーグS(米GI)、1992年トムフールS(米GII)、1992年フォアゴーH(米GII)、1991・92年ウェストチェスターH(米GIII)
  • 1992年エクリプス賞最優秀スプリンター
• Unbridled (牡 母 Gana Facil 母父 Le Fabuleux)
  • 1990年フロリダダービー(米GI)、1990年ケンタッキーダービー(米GI)、1990年ブリーダーズカップ・クラシック(米GI)
  • 1990年エクリプス賞最優秀3歳牡馬

1988年産

• Cahill Road (牡 母 Gana Facil 母父 Le Fabuleux)
  • 1991年ウッドメモリアル招待S(米GI)
• Serape (牝 母 Mochila 母父 In Reality)
  • 1992年バレリーナS(米GI)
  • *ホークビル(2016年エクリプスS、2018年ドバイシーマクラシック)、Free Drop Billy(2017年ブリーダーズフューチュリティ)の祖母

1989年産

• *エーピージェット (牡 母 Taminette 母父 In Reality)
  • 1992年京成杯(GIII)
• Faaz (牡 母 Charmie Carmie 母父 Lyphard)
  • 1993年インデペンデンシア賞(秘GI)、1993年モンテリーコ競馬場賞(秘GI)、1994年ペルージョッキークラブ賞(秘GI)、1993年エルネスト・アユロ・パルド賞(秘GII)、1993年コメルシオ賞(秘GIII)、1994年サントリン賞(秘GIII)

関連動画

子孫たちの活躍

関連項目

• 競馬
• 競走馬の一覧
• 1980年クラシック世代

Fappiano 1977
｜Cryptoclearance 1984
｜｜Ride the Rails 1991
｜｜｜Candy Ride 1999
｜｜｜｜Gun Runner 2013
｜｜｜｜｜Taiba 2019
｜｜｜｜｜Sierra Leone 2021
｜｜｜｜*マスタリー 2014
｜｜Victory Gallop 1995
｜Quiet American 1986
｜｜Real Quiet 1995
｜Unbridled 1987
｜｜Unbridled's Song 1993
｜｜｜First Defence 2004
｜｜｜｜*シスキン 2017
｜｜｜｜｜テリオスララ 2022
｜｜｜*ラヴェリータ 2006
｜｜｜*ウィルテイクチャージ 2010
｜｜｜Arrogate 2013
｜｜*エンパイアメーカー 2000
｜｜｜*バトルプラン 2005
｜｜｜｜ユメノホノオ 2020
｜｜｜Pioneerof the Nile 2006
｜｜｜｜American Pharoah 2012
｜｜｜｜｜*カフェファラオ 2017
｜｜｜｜｜ダノンファラオ 2017
｜｜｜｜｜*フォーウィールドライブ 2017
｜｜｜｜｜｜ヤマニンチェルキ 2022
｜｜｜｜｜*ヴァンゴッホ 2018
｜｜｜｜｜*リフレイム 2018
｜｜｜｜｜アメリカンビキニ 2022
｜｜｜｜｜*ルクソールカフェ 2022
｜｜｜Royal Delta 2008