ブランディスとは (ブランディスとは) [単語記事]

ドイツ東部、ザクセン州の町。
ドイツなどの姓。
日本の競走馬。本項で記述。

ブランディス（Blandices）とは、1997年生まれの日本の競走馬。鹿毛の騸馬。

サンデーレーシング名義での初の中央GⅠ 馬であり、2024年現在同クラブ唯一の障害 GⅠ 馬。

主な勝ち鞍
 2004年：中山大障害（J-GⅠ）、中山グランドジャンプ（J-GⅠ）

概要

父サクラバクシンオー、母メゾンブランシュ、母父 Allegedという血統。
父は言わずと知れた日本競馬史上最強スプリンター。種牡馬としても仕上がりの早い短距離馬を出す種牡馬として大成功を収めた。「4000mとかある障害競走でバクシンオー産駒が走れるの？」と思う人もいるかもしれないが、障害競走は障害と障害の間の短い距離を平地よりゆっくり走るのを繰り返すため、平地でのスタミナよりも操縦性や飛越の上手さの方が重要であり、障害の活躍馬は平地では短い距離を走っていた馬も多い。アップトゥデイトとか。まあ後述の通り、ブランディスはバクシンオー産駒としては距離適性がかなり長い方だったが。
母は持込馬で6歳まで走り36戦5勝。1992年のクイーンSで3着、当時は牝馬三冠の最終戦だったエリザベス女王杯に出走（14着）の実績がある。ブランディスは第2仔。
母父アレッジドは1977年・78年の凱旋門賞を連覇した名馬。日本で走った産駒は少なく、メゾンブランシュが稼ぎ頭になる。母父としてはシンコウキング、ヒシナタリーなど。

姪（半妹ブランシェリーの仔）にマーメイドS勝ち馬シャトーブランシュがいる。……とくれば令和の競馬ファンならピンと来る人も多いだろう。そう、ブランディスはあのイクイノックスの大伯父にあたる（イクイノックスの3代母がメゾンブランシュ）。そういえばイクイノックスも父キタサンブラックが母父サクラバクシンオーだし、この牝系はバクシンオーの血と相性がいいのだろうか？

1997年 3月20日、ノーザンファームで誕生。オーナーはおなじみ、一口馬主クラブのサンデーレーシング。ただし1999年のデビュー時は旧名の「日本ダイナースクラブ」で、サンデーレーシング名義に変わったのは2000年の秋からである。1口60万円×40口（＝2400万円）で募集された。
馬体重は現役期間を通して440kg前後で、わりと小柄な馬であった。

サンデーサラブレッドクラブのページによると、馬名の由来は「フランス語で「誘惑、魅惑」の意。母の名前と音を似せて。競馬ファンを魅了する存在となれ。」とのこと。

※本馬の現役期間は2001年の馬齢表記変更を挟むが、本記事では現表記（満年齢）に統一する。

魅惑の障害馬

2歳～5歳夏：平地競走時代

美浦・藤原辰雄厩舎に入厩したブランディスは、1999年 7月18日、函館・芝1200mの新馬戦でデビュー（8着）。1800mに距離延長した3戦目の札幌の未勝利戦で勝ち上がり、いちょうステークス（OP）に挑んだがあえなく最下位8着。

明けて3歳、平場の500万下を2戦連続2着とし、弥生賞（GⅡ）で重賞初挑戦したが見せ場なく9着。平地ではこれが最初で最後の重賞挑戦であった。

その後は自己条件の500万下に戻ったが2着→2着→6着と勝ちきれず、ダートに切り替えて3歳12月の2戦目で突破。だが900万下で頭打ちになってしまい、4歳夏に降級。降級後も500万下を再び突破するのに6戦を要し、5歳時は1000万下で5戦したが馬券に絡めず、8月のレースを最後に障害競走に転向することになった。

ちなみに4歳12月に挙げた3勝目はダート2400m。これは中央の平地競走におけるサクラバクシンオー産駒の勝利の最長距離記録だそうである。

5歳冬～6歳：障害転向

障害転向に際して去勢されて騸馬となったブランディスは、12月の中山 2880mの障害未勝利戦にて大江原隆騎手を鞍上に障害デビューし4着。以降、大江原騎手が主戦となる。明けて6歳、年明けすぐの同条件の未勝利戦にて断然人気に応えて障害初勝利を挙げる。

続く春麗ジャンプステークス（OP）では、この後中山グランドジャンプを勝つビッグテーストと半馬身差の2着に好走。陣営はこの時点で中山グランドジャンプへの挑戦も考えたが、まだ成長途上と判断し、中山大障害へと照準を合わせた。経験を積ませるべく中山の障害オープンに向かうと、夏休みを挟んで見事に3連勝。一躍年末の中山大障害へ向けた注目株となる。

これで11月の東京・秋陽ジャンプステークス（OP）では断然の1番人気に支持されたが、後の中山大障害勝ち馬メルシータカオーの3着。まあ本番はその名の通り中山だし、大江原騎手も「改めて中山で巻き返します」とコメント。年末の中山大障害へと意気込んだ。

……のだが、中山大障害当日の12月27日、中山競馬場の芝コースは雪に埋もれてしまっていた。この日の中山は芝のレースが全てダート変更。そして中山大障害は開催中止。2週間後の1月10日に延期となってしまったのであった。

7歳：いざ障害王へ

そんなわけで年が明け1月10日、延期となった中山大障害（J-GⅠ）。2週間の延期で各馬とも調整過程が懸念される中、1番人気は昨年の中山GJ 覇者ビッグテースト、2番人気は障害重賞3連勝中のウインマーベラス。ブランディスは障害重賞初挑戦ながら、中山巧者ぶりも評価されてか、7.3倍の3番人気に支持された。
レース本番、好スタートを切ったブランディス。大江原騎手は番手でもいいと思ったが、飛越の上手さで追い越して先頭に立つことになったので、そのままハナを切ってレースを引っぱる形となった。道中は折り合いを重視しながらも安定した飛越で次々と障害をクリアしていき、終盤に後続を突き放すと、後方から追い上げてきたウインマーベラスを寄せ付けず、2馬身半差で逃げ切り勝ち。

大江原騎手は障害競走通算100勝目を中山大障害初勝利で飾り、兄・大江原哲との中山大障害兄弟制覇を達成。サンデーレーシングは「日本ダイナースクラブ」時代にレッツゴーターキンで1992年の天皇賞(秋)を勝っているが、2000年に「サンデーレーシング」名義となってからではこれが中央GⅠ初制覇となった。令和現在のイメージからすると意外かもしれないが、あの赤バッテンの勝負服が中央GⅠを荒らし回り始めるのはこの後、ドリームジャーニーが出てきたあたりからのことである。

障害の王座に就いたブランディスは、続いて4月の中山グランドジャンプ（J-GⅠ）へと直行。一昨年の中山大障害覇者で、前年の中山GJ2着のギルデッドエージと人気を分け合い、2.9倍の2番人気に支持された。
今度はハナには行かず、7番人気メルシータカオーと14番人気メジロオーモンドが先導するのを3番手で追走。レース終盤に入ってメルシータカオーが後ろを突き放すと、ブランディスはメジロオーモンドをかわして追いかけプレッシャーをかけにいく。4コーナーで持ったままメルシータカオーを捕まえ直線入口で先頭に抜け出すと、あとは悠々と突き放して5馬身差で圧勝。
完璧なレースで1999年の障害グレード制導入・中山グランドジャンプ創設以来史上初となる、中山大障害・中山GJ両J-GⅠ制覇を達成。勝ちタイム4:47.0は堂々のレコードタイム。このレコードは実に11年後、2015年にアップトゥデイトに更新されるまで残ることになった。

障害の統一王者となったブランディス。大江原騎手は残る年末の中山大障害で、変則日程による年間J-GI3連覇の偉業達成を藤原師に約束した。

だが、この後右前脚繋靱帯炎を発症。復帰には時間を要することから、協議の結果、この年の中山大障害を翌日に控えた12月24日に現役引退が発表された。中山大障害と中山GJでの強いレースぶりを見れば、アクシデントがなければ、あと何年かは絶対王者として君臨していたかもしれない。

引退後

引退後はノーザンホースパークで乗馬となり、馬術競技馬として馬術大会にも出場した。

その後、茨城県のクレイン竜ヶ崎に移動。net keiba.comの本馬の掲示板では2021年まで同クラブで元気にしていたようだが、2022年に亡くなったという報告が為されている。公式のリリースや報道はないが……。

馬主のサンデーレーシングはその後、日本最強の一口馬主クラブとなり、2024年に史上初となる中央GⅠ 完全制覇を達成。その中にあって、障害J-GⅠ 馬はこのブランディスただ1頭である。平地の大レースに君臨し続ける黒地に赤バッテンの勝負服の輝かしい歴史、その最初の1ページを刻んだのが障害競走のブランディスであったという事実は、今後も決して消えることはない。

血統表

サクラバクシンオー 1989 鹿毛	サクラユタカオー 1982 栗毛	*テスコボーイ	Princely Gift
			File
		アンジェリカ	*ネヴァービート
			スターハイネス
	サクラハゴロモ 1984 鹿毛	*ノーザンテースト	Northern Dancer
			Lady Victoria
		*クリアアンバー	Ambiopoise
			One Clear Call
メゾンブランシュ 1989 鹿毛 FNo.16-b	Alleged 1974 鹿毛	Hoi st the Flag	Tom Rolfe
			Wavy Navy
		Princess Pout	Prince John
			Determined Lady
	*ブランシユレイン 1982 芦毛	Nureyev	Northern Dancer
			Special
		Belga	Le Fabuleux
			Belle de Retz