ブルーメンブラット(Blütenblatt)とは、ドイツ語で「花びら」の意味。また、以下を指す。
本項では1の競走馬について記述する。
ブルーメンブラット(Blumenblatt)とは、2003年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牝馬。
アドマイヤベガの代表産駒で、2008年、1歳下の名牝たちとともに「牝馬の時代」の幕開けを告げた馬の1頭だが、世代が違うせいかなんか忘れられがち。
非常によく間違われるが、ブルーメンブラッドではなくブルーメンブラットである。
主な勝ち鞍
2008年:マイルチャンピオンシップ(GⅠ)、府中牝馬ステークス(GⅢ)
父アドマイヤベガ、母*マイワイルドフラワー、母父Topsiderという血統。
父は1999年の日本ダービー馬。テイエムオペラオー、ナリタトップロードと三強を形成したが菊花賞後に故障で引退、種牡馬としても初年度産駒がデビューし始めた直後に早世してしまった。4世代しか残せなかった産駒のうち、ブルーメンブラットは2年目の産駒である。
母はアメリカ産の輸入繁殖牝馬で、アイルランドとアメリカで15戦2勝。
母父トップサイダーは主にアメリカで走り18戦8勝、競走馬としては目立った成績は残していないが、良血を買われて種牡馬入りし、6頭のGⅠ馬を輩出した。
2003年2月20日、ノーザンファームで誕生。オーナーは一口馬主クラブのキャロットファーム。
今でこそ数多のGⅠ馬を保有する名門クラブとなったキャロットファームだが、ブルーメンブラットがデビューした頃は、シーザリオが所有馬GⅠ初勝利を挙げ、続いてハットトリックがマイルCSを勝ち、ノーザンファームとの提携が大きな実を結び始めた、そんな頃である。彼女も募集価格は4.5万円×400口(=1800万円)と決して高額ではなかった。
黒鹿毛の美形で、石坂厩舎では担当厩務員から「栗東のリア・ディゾン」と呼ばれていたとか。
栗東の安藤正敏厩舎に入厩し、2006年1月15日の牝馬限定の新馬戦(京都・芝1600m)で小牧太を鞍上にデビュー。2番人気に支持され、後方から断然の上がり最速で追い込んだが13番人気マヤラブハートに逃げ切りを許し2着。
中1週で京都ダート1800mの未勝利戦(鞍上は安藤勝己)を逃げて4馬身差で圧勝し勝ち抜けると、中2週で京都ダート1400mの500万下条件戦に出走したが、最軽量51kgのツルミトゥインクルにアタマ差差しきられ2着。鞍上はこのレース以降しばらく安藤厩舎所属の川島信二が主戦となる。
続いて3月、芝に戻ってフラワーカップ(GⅢ)に挑戦。単勝23.1倍の8番人気だったが、中団で進めて直線抜け出しを図り、同じアドマイヤベガ産駒で後に桜花賞を勝つキストゥヘヴンにはちぎられたものの、逃げ粘るフサイチパンドラに半馬身差まで迫る3着に健闘。しかし収得賞金を加算できなかったので桜花賞は出られなかった。
4月の忘れな草賞(OP)をまた2着のあと、5月の矢車賞(500万下)を6馬身差で圧勝。中1週で優駿牝馬(GⅠ)に乗りこみ、後方から上がり2位タイで追い込んだものの見せ場を作るには至らず9着。
少し休んで夏、8月はクイーンステークス(GⅢ)に参戦したが見せ場なく6着。自己条件に戻って9月の大倉山特別(1000万下)を逃げて楽勝し、秋華賞(GⅠ)に乗りこんだが直線伸びず8着。
自己条件に戻り、1600万下では1番人気に支持されながら3着→2着→4着と勝ちきれないレースが続いたあと、4歳となって2戦目の斑鳩ステークスを勝ってようやくオープン入り。
ヴィクトリアマイルを目指し、阪神牝馬S(GⅡ)に挑んだが、直線の叩き合いで最後は置いていかれ5着。
そして本番のヴィクトリアマイル(GⅠ)は、この5月末で定年となる安藤正敏調教師にとって最後のGⅠ。果敢に2番手で先行したが、直線で粘りきれず8着に敗れた。
とまあ、この頃は重賞にはちょくちょく出てくるものの、勝ち負けには足りないというラインの、ごく平凡なオープン馬であった。
安藤師の定年に伴い、石坂正厩舎に転厩となったブルーメンブラット。降級となったため、転厩初戦は7月の1600万下条件戦・ストークステークスの予定だったが、左下眼瞼部裂創で出走取消となる。
10月まで休み、白秋ステークス(1600万下)で吉田豊を鞍上に2馬身半差の快勝でオープンに復帰。続くオーロカップ(OP)を後藤浩輝騎乗で1番人気に応えて馬群を突き抜けて快勝、連勝を飾る。
年末は阪神カップ(GⅡ)にクリストフ・ルメールを迎えて乗りこみ、最後方から大外を追い込んだものの両サイドの馬に挟まれて不利を受け、一緒に追い込んだスズカフェニックスを捕らえきれず3着。とはいえ不利がありながら3着まで猛然と突っ込んだ内容は負けてなお強しと言えるもので、本格化の兆しを見せたレースであった。
5歳となった2008年もヴィクトリアマイルを目標に、初戦は2月の京都牝馬ステークス(GⅢ)。鞍上はルメール。上がり馬として単勝2.6倍の1番人気に支持されたが、大外枠が祟って上手く脚を溜められず直線伸びあぐねて4着。
続いて4月の阪神牝馬ステークス(GⅡ)。鞍上は後藤浩輝。人気が割れる中で再び単勝3.4倍の1番人気に支持され、中団から断然の上がり最速で猛然と追い込んだが、逃げたエイジアンウインズをクビ差捕らえきれず2着惜敗。
そして本番のヴィクトリアマイル(JpnⅠ)。鞍上は引き続き後藤浩輝。このレース、断然の1番人気は前年のダービー馬ウオッカ(単勝2.1倍)で、ダイワスカーレットもいないし牝馬相手に府中マイルで負けるはずがないと思われていた。ブルーメンブラットは8.8倍の4番人気。前走で負けたエイジアンウインズが13.4倍の5番人気だったので、前走はスローペースでまんまと逃げ切ったエイジアンウインズより、ブルーメンブラットの豪脚追い込みの方が評価が高かったということが窺える。
レースは中団やや前目の内で進め、直線残り300mで前2頭の間を割って抜け出す。そのまま押し切ろうとしたが、そこへ襲いかかってきたのがエイジアンウインズ! さらに大外からウオッカが飛んできて、最後は3頭での叩き合いの末エイジアンウインズが3/4馬身差で押し切り、ブルーメンブラットはウオッカにハナ差かわされて惜しくも3着。
重賞を勝てる力は見せながら、あと一歩勝ちきれないまま、重賞未勝利で5歳の秋を迎えたブルーメンブラット。秋初戦は10月19日の府中牝馬ステークス(GⅢ)。後藤浩輝は同日の秋華賞でソーマジックに騎乗するため京都に行っており、秋華賞で騎乗馬がなく東京に回っていた吉田豊が白秋S以来の騎乗となった。ちなみにその白秋Sのときも同日の菊花賞に騎乗馬がなかったためブルーメンブラットに乗ることになったのだという。
先行策から直線で早めに先頭に立ったのは同期の二冠牝馬、1番人気カワカミプリンセス。直線ではまだ馬群の中にいた4番人気のブルーメンブラットは、残り200mで力強く抜け出すと、粘るカワカミプリンセスを半馬身差し切ってゴール板に飛び込み、ようやくの重賞初制覇を飾った。
その後はエリザベス女王杯に向かうプランもあったが、2200mは長いだろうと、距離適性を鑑みて敢えて牡馬相手のマイルチャンピオンシップ(GⅠ)に向かったブルーメンブラット。鞍上は引き続き吉田豊で、単勝10.8倍の4番人気だった。
中団後方で脚を溜めたブルーメンブラットは、直線に入って敢えて最内に突っ込んだ。残り200m手前で前に僅かに隙間が空くと見るや猛然と加速。大外からは1番人気スーパーホーネットがまとめて全馬をかわして突き抜けようとしており、ラジオNIKKEIの中野雷太アナも明らかにスーパーホーネットが勝つだろうという流れで実況していたが、吉田騎手は「あの馬をかわせば勝てる」とスーパーホーネットに完璧に狙いを定めていた。
1番外からスーパーホーネット! スーパーホーネットが一気に各馬を呑みこむ!
そして後方からは、カンパニーも追い込んでくるが、
内からブルーメンブラットも追い上げている!
スーパーホーネット、ブルーメンブラット、ブルーメンブラットゴールイン!
スーパーホーネット2着、ファイングレインが3着でした!
なんとなんと、内から鮮やかに強襲7番のブルーメンブラット!
この距離にこだわったブルーメンブラット、内から鮮やかに突き抜けました!
実のところ映像を見ればよくわかるが、中野アナが「ブルーメンブラットも追い上げている!」と言ったときには既にブルーメンブラットはスーパーホーネットをかわして先頭に立っていた。そのまま押し切り1着でゴール。狭いインを強襲して抜け出す、彼女の勝負根性を信じた吉田騎手の会心の騎乗であった。
吉田豊騎手は2004年阪神JFのショウナンパントル以来4年ぶりのGⅠ勝利。牝馬のマイルCS制覇は1994年のノースフライト以来14年ぶりだった。
ブルーメンブラットはクラブ馬なので6歳春で自動的に引退となることもあり、このマイルCS制覇を花道に引退、繁殖入りとなった。通算24戦8勝。最終的な獲得賞金は3億5000万近く稼ぎ、引退時点ではキャロットファームの所有馬トップの数字であった。
この年の秋古馬混合芝GⅠはスプリンターズステークスをスリープレスナイトが勝ち、天皇賞(秋)はウオッカとダイワスカーレットの伝説の大接戦ドゴーン!、そして有馬記念ではダイワスカーレットが37年ぶりに夢の扉を開いた。スクリーンヒーローが勝ったジャパンカップ以外の4レースを牝馬が制するという、まさにこの後の「牝馬の時代」の幕開けを高らかに告げる結果となったのだが、ブルーメンブラットも紛れもなくその先陣を切った1頭だった。重賞勝ちが引退間際の2戦だけ、しかもウオッカ・ダイワスカーレットとは世代が違い対戦機会もほとんど無かったせいで、なんか地味というか忘れられがちだけど……。
なお、吉田豊騎手はこの後、地方JpnⅠは2010年のマイルCS南部杯をオーロマイスターで勝ったものの、国際GⅠ制覇は実に14年後の2022年、パンサラッサのドバイターフまで遠ざかることとなる。
パンサラッサのドバイターフ勝利で、「あれ、吉田豊の前のGⅠって……ああ、ブルーメンブラットか!」とブルーメンブラットのことを思い出したという人も多かったのではないだろうか。
引退後は故郷のノーザンファームで繁殖入り。2021年産までの産駒10頭のうち9頭が中央で勝ち上がるという安定した成績を残している。ただ産駒は全体的に気性があまりに前向きすぎて、折り合い不安を抱える馬が多い。
産駒の中では2019年産のフォラブリューテ(父エピファネイア)が2022年の紅梅S(L)を勝って母の出られなかった桜花賞に出走を果たしたほか(14着)、2021年産のシュトラウス(父モーリス)が2023年の東京スポーツ杯2歳S(GII)を勝って産駒の重賞初勝利を挙げた。そして同年の朝日杯FSで出遅れ大暴走をかましてしまった。今後に期待したいところである。
アドマイヤベガ 1996 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
ベガ 1990 鹿毛 |
*トニービン | *カンパラ | |
Severn Bridge | |||
*アンティックヴァリュー | Northern Dancer | ||
Moonscape | |||
*マイワイルドフラワー 1986 鹿毛 FNo.4-m |
Topsider 1974 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Drumtop | Round Table | ||
Zonah | |||
Wildwook 1965 鹿毛 |
Sir Gaylord | Turn-to | |
Somethingroyal | |||
Blue Canoe | Jet Pilot | ||
Portage |
クロス:Northern Dancer 4×3(18.75%)、Turn-to 5×4(9.38%)、Princequillo 5×5(6.25%)、Almahmoud 5×5(6.25%)
掲示板
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最終更新:2024/11/08(金) 23:00
最終更新:2024/11/08(金) 23:00
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