スクリーンヒーローとは、2004年生まれの日本の競走馬・種牡馬である。
主な勝ち鞍
2008年:ジャパンカップ(GI)、アルゼンチン共和国杯(GII)
父はグランプリ3連覇の「怪物」*グラスワンダー、母ランニングヒロイン、母父*サンデーサイレンス。
母母は重賞戦線で牡馬と互角以上に渡り合い、繁殖牝馬としても重賞ホースを複数世に送り出した女傑ダイナアクトレスという良血である。
2004年4月18日、名門・社台ファームにて誕生。奇しくもこの日、同牧場出身のダイワメジャーが皐月賞を勝ったことからスタッフに期待されていたという同馬。祖母ダイナアクトレスやギャロップダイナを管理し、引退が間近に迫った矢野進厩舎に入厩する。
2歳11月にデビューし、年明けの3戦目で初勝利。しばらくはダートを使われもう1勝を挙げるが、トライアルで敗れ春クラシックは挑戦権を得られずに終わる。しかし、もう1戦を挟んで臨んだラジオNIKKEI賞で14番人気ながら2着に激走。古馬に挑んだ新潟記念は惨敗するが、セントライト記念で再びの14番人気に反発するように3着し、菊花賞の出走権を得る。しかし直後に左前脚の剥離骨折が判明。菊花賞には騙し騙しながら出走できる程度で、矢野師の最後のシーズンだっただけにスタッフらは出走を勧めたが、矢野師は「この馬は将来必ず大成するから、今無理をさせたくない」と回避を決断。そのまま休養に入る。
翌4歳。矢野師の定年に伴い、騎手から調教師に転向して開業したばかりの鹿戸雄一厩舎に転厩。
その後もしばらく休み、結局夏の札幌で復帰。支笏湖特別(1000万下)で久々の勝利を挙げると、格上挑戦のOP特別も2着に健闘。東京に戻り、自己条件(1600万下)では僅差2着に敗れるが格上挑戦のアルゼンチン共和国杯では前目から直線で大逃げのテイエムプリキュアを強烈な末脚で捉える快走で重賞初制覇。秋の大舞台へと駒を進める。
この年のジャパンカップは前走の天皇賞(秋)の死闘を制したウオッカ、当年の変則二冠馬ディープスカイという府中得意の2頭が人気を二分しており、他にもメイショウサムソンはじめ実績馬が揃っていた。スクリーンヒーローは素質開花の兆しを見せてはいたものの、前走のアルゼンチン共和国杯が53kgの軽斤量で勝利した点が嫌われたためか9番人気。ぶっちゃけ大して期待されていなかった。
ところが本番。レースはスローに落ち着き、ウオッカは折り合いがつかず四苦八苦、後続各馬はウオッカを警戒してかそれほど前をつつかない。そんな中スクリーンヒーローは、ウオッカを見るように好位の外でピタリと折り合う。直線、そのまま馬場の真ん中を突き先頭に躍り出る。内では先に抜けたマツリダゴッホと盛り返したウオッカが競り合っていたが勢いが足りない。外からはディープスカイが迫るが届かない。結局ディープスカイを半馬身封じ込め、スクリーンヒーローは一気に世界戦を制したのであった。
単勝4100円はあのカツラギエースを超えジャパンカップ史上最高配当。鹿戸師も開業初年ながらGI勝利という大金星をあげることになり、まさしくどんでん返しの大波乱を起こして見せた。
ジャパンカップ後スクリーンヒーローは勝ち星を挙げられず、翌2009年のジャパンカップの後、屈腱炎が判明し引退した。しかしその年の天皇賞(秋)では再びウオッカを退けてカンパニーの2着に善戦するなど、そのパフォーマンスの高さが衰えていたというわけではない。なお、07年クラシック世代の牡馬でウオッカに二度先着したのはスクリーンヒーローのみである。馬柱は決して綺麗なものとは言えず、GI勝利も一見番狂わせと思われるジャパンカップ1勝のみであったが、このときの激走によりレーティングは122(L区分)を記録し、名だたる名馬に並ぶ評価を得ている。
ウオッカとダイワスカーレットという同期の傑出した二頭に軒並み苦しめられていたこの世代の牡馬の中で、意地を見せ一矢報いてみせた数少ない馬ではなかろうか。
乗った騎手がみな「全く引っ掛からなかった」というほど賢く従順な馬であった。父グラスワンダーも気性には何の不安も持たない馬だったという。また、4歳時の活躍ぶりに、ダイナアクトレスの主戦騎手の一人であった岡部幸雄は「(古馬になってから活躍した)ダイナアクトレスの成長力が受け継がれている」と言ったらしい。どうやら彼は両親の血統からいいところをもらったようである。
グラスワンダーの勝ち頭として2010年からレックススタッドで種牡馬入り。
母父に国内で血が広まり切った名種牡馬サンデーサイレンスを持つこともありやや相手は選ぶ血統だったが、良血と安価な種付け料が気に入られ初年度からそれなりの数の牝馬を集める(お世辞にも肌馬の質はいいとは言えなかったが)。その後種付け頭数は減少したが、初年度産駒から2014年菊花賞3着のゴールドアクターを輩出し人気が急上昇。翌年の2世代目から2015年シンザン記念をグァンチャーレ、2015毎日杯をミュゼエイリアンを制し2頭の重賞馬を送り出す。これを受け初年度から30万円に据え置かれていた種付け料は2014年に50万円、2015年には100万円に上昇したが、それでも2015年度は190頭の牝馬を集めBOOKFULLとなった。
勢いはこれにとどまらず、安田記念で初年度産駒のモーリスが完勝。一気にGⅠ馬の父になってしまった。モーリスは秋のマイルチャンピオンシップも勝つとさらに香港マイルまで制覇し2015年の年度代表馬に、またゴールドアクターは菊花賞後の故障から明けるとこちらも破竹の連勝劇で有馬記念を勝ち、スクリーンヒーローは一気にトップサイアーとなった。2016年の種付け料は500万円に急騰。それでも早々にBOOKFULLという大人気種牡馬に出世した[1]。
産駒は自身と違い、マイル~中距離で活躍する馬が多い。ゴールドアクターのように配合次第では中長距離を走る馬もいるのだが、スピードの勝ったダイナアクトレスやSSの影響だろうか。芝での活躍馬が多いが、産駒の中にはダート馬も相当数おり、準OPを勝ったプロトコル、レパードS2着のクライスマイルなどを輩出している。肌馬の血統も選ばない馬で、活躍産駒の母父を眺めると、Nureyevや*フレンチデピュティといったメジャーどころから*エルコンドルパサーやナリタブライアンといったレアもの、*カーネギーや*タイキブリザードのような二流種牡馬、果ては*キョウワアリシバとかAlwasmiとかいうよくわからない馬名すら並ぶ。中小牧場の牝馬が多いから自然とそういう風になるのだが、そんな中で次々と活躍馬を送り出すスクリーンヒーローのポテンシャルの高さがお分かりいただけるだろう。
その他グラスワンダーの有力牡馬ではセイウンワンダーは種牡馬入り出来ず、アーネストリーも産駒成績は不振を極めており、事実上唯一の後継と言える中で大活躍を果たし、その系譜を後世にしっかりと繋ぎとめたスクリーンヒーローであったが、キャリア晩年には受胎率の低下が顕著に見られるようになった。
そのためプライベート種牡馬に転向した末に、2023年10月に種牡馬を引退。それまで供用されていたレックススタッドを離れて、生まれ故郷の社台ファームで余生を送ることになった。
観客をあっと言わせた競走馬としての第一幕、生産者たちを喜ばせた第二幕と稀代の出世街道を歩んだ名優はついに銀幕を去った。
あとは彼の残した子孫たちがターフやダートを彩り、広がっていく姿を見守っていこう。
余談ながら、騎手の手を全く煩わせなかった現役時代と裏腹に、牧場では牧夫がちょっと油断するとかじったり蹴ろうとしたり、放牧に出せば帰ろうとしなかったり、気の強さが顕著だそうである。この辺の変わり身も、予想を裏切る産駒の活躍を見せるこの馬らしいと言えるかもしれない。
*グラスワンダー 1995 栗毛 |
Silver Hawk 1979 鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason |
Bramalea | |||
Gris Vitesse | Amerigo | ||
Matchche | |||
Ameriflora 1996 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer | |
Pas de Nom | |||
Graceful Touch | His Majesty | ||
Pi Phi Gal | |||
ランニングヒロイン 1993 鹿毛 FNo.1-s(x) |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
ダイナアクトレス 1993 鹿毛 |
*ノーザンテースト | Northern Dancer | |
Lady Victoria | |||
モデルスポート | *モデルフール | ||
*マジックゴディス | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Hail to Reason 4×4(12.50%)、Northern Dancer 4×4(12.50%)
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掲示板
63 ななしのよっしん
2023/10/10(火) 22:09:49 ID: NexdWTPYD5
未だ現役のダイワメジャーとかもそうだけれど、長い種牡馬キャリアの中で最近までちゃんと活躍馬を出し続けてるの偉いよな。
これからの馬生は父ちゃんのグラスワンダーの様にのほほんと過ごして、出来るだけ長生きしてくれることを願うよ。
64 ななしのよっしん
2023/10/14(土) 21:10:16 ID: 64xuoIeAQY
ステイゴールドと共に、日高の希望だったスクリーンヒーローお疲れ様でした
子も孫も活躍しているし、父系として大成功だったね
これからは、のんびり長生きしてください
65 ななしのよっしん
2023/10/28(土) 15:42:40 ID: CGgzi1RD2J
産駒のウイングレイテストがスワンS勝ち!
記事にもあるけど残った子孫たちが堅実に頑張ってくれているのは心温まる光景だ
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最終更新:2024/11/08(金) 19:00
最終更新:2024/11/08(金) 18:00
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