マイクロトランザクション[Microtransaction]とは、オンラインサービス内の仮想製品を少額で購入できるシステム、およびそのビジネスモデル、マネタイズモデルの総称である。略称として「MTX」が用いられることもある。
何だか聞きなれない言葉と思った人は"課金サービスのこと"と言えば伝わるだろうか。
主にクライアントを無償で配信するフリーミアム(フリー・トゥ・プレイ/F2P)形式で運営されたオンラインゲーム内の仮想製品やサービスとして導入されており、特に近年のモバイルゲームでは主要製品のひとつであるとも言えるだろう。コミュニティ間ではモバイルゲームやソーシャルゲーム(SNS専用ゲーム)における話題が何かと多い気もするが、発祥元はPC向けのMMORPGであり、今日では家庭用据え置きゲーム機用のゲームタイトルでも数多く導入されている。
日本国内では、マイクロトランザクションによって運用されたオンラインゲームの製品やサービスを指して、メディアとコミュニティ共に「アイテム課金」と呼ばれ表記されていることもある。これは、日本オンラインゲーム協会(JOGA)のガイドラインに基づいた表記であると考えられる。
このマイクロトランザクション(以下MTX)の記事ではビデオゲームにおける課金サービス全般を扱います。
ゲーム内に登場するアイテム類だけではなく、ゲーム内通貨の購入やルートボックス(ガチャ)、スタミナ・コスト回復制の解消、それら仮想製品と配信サービス全般を含んだ解説、また、特定のプラットフォームや国内向けサービス、国産タイトルに限定せず、そして消費者視点の考察と評価に限定せず、開発運営やフレームワーク、サービスの成り立ちなども含んだより広義的な解説をしていきます。
あのオンラインゲームやスマホゲームによくあるシステムは何と呼ばれるものなのか。あの専門用語は何なのか。何かと特定のプラットフォームだけで解釈されてたり、用語単体で断片的にだったり、俗称やネットスラングから抽象的に捉えられがちなビデオゲームの課金サービスをここで今一度ひとつの文脈上で順を追って読み解いていきましょう。
まずは、どのような仮想製品やサービスがMTXとして提供されているか、代表的な例を大まかに分類して解説する。なお、分類における名称はゲームタイトルや各種ガイドライン文書、コミュニティによって様々でもあり、見出しに使用した名称は便宜上で表記したものである。
プレイヤーキャラクターの衣装やゲーム内アイテムのスキン、エモートやプレイヤーのアバター用アイコンなどを追加するアイテム全般のこと。いわゆる"見た目が変わるだけ"のアイテムである。
この容姿を変更するという機能は試合や競争におけるゲームプレイやゲームバランスには影響することはなく、対戦型ゲームにおいてはむしろ試合中に目立ってしまう一面もある。ゲームにおける優位性ではなく純粋にプレイヤー個人のお好みのオプションとして用意されているサービスで、ある種のMTXが物議を醸し問題視されたときに比較として健全なMTXの例として挙げられるのもこのようなコスメアイテムである。
また、プレイヤーの容姿とは、それ自体がコミュニケーションのひとつでもあり、オンラインゲームはプレイヤー同士のコミュニティやソーシャルメディアとしての側面も持っている。これはそうした構造を活用したサービスのひとつとも言える。
ゲーム内に登場するアイテムや、プレイヤーが選択できるキャラクターのバリエーション、ゲーム内の仮想コンテンツの利用をアンロックする有償オプションである。単に"課金アイテム"と呼ばれる場合はこれらが対象になっていることも多いかもしれない。
主にゲームクライアントを無償で配信するF2Pタイトルで導入されており、MTXであると同時に、プレイ回数や時間に応じて配布されるゲーム内通貨で購入することも出来るように作られていることが一般的である。これはあらゆるオンラインゲームにとって必要不可欠であるアクティブプレイヤー(ネットワーク外部性)の維持を行う構造と、長く繰り返し遊んでくれたプレイヤーへの還元を行うサービスでもある。
より快適なゲームの進行、エンドコンテンツへのより早いアクセスを有償オプションとして販売する形式。こちらもまた基本的にはF2Pタイトルで導入される製品である。逆説的な言い方をすれば、ゲームの進行内容やゲームプレイに制限を設けている設計でもあり、無償の範囲でゲームを楽しむアクティブプレイヤーをより長い間維持するため導入されていると考えられるだろう。
ゲームの内容によって様々な種類があり、経験値やゲーム内通貨、ゲームプレイに応じて配布されるアイテムの獲得効率を上昇させるもの(ブースト、プレミアムパス)、スタミナやコストなどのゲーム内における消費項目の回復を行うもの、ゲームオーバー後の即時コンティニューを行うものといったものが例として挙げられる。
コミュニティ間ではこのようなプレイ時間の購入という設計は、ゲーム内のクレジットを購入するアーケードゲームに例えて解釈されている様子も散見される。
ゲーム内のアイテムがランダムで手に入る抽選サービスやアイテムのこと。英語圏では"箱"に例えて、ルートボックス[Loot box]、ルートクレート[Loot crate]と呼ばれる。
日本国内のゲームサービス内やコミュニティ間では、カプセルトイの販売機に由来して「ガチャ」という呼称が(商標上の理由から若干の表記ゆれもあるが)概ね定着している。JOGAガイドラインでは「ランダム型アイテム提供方式」と表記され、プレスリリース等ではこちらの表記が用いられることもある。
ランダムで提供される有償の景品という構造上、景品表示に関する法律が大きく関わってくることになる。そうした理由のため、国や地域によって、それぞれの国の法律に基づき運用方法は異なってもいる。現在の日本国内運営のオンラインゲームで導入されている"ガチャ"は、各種ガイドラインに基づいて景品内容と提供確率を表示することが一般的である。
消費者同士でゲーム内アイテムを売買できるサービスと決済時の手数料で利益を得るビジネスモデルである。SteamコミュニティマーケットやDiablo3のリアルマネーオークションハウス(RMAH、2014年3月に終了)が該当する。
なお、リアルマネートレード(RMT)と呼ばれる消費者間の売買もあるが、こちらは公式運営外で行われる非正規売買であり、公式に運営されているサービスとは全くの別物である。
主に専用のアイテムの限定販売を行い、その売上げの全てを慈善団体や医療機関に寄付するチャリティー企画としてMTXが運用されることもある。有名な例としては、「Overwatch」の"ピンク マーシー チャリティキャンペーン"、「League of Legends」の"ダークスター チョ=ガス"が挙げられる。
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https://twitter.com/PlayOverwatch/status/1016321200732102656
また、日本国内でも災害発生時にはモバイルゲームタイトルを中心にゲーム内通貨や専用のチャリティーアイテムを通じた募金活動が行われており、数多くのプレイヤーからの義援金が日本赤十字社に贈られている。
PCや据え置きゲーム機用のオンラインゲームでは、基本的にはゲームタイトルごとにクレジットカードやプリペイドカードを使用してプラットフォームやオンラインゲームのサービスを通じて決済を行う。
一方で、過去のモバイルゲームタイトルでは、ゲームの運営元のサービスを通じて専用通貨をまとめて購入して利用する方法(つまりゲーム内で直接現金の決済は行わないこと)が一般的でもあった。これはMTXよりも決済手数料の方が高額になってしまうという仕様上の事情があったためである。
現在は少額決済を行うためのシステム「マイクロペイメント」がモバイル向けの各種プラットフォームに導入されるようになり、この手数料の問題点は解決された。iOS向けのApp Storeでは「App 内課金」、Android向けのGoogle Playでは「アプリ内課金」というフレームワークが開発運営者に提供されている。
基本的にMTXとは、利用規約に同意し購入した時点でサービスを利用、消費したことになるので返金制度は導入されていない。
ただし、ゲームの不具合やサーバー障害等でゲームプレイやサービスの利用に影響があった場合は、返金の代わりに対象のゲーム内の有償アイテムやゲーム内通貨等の配布で保証が行われることが通例である。
この保証はモバイルゲームの「パズル&ドラゴンズ」に登場するアイテム名に由来して「詫び石」とコミュニティ間で呼ばれている。
オンラインゲームにおいてゲーム内のアイテム(仮想製品)を有償販売した最初期の例は、2001年に中韓国向けのサービスとして運営されていたMMORPG「The Legend of Mir 2」で利用するアバターと言われている。
そして、最初に基本無料・アイテム販売形式、つまり今日で言うところのF2PとMTXを導入したゲームは、2003年に始まり2018年現在も運営されているMMORPGの「メイプルストーリー」である。このサービスの運用方法は同ゲームが登場した当時、MMORPGで主流であった"月額料金制度"に対して、ゲームとサービスの利用を無償もしくは少額の有料オプションにすることで、月々の支払いが困難であった学生なども含んだより広いプレイヤーを獲得するために考案されたものであった。
このメイプルストーリーは2004年にはランダムでゲーム内アイテムが入手できる「ガシャポンシステム(現:メイポン)」というサービスを導入しており、これもまた現在で言うルートボックス(ガチャ)の最初期の例である。
モバイル端末向けの国産ゲームタイトルでは、2007年にGREEの同名のソーシャルネットワークサービス(SNS)上で配信された「釣り★スタ」がMTX導入の最初期の例である。2000年代後半以降になると、各種据え置きゲーム機でも専用のオンラインサービスが登場し、F2PタイトルおよびMTXを導入したゲームが数多く配信運営されるようになった。
F2PとMTXの最初の目標とは、成り立ちの項目で触れたように月額料金制のオンラインゲームの支払いが難しく、金銭的な事情で対象のオンラインゲームを遊ぶことができなかった(ゲームをプレイしてもらうまでのハードルが高かった)プレイヤー層の獲得だった。このF2PとMTXというサービスの提供方法は結果として月額料金制のゲームに取って代わることになり、オンラインゲームとその市場における大きな革新として成功を収めたと言えるだろう。
モバイルゲームに限定すればMTXによる収益は買い切り型のゲームアプリの収益を超えているという統計情報もある。マネタイズモデル以外の側面として、利点の一つには違法な海賊版の蔓延を防ぐという役割も持っている。これは中国と韓国でオンラインゲーム市場が大きく成長した理由でもある。
ここでF2PとMTXの形式で運用され、そのサービスの提供方法を活用しているオンラインゲームのひとつの例として「Warframe」を紹介する。
WarframeはDigital Extremesというカナダの小規模な開発スタジオによって製作されたもので、それまで大手タイトルの共同開発や下請けが中心だった同スタジオにとっては会社の存続をかけた最後のゲーム開発でもあった。しかし、開発が始まった当初はオンラインゲームの大手運営元企業から『このゲームの品質を維持することは無理がある、アップデートとコミュニティの運営は不可能だ』『失敗する』とまで言われていた。
大手運営元との契約が困難だったため、スタジオは自身でオンラインゲームの運営とMTXのインフラシステムを設計することを決めた。このとき、スタジオが最も恐れていたことは"間違った基本無料プレイ"を提供してしまうことだった。Warframeも過去には評価の良くないMTX製品を導入してしまった時期もあり、スタジオはコミュニティの反応を受けてすぐに該当する製品を廃止する対応を取った。このコミュニティ上でのプレイヤーとの対応と交流によってゲームへの信用が形成されていったのだ。
その後、今日のWarframeは最も成功したオンラインゲームのひとつとなり、開発スタジオも大きく発展を成し遂げた。これはF2PとMTXの大きな成功例の一つであり、小さな開発スタジオが大手の販売運営企業との困難な契約を持たずに独立系(インディーゲーム)としてゲームを作り上げるために用いられた代表的な例でもある。
F2PとMTXは発売されてから年月が経過したり、パッケージ品の流通等が終了してしまい、かつてのプレイヤー人口が失われてしまったゲームでも導入されている。
対戦専用FPSの「Team Fortress 2」は元々2007年に発売されたゲームで、発売からしばらくの間は大きな人気があったものの、対戦専用の宿命か数年後にはいわゆる"旬が過ぎた"ゲームになってしまってもいた。2011年にF2PとMTXの形式に移行という大きな方向転換が行われ、その結果、2018年現在でもプラットフォームであるSteam上のプレイヤー人口の上位記録を維持し続けている。
このようにしてMTXはオンラインゲームの発展に貢献したり多くのプレイヤーに楽しまれている一方で、否定的な評価が多いもの、物議を醸したもの、Digital Extremesが"間違った基本無料プレイ"として危険視していたMTXの一例が存在していることもまた事実である。以下に個別記事で解説と考察評価がされているものを例として掲載する。
また、MTXの利用方法自体にもトラブルは発生しており、過去には未成年者が商品を繰り返し購入してしまい高額の請求がされてしまった騒動も起きている。日本国内ではモバイルゲームのテレビCMにおいて、無料タイトルであることのみを全面に押したこと、MTXの存在を明記しなかったことが原因であると消費者団体などから指摘を受けていた。現在はMTXの利用に関する諸注意がCM上とゲームの起動画面で明記されるようになっている。
これらは消費者側だけの認識と評価というわけではなく、先に紹介したWarframeの話のようにF2Pタイトルの開発運営を行う側もMTXの乱用の危険性は認識しており、健全なゲーム開発運営を行う企業はMTXの具体的な内容をメディアのインタビューなどで消費者に伝わるよう明言し、コミュニティから指摘のあった製品内容の修正変更を行うといった対応を取っている。
ゲームのデジタル配信プラットフォーム最大手であるSteamでは、ゲームの販売者向けに適切なMTXの導入と運営方法のガイドラインが用意されている。いまこの記事を読んでいるだろう消費者側の立場でもMTXを理解、評価する上で参考になると思うので以下に引用して紹介する。
- ゲーム内のエコノミーシステムを顧客から収益を引き出すための手段としてではなく、製品の質を向上させ、顧客の満足度を高めるために使用する
不自然に作られたゲーム進行の障壁や、価値があいまいな仮想通貨は、顧客に長期にわたる購入を後悔させることになりがちです。もしゲーム内トランザクションは顧客の楽しみを中断することで、お金を求める機会だととらえているならば、顧客はあなたの製品に愛想を尽かすことになるでしょう。顧客のフラストレーションを取り去るためにお金を払わせるのは、長期持続可能なビジネスモデルにはなりえません。また、市場には顧客が時間とお金を費やすのによりよい選択肢があふれていることを忘れてはなりません。
- 顧客が購入することで、他の顧客にとってそのゲームがよくなるシステムを構築する
多くの無料プレイの製品、特にマルチプレイヤー ゲームは、1 人のプレイヤーがお金をかけることで別のプレイヤーが遊びにくくなるというシステムに依存しています。プレイヤーが他のプレイヤーのゲーム体験に悪影響を及ぼす能力を持つシステムの構築を避け、製品やアイテムがゲーム中でプラスの影響を与えることができるようなシステムづくりを目指してください。ここでは、Dev Days のプレゼンテーションで挙げられた、わかりやすい概念をご紹介します。「隣のプレイヤーがアイテムを買ったときに一緒にお祝い」できるゲームというコンセプトです。これは全ジャンルのどのようなスタイルのゲームにも当てはまります。いろいろと試し、そうした製品作りが実現されることを期待しています。
- ユーザー同士がお互いに価値を創り合えるようにする
Steam ワークショップ は顧客が別の顧客のためのコンテンツや価値を作ることを可能にするツールセットです。これを使うことで、ユーザーがモデルやマップ、MOD やそのほかのゲームの価値あるコンポーネントを作ることができます。製品やその目的に応じて、無料あるいは有料の ワークショップを選択でき、いずれのケースも、ユーザーの熱意と創造性が追加コンテンツを製品にもたらし、製品価値を高めてくれます。
コミュニティにおけるMTXの評価は賛美両論でもある。とは言うものの、ニコニコ大百科の記事本文や某百科事典では何だかある方面ばかり言われがちだったり、何か違うものと混同されて解釈されてたりもする。インターネットだし、仕方ないね。
至極当然なことではあるが、どういった内容であれMTXが導入されたオンラインゲームのプレイとサービスの利用、これら全てはプレイヤーの任意であり規約に同意した上で利用するものである。MTXとは何なのかを正しく理解し、どのようにしてどのようなMTXを利用するのかプレイヤー自身がきちんと判断することも、これからのオンラインゲームとMTXを構成する上で大切なことであると考えられるだろう。
掲示板
11 ななしのよっしん
2022/05/13(金) 13:33:02 ID: pr+IpTNElj
ソシャゲの課金は詐欺紛いだ。人を洗脳して金銭感覚を狂わせ大金を使わせる。メーカーは面白いゲームを提供し、ユーザは自分の意志で金を払っていると言うのは詭弁である。ついでに言うとアイドルやvtuberも似たようなものだと思う。
大金を使うのは一部の視野の狭いユーザだけだが、その人らが食い物にされてるのを放っておいていいのだろうか。
12 ななしのよっしん
2022/05/13(金) 13:41:22 ID: OMGLxAboCu
放っておけないなら自ら立ち上がるべきでは?
13 ななしのよっしん
2022/06/12(日) 11:52:28 ID: z3Fsh8a30p
https://
ガチャ料金踏み倒し対策か ガチャ会社が直説に引き落としは
怖いが こっちが振り込みだったら大した情報渡らなくないか?
急上昇ワード改
最終更新:2025/02/18(火) 22:00
最終更新:2025/02/18(火) 22:00
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