屋上探偵とは、大崎知仁による日本の小説作品。2006年2月から同年10月にかけて集英社「JUMP j BOOKS」から刊行された。イラスト担当は遠藤達哉。全2巻。
概要
「BLACK CAT」や「ぬらりひょんの孫」のノベライズ、「銀魂 3年Z組銀八先生」などのジャンプノベライズで知られる大崎知仁による同レーベルでの初オリジナル作品。イラスト担当には当時読切や短編を発表しつつ様々な現場でアシスタントとして活躍していた遠藤達哉が担当。1巻の巻頭にはJUMP j BOOKS恒例の数ページのカラーページを含む漫画が収録されている。
高校の屋上でトラブルシューターとして有名な主人公と新聞部の仕事で彼を取材することになったヒロインの校内での問題を解決する中での交流を描く。
屋上「探偵」と題された作品ではあるものの、主人公はあくまでトラブルシューターとして扱われており、密室や大仰なトリックなど探偵小説などに見る推理要素は少ない。かといって全く無いというわけではなく、キャラクターの掛け合いに合わせてテンポよく進むライトミステリーとしての評価は高い。
2巻発売直後にはジャンプの増刊号「ジャンプ the REVOLUTION! 2006」でイラスト担当の遠藤達哉が作画を担当した読切漫画が掲載。その際には逆に作者の大崎が漫画原作を担当した[1]。遠藤は読切を載せた22年後の現在は「SPY×FAMILY」を大ヒットさせた国民的作家になっているが、今作は他の短編や読切同様、単行本には未収録のままになってしまっている。
あらすじ
屋上探偵、犬村元貞が事件を解決!
成績は全国トップ、そして無類の女好き。屋上のソファーで本ばかり詠んでいる変人、犬村元貞が新聞部新米、月島周子とともに見事な推理で事件を解決!
『銀魂』ノベライズの大崎知仁のオリジナル小説!
登場人物
- 犬村元貞
- 本作の主人公。明斉館高校の3号館屋上で「屋上のトラブルシュータ―」をしている男子生徒。2年C組。
- 校内で起こる大小様々な問題をたちどころに解決するとして校内では有名な存在。
- 相当な自信家でもあり、自分から「頭脳明晰・行動迅速・眉目秀麗」と称するが、トラブルシューターとしての実績からか依頼人を始めとする周囲からもその言葉に異論は出ていない。
- それと同時に相当な女好きで、問題解決の報酬として女子生徒なら自分と複数回デートする「デーツ」を条件にしていて、話題になるたびに周子には毎回突っ込みを入れられているが、眉目秀麗と自称するだけあってか依頼人からは断られることは少ない。
- ステンレス製の栞を愛用し、屋上での読書の時の他、ポケットから取り出してダーツのように投げつけるなど、度々武器としても使っている。
- 全国模試では藪内兄弟が勝てないほどの実力者で、特進クラスに居てもおかしくないほどの成績を誇る。
- ミントのタブレットを愛用しているが、他人が食べると叫んでしまう程辛いらしい。
- 月島周子
- 本作のヒロイン。明斉館高校新聞部に所属する女子生徒。2年F組。
- 「明斉館スポーツ」の売り上げアップの為部長の石岡の指示により犬村の密着取材をすることになる。
- 初対面の時にされたセクハラのせいか犬村の容姿に絆されず、会うたびに喧嘩腰で接する数少ない女子。本人は早く事件を解決する犬村の事を記事にして解放されたいと願っているが、関わる事件が校内新聞に載せられない内容ばかりな為、いつまでも取材する羽目になっている。
- 「土壇場ミント」では彩香に催眠誘導で操られ、ハサミで犬村に襲い掛かることになった。
- 「ミッドサマー・ボディーガード」では女好きな犬村のお目付け役を石岡から仰せつかり、夏休み返上で付き添うことになった。
- 名波かすみ
- 「推理研ファイア」に登場。作中最初の依頼人。一年D組所属の女子生徒。
- 推理研で発生したボヤ騒ぎによって自身が編集を手掛けた同人誌「デコード」を燃やされてしまい、その犯人を突き止めてもらう為屋上を訪れた。
- 以来達成の報酬が犬村とのデートだと聞かされても顔を赤らめながらOKするなど多少気がある描写がある。
- 木戸和希
- 「推理研ファイア」に登場。推理研で発生したボヤ騒ぎの容疑者の1人。燃えた「デコード」にはサイコ・サスペンスの小説を寄稿していた。理屈っぽい性格。
- 加納拓也
- 「推理研ファイア」に登場。推理研で発生したボヤ騒ぎの容疑者の1人。燃えた「デコード」にはハードボイルドの私立探偵小説を寄稿していた。寡黙な性格。
- 高階伸輔
- 「推理研ファイア」に登場。推理研で発生したボヤ騒ぎの容疑者の1人。燃えた「デコード」には本格物の短編小説を寄稿していた。所謂推理オタク。
- 推理研で起きたボヤ騒ぎの真犯人。デコードに出す小説を書く際に昔のデコードのトリックをそのまま使い、「指摘されるだろう」と思って出したもののそのまま通ってしまった為、怖くなってバックナンバーを燃やそうとして起こしたのが理由だった。
- しかし小説そのものの出来に関しては、犬村は「読みやすい」と評価していた。
- 辻原健吾
- 「放課後フィスト」に登場。明斉館高校の不良を束ねる歴代最強の番長。3年C組。
- 入学以来一度も負けたことが無いともっぱらの評判で、本人もいかにもな雰囲気を周りに放っているが、仕掛けてくる相手を全て返り討ちにした結果番長に祭り上げられたもので、本人から仕掛けてくることは殆ど無い。しかし行儀の悪い連れの行動を咎める時など、不良を束ねる立場相応の威圧感を持つ。
- 連れの不良仲間が目出し棒の人物に襲撃された事件を犬村に相談する為、3号館の屋上を訪れた。
- 事件解決の際は犬村から出された「一発殴るだけ」の条件を守り、後に仲間に代わって謝罪した。
- 「ミッドサマー・ボディーガード」では犬村の連絡を受けて誘拐犯を倒す為に力を貸した。
- 飯野敦
- 「放課後フィスト」に登場。陸上部所属の砲丸投げ選手。1年D組。
- 明斉館高校にはスポーツ特待生として入学してきた。180cm近い大柄な体格であるにもかかわらず足も速いなど身体能力が非常に高い。
- 辻原軍団の猿渡にジャージ代をカツアゲされたことで復讐のために闇討ちをし、それを校内で称賛されたがために他のメンバーにも闇討ちを続けて「放課後の通り魔」事件を引き起こした。
- 囮になった犬村からも逃げ切ったが、周子が陸上部の取材に行ったことでジャージ代の支払いが遅れたエピソードが犬村に伝わり犯行が暴かれた。
- 藪内大学
- 「土壇場ミント」に登場。明斉館高校修学旅行の学年実行委員長。2年A組。
- 全国模試上位の実力を持つ天才兄弟の兄。理系。
- 修学旅行を中止するよう脅迫電話が職員室にかかってきたことを知り、弟とともにその解決を犬村に依頼しに来た。
- 将来は官僚か政治家を目指しており、この一件をその予行演習にしようとしている。
- 藪内文学
- 「土壇場ミント」に登場。明斉館高校文化祭実行委員副委員長。2年B組。
- 全国模試上位の実力を持つ天才兄弟の弟。文系。
- 修学旅行を中止するよう脅迫電話が職員室にかかってきたことを知り、兄とともにその解決を犬村に依頼しに来た。
- 兄との息はぴったりで、2人で交互に話す器用さを持つ。
- 千倉彩香
- 明斉館高校のスクールカウンセラー。犬村の事を「屋上探偵」と呼んだ作中初の人物。
- 推理研の小火、放課後の通り魔、そして修学旅行中止の脅迫電話の事件の真犯人。カウンセラー室を訪れ悩みを打ち明けた生徒を催眠誘導で操り、3人を事件へと走らせていた。
- 大学時代は臨床心理学を専攻し、催眠誘導の権威から薫陶を受けたことから自身の中で催眠誘導で人間を操る事に面白さを見出したことを切っ掛けに明斉館高校のカウンセラー室を訪れる生徒に対して「実験」を繰り返すようになった。
- 周子を操り犬村を排除しようとしたものの、ミントのタブレットを口移しで飲ませる犬村の策により周子の催眠を解かれ、最期には降参し学校を去ることになった。
- 赤井美知子
- 明斉館高校新聞部部員。周子の親友。
- 想い人の愛川に告白し振られたことを切っ掛けに周子から彩香へ相談することを勧められ、精神的に弱っている事を付けこまれて催眠誘導にかかり、学校に修学旅行を中止するように脅迫電話を掛けるようになってしまった。
- 周子を踏切に突き飛ばそうとしたことで2人は犯人だと分かり、その様子がおかしかったことで催眠誘導の可能性と真犯人の存在を犬村が気付く切っ掛けとなった。
- 木山奈緒
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。夏休みに学校の開放プールを訪れた女子生徒。1年E組。
- 開放プールに行った後に図書室を訪れた際、水着の入ったバッグを盗まれる被害を受けてしまった。
- 後に予備校で友人も同じ被害に遭っていたことを知り、これ以上被害者を増やさないために犬村に解決を依頼しに来た。
- 名波かすみの友人で、犬村の事は彼女から紹介されている。
- 野呂島竜太
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。図書室で水着泥棒をしていた男子生徒。2年I組。
- お金欲しさに女子生徒の水着をネットで販売することを企み、夏休みの図書室でプール帰りの女子生徒を狙って水着泥棒を繰り返していた。犬村の策で捕まった後は保身のために奈緒たちに自分の事を話さないように頼み、犬村からは条件として手紙を書くように謝罪の手紙を書くように条件を出された。
- 石岡有里
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。ブログ発の女子高生アイドル。2年H組。
- 自分のブログでゲームの感想などを書いていた所スカウトを受け、高校生活の傍らアイドル活動をしている女子生徒。愛称は「ゆってぃん」。新聞部部長の石岡の妹。
- 「ビホワイツ・フレッシュガールグランプリ」で予選1位となり優勝が確実視されている中、2位の福永あきのファンが噂通り危害を加えて来るのではないかと心配した兄の依頼により、夏休みの補習の間犬村と周子に護衛を頼むことになった。報酬のデートに関してはアイドルだからと断り、代わりにゲーム内でのデートで引き受けてもらった[2]。
- 犬村の事は「たんてーくん」、周子の事は「周子てぃん」、辻原の事は「バンチョー先輩」と呼ぶ。
- 「煉獄の覇者」の大ファンで、一番好きなゲームに度々挙げていた。
- 福永あき
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。ミステリアスな雰囲気を持つアイドル。
- 「ビホワイツ・フレッシュガールグランプリ」で有里と人気を2分する人気アイドル。
- ある種神秘的な美しさを持ち、ファンはまるで信者のように振舞うものが多い。結果攻撃的なファンが多くなってしまい、本人の知らないところで他のライバルに攻撃を仕掛けるようになってしまった。
- 事務所の社長がグランプリの審査員に賄賂を渡す場面が有里のブログの写真に写りこんでしまい、その証拠を犬村達から取り返すことが出来なかった為、事務所の指示でグランプリを辞退することになった。その為結局最後まで本人が本編に登場することは無かった。
- 峯田功治
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。明斉館高校の生物学教師。
- ぶつぶつと喋る陰気な男。有里の補修を受け持つ教師の1人。
- 福永あきのファンであり、補修の最終日の実力テストの時有里に毒蜘蛛を使った嫌がらせを仕掛けようとしたが、犬村に見破られた。
- 犬村達に福永あきの為犯行に及んだことを淡々と述べ開き直ったが、犬村に毒蜘蛛を自身のシャツの中に返されパニックになっていた。
- 福永あきファンクラブ会員番号212番。
- 酒井
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。明斉館高校の英語教師。女性。
- 英語をしっかり覚えるには自らの力で喋ってこそという考えを持ち毎回最初に1分間英語のみでスピーチする事を授業内容に取り入れている。
- 津川幸太郎
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。4号館の屋上で絵を描いている男子生徒。2年G組。
- 幼い頃から絵を描いていて、6月から4号館の屋上で小さな個展を開き、来た生徒にイラストを渡していた。絵に添えていたメールアドレスに脅迫メールが届くようになり、有里のボディーガードをしていた犬村の元を訪れた。
- 絵画というよりはイラスト調のスタイルを好む。
- 杉下誠一郎
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。短髪で体格のいい男子生徒。2年E組。
- 福永あきの為に有里に嫌がらせをするため、幸太郎に脅迫メールを送って4号館の屋上から彼を排除しようとしていた。スリングショットを所持しており、それで有里を狙おうとしていたが、犬村からは有里の命の危険もある行為を軽々しく起こそうとしていたことを手厳しく糾弾された。
- 福永あきファンクラブ会員番号67番。
- 曽我辺守
- 「ミッドサマー・ボディーガード」に登場。「聖護者」のハンドルネームで有里のブログにコメント書いているファンの男子生徒。
- 犬村と周子が有里の周囲にいる事を良く思わず、女装して犬村の入れない女子トイレで周子を気絶させて有里を誘拐した。有里の好きな「煉獄の覇者」にちなんだ問題を「試練」として2人に課し、そばにいる資格があるかどうかを諮ろうとした。
- これまでに登場した犯人が全て福永あきの陣営に関わりがあった中で、最後にして初となる純粋な有里のファン。
- 背が高いものの華奢で声も高く、女子生徒の制服を着れば直には気づかれないほど。
- 石岡
- 明斉館高校新聞部部長。
- 発行部数が徐々に減少している「明斉館スポーツ」のテコ入れの為、周子に犬村の取材をするように命令した。
- 「ミッドサマー・ボディーガード」では妹の有里の護衛を犬村に依頼し、そのお目付け役として周子を同行させた。
- 大柄な体格や喧嘩腰ともとれる口調のせいで脳筋タイプに見られがちだが、理路整然と犬村と会話する姿は部長の地位に遜色ない物を持つ。
- 女子高生アイドル「ゆってぃん」の兄であるが本人は無精髭すら生えているほどで、風貌は全く似ていない。
- 長谷川聡美
- 明斉館高校新聞部副部長。
- クールビューティーな上級生。思い付きで突っ走る石岡に冷静沈着な突っ込みを入れる。
- 石岡が予備校の合宿で学校を離れた時は部活の全権を任された。
- 萩原
- 明斉館高校新聞部部員。
- いつも余計な一言を言い放ち、石岡から怒られている。
用語
- 私立明斉館高校
- 主人公たちが通う高校。生徒数3000人を超えるマンモス校で、校舎の数も7頭を数える巨大な敷地を持つ。
- 設備は古いとはいえ生徒数に応じた豪華なもので、休みの日も学校に来ている生徒も多い。
- 明斉館スポーツ
- 新聞部が不定期で発行する校内新聞。内容は学校内の噂やゴシップが纏められた物で、教師の中には記事の内容を問題視している者も多い。
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関連項目
脚注
- *「ミッドサマー・ボディーガード」の第一章「水着クライシス」を細部を変更した上でコミカライズに落とし込んだもの。
- *犬村本人は護衛期間中にリアルでのデートをOKしてもらうつもりだった。