ヴィクトリー(Victory)とは、2004年生まれの日本の競走馬である。
GI139連敗中だった田中勝春騎手に、15年ぶりの中央GIタイトルを届けた馬。
概要
父*ブライアンズタイム、母グレースアドマイヤ、母父*トニービンという血統。
父は代替種牡馬として輸入されながら三冠馬ナリタブライアンを筆頭に多くの活躍馬を出し、日本競馬に大きな足跡を残した種牡馬。しかしながら本馬がデビューする時点では2002年のノーリーズン・タニノギムレット・ダンツフレームを最後に芝のGI馬を輩出できておらず、高齢もあって*サンデーサイレンスとその後継相手に押されている状況だった。(ダートにはタイムパラドックスがいたが)
母は半兄に「和製ラムタラ」こと1996年のダービー馬フサイチコンコルド、半弟に2009年の皐月賞馬アンライバルドを持つ良血馬。自身は15戦5勝、1998年府中牝馬S2着などの実績がある。
母父はサンデーサイレンスやブライアンズタイムと並び称された90年代の大種牡馬。ちなみにトニービンとブライアンズタイムが父と母父の関係にある馬でGIを制覇したのはこの馬だけである。半兄には重賞3勝、GI2着3回のリンカーンがいる。
2004年4月3日、ノーザンファームで誕生。馬主は他にカンパニーや兄のリンカーンを所有していた近藤英子(「アドマイヤ」冠でおなじみ近藤利一の前妻)、調教師は兄のリンカーンも管理した音無秀孝。
サインはV
若葉ステークスまで
2002年10月13日、京都・芝1000mの新馬戦でデビュー。武豊を鞍上に1番人気に推されると、第1コーナーを前に内から先頭に立ち、そのまま直線でも突き放して5馬身差の快勝。
2戦目は強気にもラジオNIKKEI杯2歳ステークス(GIII)にて重賞挑戦。1勝馬ながら3番人気に推される。ちなみに1番人気はこの後に幾度となく戦い同じ時期から急激に調子を落としたフサイチホウオーであった。レースでは痛恨の出遅れを喫し、おまけにかかり気味に2番手まで上がっていってしまう。しかしそこからは鞍上の武豊がうまく折り合いをつけてスローペースの中2番手を追走、直線入り口で先頭に立つとそのまま押し切る構えを見せたが大外回って飛んできたフサイチホウオーにクビ差差し切られて悔しい2着。
明けて3歳は若駒S(OP)からの始動を予定していたが、疲労が抜けずに回避。改めて皐月賞トライアルの若葉S(OP)から始動した。鞍上は武豊がナタラージャを選択したため岩田康誠に乗り替わり。スタートは例によっていまいちだったがそこから2番手に上がると、第3コーナーで先頭に立ちそのままサンライズマックスの追撃を抑えて2勝目と共に皐月賞の優先出走権を手に入れた。
皐月賞
本番皐月賞。本馬は前哨戦を勝利したにもかかわらず7番人気の低評価。1番人気はここまで4戦3勝2着1回、弥生賞を制してやってきたアグネスタキオン産駒のアドマイヤオーラ、2番人気は共同通信杯も制し4戦4勝で乗り込んできたフサイチホウオー、3番人気は2歳王者のステイゴールド産駒ドリームジャーニー。実質的にはアドマイヤオーラとフサイチホウオーの2強体制といったところであった。
そんな中本馬は逃げ馬にとっては致命的な大外枠の影響かなんかそんなBT産駒の2冠馬が10年前にいたな、それとも掛かり癖が抜けないからか、7番人気に留まっていた。鞍上はテン乗りの田中勝春騎手になった。
この田中勝春騎手、騎手生活4年目の1992年にヤマニンゼファーで安田記念を制しGIジョッキーの仲間入りを果たし、その後も関東の有力ジョッキーとして活躍を続けていたのだが、ことGIとなると93年の秋天ではセキテイリュウオーでヤマニンゼファーとの叩きあいに負けたり、03年の皐月賞では馬群割って飛んできたネオユニヴァースに差されてデムーロに頭叩かれたり、そもそも勝ち負けを狙えるレベルの馬にはなかなか乗れなかったり、といった理由で実に中央のGIで139連敗。地方JpnIを含めると2005年にグレイスティアラでGIを勝利したし、それだけGI出れてるのは一流の証なのだが…。
レース本番。当初はハナを譲らせて好位から進める予定とのことだったが、まずまずのスタートを切れたことと2強がともに控えてペースが落ちたことでそのまま進出。2コーナーに入るあたりでサンツェッペリンを交わして先頭に躍り出ると、サンツェッペリンを従えて2頭で後続の馬群を引き離していく。これはかなりのハイペース…かと思いきや最初の1000mは59秒4、確かに速めだが暴走というわけでもない。2強を警戒する後ろを尻目にまんまと自分のペースに持ち込んだのであった。
そのまま4コーナーを回って最終直線へ。2番手を追走してきたサンツェッペリンが1度は先頭に躍り出たものの、勝負根性を発揮した本馬も差し返しにかかる。
直線向いた皐月賞!まだ粘るぞ!ヴィクトリー粘るぞ!
ヴィクトリー粘る!サンツェッペリン!
この2頭で決まりか…と思われたところで馬群からフサイチホウオーが飛び出し、粘る2頭に並びかけたところがゴール板であった。
田中騎手・音無調教師は負けたと思ったそうだが、結果はサンツェッペリンとはハナ差、フサイチホウオーとはそこからさらにハナ差。激闘を制して皐月賞の戴冠を果たした。田中勝春騎手は実に15年ぶりとなるGI制覇を果たしたのであった。ちなみに本馬も人気薄だったことに加え、人気薄のサンツェッペリン(100.6倍の15倍人気!)が2着に残ったため3連単は162万3250円と大荒れになった。なお爆笑問題の田中裕二は勝利の意味を持つヴィクトリーに田中勝春が騎乗するのは2つの『勝』が重なったとしてヴィクトリーに本命印を打ち合計約800万円を手にしワイドショーの話題になったのは有名な話。
日本ダービー
次走は当然日本ダービー。人気は当然1番人気…ではなく8.5倍の2番人気。1番人気は皐月で下したフサイチホウオー、1.6倍の1本被り。
まあ負けたとはいえ皐月のフサイチホウオーの末脚は見事なものだったし、有力どころの仕掛け遅れで人気薄が逃げ残ったという2009年エリザベス女王杯みたいなレース展開、さらにフサイチホウオーのここまでの足跡が父ジャングルポケットと非常に似ていた(新馬戦1着→2歳GIII1着→ラジニケ連対(ジャンポケ2着・ホウオー1着)→共同通信杯1着→皐月3着)ため「だったらダービーは親子制覇だ!!」となったのもあるだろう。また大外枠だし。それでもサニーブライアンと比べれば正当に評価されているとは思う
皐月賞に引き続きのカッチーとともに低評価を覆したいところだったが、これまでで一番の出遅れかまして後方から。おまけにかかり気味に第2コーナーで4番手まで上がってしまう。これでは最終直線で脚が残るはずもなく、前で粘るアサクサキングスとサンツェッペリンを捉えるどころかずるずると後退、9着に敗れた。ちなみにフサイチホウオーも前目につけたが最終直線で伸びず7着敗退。勝ったのは3番人気、実に64年ぶりの牝馬による日本ダービー制覇を果たしたウオッカであった。
ちなみにこのレースでは1番人気と2番人気が両方飛び、2着に人気薄のアサクサキングス(14番人気)が粘ったので3連単は215万5760円と更なる大荒れになってしまった。
3歳秋
夏を越して神戸新聞杯(GII)から始動。鞍上は若葉ステークス以来の岩田康誠。フサイチホウオー、ドリームジャーニー、アサクサキングスといった春GIを沸かせた馬やメジロマックイーンとの親子制覇を目指すホクトスルタンといった有力馬がそろった中、2番人気に支持される。レースはというとまたスタートで後手を踏んだがかかることなく好位で控える競馬を選択。しかしそこから粘るアサクサキングスを捉えられず、またドリジャの強烈な末脚に屈して3着に終わる。ちなみにフサイチホウオーはまさかの12着敗退。
とはいえダービーの敗北からは立て直せたようなので、本番の菊花賞では南半球産のため斤量が2kg軽いロックドゥカンプ、前哨戦を制したドリームジャーニーに次ぐ3番人気に支持される。フサイチホウオー(5番人気)もやっと上回ることができた。しかしレースはまずまずのスタートから大外枠を考慮してホクトスルタンの3番手に控えたものの、道中掛かった結果スタミナを浪費してしまい16着に大敗。
続くジャパンカップではクリストフ・ルメールと組んだがアオって出遅れ、18着惨敗。おまけに3歳牡馬でドベ3着を独占し、ウオッカが4着に頑張ったこともあって「この世代は牝馬が強い」印象が完全に定着してしまった。この後の有馬記念は回避し、放牧に入った。
4歳以降
4歳はブライアンズタイム産駒なのでダート適性があるかも、とフェブラリーステークスから始動したが15着に惨敗。続く2戦も大敗し、跛行した影響もあって長期休養に入る。
翌5歳は京都金杯(GIII)から始動し、2戦目の京都記念(GII)では逃げ粘って3着、続く中京記念(GIII)でも逃げ粘って4着、と復活の兆しも見えたものの残念ながら最後の輝きだったようで続く2戦を大敗。ここが潮時として引退した。結局皐月賞の後は1度も勝つことができなかった。
引退後はブライアンズタイムの後継として社台スタリオンステーションで種牡馬入りしたが、ただでさえブライアンズタイム系の人気が下火なうえにウオッカを輩出したタニノギムレットが相手となっては太刀打ちできず、実働5年で種牡馬を引退。産駒はわずかに38頭、中央でわずか2勝に終わった。
引退後は乗馬となったが、その矢先の2017年に出血性大腸炎で死亡。わずか13年の生涯に幕を下ろした。
その後のブライアンズタイムは毎年80頭前後の肌馬を集め、ダートを中心に亡くなる直前まで種牡馬として活動。後継としては現在フリオーソが種付け数を減らしつつも奮闘中である。
音無調教師は本馬現役時に同じオーナーのカンパニーやオウケンブルースリをGI馬にし、その後もクリソライト・クリソベリル兄弟やミッキーアイル・インディチャンプ・デルマソトガケなどを管理する調教師として大成。
田中騎手はその後中央GIを取ることは叶わなかったものの海外と地方でGIを制し、2007年には年間100勝を達成。2023年に調教師となるためにステッキを置くまで長く活躍をつづけた。
血統表
| *ブライアンズタイム Brian's Time 1985 黒鹿毛 |
Roberto 1969 鹿毛 |
Hail to Reason | Turn-to |
| Nothirdchance | |||
| Bramalea | Nashua | ||
| Rarelea | |||
| Kelley's Day 1977 鹿毛 |
Graustark | Ribot | |
| Flower Bowl | |||
| Golden Trail | Hasty Road | ||
| Sunny Vale | |||
| グレースアドマイヤ 1994 鹿毛 FNo.1-l |
*トニービン 1983 鹿毛 |
*カンパラ | Kalamoun |
| State Pension | |||
| Severn Bridge | Hornbeam | ||
| Priddy Fair | |||
| *バレークイーン 1988 鹿毛 |
Sadler's Wells | Northern Dancer | |
| Fairy Bridge | |||
| Sun Princess | *イングリッシュプリンス | ||
| Sunny Valley |
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逃走ヴィクトリーV! 田中勝15年ぶりのGI勝利=皐月賞=無敗ホウオー、追い込み届かず3着敗戦
関連項目
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