1990 FIFAワールドカップとは、イタリアで開催されたFIFAワールドカップである。
概要
1990 FIFAワールドカップ | |
---|---|
期間 | 1990年6月8日~7月8日 |
場所 | イタリア |
出場国 | 24ヶ国 |
公式球 | エトルスコ・ユニコ(アディダス) |
マスコット | チャオ |
イタリアで二度目の開催となった。招致の過程では8か国が立候補したが、イタリアとソビエト連邦以外のすべての国が辞退したため、2か国による決選投票となった。この際ソビエト連邦は5票、イタリアは11票となり、イタリアでの開催が決定した。
24枠のうち開催国イタリアと前回優勝国のアルゼンチンには自動出場権が与えられたため、残りの22枠が予選で争われた。各大陸の出場枠は欧州が13枠、南米、アジア、北中米・カリブ海、アフリカが各2枠ずつとなっている。
この大会では、コスタリカ、アイルランド、アラブ首長国連邦がFIFAワールドカップ初出場となっている。一方、前回大会で3位に入った強豪フランスが欧州予選で敗退しており、他にもデンマーク、ポーランド、モロッコといった前回活躍した国が予選敗退となる波乱が起きている。さらに、メキシコ、チリの2か国はそれぞれFIFAから出場停止処分を受けたため失格となっている。
グループリーグ
※各グループ上位2チームと各組3位になったチームのうち上位4チームが決勝トーナメントに進出。
グループA | グループB | グループC | グループD | グループE | グループF |
---|---|---|---|---|---|
イタリア |
アルゼンチン |
ブラジル |
西ドイツ |
ベルギー |
イングランド |
アメリカ |
カメルーン |
コスタリカ |
UAE |
韓国 |
エジプト |
チェコスロバキア |
ルーマニア |
スウェーデン |
コロンビア |
ウルグアイ |
アイルランド |
オーストリア |
ソ連 |
スコットランド |
ユーゴスラビア |
スペイン |
オランダ |
グループA
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | イタリア |
― | ○ 2-0 |
○ 1-0 |
○ 1-0 |
6 | +4 | 4 | 0 |
2 | チェコスロバキア |
● 0-2 |
― | ○ 1-0 |
○ 5-1 |
4 | +3 | 6 | 3 |
3 | オーストリア |
● 0-1 |
● 0-1 |
― | ○ 2-1 |
2 | -1 | 2 | 3 |
4 | アメリカ |
● 0-1 |
● 1-5 |
● 1-2 |
― | 1 | -6 | 2 | 8 |
開催国のイタリアが大本命という組み分けになったグループは、そのイタリアがゼンガ、バレージを中心とした伝統の堅守で3試合連続無失点を達成。本来エースのヴィアリが不調に陥り、不安の声があがった攻撃陣だったが、代役となったスキラッチと若いバッジョが台頭。3連勝でグループを首位で突破。
注目の2位争いでは、スパルタ・プラハでプレーする選手を中心に好タレントが揃ったチェコスロバキアがイタリア以外の2チームを相手にきっちりと勝利。最初の2試合でグループの行方は決まってしまった。
ほぼ国内でプレーする選手で固めたオーストリアだったが、2強と比べてタレント不足だったことは否めず、頼みの綱だったエースのポルスターが沈黙してしまい敗退。久々の出場となったアメリカは初戦でチェコスロバキアに大敗したことが尾を引き、3戦全敗という惨敗に終わった。
グループB
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | カメルーン |
― | ○ 2-1 |
○ 1-0 |
● 0-4 |
4 | -2 | 3 | 5 |
2 | ルーマニア |
● 1-2 |
― | △ 1-1 |
○ 2-0 |
3 | +1 | 4 | 3 |
3 | アルゼンチン |
● 0-1 |
△ 1-1 |
― | ○ 2-0 |
3 | +1 | 3 | 2 |
4 | ソ連 |
○ 4-0 |
● 0-2 |
● 0-2 |
― | 2 | -6 | 4 | 4 |
英雄マラドーナを擁する前回優勝国のアルゼンチンが大本命として頭一つ抜け、2年前のEURO88で準優勝のソ連と前回ベスト16のルーマニアが対抗と見られたグループだったが、主役となったのは大会前は全くのノーマークだったカメルーンだった。
大会オープニングマッチでアルゼンチンと戦ったカメルーンは、1人退場者を出しながらもオマン=ビイクの信じられない打点のヘディングシュートでアルゼンチンを破るというワールドカップの歴史に残る大番狂わせを起こしてしまう。勢いづいたカメルーンは続くルーマニア戦でも38歳のロジェ・ミラが2ゴールを決める活躍を見せ、なんと2連勝でグループ首位を確定させてしまう。
開幕戦を落とし窮地に立たされたアルゼンチンは、マラドーナが相手からの徹底したマークと左足首の負傷の影響で本来の輝きを発揮できず、苦戦を強いられていた。しかも、ソ連戦で正GKのブンピードが脛を骨折する重傷を負い、戦線離脱。それでも、ソ連戦でまたもマラドーナの「神の手」が今度は味方のゴールを守るために発動し、辛くも3位で決勝トーナメントに生き残る。
ルーマニアは初戦のソ連戦に勝利したものの、アルゼンチン同様にカメルーン旋風に呑み込まれてしまう。それでも、アルゼンチンとの第3戦を引き分けに持ち込み、総得点の差でアルゼンチンを上回り、2位で2大会連続の決勝トーナメント進出を果たす。
名将ロバノフスキーに率いられたソ連だったが、最初の2試合に連敗したことで崖っぷちに立たされる。第3戦ではすでに首位通過を決めたことでやる気がなかったカメルーン相手に大勝するが、アルゼンチンとルーマニアが引き分けたことで最下位となり、敗退。1年後ソ連が崩壊したため、ソビエト連邦としてはこれが最後の出場となった。
グループC
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ブラジル |
― | ○ 1-0 |
○ 1-0 |
○ 2-1 |
6 | +3 | 4 | 1 |
2 | コスタリカ |
● 0-1 |
― | ○ 1-0 |
○ 2-1 |
4 | +1 | 3 | 2 |
3 | スコットランド |
● 0-1 |
● 0-1 |
― | ○ 2-1 |
2 | -1 | 2 | 3 |
4 | スウェーデン |
● 1-2 |
● 1-2 |
● 1-2 |
― | 0 | -3 | 3 | 6 |
ブラジルが絶対本命と見られたグループは、予想通りブラジルが抜け出る結果となる。とはいえ、今回3バックを採用したブラジルは、黄金の中盤が全員代表からいなくなったこともあり、華麗な個人技よりも守備を重視した堅実なスタイルとなっていた。そのため、国民からの支持は低く、カレッカとミューレルの2トップの活躍で3連勝したものの、ブラジル国民を満足させるような戦いぶりではなかった。
グループBのカメルーンと同じく大きなサプライズを起こしたのがグループ最弱と見られていたコスタリカだった。前回メキシコをベスト8進出に導いたボラ・ミルティノビッチが率いたコスタリカは、初戦のスコットランド戦をGKコネホの活躍もあって1-0で勝利する番狂わせを演じる。続くブラジル戦は善戦しながらも惜しくも敗れたが、第3戦のスウェーデン戦に勝利し、初出場ながら決勝トーナメントへ進出する。この頃からミルティノビッチの采配は「ボラ・マジック」と呼ばれるようになった。
伏兵コスタリカに泣かされたのがスコットランドとスウェーデンのヨーロッパ勢。スコットランドは、勝ち星を計算していたはずの初戦で負けたことが大きく響き、可能性は残していたものの第3戦の相手がブラジルだったのが運の尽きだった。スウェーデンに至っては3試合連続で1-2で負けるという珍記録を作り出し、20歳のブローリンの台頭くらいしか好材料が見つからない大会となった。
グループD
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 西ドイツ |
― | ○ 4-1 |
△ 1-1 |
○ 5-1 |
5 | +7 | 10 | 3 |
2 | ユーゴスラビア |
● 1-4 |
― | ○ 1-0 |
○ 4-1 |
4 | +1 | 6 | 5 |
3 | コロンビア |
△ 1-1 |
● 0-1 |
― | ○ 2-0 |
3 | +1 | 3 | 2 |
4 | UAE |
● 1-5 |
● 1-4 |
● 0-2 |
― | 0 | -9 | 2 | 11 |
2大会連続準優勝の西ドイツだったが、「東欧のブラジル」と称されたタレント軍団ユーゴスラビア、そして近年実力を付けてきたコロンビアと本命には違いないが、曲者揃いの油断のならないグループに組み込まれることとなった。そして実際、戦前の予想通り3強1弱のグループとなった。
初戦から西ドイツとユーゴという好カードが実現したが、バックラインの編成をいじったオシム監督の奇策が裏目に出てユーゴの守備が崩壊。大量4ゴールを奪う好発進を遂げた西ドイツは格下のUAEを相手にも大量5ゴールを奪い、2連勝で早くも勝ち抜けを決める。グループリーグで10得点という驚異的な攻撃力を見せ、クリンスマンとフェラーの2トップはそれぞれが3ゴールずつを決めるという活躍ぶりだった。
初戦で大敗を喫したユーゴだったが、オシム監督が見事にチームを立て直し、直接のライバルと見られたコロンビア戦で勝利したことでチームは自身を取り戻す。第3戦のUAE戦ではストライカーのパンチェフが2ゴールを決めるなど圧勝。2位で決勝トーナメントへ進出する。コロンビアは1勝1敗で後が無くなった第3戦の西ドイツ戦を終了間際のリンコンのゴールで引き分けに持ち込み、滑り込みで決勝トーナメントに進出。鬼才と呼ばれた司令塔のバルデラマ、自陣を大きく飛び出して攻撃参加するGKイギータを中心とした異色の個性派集団はひときわ目を引いた。
初出場のUAEは、相手が悪すぎたのもあったが、11失点を喫しての3連敗と実力に差があり過ぎたことは否めなかった。もっともこの大会でUAEを率いていたパレイラ監督は4年後大きな仕事をやってのける。
グループE
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | スペイン |
― | ○ 2-1 |
△ 0-0 |
○ 3-1 |
5 | +3 | 5 | 2 |
2 | ベルギー |
● 1-2 |
― | ○ 3-1 |
○ 2-0 |
4 | +3 | 6 | 3 |
3 | ウルグアイ |
△ 0-0 |
● 1-3 |
― | ○ 1-0 |
3 | -1 | 2 | 3 |
4 | 韓国 |
● 1-3 |
● 1-2 |
● 0-1 |
― | 0 | -4 | 2 | 6 |
これといった本命がいないグループは、スペイン、ベルギー、ウルグアイが横一線で争う予想通りの展開となる。初戦のウルグアイ戦を引き分けたスペインは、続く韓国戦ではエースのミチェルがハットトリックの活躍を見せ、完勝。首位争いとなったベルギー戦もミチェルがゴールを決め、首位でグループを通過。司令塔シーフォを擁するベルギーもスペイン戦は落としたものの、ウルグアイと韓国を相手にきっちりと勝利したことで2大会連続で決勝トーナメントに進出。
古豪ウルグアイは、ライバルと見られたスペイン、ベルギーを相手に1分1敗と勝利できず、第3戦の韓国戦で勝利することが必須となる。しかし、意地を見せる韓国相手になかなかゴールを奪えず、期待されたフランチェスコリが厳しいマークに苦しんでいた。それでも試合終了間際にフォンセカが値千金の決勝ゴールを決め、3位に滑り込み、決勝トーナメントへと進むこととなった。
韓国は他の3チームに勝ち点を供給だけの存在となってしまい、スペインから1点を挙げたことだけが思い出となった。UAEと同じく3連敗で敗退となり、アジア勢にとっては世界との大きな壁を痛感させられる大会となった。
グループF
順 位 |
国名 | 勝点 | 得失 点差 |
得 点 |
失 点 |
||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | イングランド |
― | △ 1-1 |
△ 0-0 |
○ 1-0 |
4 | +1 | 2 | 1 |
2 | アイルランド |
△ 1-1 |
― | △ 1-1 |
△ 0-0 |
3 | 0 | 2 | 2 |
3 | オランダ |
△ 0-0 |
△ 1-1 |
― | △ 1-1 |
3 | 0 | 2 | 2 |
4 | エジプト |
● 0-1 |
△ 0-0 |
△ 1-1 |
― | 2 | -1 | 1 | 2 |
イングランド、オランダという強豪が同居し、戦前の予想では2強2弱と見られていたが、いざ蓋を開けてみると6試合中5試合が引き分けで、生まれたゴール数がわずか7と他のグループと比べて非常に少ない、泥試合の続いたグループとなった。
2年前の欧州選手権に優勝し、ファン・バステン、フリット、ライカールトのACミラントリオを擁するオランダは優勝候補に挙げる声も多かった。だが、本大会に入るとファン・バステンとフリットの両エースが揃って不調に陥り、エジプト、イングランドと2試合続けてドロー。フーリガン対策のためにサルディニア島で3試合を戦うこととなったイングランドだったが、このグループ唯一決着が付いた第2戦のエジプト戦に勝利したことで首位でグループを突破する。
共に2引き分けという状況で第3戦で激突したオランダとアイルランドの試合は、ようやく調子を取り戻し始めたフリットのゴールでオランダが先制するが、その後はアイルランドの手堅い守備の前に追加点を奪えず。逆にアイルランドが後半に入り、クインのゴールで同点に追いつく。結局試合は1-1の引き分けに終わり、共に3引き分けという結果に終わった両チームはくじ引きで順位が決まり、2位アイルランド、3位オランダという順位で3チームが決勝トーナメントに進出。
また、12大会ぶり2度目の出場となったエジプトは、結局グループリーグで敗れたものの、ヨーロッパの3チームに放り込まれた中で大健闘といっていい戦いぶりとなった。特に初戦でオランダ相手に引き分けに持ち込んだことが大混戦を招き、このグループをかき回した存在となった。
決勝トーナメント
ラウンド16
今大会話題を振りまいている両チームによる試合は互いに0-0のまま譲らず、延長戦に突入する。すると、延長後半1分いつものように大きく前に出てビルドアップに参加するGKイギータからミラがボールを掻っ攫い、無人のゴールへシュートを流し込み、カメルーンが先制する。その3分後にもミラがゴールを決め、カメルーンがリードを広げる。
終盤コロンビアも1点を返すが、試合はそのまま終了。延長戦の末にコロンビアを下したカメルーンがアフリカ勢初のベスト8進出という歴史的快挙を成し遂げる。
初出場ながらベスト16進出という快挙を成し遂げたコスタリカだったが、その前に立ちはだかったのは「巨人」スクラヴィーだった。前半11分圧倒的な高さを活かしたヘディングシュートでゴールネットを揺らすと、この試合でハットトリックの活躍を見せる。
南米2強対決は、マラドーナの一瞬の輝きが苦難のアルゼンチンを救う。
ラウンド16で実現した因縁の両国のライバル対決は、グループリーグで低調だったアルゼンチンに対し、下馬評ではブラジル優位と見られていた。試合もほぼブラジルがボールを握り、攻勢をかける展開となっていた。
今大会に入って本来の輝きを放てずにいたマラドーナはこの試合でもブラジルの徹底したマークに苦しみ、攻撃の形が作れずにいた。
しかし、ブラジルの一瞬の隙を見逃さなかったマラドーナは、後半36分絶妙なスルーパスを通す。このチャンスをカニーヒアが決め、終始劣勢だったアルゼンチンに勝利をもたらす。マラドーナにとっては8年前のリベンジを果たすこととなった。
欧州王者オランダ、最後まで本来の強さを取り戻せず、ライバル西ドイツの前に散る
対照的な歩みで決勝トーナメントまで進んできた両者の直接対決が早くも実現。会場はサンシーロで西ドイツにはインテルの選手が3人、オランダにはミランの選手が3人ということで、さながらミラノ・ダービーの様相を呈していた。
前半21分小競り合いを起こした西ドイツのフェラーとオランダのライカールトが共に退場となる。このハプニングで打撃を受けたのはチームの心臓を失ったオランダのほうだった。ここから試合の流れは西ドイツへ傾く。
後半6分クリンスマンの技ありのボレーシュートで西ドイツが先制すれば、37分には左45度の位置からブレーメが強烈なシュートを決める。その後オランダもクーマンのPKで1点を返すが、反撃はこれだけだった。
オランダは1勝もできないまま敗退。世界最高のFWファン・バステンの調子が最後まで上がらず、まさかのノーゴールに終わったことが大きな誤算となった。
3引き分けのままくじ引きで2位になった初出場のアイルランドと東欧のマラドーナの異名を持つ名手ハジを擁するルーマニアの欧州勢同士の対戦。
試合は両チームともに決め手を欠き、アイルランドの術中にルーマニアが嵌った形のまま0-0で決着が付かず、試合はPK戦へ。5人全員が成功させたアイルランドに対し、ルーマニアは5人目のティモフテが失敗。
開催国イタリア、4試合連続クリーンシートで順調にベスト8へ進む。
ワールドカップ優勝経験のある両チームの対戦は、GL3試合を無失点で勝ち上がってきたイタリアのペースで進んでいく。両チームゴールのないまま迎えた後半20分スキラッチのゴールでイタリアが先制。スキラッチはストライカー不在というイタリアの問題を解決する"救世主"となっていた。さらにイタリアは、後半40分にセレーナがダメ押しの追加点を決め、ベスト8進出。
妖精ピクシーが躍動したユーゴスラビアがスペインを破り、ベスト8進出。
ユーゴスラビアは、GLで鳴りを潜めていたエースのストイコビッチが本領発揮。抜群のテクニックでゲームメイクしタレント軍団をリードする。後半32分に山なりのボールを芸術的なトラップでDFを外したストイコビッチのゴールでユーゴが先制。
守勢に回る時間が長くなっていたスペインだったが、後半37分にフリオ・サリナスが同点ゴールを決め、延長戦へ持ち込む。
延長前半2分今度もストイコビッチが芸術的なFKを決める。ストイコビッチの極上の輝きで延長戦の末にスペインを下したユーゴスラビアがベスト8進出。
GLを離島で戦ったいたイングランドが勝ち上がってイタリア本土へと上陸。これに伴い、フーリガン対策がより厳重に警戒された状況となる。
イングランドは、ゲームメーカーのガスコインを軸に攻撃を進めるが、ベルギーも粘り、延長戦に入っても0-0が続いていた。
だが、試合終了間際の延長後半14分ガスコインのFKに反応したプラットが振り向きざまのボレーシュートで合わせ、土壇場でゴールネットを揺らしたイングランドが2大会連続でベスト8進出。
準々決勝
控えGKゴイコチェアがPK戦で大活躍のアルゼンチンが苦しみながらベスト4へ。
いい流れで試合に入っていたユーゴスラビアだったが、前半31分にマラドーナをマークしていたサバナソビッチが退場となる。
窮地に立たされたユーゴスラビアはストイコビッチのボールキープとチャンスメイクで対抗し、個々の選手の柔軟な守備によって大半の時間を10人で戦いながら互角の勝負を演じ、試合はPK戦にもつれ込む。
PK戦ではストイコビッチ、マラドーナという両チームのエースが失敗する波乱の展開となる。だが、アルゼンチンは大会途中から守護神に定着したゴイコチェアが4人目と5人目を立て続けにセーブする活躍を見せ、アルゼンチンを準決勝進出に導く。
この試合で誰よりも輝きを放ちながら敗れたストイコビッチに対し、マラドーナは「泣かないで欲しい。君には明るい未来しかない」と声をかけたという。
ここまで4引き分けで勝ち残ってきたアイルランドに対し、地元での優勝を狙うイタリアは立ち上がりから攻勢をかける。すると、前半38分ドナドーニのミドルシュートのこぼれ球に反応したスキラッチがまたしてもゴールを決め、イタリアが先制。
後半アイルランドは得意のロングボール主体の放り込みサッカーで攻勢をかけるが、イタリア伝統のカテナチオの前にゴールは遠かった。スキラッチの1点を守り切ったイタリアが5試合連続の完封勝利で2大会ぶりのベスト4進出。
試合巧者同士の対戦は、主将マテウスを中心に統率の取れた西ドイツがチェコスロバキアを押し込む展開となる。前半24分クリンスマンがPA内で倒されて得たPKをマテウスが決め、西ドイツが先制。
チェコスロバキアは、ラウンド16でハットトリックを決めたスクラヴィーが西ドイツ守備陣の厳しいマークによって沈黙させられる。安定した戦いぶりで1点を守り切った西ドイツが虎視眈々と優勝を射程距離にする。
”不屈のライオン”カメルーンを”母国"イングランドが壮絶な死闘の末に撃退。カメルーン旋風はベスト8で終焉。
前半25分プラットの2試合連続ゴールでイングランドが先制。しかし、後半開始から切り札のミラを投入したカメルーンも反撃に出る。後半18分にPKで同点に追いつくと、そのわずか2分後にミラのアシストからエケケがゴールを決め、逆転。ベスト4が視界に入ってくる。
敗色濃厚となったイングランドを救ったのは前回大会得点王のリネカーだった。後半38分自らが得たPKを決め、同点に追いつくと、延長戦でもPKを誘ったリネカーが逆転ゴールを決める。死闘を制したのは伝統国の意地を見せたイングランドだった。
準決勝
またもゴイコチェアに救われたアルゼンチンが連覇へ向けて王手をかける。
ホスト国と前回優勝国の対戦。試合がおこなわれたサン・パオロは、ナポリでプレーするマラドーナにとってのホームスタジアムだったが、マラドーナは大ブーイングを浴びることになる。
前半17分こぼれ球に反応したスキラッチがまたもゴールを決め、地元イタリアが先制。ここまで5試合連続無失点のイタリアは得意の逃げ切りパターンに持ち込もうとする。しかし、後半23分カニーヒアがヘディングで今大会初めてイタリアからゴールを奪い、アルゼンチンが同点に追いつく。GKゼンガの連続無失点記録は517分でストップする。
延長戦に入りジュスティが退場となったアルゼンチンだったが、イタリアの攻撃を耐えしのぎ、決着はPK戦へ。すると、アルゼンチンはゴイコチェアがドナドーニとセレーナのPKを立て続けにストップ。準々決勝に続いてゴイコチェアがヒーローになったアルゼンチンがイタリアの夢を打ち砕き、念願の連覇へあと一歩のところまで進む。
「フットボールというのは本当に単純なスポーツだ。22人の選手たちが90分間ボールを追いかける。そして、最後にはドイツが勝つんだ」
1966年大会決勝以来の因縁がある両チームの対戦は、前半ガスコインを軸に攻撃を作るイングランドがペースを握る。押されていた西ドイツだったが、後半14分絶好の位置で得たFKからブレーメが直接ゴールを狙うと、40歳の大ベテランGKシルトンが目測を誤るミスを犯し、先制する。
その後、守備固めに入った西ドイツを攻めあぐねるイングランドだったが、後半37分守備のミスを突いたリネカーが同点ゴールを決め、こちらも1-1のままPK戦で決着を付けることになる。全員が成功させた西ドイツに対し、イングランドはピアースとワドルが失敗。西ドイツが3大会連続で決勝へ進む。
試合後、悔し涙を流すガスコインの姿は今大会を象徴するシーンとなった。天敵西ドイツに敗れたリネカーは冒頭で紹介した名言を残すことになる。
3位決定戦
共にPK戦で優勝の夢を打ち砕かれた両チームの対戦は、ホスト国の意地を見せたいイタリアが主導権を握る。また、イタリアにはスキラッチの単独得点王獲得という目標があった。
イングランドは、司令塔のガスコインが累積警告で出場停止となり、攻撃が単調になっていた。後半25分アルゼンチン戦でまさかのスタメン落ちとなったバッジョがGKシルトンのミスを突いてイタリアの先制ゴールを決める。一方、イングランドもプラットが同点ゴールを決め、食い下がる。
そして、後半40分スキラッチが大会得点王を決定づける今大会6ゴール目を決め、イタリアが勝ち越し。スキラッチはこれで5試合連続のゴールとなった。結局イタリアが3位入賞を果たし、ホスト国の面目を保つ。
決勝
前回の86年大会と同じ顔合わせとなった決勝は、今大会を象徴するような守備的な世紀の大凡戦となった。
カニーヒアら主力4人を出場停止で欠いたアルゼンチンは、守備的な戦術を採用。攻撃をマラドーナ一人に任せるような戦い方となっていた。マテウス中心に中盤を支配する西ドイツだったが、こちらもリスクをかけて攻めようとせず、試合は膠着状態が続く。
注目のマラドーナはこの試合でも激しいマークに遭い、満足にプレーさせてもらえない。西ドイツはマンマーク気味に対応していたブッフバルトがマラドーナを試合から閉め出していた。
苛立ちを隠せなくなったアルゼンチンは次第にコントロールを失い、後半23分にモンソンが退場となる。何とか耐えていたアルゼンチンだったが、後半40分センシーニがPA内でフェラーを倒し、西ドイツにPKを与えてしまう。これをブレーメがきっちり決め、西ドイツが均衡を破る。これで切れてしまったアルゼンチンはその後デソッティも退場となり、凡戦となった決勝を制した西ドイツが1974年以来3回目の優勝を飾る。
大会まとめ
1990 FIFAワールドカップ 大会結果 | |
---|---|
優勝 | 西ドイツ(3回目) |
準優勝 | アルゼンチン |
3位 | イタリア |
4位 | イングランド |
個人表彰 | |
大会MVP | サルバトーレ・スキラッチ |
得点王 | サルバトーレ・スキラッチ |
カルチョの国で開催された今大会を制したのは、過去2大会連続で準優勝に終わり、3度目の正直でファイナルを制した西ドイツだった。中盤で試合をコントロールするローター・マテウスを中心に攻守にバランスの取れた安定感のあるチームとなり、マテウス、ブレーメ、クリンスマンとインテルに所属する3人が本拠地とするサンシーロで5試合を戦えた地の利も勝因となった。監督を務めたフランツ・ベッケンバウアーはこれで史上2人目となる選手・監督の両方でワールドカップ優勝を達成したことになる。
カメルーンの躍進による将来的なアフリカ勢の台頭を期待する声など明るい話題もあるが、全体的には大会総得点が115とワールドカップ史上最低の数字となり、「守備的サッカーが横行したワールドカップ史上最低の大会」とまで酷評された。決勝戦のように退場者を出した荒れた試合も多く、その後FIFAはオフサイド基準の変更、バックパスをGKが手で扱うことの禁止といったルールの改正に動くこととなる。
最終順位
順位 | チーム |
1 | 西ドイツ |
2 | アルゼンチン |
3 | イタリア |
4 | イングランド |
5 | ユーゴスラビア |
6 | チェコスロバキア |
7 | カメルーン |
8 | アイルランド |
9 | ブラジル |
10 | スペイン |
11 | ベルギー |
12 | ルーマニア |
13 | コスタリカ |
14 | コロンビア |
15 | オランダ |
16 | ウルグアイ |
17 | ソビエト連邦 |
18 | オーストリア |
スコットランド | |
20 | エジプト |
21 | スウェーデン |
22 | 韓国 |
23 | アメリカ合衆国 |
24 | アラブ首長国連邦 |
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関連項目
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- 1994 FIFAワールドカップ
- 1982 FIFAワールドカップ
- 1986 FIFAワールドカップ
- 2010 FIFAワールドカップ
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