ダノンスコーピオン(英:Danon Scorpion、香:野田赤蠍)とは、2019年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2022年:NHKマイルカップ(GⅠ)、アーリントンカップ(GⅢ)
概要
父ロードカナロア、母*レキシールー、母父Sligo Bayという血統。
父はおなじみ、種牡馬としても大活躍中の最強短距離馬。同じダノン冠名の産駒ではダノンスマッシュがいる。
母はカナダで2014年にクラシック三冠のクイーンズプレートと、牝馬三冠のウッドバインオークス、ワンダーホウェアステークスを勝ち、年度代表馬に選ばれた名牝。引退後、日本のケイアイファームにロードカナロアの配合相手として100万ドルで輸入された。初年度はFrankelの仔を産み、2年目からは毎年ロードカナロアをつけられ、その最初のカナロア産駒がスコーピオンである。
母父スライゴベイはSadler's Wells産駒で、アイルランド産のアメリカ調教馬。自身はGⅠを1勝、産駒にも国際GⅠ勝ち馬はいない(カナダの三冠競走はカナダ産馬限定戦なので国際格付けなし)。日本では2022年5月現在ダートで重賞を3勝しているスワーヴアラミスの母父。
2019年2月22日、新ひだか町のケイアイファームで誕生。オーナーはおなじみダノックス。主戦騎手は川田将雅。同期のダノン軍団にはダノンベルーガがいる。
野田赤蠍
2歳
栗東・安田隆行厩舎に入厩し、デビューは早めで2021年6月20日の阪神の新馬戦(芝1600m)。直線で抜け出したルージュラテールが伸びるのを外から追いかけ、最後にクビ差差しきってデビュー勝ちを飾る。
2戦目は10月の萩ステークス(L)。後にホープフルステークスを勝つキラーアビリティに次ぐ2番人気だったが、キラーアビリティをマークして直線で一緒に抜け出すと、また外から最後にクビ差差しきって2連勝を飾る。
この連勝で朝日杯フューチュリティステークス(GⅠ)へ向かったが、主戦の川田が香港国際競走に参加した関係で隔離期間のため騎乗できず松山弘平がテン乗り。乗り替わりに加えてデビュー戦と萩Sが小頭数戦で多頭立てのレースは初といろいろ懸念があったためか、単勝9.7倍の4番人気。
好スタートを決めたが鞍上は抑えて中団追走を選択。直線では上手く進路を見つけて先に抜け出したセリフォスとドウデュースを追いかけたが、追いつけず3着。
3歳
明けて3歳の2022年は共同通信杯(GⅢ)から始動。鞍上も川田に戻ったが、調教の動きもよくなく、レースでは同馬主のダノンベルーガに置いて行かれ7着。川田は「現状、精一杯の走りをしました。やはり、千八は長いと思います」とコメント。この惨敗で立て直しのため春全休という報道も出たが、実際は特にそんなことはなかった。
距離適性に加えてダノンベルーガがクラシックに向かうこともあってか、スコーピオンはマイル路線に向かうことになり、NHKマイルカップトライアルのアーリントンカップ(GⅢ)へ。道中は中団馬群の中に構え、直線でもなかなか進路が開かなかったが、外が開くとすっと外へ持ち出し、抜け出したタイセイディバインを最後クビ差かわして勝利。1番人気に応えて重賞初制覇を飾った。
というわけで本番のNHKマイルカップ(GⅠ)。混戦ムードの中、大外18番ということもあってか単勝7.1倍の4番人気だった。
レースは逃げると見られたジャングロが盛大に出遅れ、トウシンマカオが逃げる予想外の展開。いつものように中団に構えたダノンスコーピオンは、直線でも前に邪魔が入らない絶好の位置から抜け出しを図る。逃げ粘るトウシンマカオを残り200mで捕まえ抜け出すと、内で粘る1番人気セリフォスを振り落とし、外から猛然と追い込んできたマテンロウオリオンとカワキタレブリーの追撃を押し切って1着でゴール。
ダノン軍団としては、初GⅠ制覇だった2010年のダノンシャンティ以来となるNHKマイルカップ制覇。2着がマテンロウオリオンだったため、「神話馬券」とか「星座馬券」とか「やっぱりオリオンはサソリに勝てないのか……」なんて声も挙がった。
なお、1~4番人気が全員掲示板という堅い決着……のはずが、3着に最低人気のカワキタレブリーが突っ込んだため3連単153万馬券という驚きの高配当がついた。
休養を挟み、秋は10月の富士ステークス(GⅡ)から始動。GⅠ馬なので斤量が+2kg(古馬と同じ56kg)となったこともあり、54kgの同期セリフォスに次ぐ2番人気。レースは外枠から枠なりに中団前目で進め、直線で3番人気ソウルラッシュと並んで抜け出し叩き合いに突入したが、さらに大外から強襲してきたセリフォスに差し切られ、ソウルラッシュにも競り負けて僅差の3着。
本番のマイルチャンピオンシップ(GⅠ)では同じダノン冠・川田主戦のダノンザキッドも出てきたが、川田はこちらを選択。混戦ムードの中7.3倍の4番人気に支持される。
レースは大外の8枠15番から枠なりに外目の6番手につけ、ソダシを見ながらレースを進める。しかし直線で追い出したところでそのソダシに前を塞がれ、外もソウルラッシュに塞がれており行き場を失ってしまう。そのまま失速し見せ場なく11着に撃沈。川田は「ここにきてまた改めて身体が成長しようとしていて、バランスが変わっているなと……もう一度、成長してからですね」とコメントした。
年内ラストは海外遠征。香港マイル(GⅠ)に引退レースのサリオス、同じく初香港のシュネルマイスターとともに参戦(しかしサリオスは跛行で出走取消)。鞍上はウィリアム・ビュイック。香港名は「野田赤蠍」となった。レースは出遅れて後方からになり、直線では前に突き放されて見せ場なく9頭立ての6着。ビュイック騎手は「馬は頑張ってくれましたし、まだ伸びしろがありそうです」、安田師は「3歳の時点でこういう大きな舞台での経験が、これから先に活きてくると思います」と前向きなコメントを残した。
4歳
明けて4歳は間隔を開け、5月の京王杯スプリングカップ(GⅡ)から始動。鞍上は再び川田将雅。当日オッズは単勝3.6倍とアーリントンカップ以来の1番人気に支持された。最内枠から発進し、道中は7番手から少しポジションを上げていったが直線で伸びを欠いて勝ち馬レッドモンレーヴから0.5離された11着。なお、このレースは3着ダディーズビビッドから12着トゥラヴェスーラまでがクビ差決着となり、ちょっと珍しいレースとなった。解雇祭りではない
次戦は安田記念(GⅠ)に出走。この年のヴィクトリアマイルを制したソングラインとそのライバルであるシュネルマイスター、リベンジを狙うソダシにマイルGIダブル制覇のかかるセリフォスの他にも、中距離路線からジャックドール、短距離路線からはナランフレグ、3歳世代からはシャンパンカラーとドルチェモア、そしてダート戦線からはなぜか今年も出走しているカフェファラオと、バラエティ豊かなGI馬が自身含め10頭も顔を並べた。鞍上は川田がソダシに騎乗するためミルコ・デムーロ騎手が手綱を取った。
ウインカーネリアンが逃げ、ジャックドールが二番手に。その後ろにソダシ、ドルチェモア、カフェファラオが続き、セリフォスに並ぶ形でレースを進めたが、やはり直線で脚が止まり13着と敗れた。デムーロ騎手も「うまくいったし、すごく状態はよかったですけど、直線は伸びなかった。よく分かりません」と首を捻る結果となった。
その次はCBC賞(GⅢ)の予定もあったが登録にとどめ、結局1600mの中京記念(GⅢ)に決定。鞍上は横山和生で、ハンデは最重量の59kg。スタートで出負けしたことが大きく響き、見せ場なく12着に終わった。
秋初戦はマイルチャンピオンシップ(GⅠ)。鞍上は団野大成。2枠3番から発進し先行集団に取り付くが、外差し馬場だったことなどが起因し先行勢が総崩れ。これに巻き込まれて失速し13着に終わった。団野騎手はレース後コメントで「最後に気を抜くと聞いていたけど、直線に入るところから気を抜いていた」と、気を抜く癖が出てきたことを指摘した。
年内最終戦は阪神カップ(GⅡ)を選択。ブリンカーを装着し集中力の矯正を図った事でスムーズに道中進んでいたが、やはり直線で気が抜けてしまったようで見せ場なく沈んでいき13着。団野騎手も「最後はやめてしまうような感じでした」とバッサリ。
5歳
3月6日、定年退職により解散する安田隆行厩舎からこの日から開業する福永祐一厩舎に移籍。GI馬が福永厩舎に来るぞと注目が集まる中、始動戦は今年も京王杯スプリングカップ(GⅡ)となった。鞍上は初騎乗となる戸崎圭太。追い切りではなんと開業前から福永調教師自ら騎乗(!?)していたようで、好感触をアピール。およそ2ヶ月間じっくりと名手に競馬を教え込まれたダノンスコーピオンは、5枠9番からまずまずのスタートを決める。メイショウチタンやウインマーベル等が前に殺到する中馬群の後ろの方に位置取り、良い感じに直線を向くとしぶとく前へ前へと脚を伸ばし、キャリア最速となる上がり3ハロン33.1を計測。しかし物凄い脚で追い込んできたレッドモンレーヴとそれに呼応して追い比べに持ち込んだウインマーベルの2頭を捉えられず、3番手争いに3/4馬身遅れを取り4着と馬券内には僅かに及ばなかったものの、最後まで気を抜くこと無くレースをこなし、戸崎騎手も「復活の兆しを見せてくれた」「乗り味や筋肉の質も良い」と期待値の高いレース後コメントを残した。
騎手として様々な実績を残した福永祐一だが、調教師としてはまだまだ未知数な新人調教師。そんな彼との出会いがダノンスコーピオンの転機になるのか、見守っていきたい。
血統表
ロードカナロア 2008 鹿毛 |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | *ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
レディブラッサム 1996 鹿毛 |
Storm Cat | Storm Bird | |
Terlingua | |||
*サラトガデュー | Cormorant | ||
Super Luna | |||
*レキシールー 2011 鹿毛 FNo.9-f |
Sligo Bay 1998 鹿毛 |
Sadler's Wells | Northern Dancer |
Fairy Bridge | |||
Angelic Song | Halo | ||
Ballade | |||
Oneexcessivenite 1996 鹿毛 |
In Excess | Siberian Express | |
Kantado | |||
Favored One | Son of Briartic | ||
Highly Favored |
クロス:Northern Dancer 5×4(9.38%)
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関連リンク
関連項目
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