ナランフレグとは、2016年生まれの日本の競走馬である。栗毛の牡馬。
馬名の意味はモンゴル語で『太陽+速く飛ぶ馬』。馬主は西城公雄→村木克成。
ダート戦での実績が顕著なゴールドアリュール産駒で初めて、そして現状唯一芝GIを勝利した競走馬である。
概要
父ゴールドアリュール、母ケリーズビューティ、母父ブライアンズタイムという血統。
父はSS産駒では珍しかったダートでの活躍馬。種牡馬としてもダートの名馬を多数送り出した。
母は船橋で3勝、血統的には曾祖母の兄にホウヨウボーイがいるくらいで目立つファミリーではない。しかし牝系は非常に古く、10代母は小岩井農場が明治40年に輸入した基礎牝馬の1頭フラストレートである。
母父は90年代を代表する種牡馬。ナリタブライアンやマヤノトップガンの印象が強いが父としても母父としてもダートの方が活躍馬が多い。
総じてダート馬にしか見えない血統であるし、母父BTに加え母母父はタマモクロスとあって中長距離っぽさもある。しかし母ケリーズビューティは南関東のダート1200-1500mで4勝、母母ビューティークロスに至っては中央の芝1000-1200mで4勝した生粋のスプリンターであった。ナランフレグの適正はこの辺りから来ていたのかもしれない。
初代オーナーの西城氏は2021年5月に逝去し、相続人は馬主資格を引き継がなかった為、西城氏と仕事で親交があった村木氏に引き継がれることになった(スポーツ紙記事その1,その2)。ナランフレグとアーバンイェーガーという二頭の馬を引き継いで馬主となった村木オーナーだが、この二頭は以前の主を失ったことで奮起したのか、引継後に複勝圏内入りを連発する。ちなみにアーバンイェーガーはその流れで2022年の初春ステークスを勝利し、総額1億3000万余円を稼いでいる。
太陽へ駆けろ
2018~2019年
美浦の宗像義忠厩舎に入厩し、2018年10月、宗像師の愛弟子である「マルちゃん」こと丸田恭介を主戦騎手としてデビュー戦(ダート)を勝利。しかしその後、9か月間勝利に見放される。
やっと2勝目を挙げたのは2019年7月、芝に転向した新潟1000mの閃光特別(1勝クラス)(戸崎圭太騎乗)。上がり最速で馬場のど真ん中をぶち抜く、新潟千直のセオリーを外れた快走であった。続く1200mの飯豊特別(2勝クラス)も勝利し、芝短距離戦線に専念する方向性が固まる。12月、鞍上が丸田騎手に戻った浜松ステークス(3勝クラス)も2馬身半差の完勝で制し、オープン馬に昇格したところで3歳を終える。
ここまで12戦4勝、丸田騎手はその内の6戦2勝を担当。浜松Sの翌週、日頃は記者の取材にいろいろとよく答えるマルちゃんはナランフレグの素質を感じ取ったのか、珍しく小声でこう語ったという。
2020~2021年
4歳初戦にして重賞初挑戦となるシルクロードステークス(GIII)。ナランフレグは8番人気に反し、アウィルアウェイの3着と好走する。
が、正直この後の戦績に関しては特筆することがない! なにしろ2021年12月のタンザナイトステークス(OP)を勝つまで13戦、丸2年も勝ちから遠ざかってしまうのだ。馬券内に入ったのも2着が3回だけ。この間、馬主の交代があったのは前述したとおり。
ただ、着順は置いといてレース内容を見てみると、シルクロードSからタンザナイトSまでの14戦中、なんと9戦で上がり最速を計時している(他、上がり2位・3位を2戦ずつ)。基本戦法が後方からの差し・追込で、結果的に届かないという流れが多く、右回りに難があったとはいえ、凡百の馬と切って捨てるには惜しいものがあるのも事実であった。そしてレースを重ねるごとに右回りにも対応していったことから、穴党からは密かに注目される馬として知られていく。
2022年
6歳初戦は2度目のシルクロードS。ここをメイケイエールの3着と好走すると、続くオーシャンステークス(GIII)も鋭い末脚でジャンダルムの2着。相手なりに走れるようになり、収得賞金も加算したことから、陣営は遂に念願の初GI・高松宮記念への出走を決める。
22年高松宮記念:日輪が輝く時
当時の短距離戦線はグランアレグリア、ダノンスマッシュ、モズスーパーフレアが一挙にターフを去り、新鋭ピクシーナイトも負傷療養中と、主役が不在だった。人気はG1合計2着5回の善戦ウーマン・レシステンシア、初6ハロンのグレナディアガーズ、シルクロードSで本馬を破っているメイケイエールが集め、4番人気以下は混戦。
ナランフレグは27.8倍の8番人気に落ち着く。最近調子を上げているとはいえ実績は薄く、前2走は外差しでの好走だったのに入ったのは1枠2番であることを考えれば妥当な人気であろう(ちなみに過去10年間の高松宮1枠は着外9回、3着1回(ロードカナロア)の「死の枠」である)。だが、丸田騎手はタンザナイトSで「馬群を割っての差し切り勝ち」を収めたナランフレグを信じ、「自信を持ってインコースに行こう」と心に決めていたという。
前日の大雨が残り重馬場の本番。スタートしたナランフレグは枠なりでインの後方に落ち着く。レースはレシステンシアが逃げる波乱の展開で、メイケイエールは中団、グレナディアガーズは後方の競馬となる。前半3ハロンは33秒4と重馬場にしては流れ、馬群は横に広がった状態で直線に突入。外目の馬が軒並み伸びあぐねる中、ナランフレグはそのまま空いた最内を突いて進出。レシステンシアと2番手を追走していたジャンダルムが直線半ばで力尽き、内目で脚を貯めていた各馬が馬場の真ん中から殺到し接戦模様となったところに、レシステンシアの外をすり抜けるようにして飛んできたナランフレグが勢いそのままに抜け出しゴール。初重賞制覇をGIで成し遂げた。
横に広がっている!その内から2番!ナランフレグ!広がってゴールイン!
最後は内から、ナランフレグだぁっ!! ナランフレグです!丸田恭介!
馬郡の間を捌いていって、最後の一突き届いています!
2着にゴルシの許嫁ロータスランド(5番人気)、3着にキルロード(17番人気)が突っ込み、3連単は2,784,560円の大波乱となった。
デビュー16年目の丸田騎手、開業30年目にして定年を3年後に控えた宗像師、馬主1年目の村木オーナー、生産者の坂戸牧場全員が初GI制覇。馬主だけなんかあっさりとか言わない。[1]更にゴールドアリュール産駒では初の芝GI制覇であり、ついでにタマモクロスを血統内に持つ競走馬のGI制覇も初と、初物づくしの大金星となった。師匠である宗像厩舎の馬でGI勝利を果たしたマルちゃんは馬上で感極まり、ファンの声援を受けて(「もっと喜んでいいよ」と声援が飛んだらしい)ガッツポーズ。涙を必死にこらえて勝利インタビューに臨み、馬券を外して心中阿鼻叫喚だった観客達も、遅咲きながらオオカン桜の中で見事な大輪の花を開かせた人馬双方に温かい拍手で迎えたのだった。
(宗像厩舎にとっても初勝利を届けることができました。それについてはいかがですか?)
そうですね……先生には、ずっとお世話になりっぱなしで……。何か、一つでもと思ってたんで、こういう大きな舞台で、恩返しできたと思うと、とても幸せです。ありがたいです……―丸田恭介
次走は安田記念を選択。1600mはデビュー2戦目のダート戦・カトレア賞以来となり、芝では初となる。さらに枠番は前走から一転して大外18番に放り出されたこともあり、12番人気となった。
丸田騎手は距離延長を考慮したのか、内を回るコース取りをするが、それが災いして他馬に阻まれ、最後の仕掛けが遅れてしまった。結果は9着だったが、レース内容自体は決して悪いものではなく、ある程度の距離延長にも対応できることを示した。
2022年スプリンターズステークス:負けてなお強し
夏は休息を取り、秋はスプリントGIの大一番・スプリンターズステークスへ直行。セントウルSを勝ち悲願のGI獲りに挑むメイケイエールを迎え撃つ立場となっていたが、前走で対戦したシュネルマイスター、夏の上り馬テイエムスパーダやこの年の桜花賞3着に短距離重賞で抜群の実績がある3歳の俊英ナムラクレアを前に5番人気に。レースは最後尾からの追撃で上がり最速の末脚を見せるも3着、ジャンダルムの同レース史上初の母子制覇に3/4及ばなかったが鋭い脚を見せ、前人気を覆して春のスプリント王の意地を見せた。
次走は暮れのスプリント大一番、香港スプリントへの遠征。昨年2頭が予後不良になる事故が起きた同レースだが、6歳にして手に入れた勲章を引っ提げスプリントの本場に挑んだ。結果は10着だった。
2023年
7歳初戦はオーシャンステークス(GIII)。上がり2位タイの33.2秒の末脚も全く届かない9着。本番の高松宮記念(GI)は不良馬場。上がり2位の35.1秒を繰り出し、4着を確保する。前年に引き続き安田記念(GI)に挑むも、全く見せ場ない17着。キーンランドカップ(GIII)は上がり3位タイの35.6秒を繰り出すも、位置取りが後ろすぎたか、10着。そして、スプリンターズステークス(GI)で9着となり、これをもって引退となった。今後はヴェルサイユリゾートファームにて種牡馬入りの予定。
かつて丸田騎手が語り、その宣言通り、そして父と自身のその名前の如く快速スプリントGI勝利という力強く輝く星を掴み取ったナランフレグ。今後、彼の快速を受け継ぐ馬は出てくるだろうか。
血統表
ゴールドアリュール 1999 栗毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ニキーヤ 1993 鹿毛 |
Nureyev | Northern Dancer | |
special | |||
Reluctant Guest | Hostage | ||
Vaguely Royal | |||
ケリーズビューティ 2001 青毛 FNo.1-b |
*ブライアンズタイム 1985 黒鹿毛 |
Roberto | Hail to Reason |
Bramalea | |||
Kelley's Day | Graustark | ||
Golden Trail | |||
ビューティークロス 1991 栗毛 |
タマモクロス | シービークロス | |
グリーンシャトー | |||
コミヤマビューティー | *ノーザンテースト | ||
ホウヨウクイン |
クロス:Hail to Reason 4×4(12.50%)、Northern Dancer 4×5(9.38%)
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関連項目
脚注
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