ダノンスマッシュ(Danon Smash、野田重撃)とは、2015年生まれの日本の競走馬。
新ひだか町・ケイアイファーム生産、栗東・安田隆行厩舎所属
馬主はダノックス(ダノン冠でお馴染み、オービック創業者野田順弘の資産管理会社名義)
主な勝ち鞍
2020年香港スプリント(GⅠ)、2021年高松宮記念(GⅠ)
2020年京王杯SC(GⅡ)、セントウルS(GⅡ)
2018年京阪杯(GⅢ)、2019年シルクロードS(GⅢ)、キーンランドC(GⅢ)、2020年オーシャンS(GⅢ)
名前は「冠名+打ち砕く。相手を打ち砕く強烈な走りを期待して」
龍王の血脈
父ロードカナロア、母*スピニングワイルドキャット、母父*ハードスパンという血統。
父のロードカナロアは現役時代香港スプリント連覇などを果たした、日本競馬史上最強ランクのスプリンター。2014年より種牡馬入りし、2015年生まれの本馬はロードカナロアの初年度産駒である。
母の*スピニングワイルドキャットは現役時代アメリカで1勝を挙げ、母父の*ハードスパンは7ハロンの米国GⅠを勝った他ケンタッキーダービーとBCクラシック2着がある。種牡馬として米国を中心にGⅠ馬を多く輩出し、1年だけ日本で種牡馬生活を送った事がある。
伯父のWar ChantはBCマイルを勝ち、祖母のHollywood WildcatはBCディスタフを勝っている。父ロードカナロアの母方の血統も米国由来であり米国色の強い血統である。
ロードホースクラブとダノックス御用達のケイアイファームに生まれた本馬はダノックス所有馬として走ることとなり、父ロードカナロアを管理した安田隆行調教師の管理を受けることとなった。
重撃
2~3歳
デビューは2歳7月の新潟開催。芝1400mで鞍上に戸崎圭太を迎えたが、早め先頭から粘りこむも外から来た馬に競り負けて新馬勝ちはならず。続く未勝利戦では福永祐一に乗り替わり、逃げたラブカンプーを差し切って勝ち上がり、続くもみじSでは稍重馬場ながら直線で追われると鋭く伸びて3馬身差と快勝。
2歳戦の締めくくりとして朝日杯フューチュリティステークスに出走するが、出遅れが響き後方から追い込むも同馬主であるダノンプレミアムの5着に敗れた。
年が明けて中京のファルコンSより始動。1番人気に支持されたがまたも出遅れが響き追い込みも届かず7着に敗れ、続くアーリントンCでは北村友一を鞍上に迎え、先行するも後続に差されて5着。NHKマイルカップでは先行して結構粘っていたものの残り1ハロンで鞍上が立ち上がりかける不利もあり7着となった。
NHKマイルカップの後は夏競馬に参戦。当時1600万下(現3勝クラス)だったので条件戦の函館日刊スポーツ杯に出走すると、初の古馬混合戦ながら好位から直線脚を伸ばして勝利しオープン入りを果たす。
続いてキーンランドCに出走し、逃げるナックビーナスを見ながら進め、快調に逃げた相手に2馬身半差も並びかけた3着馬をクビ差競り勝ち2着と好内容の競馬。
三ヶ月空けて京都の京阪杯に出走。ワンスインナムーンやアレスバローズといった重賞戦線で活躍した馬を相手に1番人気に支持され、レースでは内枠から先行馬を見る好位に位置取り、直線では最内を突いて最後は突き抜け、2着に2馬身近く差を付けて快勝。重賞初制覇となった。
4歳~5歳春
古馬となった初戦はシルクロードS。1番人気に支持されたこのレースでは内枠から先団を見る位置で追走。直線に入って進路が無かったが外に持ち出して追い出すと鋭い末脚を見せて抜け出し1着。重賞連勝を飾った。
続く高松宮記念では単勝2.5倍の1番人気に推され、相手には快足牝馬モズスーパーフレアやファルコンSを勝ったミスターメロディ、セイウンコウセイやレッツゴードンキなどがいた。レースでは逃げるモズスーパーフレアを見る4番手辺りを外目から追走し、直線では外から追い上げを見せたが、ダノンスマッシュより内目で立ち回ったミスターメロディ他3頭の伸びが勝り4着に敗れた。尚この高松宮記念は3人気-12人気-17人気で決まった超波乱レースであった。
春シーズンには他に適鞍が無く、再び夏競馬に参戦し函館スプリントSから始動…の予定だったが安田厩舎が使っていたサプリメントの中に禁止薬物が検出され、本馬をはじめJRAでは156頭が競走除外となった。詳しくはグリーンカルで検索されたし。
その後札幌のキーンランドCに出走。タワーオブロンドンやナックビーナスなどが参戦し、新たに川田将雅を鞍上に迎え、レースでは外枠から中団に控え、終始外を回すも直線では鋭い伸びを見せてタワーオブロンドンとリナーテを従えながら先頭でゴール。重賞3勝目を挙げた。
その後スプリンターズステークスに出走。これまでの実績もあり1番人気に支持され、差の無い2番人気にタワーオブロンドン、次いでモズスーパーフレア、3歳馬ディアンドルという人気。
レースでは1枠2番から控えて7, 8番手から追走。モズスーパーフレアが前半3F32秒8と快調に飛ばしそのまま逃げ込み態勢に入る所、外目から追い出すが、先に前に出たタワーオブロンドンに抜け出され、モズスーパーフレアもクビ差差し切れず3着となった。
次に香港スプリントに出走し、名手ランフランコ・デットーリが騎乗する事になったが、最後少し差を詰めたものの8着に敗れた。
明け5歳となりオーシャンSから始動。相手にタワーオブロンドンがいたが別定戦の為ダノンスマッシュの斤量が2kg軽く、こちらが1番人気となった。レースでは内枠から好位に付けて直線で脚を伸ばし、先に抜け出したナックビーナスを並ぶ間もなく交わしてゴール。重賞4勝目となった。
続く高松宮記念は重馬場となり、タワーオブロンドンが1番人気で阪神カップを圧勝したグランアレグリアが本馬と単勝タイの2番人気。レースではモズスーパーフレアがやはり逃げ、ダノンスマッシュは若干出負けして先団を見る位置から進めたが直線で伸びが鈍く、前ではクリノガウディーが斜行したり4頭広がってゴールしたり大混戦となっていたがそこに参加できず10着となった。
高松宮記念の後は府中の京王杯スプリングカップに出走。1400m戦はファルコンS以来約2年ぶりである。GⅡに出走するのは何気に初めてだったりする。コロナ禍の中でも短期免許で来日していたダミアン・レーンが鞍上となり、ずっと1200mを使ってきた事もあり1番人気をタワーオブロンドン(腐れ縁だなあ)に譲った。レースでは稍重馬場の中大外枠からハナを切って逃げる。直線の坂を登り切ってから追い出すと、直後に居たステルヴィオの追撃を300mに渡り封じ、最後には1馬身以上離してゴール。重賞5勝目。
続いて安田記念に出走。ここでは現役最強馬のアーモンドアイが出走してきており、本馬はマイル実績が無く8番人気。戦前はダノンプレミアムのサポート役説も流れていた。レーンも川田も空いていない為鞍上は三浦皇成にスイッチ。レースではハナを主張して淡々と逃げ、坂の頂上までは先頭をキープしていたが流石に苦しくなり人気通りの8着となった。
5歳秋
秋シーズンはセントウルステークスから始動。相手にはミスターメロディや3歳馬ビアンフェなどがおりやはり本馬が1番人気。鞍上は三浦皇成。レースでは大外16番枠からスタートし、先行馬から少し離れた4番手を追走。直線に入って非常に手応え良く、残り200mで先頭に立つと後続の追い上げを封じてゴール。短距離重賞6勝目を挙げ、これまで複勝圏内に入れなかった中京コースで初勝利を挙げた。
その後2度目となるスプリンターズステークスに出走。1番人気は安田記念でアーモンドアイを破ったグランアレグリア、次いで高松宮記念を繰り上げながら制したモズスーパーフレア、3番人気は本馬である。鞍上は川田将雅に戻った。レースでは3番枠から発馬は微妙ながら二の足がついて4番手を追走。モズスーパーフレアとビアンフェの大逃げにより馬群は縦長となり、ダノンスマッシュは前との差を詰めつつ外に持ち出し脚を伸ばす。大外からグランアレグリアが常識外の末脚を見せて先にゴールに飛び込むが、同じように脚を伸ばしてきたアウィルアウェイは半馬身封じて2着。間違いなく強い競馬をしたものの怪物に上回られてしまった。
そして香港国際競走、香港スプリントへ出走。日本からは本馬とタワーオブロンドンが出走し、本馬には豪腕ジョッキーであるライアン・ムーアが騎乗する事となった。地元香港勢からは前年2着のHot King Prawnなど、豪州から世界最高賞金のスプリント戦ジ・エベレストを制したClassique Legendが参戦。ダノンスマッシュのブックメーカーによる戦前のオッズは概ね6番人気辺りであった。
レース本番。野田重撃 [1] ことダノンスマッシュは大外14番枠からスタートを決めて早速ムーアが押して押して加速をつける。道中は中団の外目につけて追走し、直線に入るとムーアが追い出して脚を伸ばす。ダノンスマッシュは馬群の外目にいるが、ダノンスマッシュより内にいる馬達は妙に伸びが弱い。そうこうしている内に残り150mでダノンスマッシュが先頭に立つと、後方から追い上げてきたJolly BannerやRattanの追撃を封じて2着に半馬身差でゴール。
何と初GⅠ制覇が日本競馬界において鬼門の一つである香港スプリント。しかも日本競馬史上初となる「親子による同一海外GⅠ制覇」も達成。ほぼ騸馬で構成される香港競馬で「親子による同一GⅠ制覇」も史上初となる。龍王から受け継いだ正に強烈な「重撃」であった。
6歳
帰国後高松宮記念に出走するプランが安田師より発表され、年が明け予定通りに高松宮記念へ出走。
当日の中京競馬場は雨の影響で重馬場となり、前年重馬場の同レースで大負けしていた事もあり1番人気を前哨戦の阪急杯を勝ってきたレシステンシアに譲り、本馬は2番人気。他にはインディチャンプやラウダシオン、モズスーパーフレアなど短距離実績馬が数多く集まった好メンバーとなった。
鞍上は川田将雅に戻り、レースではやはりモズスーパーフレアが逃げ、外目の14番枠から中団、馬群に入って追走する。直線に入って外に進路を求め、残り250m辺りで真っ直ぐ走れる進路を確保し満を持して追い出す。最内のモズスーパーフレアが粘り込みを図る所にインディチャンプが内から、ダノンスマッシュが中から、レシステンシアが外から強襲。最後は短いながらも3頭による激しい追い比べとなり、最後はダノンスマッシュが外のレシステンシアをクビ差封じて入線。GⅠ2勝目を挙げ3度目の正直を達成。課題と思われた道悪馬場をも克服した。
続いて香港チャンピオンズデーに行われるチェアマンズスプリントプライズへ出走。地元香港勢や豪州勢は例年に比べ非常に手薄な面子となり、鞍上にはジョアン・モレイラを迎え、過去10年の複勝率50%という5番枠を引き当て、ブックメーカーでも日本国内のオッズでも圧倒的1番人気となる。
しかしレースでは先団を見る位置から進めたものの4コーナーで置いていかれる形となり、最後は脚を伸ばしたものの6着に敗れた。
日本に戻ってからは、3度目の正直を目指すスプリンターズステークスへと直行。同い年のライバルであるモズスーパーフレア、古馬勢からレシステンシア、クリノガウディー、ファストフォース、三歳勢からは牡馬ピクシーナイト、さらには鞍上に池添謙一を迎えて「名古屋走り」からの脱却を図る牝馬メイケイエールとこれまでの短距離戦線を彩ったメンバーが揃った中、前哨戦のセントウルSを好走したピクシーナイト、レシステンシアと人気を分け合う形で単勝2.6倍の一番人気に推される。しかしレースでは中団から伸びを欠き、ピクシーナイトの6着に敗退した。
12月の香港スプリントを前に、このレースを最後に引退・種牡馬入りすることが発表された。スプリンターズSでの鬱憤を晴らし、ラストランでの連覇達成で花道を飾るべく香港に乗り込んだ、のだが……。
後方からレースを進めていたところ、最終コーナーに入ったところで外目を先行していたAmazing Starが突如転倒。避けきれなかった後続も次々とそこに巻き込まれ、12頭中4頭が落馬競走中止、うち2頭がレース後に予後不良となる大事故が発生した。ダノンスマッシュもあわや転倒しかけたものの、鞍上・川田が必死に大外へ持ち出して何とか回避。しかしもはや勝負になる状況ではなく、前とは70馬身も離されて完走馬中最下位の8着に終わった。とは言え、少しでも勝負に色気を残していたら更に最悪の結果に陥っていた可能性は高く、これは咄嗟の判断で何よりも無事を優先した川田騎手の好騎乗であろう。
最後はやや後味の悪い結果になったものの、ともあれ遅咲きのスプリント王者は種牡馬として新たな道に入る。親子2代で香港を制したそのスピードを更に受け継いでいく産駒に期待である。サンデーサイレンスの血が一滴も入っていないので薄め液需要もあるだろうし。
血統
ロードカナロア 2008 鹿毛 |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | *ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
レディブラッサム 1996 鹿毛 |
Storm Cat | Storm Bird | |
Terlingua | |||
*サラトガデュー | Cormorant | ||
Super Luna | |||
*スピニングワイルドキャット 2009 栗毛 FNo.4-r |
*ハードスパン 2004 鹿毛 |
Danzig | Northern Dancer |
Pas de Nom | |||
Turkish Tryst | Turkoman | ||
Darbyvail | |||
Hollywood Wildcat 1990 黒鹿毛 |
Kris S. | Roberto | |
Sharp Queen | |||
Miss Wildcatter | Mr. Prospector | ||
Elizabeth K. |
5代内クロス:Mr. Prospector 4×4(12.5%)、Northern Dancer 5×4(9.38%)、Roberto 5×4(9.38%)
関連動画
関連項目
脚注
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