「やる夫はアフリカで奇跡を起こすようです」はアフリカ大陸南部の国・ボツワナ共和国の初代大統領、セレツェ・カーマの人生を描くやる夫スレ。ボツワナを軸に膨大な資料に裏打ちされた現代アフリカの問題点を笑いを交えながら楽しく分かり易く暴きたてている。
歴代やる夫スレの中でも屈指の名作と名高い。
作者には書籍化の打診もあったようだが残念な事に作者の意向により企画は一旦見送られた。
スレ作者は Opqr◆XLjdU8ssbY 氏。ニコニコ動画において bellbell 氏が動画化。
クリスマスまでではなかったが終わった。
アフリカ大陸の黒人国家というと、人的資源や魅力的な自然環境、石油・金・銀・ダイヤモンドなどの天然資源が豊富であるにも関わらず、人種対立・民族対立・宗教対立に明け暮れる“ヒャッハー無法地帯”ばかりな印象が根強い。
そうした中、アフリカ大陸南部の内陸地にある「ボツワナ共和国」だけは、そうした紛争状態に陥ることなく、国としての成長を遂げた。本作は、なぜボツワナだけがそのような国づくりができたのかを描き、そしてアフリカ南部の「超大国」であり、アフリカの20世紀の縮図でもあった「南アフリカ連邦→南アフリカ共和国」の激動を活写した大作である。
完結作であり、まとめサイトもある。南部アフリカなど、一般的な日本人にとってほとんど馴染みのない地域のひとつであるが、戦後日本が歩んできた道、そして現代日本が抱える諸問題に対して示唆を与える事象が少なくない。動画化を楽しみつつ、本文を読み込んでいくことを強くお勧めする。
話数 | あらすぢ |
第一話 (1921年~49年) |
大英帝国の保護領ベチュアナランド(現ボツワナ)には、牧畜を生業とするツワナ人たちが暮らしていた。最大部族のングワト族に生まれ、若くして王位を継いだセレツェ・カーマ(=やる夫)は、留学先のイギリスで白人女性ルース・ウィリアムズ(=長門有希)と運命の出会いを果たす。 |
第二話 (1949年~56年) |
結婚騒動はついに隣国の南アフリカと宗主国のイギリスを巻き込んだ政治的な問題に発展し、やる夫はイギリス政府によって故郷への帰国を差し止められてしまう。当時のベチュアナランドにはこれら大国の内政干渉に対抗できる力はなかった。王位を選ぶか。ながもんを選ぶか。やる夫は選択を迫られる。 |
第三話 (1956年~66年) |
やる夫のもとに、ンゲワケツェ族の青年クエット・マシーレ(=やらない夫)が訪れ「首相にならないか」ともちかける。この時期アフリカを席巻した植民地支配からの独立の気運は、ベチュアナランドにも押し寄せていた。 かくしてやる夫とやらない夫は独立運動を展開。このときやる夫が行ったいくつかの選択が、その後のボツワナの命運を他のアフリカ諸国と分かつこととなる。 |
第四話(1967年) | 独立を果たしたやる夫率いるボツワナ共和国。しかし国内は援助なしで立ち行かない貧乏ぶり。国外は四方を仮想敵国に囲まれているという八方塞がりの状態であった。 そんな中、国内でダイヤモンドの鉱脈が発見されるが、やらない夫は「トランスヴァールの再来」を危惧するのだった…… |
第五話 (1967年~) |
ダイヤモンド採掘により、ボツワナの予算はこれまでと比較にならない程増大した。やる夫・やらない夫は降ってきた多額の資金の使い道を思案する。 しかしこの資金の使い道について、他のアフリカ諸国と大差があったわけではないとはスレ主の弁。ボツワナの内政が他国と一線を画している点は何か。財政均衡路線と汚職をキーワードにスレ主が独自の考察を展開する。 |
第六話 (1968年~69年) |
他のアフリカ諸国が鉱山を国有化しようとし、合弁の鉱山企業と対立する中、ボツワナは堅実に鉱山企業と歩調を合わせる姿勢を取り続ける。 鉱山企業側であるデ・ビアスの経営者ハリー・オッペンハイマー(=喪黒福造)に焦点が当てられている回。南アフリカの財界トップが、自国のアパルトヘイトについてどのように考えていたかが描写されている。 |
第七話 (1970年) |
独立してから最初の総選挙の年。他の独立したアフリカ諸国が次々と独裁制に移行していく中で、やる夫は民主主義を貫いて第一回総選挙を実施する。果たして選挙の結果は…… アジアの途上国が開発独裁で国家の発展に成功する一方、アフリカ諸国の独裁制がそうならなかったのはなぜか。民主主義がアフリカ諸国にもたらした働きに関するスレ主の考察も必見。 |
第八話 (1970年~) |
ダイヤモンド以外の産業を模索するやる夫のもとに、ボツワナ北部の自然と野生生物を目的とした観光産業の話が舞い込んでくる。やがて鉱山に次ぐ主要産業として観光業はボツワナに定着するが、自然保護区内のサン人たちを強制移住させたことは、後々になって問題化していく。 |
番外編 「モーリシャスは繁栄しました」 |
インド洋に浮かぶ小さな島、モーリシャス。サトウキビ畑しかない狭い国土。高い人口密度と失業率。そして宗教も民族も言語すらバラバラな国民構成。一歩間違えれば紛争で自壊しかねない状況で独立したこの国は、しかし現在ではアフリカ有数の豊かな国となった。ボツワナすら凌ぐもう一つのアフリカの奇跡、モーリシャスの歴史を解説する。 |
第九話(1972年) | イギリスをはじめ、西側諸国からのODAによってボツワナは堅調な発展を続けていた。東西冷戦下においてアフリカには超大国から多額の援助資金が流れこんでおり、ボツワナもその恩恵を受けたのだ。 しかしこうした援助にもかかわらず、多くのアフリカ諸国が貧困と内戦にあえいでいるのはなぜか。スレ主が「資源の呪い」に絡めて考察・解説している。 |
第十話 | 他のアフリカ諸国の例にもれず、ボツワナも決して単一民族による国家ではない。多数派のツワナ族でさえ、8つの部族に分かれている。いかにして民族意識・国民意識が醸成されたのか。やる夫の祖父の世代に起こった出来事から、ボツワナにおける民族の連帯感の起源を考察する。 |
第十一話:言語と教育 | 近代国家の建設において教育が重要なことは言うまでもない。しかしアフリカではなぜ教育がうまくいかないのだろうか。そこには教育そのものだけでは改善できない、言語というもう一つの問題があった。「一民族一言語」が当たり前の日本人にとっては盲点となりやすいアフリカの教育問題に触れる回。 |
第十二話:成長 | 前回までに触れた資源の呪いや民族同士の軋轢、言語や教育といった数々の難問を無事クリアできたボツワナは、やる夫とやらない夫の指導の元で着実に発展を続けていく。 一方でやる夫の経済政策の問題点にも触れつつ、70年台前半のやる夫政権とボツワナの実情を総括する。 |
第十三話:前線諸国 (1973年~75年) |
やる夫の外交政策に関する回。ボツワナは他の黒人諸国と隣国の白人至上主義国家である南アフリカとの間で終始バランスを取らなければならない、厳しい状況が続いていた。 一方、アフリカ南部における白人と黒人の勢力争いは、この頃を転機として徐々に変化を見せていくのだった。 |
第十四話:自立への道(1975年) | 三国共同大学の接収事件を契機に、やる夫は教育のみならず、経済においても自立への道を模索し始める。独立当時は夢でしかなかった「自立」が現実味を帯びる程に、ボツワナの国力は成長していたのである。 しかし、白人政府と黒人ゲリラの紛争が続く東の隣国ローデシアとの間で、危惧していた最悪の事態が起ころうとしていた…… |
第十五話:祖国 (1976年~77年) |
この時期に起こった国境での紛争を境に、やる夫はローデシアへの対決姿勢を明確にする。これはボツワナという国家が、国民たちにとって「守るべき祖国」として認識されている証でもあった。 アパルトヘイト下の南アフリカにおけるホームランド政策についても解説。「黒人たちの祖国」として造られたホームランドであったが、その実情は…… |
第十六話:遠い夜明け(1977年) | 南アフリカが中心の回。第6話でも登場したスティーブ・ビコ(=赤木しげる)の活躍により、停滞していた南アフリカの黒人解放運動はこの頃に再び活性化。ソウェト蜂起でついに火を噴き、アパルトヘイトは少しずつ、しかし確実に揺らぎ始める…… |
第十七話: ローデシア崩壊 (1978年~80年) |
南アフリカのアパルトヘイトが妥協局面に入る中で、もう一つの白人国家ローデシアも崩壊の兆しを見せ始める。一方この頃のやる夫は外交面で黒人諸国の中心として辣腕を振るい、三度目の総選挙でも大勝利を収め、内外ともに順風満帆の状況であった。しかし…… |
第十八話: (1980年~84年) (元スレのタイトルは「巨星落つ」) |
幼少の頃に叔父ツェケディ(=やるオプーナ)から教えられた、ツワナ族に伝わる古い諺を、夢の中で思い出すやる夫。目覚めたやる夫は、首相官邸の窓から首都ハボローネの町を臨む。かつて不毛の原野だったこの地の、現在の状況に感慨を深めるのだった。最愛の家族と、生涯の盟友やらない夫に囲まれたやる夫。そして…… |
第十九話 アパルトヘイトの動揺 (1982年~90年) |
ここから数話は、再び南アフリカに関する話題に割かれる。80年台に入り、アパルトヘイトの綻びがいよいよ表面化してきたのである。国内外からの厳しい非難を受けつつもなお、政府中枢の保守派はアパルトヘイトの維持に固執。南アフリカはアパルトヘイトへの猛烈な反発と、それに対する苛烈な弾圧とで混迷の度を増していく。 |
第二十話: 自由への長い道 (前編) (1990年~) |
南アフリカ大統領フレデリック・デクラーク(=ペンウッド卿)はついにアパルトヘイトの撤廃を決意。投獄されていたネルソン・マンデラ(=コブラ)を解放し、彼を中心に国内の統合を図る。しかし当時の南アフリカでは白人はおろか同じ黒人同士の間でも対立が深まっており、各主要勢力による武力闘争は国内全域へと拡大してしまう。 |
自由への長い道 (後編) (1990年~93年) |
アパルトヘイト撤廃後も続く混沌とした状況の中、黒人勢力筆頭のANCと、白人勢力筆頭の国民党を中心に、全人種議会のための新憲法制定会議が始まった。だが各勢力の利害対立の根は深く交渉は困難を極める。そんな中で南アフリカ共産党書記長のジョー・スロヴォ(=ムック)から憲法草案に一つの提案が出された。 |
第二十一話: 全人種選挙 (1993年~94年) |
新政府設立のための全人種選挙の開催が決まった南アフリカ。だがこの方針に不満を持つ白人右翼や一部の黒人ホームランドは選挙のボイコットと暴動に走る。全人種の全派閥が選挙に参加しなければ、アパルトヘイトを撤廃した意味が無い。「虹色の国」をつくり上げるため、マンデラやデクラークたちの粘り強い説得が続くも、投票日は刻々と迫っていた…… |
第二十二話: 緑の革命 |
やる夫政権下でボツワナが穀物生産を放棄してしまったことは十二話でも触れたが、やらない夫政権下でもこの点に変化はなかった。この時期、世界的に起こった「緑の革命」は、ボツワナはじめアフリカ諸国の農業の発展につながらなかったのである。飢餓や食糧問題からアフリカ諸国が未だに逃れられない原因について考察していく回。 |
第二十三話:投資 (1989年~94年) |
この頃、やらない夫政権は証券取引所法案を国会に提出。ついにボツワナに株式市場が開設された。 また同時期に起こった冷戦終結と東欧革命はアフリカ諸国に民主化をもたらし、ODAの使途にもメスが入る。これまでの独裁制とODAの浪費を咎められた他のアフリカ諸国と対照的に、ボツワナはその堅実な成長が国際社会に認められ始めた。だがその影で…… |
最終話:未来(前編) (1993年~98年) |
政権発足以来最大の汚職事件にエイズのパンデミック。かつてない危機がやらない夫政権とボツワナを襲った。これを打開すべく、やらない夫は後継者の選定を急ぐ。 エイズが蔓延した経緯とその影響にも触れており、南部アフリカではエイズが社会基盤を崩壊させかねない被害をもたらしたことが解説されている。 |
未来(後編) (98年~2008年) |
やらない夫に代わって政権を引き継いだフェスタス・モハエ(=できる夫)がまず対応を迫られたのは、猛威をふるうエイズへの対策であった。そしてこの問題を解決する鍵は、やる夫とやらない夫が建国以来進めてきた地道な開発の中に隠されていた。 そして2008年。やる夫の息子、イアン・カーマ(=やる太)がボツワナのトップに立つ日がやってくる。 |
エピローグ | 現在のボツワナの姿を描く。 明るい民衆の姿、発展していく経済、大学まで整備された教育、良く維持されている交通インフラ、保護された豊かな自然、隅々までいきわたった医療などは当たり前の事のように見えるがそうではない。やる夫を初めとした為政者たちが守り育ててきたものがそこにはあった。 エンドロールでは登場人物たちのその後が紹介される。 そして最後には衝撃のラストが待ち受けていた。 |
人物 | キャスト | 役処 |
---|---|---|
セレツェ・カーマ | やる夫 | ボツワナ共和国初代大統領。 |
クェット・マシーレ | やらない夫 | ボツワナ共和国副大統領。カーマの盟友。 |
ルース・ウィリアムズ | 長門有希 | セレツェ・カーマ夫人。イギリス人。 |
イアン・カーマ | やる太 | セレツェ・カーマの息子。 |
ツェケディ・カーマ | やるオプーナ | ベチュアナランド(ボツワナ)のングワト族摂政。セレツェの叔父。 |
モツァイ・ムポ | ハトヤマユキオ | ボツワナ独立党党首。 |
フィリップ・マタンテ | オザワイチロー | ボツワナ人民党党首。 |
バトエン2世 | 昭和天皇 | ボツワナ国民戦線党首 |
(サン人) | サン(もののけ姫) 瀬戸燦(瀬戸の花嫁) |
ボツワナの少数民族。ブッシュマン。 |
人物 | キャスト | 役処 |
---|---|---|
(アフリカの一般的政治家) | 麻呂(水戸黄門) | どうしようもない奴ら。経歴だけは一流。 |
(アフリカの一般的教師) | アティ(サモンナイト) | アフリカ諸国の政策に振り回される可哀想な人。 |
(アフリカの白人官僚) | ハイドリッヒ・ラング (銀河英雄伝説) |
独立したアフリカ諸国に残った白人官僚。有能。 |
(アフリカの一般的農民) | キリト、アスナ (ソードアート・オンライン) |
アフリカ諸国の国民の大多数を占める人々 |
イアン・スミス | ギレン・ザビ | ローデシア共和国首相。白人至上主義者。 |
ンダバニンギ・シトレ | シドニー・シトレ (銀河英雄伝説) |
反政府組織、ジンパブエ・アフリカ民族同盟所属。 |
ロバート・ムガベ | ロバート・ムガベ(本人) | 反政府組織、ジンパブエ・アフリカ民族同盟所属。 |
ケネス・カウンダ | 熱気バサラ(マクロス7) | ザンビア大統領。 |
ソブーザ2世 | 伊藤誠(School Days) | スワジランドの君主。 |
モショエショエ2世 | 大妖精(東方project) | レソト(バソトランド)の君主。 |
レアブア・ジョナサン | チルノ(東方Project) | レソト王国の首相。 |
ジュリウス・ニエレレ | 岡部倫太郎 (シュタインズゲート) |
タンザニア大統領。 |
サモラ・マシェル | シオニー・レジス (第2次スーパーロボット大戦Z) |
モザンビーク大統領。 |
ジョゼ・エドゥアルド・ドス・サントス | 花山薫(バキ) | 反政府組織、アンゴラ解放人民運動の指導者。 敵対組織と共にアンゴラを擾乱の渦に叩きこむ。 |
ジョナス・サビンビ | 愚地独歩(バキ) | 反政府組織、アンゴラ全面独立民族同盟の指導者。 敵対組織と共にアンゴラを擾乱の渦に叩きこむ。 |
ホールデン・ロベルト | 烈海王(バキ) | 反政府組織、アンゴラ国民解放戦線の指導者。 敵対組織と共にアンゴラを擾乱の渦に叩きこむ。 |
シウサガル・ラングーラム | わたし(人類は衰退しました) | モーリシャス初代首相。 |
(モーリシャン) | 妖精さん(人類は衰退しました) | モーリシャス国民。 フランス系、インド系、華僑、クレオール等々 |
人物 | キャスト | 役処 |
---|---|---|
クレメント・アトリー (ほか大英帝国イメージ) |
涼宮ハルヒ | 大英帝国首相(労働党)。 |
(ベチュアナランド高等弁務官) | 野比のび太 | ベチュアナランド(ボツワナ)の総督的存在。 |
(英領モーリシャス総督) | ドラえもん | 植民地時代モーリシャスの総督。 |
(アメリカ合衆国) | 孫悟空 | 西の脳筋。ODAを垂れ流す。 |
(ソヴィエト連邦) | フリーザ | 東の脳筋。ODAを垂れ流す。 |
掲示板
61 ななしのよっしん
2022/03/01(火) 13:46:26 ID: aOFgwekbEB
国際情勢が色々大変なことになって連想して思い出してる人が多いみたいね
https://
作者さんがこの中でも触れてる通り、やる夫が作中で語っていた“「独立」「主権」が異様に重い時代”が崩壊しつつある
62 ななしのよっしん
2022/03/25(金) 09:21:57 ID: +7nS99phI2
それで面倒くさいことになんでもかんでも無理やり関連付けてる人も多いな
それとそれを一緒にするなや…とかスレ見てたからこそ思うことある
63 ななしのよっしん
2023/09/18(月) 01:51:11 ID: 5mbktBAOuj
ブテレジも亡くなった
南アフリカの建国の祖が全員鬼籍に入られたな
急上昇ワード改
最終更新:2024/05/30(木) 04:00
最終更新:2024/05/30(木) 04:00
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