メイショウベルーガ(Meisho Beluga)とは、2005年生まれの日本の競走馬・繁殖牝馬(2005 - 2021)。芦毛の牝馬。
最高勝鞍はGIIも、芝中長距離を舞台に直線追い込みで牡馬とも渡り合った京都巧者。白い馬体にピンクと青のメンコのルックスでも人気を博した。
主な勝ち鞍
2010年:日経新春杯(GII)、京都大賞典(GII)
父フレンチデピュティ、母パパゴ、母父Sadler's Wells。
フレンチデピュティはアメリカにてデビューから4連勝で1995年のジェロームハンデキャップ(G2)を制するも、同年のブリーダーズカップ・クラシック9着を最後に引退、6戦4勝・現役期間はわずかに1年という馬である。引退後はアメリカで種牡馬となっていたが、社台グループが購入し日本に移動、2001年シーズンから供用された。すると同年、米国で種付けし日本に輸入された産駒の中から、クロフネがNHKマイルカップとジャパンカップダートの芝ダート二刀流GI勝利、ノボジャックもダートで快進撃を続けJBCスプリントを制覇。さらに日本での産駒が2004年にデビューするといきなりアンブロワーズが函館2歳ステークスを制するなど新種牡馬リーディングを獲得。このように種牡馬人気がどんどん上がりつつあった中の、2005年の産駒である。
アイルランド産の母パパゴは、現役時代は欧州で7戦1勝。その母系では、メイショウベルーガの祖母にあたるパサマクォディ(Passamaquoddy)の全姉ナバホプリンセス(Navajo Princess)が、日本でもお馴染みの凱旋門賞馬ダンシングブレーヴと、1992年のディアヌ賞・ヴェルメイユ賞のフランス二冠牝馬ジョリファ(Jolypha)の全兄妹を産んでいる。また同じくベルーガの曾祖母オルメク(Olmec)を祖とする牝系からは、後にドウデュースが出ている。
生産は浦河町の三嶋牧場、栗東・池添兼雄厩舎所属。池添謙一を主戦にその末脚で重賞戦線を賑わせ、また「ベルーガ」(シロイルカ)の名の通り芦毛の白い馬体に、「メイショウ」のピンクと青のメンコを合わせた可愛いルックスの牝馬としても人気があった(キャリア途中からは赤いチークピーシーズも装着するようになった)。35戦7勝のうち重賞2勝を含む5勝を京都競馬場で挙げ、2010年エリザベス女王杯2着など重賞で連対したのも全て京都でという、京都専用機京都巧者でもある。
3歳となった2008年1月26日、池添謙一を鞍上にやや遅めの新馬戦を迎えたが(京都芝1600m)、中団待機から特に何も起こせず5番人気12着の凡走。そこで即ダートに転じた2月の2戦目(京都ダ1200m)で勝ち上がりを決めた。その後はダートの500万下を抜けられずにいたが、フローラステークス(GII)に出してみたところ4着と健闘したので、再び芝に戻り5月11日に500万下矢車賞(京都芝1800m)で2勝目。これで芝路線が固まった。
オークス(GI)にも登録はしてみたもののやはり条件戦2勝では除外。代わりに5月31日の残念ダービーこと白百合ステークス(現在はリステッド競走だが当時はOP)に出走するも、ヤマニンキングリーの6着に終わった。
8月に1000万下かもめ島特別(函館芝1800m)で3勝目、その勢いを駆り中1週でクイーンステークス(GIII)に出走も5番人気7着。秋は秋華賞出走を目指しローズステークス(GII)に出走も、マイネレーツェルの5着が精一杯で優先出走権獲得ならず。
いちおう秋華賞に登録はしたものの条件戦3勝だけでは……なんとギリギリではあるが抽選すら経ずに収得賞金が足りてしまった。初のGI出走決定である。なお、登録の時点でベルーガは他2頭と並んでボーダー下限の16番手タイだったが、その後モエレカトリーナ(紫苑ステークス1着で優先出走権)に屈腱炎が判明し回避(のち引退・繁殖入りが決定)、ひと枠空きができた。ここで補欠1番手から繰り上がって出走をつかんだプロヴィナージュに関しては色々騒動があったのだが、それは同馬の項目を参照されたい。
さて2008年10月19日秋華賞(GI)。池添は1番人気のオークス馬トールポピーの先約のためベルーガ鞍上はテン乗りの幸英明。道中後方で息を潜め、ほぼ最後尾から直線追い込みでの一発を狙ったが……4角で内から他馬に寄せられて大きく外に振られ、スムーズに仕掛けが出来なかった。それでも上がり2番手の34秒4は記録したものの、11番手でフィニッシュ。なお、1着ブラックエンブレム・2着ムードインディゴ・3着プロヴィナージュ、11-8-16番人気での決着で、三連単1098万2020円という当時のGI史上最高配当(秋華賞としては現在でも史上最大の大荒れ)のレースとなった事績もとみに知られる。
この秋華賞限りで2008年を終了。ここまで11戦3勝、新馬戦以外の全レースで上がり3番手以内と見るべき末脚はあるものの、この頃までは出遅れ癖もあり、オープン以上へはいま一歩という印象。シロイルカが跳ねるには、まだ時間が必要だった。
古馬になったベルーガだが、1600万下を突破できない日々が続き、夏には1000万下に降級。降級3戦目、夏競馬も終わろうかという9月5日の弥彦特別(新潟芝2000m)に勝利しクラスを戻した(ちなみにこの時の5着がこの年の菊花賞馬になるスリーロールスである)。10月24日、1600万下古都ステークス(歴史上、開催条件がかなりコロコロ変更されているレースだが、この年は京都芝2200m)を武豊騎乗で勝利、念願のオープン入りを果たした。
「10月に淀の2200mで牝馬が勝利しオープン入り」とくれば、これは勢いのままに同コースのエリザベス女王杯(GI)やっちゃいましょうよ、となるのは道理である。「荒れる女王杯」、この馬のパターンは狙い目だぞとばかりにベルーガは単勝19.6倍の6番人気と結構な支持を集めた。
……が、この年の女王杯の荒れっぷりはそんなものではなかった。そう、クィーンスプマンテとテイエムプリキュアの歴史的大逃げ、ぶっちゃけありえないふたりはプリキュアの年である。ブエナビスタが猛追するもクビ差プリキュアに届かず場内騒然、「これが競馬の恐ろしさ!」の実況、その後方で(みんなそれどころではなかったろうが)ベルーガはブエナビスタ・フランスから遠征のシャラナヤに続く5着。リトルアマポーラやカワカミプリンセスらに先着し、しっかりカイバ代を咥えて帰ってきた。競馬史上に残る大荒れレースの中、本格化の兆しは十分に見えたと言えよう。
続く愛知杯(GIII)では1番人気に推されたが、2番手追走から抜け出したリトルアマポーラと逃げたブラボーデイジーをクビ・クビ差捕まえきれず3着止まり。初重賞とはならなかった。
前年秋から本格化の兆しを見せていたベルーガは、5歳を迎えた2010年に充実期を迎える。
始動は日経新春杯(GII)から、ハンデは54kgと平均的だった。再軽斤のドリームフライトが逃げを打ち1000m58秒9と緩みない展開。池添のベルーガは大外8枠12番スタートから後方待機し、4角の下りから進出を開始。先行集団が苦しくなる中直線では馬場の真ん中からぐんぐん脚を伸ばし、2着トップカミングに3馬身差をつけ快勝。ついに初重賞勝利を挙げた。そして池添は例によって派手にガッツポーズを決めた。
次はさらに距離を延長し阪神大賞典(GII)。近走の好調もあって1番人気に推されたが、そもそも牝馬が勝ったことがないどころか出走そのものも非常に少ないこのレースで牝馬の1番人気は非常に珍しい事例であろう…。未経験の距離でも牡馬相手に最後まで先頭争いを演じたが、ここは長じてなお盛んな8歳馬トウカイトリックの老練な走りの前に3着まで。しかしアサクサキングスやホクトスルタンといった長距離の実績馬に先着し、好調の維持は示した。
続いて3000mでも勝負できたし京都競馬場ならいけるやろポチーとばかりに天皇賞(春)にも出走したが、最終直線を前に後方で脚を溜めていたところ、4角で内を突こうとしてバランスを崩したトーセンクラウンが外に大きく斜行し、ベルーガ他計5頭が不利を受けるあわや大事故の事態が発生。10着に終わった。(トーセンクラウンは18着降着、鞍上の江田照男は開催4日間の騎乗停止。)この後、宝塚記念(GI)は直線で追い込んだもののナカヤマフェスタの6着、新潟記念(GIII)は久々に出脚の悪さが出たり4角でもたついたりで4着。
さて秋は京都大賞典(GII)から。このところ馬券外が続いていたが、末脚自体は鈍っていなかったし得意の京都に戻って、ということでオウケンブルースリと僅差の2番人気。ドリームフライトの大逃げから始まり、4角で2番手逃げのゴールデンメインに先頭が入れ替わったが、ベルーガは直線馬場の真ん中でぐんぐん伸びてあっという間に先頭へ。オウケンブルースリの追撃も半馬身差残し、重賞2勝目を挙げた。
これほどの京都女番長となれば、もうGI狙うにはエリ女である。2010年11月14日の第35回エリザベス女王杯(GI)、ベルーガは1番人気こそこの年の三冠牝馬アパパネに譲ったものの、僅差の2番人気。
……結果、メイショウベルーガと池添謙一は力を出し切った。やることはやった。2年連続で逃げを打った(今年は相方はもういなかったが)引退レースのテイエムプリキュアには構わず、中団でしっかり脚を溜め、直線入り口で外に持ち出し、京都競馬場の馬場のド真ん中をここがアタシの大海原だとばかりに末脚爆発、アパパネ以下を外からまとめてブチ抜いた。……だがその時には既に、英愛オークス馬スノーフェアリーが内目からすんごい脚で突き抜けていたのである。2着ベルーガとは4馬身差。競馬にたらればは禁物だがこの相手さえいなければ、ベルーガは三冠牝馬を破り立派に女王の名に恥じぬ強さを見せた、と讃えられて女王杯を受け取っていたろう。だが、エリザベス女王杯外国馬初制覇、そして翌年の連覇により外国馬初のJRA平地同一GI連覇を達成する雪の妖精の前に、あと一歩GIの栄冠には届かず、鞍上の池添謙一にとっても父・兼雄師の馬でGIを獲るという目標は果たせなかった。
残るはGIしか獲るものは残っていないベルーガは、中1週でジャパンカップ(GI)へ、12月には有馬記念(GI)へと遠征したが、やはり関東の水は合わず6着・12着と敗北(中山競馬場に至っては5歳末まで30戦以上走って初めてだったので…)して5歳シーズンを終えた。
京都記念(GII)から始動。5番人気からトゥザグローリーの2着に入り、6歳でも健在を示した。次は天皇賞(春)の予定で調教されていたが、歩様の乱れにより回避、春を全休。
秋の復帰は天皇賞(秋)から。そこから中1週で前年惜しくも逃した女王杯へ、のローテが予定されていたらしい。そこは無理に苦手な関東に遠征するくらいなら女王杯ぶっつけで良くないすか!?
しかし、この年の秋天はハナを切ったシルポートの1000m通過が56秒5という、ブレーキの壊れたような超ハイペース。当然のように前が総崩れとなる中、追い出しを我慢した栗東の番長トーセンジョーダンが根性の走りをみせ、1分56秒1という10年以上保持されるレコードタイムで勝利した超高速レースである。この展開の中ベルーガは道中最後尾付近に控えていたが、異変を感じ取った池添は3角に差し掛かるところで外ラチに向かって馬を止め、競走中止とした。
池添は心配のあまり診断を待つ間控室で泣き腫らしていたが、下った診断結果は右前繋靱帯不全断裂。どうにか命は助かる、もし完全断裂なら予後不良もあったという重傷で、気づくのが遅れて大欅へ向かって下り坂を加速していたなら最悪の事態もあり得たのだろう。この件について池添は「ずっと乗っていた僕だから、気づいて止められたんだと思う。命が助かって良かった」と語り、兼雄師も定年の際に「重賞を勝った時よりも止めてくれた時。母親にさせてくれたジョッキーの判断には感謝しかない」と思い出のレースとして回顧している。
通算戦績35戦7勝。あと一歩GIには届かなかったが、獲得賞金約3億3000万円は混戦の2008年クラシック世代牝馬における稼ぎ頭かつ、フレンチデピュティ産駒牝馬の中でも最高である。そして、白い馬体で高いファン人気を誇ったシロイルカの物語が悲劇の結末を迎えず、故郷へ帰すことができたのは何よりであったと言えよう。
引退後は故郷の三嶋牧場で母となった。6頭の仔を産み、その全てが松本好雄オーナーの所有で「メイショウ」冠となった。その中から、
2021年8月2日、三嶋牧場にて病のため亡くなった。芦毛馬に多い皮膚ガンのメラノーマを罹患していたという。16歳没。上記のメイショウミモザと、最後の仔であるメイショウネムノキ(2020年産、父ロードカナロア)の2頭が繁殖に入り、ベルーガの牝系を繋ぐこととなった。
*フレンチデピュティ 1992 栗毛 |
Deputy Minister 1979 黒鹿毛 |
Vice Regent | Northern Dancer |
Victoria Regina | |||
Mint Copy | Bunty's Flight | ||
Shakney | |||
Mitterand 1981 鹿毛 |
Hold Your Peace | Speak John | |
Blue Moon | |||
Laredo Lass | Bold Ruler | ||
Fortunate Isle | |||
*パパゴ 1991 芦毛 FNo.3-d |
Sadler's Wells 1981 鹿毛 |
Northern Dancer | Nearctic |
Natalma | |||
Fairy Bridge | Bold Reason | ||
Special | |||
Passamaquoddy 1980 芦毛 |
Drone | Sir Gaylord | |
Cap and Bells | |||
Olmec | Pago Pago | ||
Chocolate Beau | |||
競走馬の4代血統表 |
クロス:Northern Dancer 4×3(18.75%)
母パパゴは愛国産、現役時代は欧州で7戦1勝。祖母Passamaquoddyの全姉Navajo Princessの産駒に、凱旋門賞馬ダンシングブレーヴとJolypha(1992年ディアヌ賞・ヴェルメイユ賞など)がいる。また同じく3代母Olmecを祖とする牝系からは、後にドウデュース(2022年日本ダービーなど)が出ている。
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最終更新:2024/05/27(月) 17:00
最終更新:2024/05/27(月) 17:00
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