大村益次郎とは (オオムラマスジロウとは) [単語記事]

一人の男が居る。
歴史が彼を必要とした時忽然として現れ、その役目を終えると大急ぎで去った。
もし維新というものが正義であるとすれば、彼の役目は津々浦々の枯れ木にその花を咲かせて回る事であった。中国では花咲爺の事を花神という。彼は花神の役目を背負ったのかも知れない。
彼、村田蔵六。後の大村益次郎である。
(NHK 大河ドラマ『花神』オープニング)

大村益次郎とは、幕末の医師、蘭学者、軍人であり、フトマユ＆オデコという2大萌え属性を備えた幕末屈指の萌えキャラである。好物は豆腐。

概要

文政7年(1824年)に長州藩周防国鋳銭司（すぜんじ）村で村医者の長男として生まれる。幼名は宗太郎。家業を継ぐ為天保13年(1842年)にシーボルトの弟子だった梅田幽斎の門下生となり、蘭学・医学を学ぶ。次いで天保14年(1843年)には儒学者の広瀬淡窓に学ぶ。弘化3年(1846年)には大阪で緒方洪庵の適塾に入門、成績はきわめて優秀で塾頭となる。

嘉永3年(1850年)、故郷に戻ると実家の医業を継ぎ村田良庵と改名。村田家では家業を継ぐものは代々良庵と名乗った為。嘉永4年(1851年)には結婚。度々単身赴任で居なくなったためか妻とは意思疎通がなかなか上手く行かず、帰るたびに鬼女と化した妻のヒステリーに悩む事になる。

村田のキャラクターを示すエピソードとして有名なものに以下のものがある。

通りすがり「いや～今日も暑いっすねえ～(;´Д`)」
村田「夏は暑いものです」
通りすがり「（　ﾟдﾟ）ﾎﾟｶｰﾝ」

良く言えば素直クール、悪く言えばKYの傾向があったようである。

宇和島藩出仕

嘉永6年(1853年)、黒船来航の年に宇和島藩(現在の愛媛県)からの要請を受けて出仕し、蘭学の教鞭をとる。この時蒸気船の製造を依頼された村田は提灯職人の嘉蔵と共同研究・開発の結果、蒸気船を造る事に成功する。幕末の四賢候と呼ばれた宇和島藩主伊達宗城は、もううれしくって感動で「走らさせて頂いてます┗(^o^ )┓三」と自ら操縦するほどの大はしゃぎっぷりだったと言う。

ちなみにこの期間長崎にて蒸気船の研究を行っているが、そこでシーボルトの娘である楠本イネと知り合い、イネに蘭学を教授している。

江戸滞在

良庵から蔵六と改名した村田は安政3年(1856年)に伊達宗城の参勤交代に伴って江戸に赴き、そこで鳩居堂という塾を開業する。と同時に幕府の蕃書調所(洋書の翻訳を行う役所)に勤めた。次いで翌年、老中阿部正弘の肝入りで作られた講武所の教授となる。

安政6年(1859年)10月頃、処刑場で遺体解剖をしていた際数日前に処刑された吉田松陰の遺骸をたまたま引き取りに来ていた桂小五郎と知り合う。長州出身の有為な人材という事もあり桂は藩に対して村田を召抱えるよう進言し、翌年正式に長州藩士となる。というのが通説だが、実際にはこの数日前に桂と村田は藩邸で会う日程の打ち合わせを行っており、遺体解剖はそのついでに村田が桂を招待したのが史実である。

文久元年(1862年)幕府の委託により外国人から英語を学ぶことになり、ヘボン式ローマ字で知られるヘボンに学ぶ。ヘボンはやって来た村田の他数名に二次方程式、代数、平面、球面三角法などの数学を試すが全て回答できたため驚いたことを本国への書簡で書き残している。

長州帰参

文久2年(1863年)5月、江戸の藩邸に居た村田の元に井上聞多(後の井上馨)がやって来た。この時、英国に留学する為に金が足りないから代理人として商人から5千両借りてくれと滅茶苦茶な要求を飲まされている。

6月、恩師の緒方洪庵が江戸で急死する。お通夜に出かけた際、隣にいた福沢諭吉が5月に長州で実行された外国船砲撃の件をネタに話しかけてきた。

福沢「オイ村田君、君は何時長州から帰った」
村田「この間帰った」
福沢「ﾄﾞｳﾀﾞｴ馬関では大変な事をやったじゃないか。何をするのか気違い共が、呆れ返った話しじゃないか」
村田「何だと、やったらどうだ」
福沢「どうだって、この世の中に攘夷なんてまるで気違いの沙汰じゃないか」
村田「気違いとは何だ、けしからんことを言うな。長州ではチャント国是が決まってある。あんな奴原に我儘をされて堪るものか。ことにオランダの奴が何だ、小さい癖に横風な面している。これを打ち払うのは当たり前だ。モウ防長の士民は悉く死に尽くしても許しはせぬ。どこまでもやるのだ。」
(福沢諭吉『福翁自伝』)

と、持ち前のKYっぷりを発揮して福沢をドン引きさせる。

この年長州に帰参した後、洋学教授に任命される。蔵六教授のオデコ属性に萌えた高杉晋作から「火吹き達磨」なる渾名をプレゼントされる。

翌年元治元年(1864年)、禁門の変から馬関戦争、第一次長州征伐と滅亡の危機に直面した長州藩だったが、年末に高杉が起こしたクーデターによって佐幕派を一掃し、割拠の様相を呈し始める。

潜伏中だった桂小五郎は密かに口の堅そうな村田に対してのみ居場所を教えており、間もなく長州に戻ると連絡後帰還する。

戻った桂は村田を100石取りの上士に推薦。更に奇兵隊をはじめとする諸隊の軍事教練や西洋兵学書の翻訳を任せる。この頃に大村益次郎永敏に改名、と同時にフトマユ＆オデコという2大萌え属性搭載の中央指令コンピュータZOROKUに変形。バッチ処理のように無駄なく的確に仕事をこなしていく。

第二次長州征伐

慶応2年(1866年)6月、去年からgdgdな動向を見せていた幕府軍がついに動き出した。

6月7日、まず大島口に艦隊を率いて現れた幕府軍は現在の山口県南東に位置する周防大島に艦砲射撃、11日に上陸して占拠する。ZOROKUは兵力に余裕が無い為周防大島は放棄すべきという計算を打ち出すが、住民に対して殺傷・略奪行為が行われているという情報が入ったため、憤激した長州藩首脳陣はZOROKUの案を拒否。高杉晋作率いる小型軍艦1隻、通称オテント丸を派遣して6月13日未明に幕府軍艦隊に対しゲリラ戦を仕掛ける。想定外の攻撃に驚いた幕府軍は、続けざまに世良修蔵というロックミュージシャンと炎の妖精のあいのこみたいな名前の人物が作戦指揮を執った長州軍によって、17日までに駆逐された。

次いで14日、芸州口にて戦闘が始まった。幕府軍先鋒は赤備えで知られる井伊直政を先祖に持つ彦根藩である。

赤備えの甲冑で法螺貝を吹き鳴らすという、まるで戦国時代そのままのいでたちで現れた彦根藩井伊軍に対し、全軍銃兵化した長州軍の西洋銃が火を噴いた。井伊軍も応戦するものの、火縄銃と旧式西洋銃では銃弾が相手に届かず相手の格好の的となり大混乱。甲冑を脱ぎ捨てて脱兎の如く逃げ出す者、船に乗り込んで逃げようとしたが乗員が多すぎてそのまま沈んでしまった者など悲惨な状況に陥る。幕府側の記録に以下のようなものが残っている。

「奇兵隊の者共、山々峰々より立ち現れ、猿(ましら)の如く駆け走り、見方の後ろを取り切り、打ち立て候弾丸当たりがたく、残念ながら敗績仕り候」
(原田外記『芸州表出陣中日記』)

フルボッコにされた井伊軍と一緒に遁走してきた榊原軍はみっともない退却劇を余儀なくされ、味方からも「井伊の赤備え(笑)」とm9(^Д^)ﾌﾟｷﾞｬｰされる始末。この汚辱を晴らそうと幕府直属の歩兵部隊と紀伊新宮藩を中心とする軍勢が襲来。この軍勢が非常に精強であり、芸州口では戦争終了寸前まで一進一退の攻防戦となった。

石州口ではZOROKU自ら出陣、指揮を執る。

石州口ではかねてから長州藩と内応していた津和野藩を素通りし、17日にそのまま無傷で浜田藩領内に侵入。ライフル銃を駆使した狙撃に脅える幕府側の指揮官が目印代わりに自分の陣羽織を部下に着せて逃げ出すなど醜態を晒す中、ZOROKU率いる部隊が城下町まで侵入、散兵戦術で相手を撹乱しつつ高所から狙撃していく。幕府の援軍も当てにならない状況で進退窮まった浜田藩は城に火を放って逃亡。ZOROKU率いる長州軍の勝利となった。

小倉口では高杉晋作が指揮しており、対岸の小倉藩と激戦を繰り広げていたが、幕府軍総督の小笠原長行が孤軍奮闘する小倉藩に対して救援を出さなかったり、将軍家茂が死んだと言う知らせが入ると黙って戦線離脱するなどだらしねぇ態度だったせいもあり、士気を失い追い詰められた小倉藩は城に火をつけ撤退する。

8月には事実上の休戦状態となった。

戊辰戦争

慶応4年1月3日(1868年1月27日)、旧幕府軍と新政府軍が鳥羽・伏見にて衝突する。大村はまだ時期尚早と見ていたが、旧幕府側の失態が重なり新政府軍の勝利となった。

4月、江戸城が無血開城されるとそれに不満を持つ旧幕臣たちが徒党を組んで彰義隊と名乗り、上野寛永寺に立て篭もり始めた。軍防事務局判事という肩書きを得た大村は江戸に派遣され、この鎮圧を任じられる。

この時薩摩藩の西郷隆盛と海江田信義という人物が大村と軍議を交わしており、西郷に対して大村が布陣を説明すると「この布陣は薩摩が最も危険ではないか」と問われ「然り」とのみ答えたという。

また、海江田に対しては「あなたは戦を知らない」と発言し激怒させている。この件が後の大村襲撃事件に尾ひれをつける事になる。

1日で終わらせると言う宣言の元、5月15日朝、上野にて戦闘が始まった。アームストロング砲による援護射撃によって戦闘は有利に進み、夕刻には戦闘は終了。予告通り1日でカタをつけた。

東北での戦いも引き続き指揮して実質的な司令官として指揮を執る。

その後

明治2年(1869年)5月、函館にて旧幕府軍が降伏し戊辰戦争は終結する。6月、戊辰戦争の官軍側死者を祀るための神社建立を提唱。東京招魂社と言う名称から後に靖国神社と変更される。

新政府では国民皆兵論を唱えるものの、大久保利通らに反対され却下される。怒りを覚えた大村は辞表を提出するが木戸孝允(桂小五郎)に慰留され、7月に兵部大輔に任命される。軍制改革を進めていく中、9月に不満分子の襲撃を受け重傷を負う。この時楠本イネが大村の看護のため横浜から駆けつけている。医師の診断では負傷した足を切断しなければならないということだったが、そのための朝廷の認可が遅れたため容態が悪化し、11月5日に死去。享年45歳。