ボーイング(英:The Boeing Company)とは、アメリカ合衆国の航空宇宙企業である。本社はイリノイ州シカゴに存在する。
概要
世界的な航空機メーカーでもあり、ヨーロッパの航空機製造メーカーであるエアバス社とは民間機市場を二分している。特に、大型から小型までのジェット旅客機においてはエアバス社と市場を独占している状態にある。
現在、日本の大手航空会社である日本航空(JAL)と全日本空輸(ANA)の機材のほとんどが、ボーイング社が吸収合併したマクドネル・ダグラス社の機体を含め、ボーイング社製のジェット機である。尤も、両者ともつい近ごろエアバス機を発注しているのだが・・・
軍用機市場においてもボーイングは長い歴史を持っており、戦略爆撃機の嚆矢であるB-17、日本本土空襲・原爆投下で有名なB-29、半世紀にわたり現在に至るまで現用であるB-52などの戦略爆撃機、または旅客機を転用したE-3、E-767、KC-767、P-8(炎上開発中)などの大型機に定評がある。
また、大規模な業界再編に伴ってマクドネル・ダグラス等の同業他社を吸収合併した結果、F-15などの戦闘機、AH-64やCH-47などの回転翼機も生産しており、近年では防衛/軍事部門の比重が高まっている。
航空機以外では人工衛星、宇宙機器、ミサイル、艦艇なども生産している。
歴史
1916年にシアトルで設立された。元々は、軍用機開発と郵便事業用の航空機を開発していたが、ボーイング・エア・トランスポート社を設立し航空輸送事業にも進出することとなった。
1929年に航空機エンジンを手がけるプラット&ホイットニー社などの複数の会社が統合し、飛行機の開発から運航まで行うユナイテッド・エアクラフト・アンド・トランスポート社の航空機開発部門となったが、1934年に独占禁止法が適応されて、以下の三部門に会社が分かれることとなった。
1936年に軍用機B-17がアメリカ陸軍へ採用された。B-17は大型でコストも高かったが、従来の双発機(二つプロペラをつけた航空機)では力不足であった第二次大戦下のヨーロッパ戦線で大量に運用されることとなった。
第二次大戦中にはB-17よりも更に大型の軍用機B-29も採用され、日本本土への爆撃や原爆投下に運用されることになった。
第二次大戦が終結した後、軍用機部門ではB-47・B-52・C-96などで成功を収めたが、民間旅客機ではC-96輸送機を改造したB377を出したものの、既に高い実績を持っていたダグラスやロッキードの牙城は奪えず商業的に成功したとはいえなかった。
1954年には、ジェット試作機B367-80の飛行に成功した。この機体が元となり、輸送機C-135やその空中給油機型のKC-135、民間航空機B707が生み出されることになった。特に、B707は大西洋横断航路などの長距離国際線に運用されることなり商業的に成功をおさめ、後の民間航空機メーカーとしての土台がこの時点で築かれることとなった。
1960年代には、中型機B727や小型機B737が開発されたことから、レシプロエンジン(ピストンエンジン)動力によるプロペラ機(レシプロ機)が主流であった航空機市場をジェット機へ塗り換えていくこととなった。特にB737は何度も改良が行われ、同社の主力として今も販売されている。
1969年には競作で敗れた軍用輸送機の設計を転用した超巨大機B747の飛行に成功。B747の登場で民間航空市場における大型輸送が一般的となり、航空機市場に多大な影響を及ぼした。後の改良で大型化が行われた他、短距離型、貨物型などの派生型も生み出されるなどされるなど、ボーイング社の主力製品として市場に出回ることなり、かつて民間機市場を牛耳ったマクドネル・ダグラスとロッキードの落日も重なって民間航空機メーカーとしてのボーイング社の位置は確固たるものとなった。
だがそんなB747のシンデレラストーリーの裏には、輝かしい未来を約束されていながら最終的に騒音・環境問題などの理由で計画中止された超音速旅客機B2707の悲劇があったのである。
1970年後半に差し掛かり、市場の需要の変化を受けて、大型化・高性能化よりも安全性や低燃費性を優先するような方向転換をボーイング社も強いられることとなった。(これ以降のボーイング社は日本やイタリアなどの海外の会社の協力を得て航空機の開発を行っている。)
1980年代初頭にはB727の後継機として中型機B757と中型機B767の開発と販売を行った。なお、B757とB767の違いは、客室の通路が一つ(ナローボディ、B757で採用)であるか二つである(ワイドボディ、B767で採用)かが特徴である。
1990年代には、マクドネル・ダグラス社のMD-11やエアバス社のA330やA340などの燃費や性能なども向上させた大型機が発表されたこともあり、超大型機B747と中型機B767などの間を埋める目的兼ね、ボーイング社も大型機B777の開発と販売を行った。
1997年には、アメリカ国内の航空機メーカーとしてのライバルであったマクドネル・ダグラス社を吸収合併し、2001年にはシアトルからシカゴに本社を移転したが、この間ヨーロッパのエアバス社が販売実績でボーイング社を追い上げていくこととなり、21世紀に入るまでに民間航空機業界の再編が行われることとなった。
2005年には、中型機であるB787(ドリームライナー)の基本設計が発表されることとなり、そのローンチカスタマー(初受注した会社)として全日本空輸(ANA)が大きく報道されることとなった。
2009年、B787は当初の引渡し予定よりも開発が大幅に遅れ、エアバス社もB787の競合機となるA350XWBを発表した。
2011年、8月26日にB787の初号機がANAに納入され、各種試験、乗員習熟訓練を実施の後、実際の運用に入っている。(2011年12月現在)その一方で、日本航空もB787を発注しており、2012年4月22日に新設する成田-ボストン便に同機を就役させた。
部門・子会社
- ボーイング・コマーシャル・エアプレインズ(BCA, Boeing Commercial Airplanes) - 民間機の開発・製造・マーケティング等を担当。
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ボーイング・ディフェンス・スペース&セキュリティ(BDS, Boeing Defense, Space & Security) - 軍用機・宇宙機の開発・製造、防衛プログラム等を担当。ボーイング統合防衛システムズ(IDS)として知られている。
- ボーイング・キャピタル(Boeing Capital) - 融資及び航空機のリース等を担当。
- ボーイング・シェアド・サーヴィシズ・グループ(Boeing Shared Services Group) - 各事業におけるサービス等を担当。
代表的な機材
- 航空機
- B707
- 水中翼船
- 旧:マクダネル・ダグラス社
関連項目
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