女王の時間
まだそのときではないと
運命がささやくのなら
いまは耐えることにしよう選ばれし者の威厳を保ちつつ
情熱の火力は落とさずに
凛として機を待とう
ミッキークイーン(Mikki Queen)とは、2012年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
桜花賞の除外をバネにオークスと秋華賞を獲った2015年の二冠牝馬。
2015年:優駿牝馬(GI)、秋華賞(GI)
2017年:阪神牝馬ステークス(GII)
概要
父ディープインパクト、母*ミュージカルウェイ、母父Gold Awayという血統。
父は説明不要の無敗三冠馬にして無敵のリーディングサイアー。
母はフランスからの輸入繁殖牝馬で、2007年のドラール賞(G2)など重賞3勝、2007年香港カップ3着などの実績がある。ミッキークイーンは第3仔。
母父ゴールドアウェイはアイルランド産のフランス調教馬。重賞4勝を挙げたがG1では5戦して2着4回3着1回というシルバーコレクターであった。種牡馬としては4ヶ国でG1を5勝したアレクサンダーゴールドランを輩出している。
2012年2月8日、ノーザンファームで誕生。2013年のセレクトセールにて、1億円(税抜)で落札された。オーナーはミッキーアイル、ミッキーロケットなど「ミッキー」冠名を用いる野田みづき(「ダノン」冠名のダノックス・野田順弘の妻)。
主戦騎手は浜中俊で、1戦を除いてデビューから引退まで騎乗した。
女王は揺り籠を揺らす
2歳~3歳
栗東の名門・池江泰寿厩舎に入厩し、2014年12月7日、阪神・芝1400m・牝馬限定の新馬戦でデビュー。単勝1.4倍の断然の支持を受けたが、スタートで出遅れ、後方からぶっちぎりの上がり最速33秒7で追い込んだものの逃げ馬に半馬身届かず2着。
中1週で阪神・芝1600mの混合戦の未勝利戦に向かい、2馬身差で快勝して勝ち上がる。
明けて3歳はクイーンカップ(GIII)から始動。しかし関東への輸送でガレてしまい、なんと馬体重-20kg(424kg)。ここでも最後方から断然の上がり最速で追い込んだが、クビ差届かず2着。
とりあえず2着の収得賞金は確保したので、陣営は立て直しを優先してトライアルを回避、桜花賞直行を目指したが、2/3の抽選に通らず、あえなく除外となってしまった。
仕方ないので桜花賞の同日、阪神の忘れな草賞(OP)に出走。ここは中団から豪脚で突き抜け快勝。オークスへ向けた賞金を無事に確保する。
迎えた優駿牝馬(GI)では、桜花賞を1番人気で9着に落とし雪辱に燃えるルージュバックが2.7倍の1番人気で、その桜花賞を逃げ切ったレッツゴードンキが6.0倍の2番人気、ミッキークイーンは6.8倍の3番人気だった。馬体重は+4kgで、問題の輸送はクリアしていた。
道中は中団後方に構えたミッキークイーン。直線で好位からルージュバックが抜け出しを図り、同じ勝負服の6番人気クルミナルがそれを追う。そこへ外から猛然と追い込むミッキークイーン! 府中の長い直線で自慢の末脚を存分に揮い、一気に2頭をかわしてゴールへ飛び込んだ。
桜花賞除外の悔しさを晴らす樫戴冠。浜中騎手は「この馬の実力を証明出来て非常に嬉しく思います」と語り、池江師も牝馬クラシックは初制覇となった。
秋はローズステークス(GII)から始動。しかしここは課題のスタートで出遅れ、大外を猛然と追い込んだが、7番人気タッチングスピーチに突き放されての2着。
本番の秋華賞(GI)では、そのタッチングスピーチと人気を分け合う形で3.0倍の1番人気。
17番人気ノットフォーマルが1000m通過57秒4というハイペースで逃げる展開の中、課題のスタートを無難に決めて中団に構えたミッキークイーンは、直線で馬群の中から力強く抜け出す。後方からクイーンズリングが猛然と追い込んできたが、クビ差凌いでゴール板を駆け抜け二冠達成。勝ちタイム1:56.9は前年のショウナンパンドラを0.1秒更新するレースレコード、コースレコードにも0.1秒差の好タイムとなった。
今度は浜中騎手も池江師も「ホッとしました」と安堵の表情であった。浜中騎手はショウナンパンドラに続いて秋華賞連覇を達成した。
続いて二冠牝馬としてジャパンカップ(GI)に参戦。ラブリーデイ、ゴールドシップに次ぐ3番人気に支持されたが、馬群がゴチャついた中で他馬にぶつけられてバランスを崩してしまい、末脚不発で8着に敗れた。
4歳~5歳
明けて4歳は阪神牝馬ステークス(GII)から始動。浜中が落馬負傷のため、このレースのみクリストフ・ルメールが騎乗した。中団後方から上がり33秒3の末脚で追い込むものの、逃げたスマートレイアーにクビ差届かず2着。
浜中が復帰したヴィクトリアマイル(GI)では3.4倍の1番人気に支持されたが、後方から馬群を割って追い込むものの、抜群の手応えで先に抜け出した7歳馬ストレイトガールに2馬身半突き放されて2着。
この後、左前脚靱帯炎を発症し、宝塚記念を回避して休養。秋は京都大賞典からの予定だったが、これも球節の捻挫で回避となる。
というわけでぶっつけでエリザベス女王杯(GI)へ。宝塚記念を勝ったマリアライトと人気を分け合って3.6倍の2番人気に支持されたが、中団に構えて外から追い込んだものの3着。
年末の有馬記念(GI)ではキタサンブラックとサトノダイヤモンドの2強対決の中、21.9倍の7番人気。中団からレースを進めて直線追い込むものの前には届かず、それでも地味に掲示板確保の5着。
明けて5歳も阪神牝馬ステークス(GII)から始動。小雨の重馬場の中、外から一気の末脚であっという間に差し切り、2.2倍の支持に応えて1年半ぶりとなる勝利を挙げる。
これでヴィクトリアマイル(GI)では1.9倍の圧倒的1番人気に支持される。しかし直線で全く伸びず、まさかの7着撃沈。前年の靱帯炎の影響かコーナーでの左手前替えを嫌がったようで、この後は右回りのレースに絞ることになった。
宝塚記念(GI)では春古馬三冠のかかるキタサンブラックや逃げたシュヴァルグランが沈む中、後方から外を追い込み、サトノクラウンとゴールドアクターには届かず地味に3着。
その後、夏に靱帯炎が再発。幸い軽度で、秋はエリザベス女王杯(GI)に直行したが、逃げ粘ったクロコスミアと、それを捕らえてかわしたモズカッチャンに僅かに届かず3着。
年末の有馬記念(GI)は終始後方のまま11着に終わり、翌1月に現役引退、繁殖入りとなった。
通算17戦5勝、獲得賞金5億1131万円。
古馬となってからもGIで2着1回、3着3回と堅実な走りを見せた二冠牝馬だが、ぶっちゃけて言うとあんまり語ることがない馬でもある。ノーザン産のディープ産駒、セレクトセール1億円の有力個人馬主所有馬で、厩舎も名門、鞍上もミッキー軍団の主戦という絵に描いたようなエリート。それでいて牡馬相手にGIを勝ったわけでもないし、作った記録も秋華賞のレコードタイムぐらい。古馬戦線でも堅実に馬券に絡んだとはいえ、桜花賞除外で三冠を逃したことを惜しまれるほどではなく、これといった個性的なエピソードもない。クラシックで戦った同期の牝馬にも後に大活躍するような大物は出ず、生涯を通してライバルらしいライバルもいなかった。
結果、JRA-VANの名馬メモリアル
につけられたタイトルすら「牝馬戦線で堅実無比に活躍した二冠クイーン」という他に何か語ることはないのかと言いたくなるものである。だから2015年の二冠牝馬なのに2023年まで大百科の記事が作られなかったわけで……。
引退後
引退後は故郷のノーザンファームで繁殖入り。同じミッキー冠のミッキーロケットとの仔である、2020年産の第2仔ミッキーゴージャスが2024年の愛知杯(GIII)を勝利し重賞制覇を果たした。
二冠牝馬から繁殖でも名牝の座へ、母の名をさらに高める子供たちの活躍を楽しみにしたい。
血統表
| ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
| Cosmah | |||
| Wishing Well | Understanding | ||
| Mountain Flower | |||
| *ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
| Lady Rebecca | |||
| Burghclere | Busted | ||
| Highclere | |||
| *ミュージカルウェイ 2002 栗毛 FNo.2-s |
Gold Away 1995 栗毛 |
Goldneyev | Nureyev |
| Gold River | |||
| Blushing Away | Blushing Groom | ||
| *スイートリベンジ | |||
| Mulika 1987 鹿毛 |
Procida | Mr. Prospector | |
| With Distinction | |||
| Gazelia | Icecapade | ||
| Dols Jaminque | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
クロス:Northern Dancer 5×5(6.25%)
全姉のインナーアージの娘に2023年のエリザベス女王杯を制したブレイディヴェーグがいる。
関連動画
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関連項目
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