きたない君がいちばんかわいいとは (キタナイキミガイチバンカワイイとは) [単語記事]

『きたない君がいちばんかわいい』とは、まにおによる漫画作品である

概要

一迅社発行の『コミック百合姫』にて2019年 8月号から連載が開始され、2022年 4月号で完結を迎えた。単行本は百合姫コミックスより全5巻が刊行されており、第5巻には特装版も存在する。

本作は、スクールカースト上位に位置する優等生の少女・瀬崎愛吏と、物静かで目立たない少女・花邑ひなこという、一見接点のない二人の女子高生が織りなす歪んだ愛の物語である。放課後の化学実験室を舞台に、二人の間だけで行われる秘密の「儀式」は、愛と打算、そして倒錯した性癖に満ち溢れている。その過激な描写や登場人物たちの複雑な心理描写は連載当初から大きな注目を集め、「読む者の性癖を歪ませる」「衝撃的」といった感想と共に話題を呼んだ。

物語は単なる恋愛模様に留まらず、いじめ、スクールカースト、共依存といった現代社会の闇にも踏み込んでおり、少女たちの心の深淵と人間関係の危うさを鋭く描き出している。その強烈なテーマ性と描写から、読者を選ぶ作品であることは間違いないが、同時に多くのファンを獲得し、ASMR ドラマ化もされるなど、メディアミックス展開も行われた。

作者のまにお氏は、本作でその名を広く知られることとなり、本作完結後も『愛したぶんだけ愛してほしいっ！』（無自覚クズ×メンヘラがテーマ）といった意欲作を発表している。

本作には、嘔吐や失禁、経血といった描写のほか、精神的・肉体的な暴力、いじめなど、読者によっては強い不快感を覚える可能性のある過激なシーンが多数含まれている。そのため、ニコニコ動画の関連動画には「閲覧注意」のタグが付けられることもある。

単行本最終5巻の帯には「きれいな君もいちばんかわいい」というキャッチコピーが記されており、物語の結末や二人の関係性の変化を示唆するものとして、読者の間で様々な解釈を生んだ。

あらすじ

物語の幕開けは、同じ高校に通う瀬崎愛吏と花邑ひなこが、放課後の化学実験室で密かに行う倒錯的な「儀式」から始まる。クラスではスクールカースト上位に属し、誰からも羨望の眼差しを向けられる愛吏と、内向的で目立たない存在のひなこ。普段は交わることのない二人が、この場所でのみ共有する秘密の関係は、愛吏の嗜虐的な欲求と、それに応えることで愛吏からの愛情を得ようとするひなこの献身によって成り立っていた。

愛吏は、ひなこが自身の命令に従い、屈辱的な行為を受け入れる姿に歪んだ喜びを見出し、彼女の「汚い」部分にさえ性的興奮を覚えるという特異な嗜好を持っていた。一方のひなこは、中学時代に自分を気にかけてくれた愛吏に対し、純粋ともいえる思慕の念を抱いており、彼女の望むことであればどんなことでも受け入れる覚悟を持っていた。

しかし、二人の閉鎖的で異常な関係は、些細な出来事をきっかけとして徐々に周囲の人間の知るところとなっていき……

登場人物

瀬崎愛吏（せざきあいり）: 本作の主人公の一人。愛称は「あいちゃん」。高校一年生。; 容姿端麗、成績優秀で、クラスではスクールカーストの最上位グループに属している。明るく社交的に振る舞い、友人や教師からの信頼も厚い完璧な優等生を演じているが、その裏では花邑ひなこに対し極度の嗜虐趣味と歪んだ愛情を抱いている。放課後の化学実験室でひなこに屈辱的な行為を強要し、彼女が苦痛に歪む姿を見ることに性的興奮を覚える。; 完璧な外面を保つことに固執しており、自身の社会的評価が脅かされることに対して極度の不安を感じる。そのため、ひなことの関係が露見しそうになると激しく動揺し、精神的に脆い一面を見せる。物語が進むにつれて、その傲慢さや自己中心的な性格が露呈していく。
花邑ひなこ（はなむらひなこ）: 本作のもう一人の主人公。愛称は「ひな」。高校一年生。; 身体が弱く、大人しい性格で、クラスでは比較的目立たない地味なグループに属している。中学時代、転校してきたばかりで孤立していた自分に唯一優しく接してくれた愛吏に対し、強い好意と依存心に近い感情を抱いている。愛吏のためならどんなことでも受け入れるという献身的な姿勢を見せ、彼女からの嗜虐的な行為すらも愛情表現として受け止めようとする。; 当初は愛吏の言いなりになっているかのように見えるが、物語が進行するにつれてその内面に秘められた強さ、執念深さ、そしてある種の狂気が明らかになる。愛吏が精神的に弱っていくと、今度は彼女を支える一方で巧みに自身に依存させ、最終的には二人の関係における主導権を握っていく。
宮園一叶（みやぞのいちか）: 愛吏のクラスメイトであり、同じカースト上位グループに属する友人。明るくサバサバした性格で、ピアスをたくさん開けているのが特徴。; 愛吏とひなこの間に漂う尋常でない雰囲気や、二人の秘密の関係に薄々感づいてはいるものの、深入りはせず、一定の距離を保って接している。時には、二人の関係性を揺るがすような出来事のきっかけを作ったり、物語の展開に影響を与える行動を取ることもある。; 読者からは、彼女の存在が物語にリアリティや客観的な視点をもたらしていると評されることもある。
愛吏の友人たち: 瀬崎愛吏が属するスクールカースト最上位のグループのメンバー。愛吏の完璧な外面を信じているが、ひなことの異常な関係が露見し始めると、徐々に愛吏から距離を置くようになる。
ひなこの友人たち: 花邑ひなこが属する、やや地味なグループのメンバー。ひなこが愛吏から受けている仕打ちに気づき、彼女を心配するが、ひなこ自身の歪んだ愛情の前に無力感を覚えることもある。