To Heart(トゥハート)とは、『雫』『痕』に続くLeaf制作の18禁ビジュアルノベル第3弾。1997年発売。
略称は「TH」「東鳩」。お菓子会社とは特に関係ない。
ちなみにタイトルの表記は、PC版は『To Heart』、PS版やアニメは『ToHeart』。スペースの有無が違う。
これは当時、18禁ゲームをそのままのタイトルでPS移植することがSCEから許可されていなかったためである。
『雫』『痕』で一定の評価を受けていた高橋龍也・水無月徹のコンビが、それまでの仄暗い作風から一転して送りだした青春学園もの。個性豊かなヒロインの魅力と、それを支えるシナリオの質の高さで幅広い層から支持を集め、Leafを一躍アダルトゲームのトップブランドに押し上げる大ヒット作になった。また本作に登場するメイドロボ、HMX-12 マルチのシナリオはいわゆる「泣きゲー」のはしりとも言われる。
1999年、PSへの全年齢移植……というか、事実上の完全リメイクが為され、10万本超というエロゲーの全年齢移植としては驚異的なセールスを記録。PS版とほぼ同時期に登場したKeyの『Kanon』とともにものすごい数の熱烈なファンを生み、客層が重なっていたことからLeafとKeyをまとめて「葉鍵」と呼ばれ、一時代を築き上げた。
発売当時、さわやか学園モノというジャンルがしっかりと確立されておらず、大きなお友達から絶大な支持を受けた。また、上記のように秀逸なストーリーやキャラクターのおかげで、このソフトを何気なくプレイした(友達から借りた、中古ショップで格安で買った等)、ギャルゲーやエロゲとは無縁の健全な若者が、万単位で暗黒面に落ちたという有名な逸話もある。
2度にわたってTVアニメ化も為されており、PS移植に合わせて99年に放映された第1作は18禁ゲームのTVアニメ化の先駆けとなった(詳細は後述)。スタジオDNA(現:一迅社)などによる美少女ゲームのアンソロジーコミックの登場も本作が契機であり、様々な意味でエポックメイキングな作品である。
続編の『ToHeart2』は本作の2年後の同じ学園が舞台だが、直接に本作の登場人物が再登場はしていない。
ちなみに、PS版の他に、PS版をPCに逆移植したPSE版、ToHeart2の限定デラックスパックに同封されたPS2版とPSP版の3種類が存在している(内容は全てPS版と同じ)。
なお、1999年に「to Heart ~恋して死にたい~」というテレビドラマが放映されているが、全く別の作品である。
2025年にはリメイク版が発売予定。声優はオリジナルキャストと新キャストの切り替えが可能になるとのこと。
PS版では3種類+αのミニゲームが追加され、完成度の高さから本編そっちのけでやりこむプレイヤーが続出した。
来栖川芹香が主人公の横スクロールシューティングゲーム。3種類のショットとチャージショット、ボム(セバスチャン)を駆使して敵を倒していく。全3面で、3ボスの熊までノーミスでクリアすると、隠しボスとして来栖川綾香が登場する。
普通にプレイすれば6分ほどで終わるゲームだが、システムや敵の配置がミニゲームとは思えないレベルで作り込まれており、敵を連続で倒すことでスコアの倍率が上がるチェーンコンボや、チャージショットによる敵弾の得点アイテム化といったシステムにより、プレイヤーの間でスコアアタックが非常に盛り上がった。
ゲーム本編では長岡志保とスコア対決をすることになるが、志保のプレイレベルは相当なもので、生半可な腕前では到底勝利には至らない(一応、ノーショットでクリアすることで得点ボーナスにより志保に勝てるようになっているが、ノーショットクリア自体も結構しんどい)。ちなみに本編での志保のプレイは志保シナリオ担当の青村早紀(超先生)によるもの。本編中での志保の台詞同様、これでも手加減しているらしい。
『マリオブラザーズ』風の固定画面アクションゲーム。『初音のないしょ!!』収録のものの移植版である。1人プレイでは全30ステージのクリアが目標。2人での協力プレイ、対戦プレイも可能。
使用キャラは初期段階では、あかり、志保、芹香、智子、葵、マルチ、琴音、レミィの8人。一定の条件を満たすことで理緒、綾香、セリオが使用可能になる。それぞれ性能やショットが異なり、キャラの個性を反映したものになっている。
またセリオまで使用可能になった時点で隠しコマンドを入力すると「真・琴音」が使用可能になり、「真のヒロイン登場です」という選択時の台詞と合わせて何かとネタになった。
画面内にせり上がってくる○、△、□、×、←(L1ボタン)、→(R1ボタン)の6種類のブロックを、ブロック置き場のブロックと交換することで縦・横・斜めに3つ揃えて消していくパズルゲーム。対戦プレイも可能。
使用キャラは綾香以外のヒロイン9人とセリオで、それぞれ固有の特殊能力を持っている。
本編の志保シナリオでプレイできるガンシューティングゲーム。固定画面に出現する志保を水鉄砲で撃っていく。ときどき出現する雅史を撃つとミスになる。
本編でマルチのエンディングを見るとおまけモードに出現する。内容はマルチに肩を揉んでもらうというシチュエーションで、デュアルショックコントローラーが振動する。以上。
このモードで一定の条件を満たすと、「肩もみセリオ」が出現してセリオにも同じことをしてもらえる。コントローラーを肩に当てることで揉んでもらう気分を味わうことが出来るが、説明書には「ダメ」と書いてある。ひどい。
当然ながら、肩以外の別の何かにコントローラを当てる紳士が続出したが、肩もみ機能なのでしっかりとコントローラは肩に当てよう。
ゲームでもなんでもないが、ここで出現するCGを見ないとCG達成率が100%にならないので注意が必要である。あと、あまり何度も続けてコントローラーを振動させるとコントローラーが破損したりする可能性があるのでやっぱり注意が必要である。
ちなみに担当キャラは、あかり・芹香・智子・葵・マルチ・綾香が高橋&水無月、志保・琴音・レミィが青村&河田。理緒は原田(PS版のみ)&河田。青村担当キャラはPS版で大幅にシナリオが書き直されている。
高橋&水無月コンビがメインで制作した最後のLeaf作品。また超先生の代名詞である「リアルリアリティ」の語が誕生したのは本作のビジュアルファンブックである。
セリオを主役に据えたドラマCDでは脚本を黒田洋介が担当している(後述)。
2度に渡ってアニメ化されているが、1作目と2作目の間に直接の繋がりは無い。
1999年4~6月にUHF系で放映。全13話。ケイエスエス製作。
監督:高橋ナオヒト、シリーズ構成:山口宏、キャラクターデザイン:千羽由利子、アニメーション制作:OLM。
浩之とあかり、志保の関係を中心に据えつつ、アニメ的なデフォルメ表現を廃し、第1話は始業式からの席替えだけで話が終わるなど、日常描写を軸に各ヒロインのエピソードを落ち着いた作風で描いた。千羽由利子による美麗な作画もあり、一部キャラの扱い(なぜか雅史とフラグを建てた琴音、とうとう主役回が無かったレミィなど)に不満の声もあるが、概ね作品としての評価は高い。
OPはゲーム同様、中司雅美『Feeling Heart』。EDは新潟放送とキッズステーションでは川澄綾子『Yell』、それ以外の放送局ではSPY『Access』となぜか放送局によってED曲が違うという不思議な形態になっていた。パッケージメディアでは『Yell』が使用されている。
UHF系列による美少女ゲームのTVアニメ化は実質的に本作が端緒である。
2004年10~12月にUHF系で放映。全13話。
監督:元永慶太郎、脚本:叶希一、キャラクターデザイン:平山まどか、アニメーション制作:OLM、AIC A.S.T.A.。
PS2版『ToHeart2』発売に合わせての放映で、『ToHeart2』のキャラや他のLeaf作品のキャラが脇役で出演している。ストーリー的にはゲーム本編の後日談的な色が濃い。声優以外のスタッフは第1作から完全に入れ替わり、キャラクターデザインもゲームに近いものになっている(これは、一作目のキャラクターデザインに不満があったLeafサイドからの要望によるもの)。
OPは谷咲ナオミ『大好きだよ(Into Your Heart)』。13話全てで山場の挿入歌に使われるという安っぽい演出で視聴者をうんざりさせた。EDはゲームから『それぞれの未来へ』のアレンジバージョンを池田春菜が歌っている。
1997年から1999年にかけて、高雄右京による漫画版が電撃大王で連載された(全3巻)。高雄右京はLeaf主要スタッフと親交が深く、のちに「Remember My Memories」の漫画版も手がけている。
セリオを主役にしたドラマCD「Peace of Heart」は、前述の通り黒田洋介が脚本を手がけている。ちなみに黒田自身は熱烈な保科智子のファンであり、依頼された際も最初は智子の話を書くつもりだったらしい。また「Remember My Memories」のドラマCDも存在するが、Vol.1と銘打っておきながら2以降は出ていない。
伊達将範による小説版『マルチ、がんばりますっ!』が1998年に電撃G's文庫から発行されている(イラストは高雄右京)。また2004年にファミ通文庫からアンソロジーノベルも出ている。著者は新井輝、あすか正太など。
スタジオDNAによるコミックアンソロジーは、美少女ゲームのアンソロジーコミックの先駆となり、30巻まで続く長寿シリーズになった。他にT2出版、エニックス、ラポート、宙出版からもアンソロジーが出ている。
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