スラマニ(Sulamani)は、1999年生まれの競走馬・種牡馬。ニコニコでは超スローペースのニエル賞のイメージが先行しがちだが、その実態は世界5ヶ国で走り、その全てでGIを勝った超国際派の名馬である。
父Hernando(エルナンド)、母Soul Dream(ソウルドリーム)、母父Alleged(アレッジド)という血統のアイルランド産馬。生産者はNureyevやMiesque、Kingmamboなどを生産したフランスの超名門・ニアルコスファミリーである。
父エルナンドは3歳時にリュパン賞・ジョッケクルブ賞と2つのGIを勝ち、その後もGI勝利こそ無かったものの4歳時の凱旋門賞で*カーネギーの2着、ラストランとなった5歳時のジャパンカップでも7番人気ながらLandoの3着に健闘するなど一線級で長く活躍した競走馬。
母のソウルドリームは競走馬としては6戦1勝で何も書くことがない戦績だが、繁殖牝馬としてはスラマニが生まれる前年にカルティエ賞年度代表馬となった4歳上の兄である*ドリームウェルを産んでいる。母父アレッジドも凱旋門賞連覇を含む10戦9勝2着1回という素晴らしい戦績を挙げ、種牡馬としても100頭近くのステークスウィナーを出して成功を収めた名馬で、総合するとスラマニは結構な良血であると言える。
ティエリ・テュリエ騎手を背に3歳4月にデビューしたスラマニだったが、デビュー戦では先行策から内を突こうとして前が壁になり、最後の200mくらいしか競馬にならないまま勝ち馬から4馬身差で7着に敗戦。続く2戦目では今後の定石となる後方待機に脚質を転換し、後方2番手から差し切って初勝利を挙げ、3戦目でも最後は流して連勝した。
デビュー3戦目のジョッケクルブ賞では、5戦無敗で既にGIを2勝していたAct Oneが単勝1.9倍の圧倒的人気となり、ここまで重賞には出走歴すらないスラマニは単勝20.9倍の7番人気だった。しかしレースでは後方3番手で直線を向くと一気の末脚で他馬を撫で斬り、好位抜け出しを図ったAct Oneに1馬身半差をつけ優勝。見事フランスの3歳王者の座を射止めた。
秋の目標を凱旋門賞に定めたスラマニは、ステップレースとして行われる3歳限定のGII・ニエル賞(2400m)に出走したが、ここには対戦相手が2頭しかいなかった。この2頭はいずれも格下の相手だったためスラマニが単勝1.3倍の人気となり、これに応えたスラマニが2馬身差で完勝。しかし少頭数のため超スローペースになったことから、タイムは2400mでありながら同日同コースの牝馬限定GI・ヴェルメイユ賞や古馬GII・フォワ賞のそれよりも40秒以上遅い3:12.8という非常識な遅さであり、戻ってきた人馬には歓声どころか大ブーイングが浴びせられた。
それでもそのレースの中で上がり勝負にも対応できることを示したスラマニは、本番の凱旋門賞では前年の2着馬でGI3勝のAquarelliste、ナッソーS・ヨークシャーオークスと古馬混合GIを連勝した3歳牝馬Islington、日本から遠征した菊花賞馬マンハッタンカフェなどを抑えて、レーシングポストトロフィー(2歳GI)・英愛ダービーのGI3勝を含む6連勝中のHigh Chaparralに次ぐ2番人気に支持された。やはりここでも後方待機策を取ったスラマニは直線で外側から鋭く追い込み、前にいたHigh ChaparralやIslingtonを瞬く間に抜き去ったが、5番手から先に抜け出して先頭に立っていた7番人気の*マリエンバードには3/4馬身届かず2着に惜敗した。
シーズン終了後、スラマニはゴドルフィンにトレードされ、サイード・ビン・スルール厩舎(UAE)に転厩。陣営は世界各国の中距離路線を目指すことを表明した。
フランスから出たことのなかったスラマニだが、ここからは新たに主戦となったランフランコ・デットーリ騎手とともに世界を飛び回ることになり、まずは手始めに3月末のドバイシーマクラシック(GI・2400m)に出走。ここではサンクルー大賞・香港ヴァーズのGI2勝を含め3連勝中のAnge Gabrielなどが対戦相手となり、いつも通り後方から末脚を爆発させるとコースレコードでまとめて差し切って優勝した。
この勝利のために次走のサンクルー大賞(仏GI・2400m)では単勝1.7倍となり、3.0倍のAnge Gabriel以外は全て単勝オッズが10倍を超える一騎打ちムードとなったが、ここでは末脚がまさかの不発。勝ったAnge Gabrielはおろか、ハイペースで飛ばした同厩のペースメーカー・Millstreetすら捉えられず、勝ち馬から4馬身差の4着(5位入線後にMillstreetが降着になったため繰り上がり)に敗れた。
続けてキングジョージVI世&クイーンエリザベスSに出走。GI4勝のNayef、3連勝で英ダービー馬となったKris Kin、愛ダービー馬で英ダービーでも3着の*アラムシャーなどのメンバーが揃った。今回はしっかり末脚を爆発させて差し切る……と思われたのだが、直線途中で内によれたりしてもたつく場面があり、勝った*アラムシャーから3馬身半差の2着に敗れた。
次はアメリカへ飛んで10ハロン戦のアーリントンミリオン(GI)に出走。ここでは英チャンピオンSなどGI2勝の*ストーミングホームに続く2番人気となった。デットーリ騎手に代わってデビッド・フローレス騎手が手綱を執ったスラマニは大外から一気に追い込んだものの、早めに抜け出した*ストーミングホームに届かず2着……と思われたところで事件が発生した。
スラマニが遮るもののない大外をぐんぐん伸びて*ストーミングホームに迫り、半馬身届かずゴールと思われたその一瞬前に、ゴールまであと20mもないところで*ストーミングホームが突如外側に大斜行。*ストーミングホームに騎乗していたゲイリー・スティーヴンス騎手はゴールとほぼ同時に振り落とされたばかりか、後続馬に踏まれて担架で搬送される事態となった。
それだけならこの記事で書くことではなかったのだが、この斜行が3位同着で入線していたPaoliniとKaieteurの2頭の進路を妨害したとみなされ、*ストーミングホームは4着に降着。スラマニが繰り上がって優勝馬となり、PaoliniとKaieteurがそこからアタマ差で2着同着となった。
スラマニはこの勝利によってゴドルフィンにGI100勝目を届けたのだが、20mで半馬身差を逆転できたとは思えないということで裁定を不満に思った観客の大ブーイングが競馬場に響き、また降着となった*ストーミングホームもゴドルフィンを率いるモハメド殿下の個人所有馬ということで、何とも後味の悪い結果となってしまった。
閑話休題、ターフクラシック招待S(GI・12ハロン)を鞍上のジェリー・ベイリー騎手が立ち上がるほど大きく躓くアクシデントを物ともせず単勝1.75倍の支持に応えて勝ったスラマニは、10月末の大一番であるブリーダーズカップ・ターフ(GI・12ハロン)に向かった。デットーリ騎手と久々にコンビを組んだスラマニはGIを勝って名誉を挽回した*ストーミングホームに次ぐ2番人気に支持されたが、同着で優勝したHigh Chaparral(本競走連覇)とJoharに追いつけず5着に敗れた。
5歳時は始動戦とする予定だったタタソールズゴールドカップ・コロネーションカップをフレグモーネのためにいずれも回避、6月のプリンスオブウェールズS(GI・10ハロン)が始動戦となった。ここでは前年の英チャンピオンステークスの勝ち馬Rakti、スラマニが出そびれたタタソールズゴールドカップを勝ったPowerscourtらを抑えて1番人気に支持されたが、直線でまたしても右によれる悪癖が出てRaktiの4着に終わり、続けて出走したプリンセスオブウェールズS(GII)でも同様の負け方を喫して2着に終わった。
続けて出走したキングジョージVI世&クイーンエリザベスSでは、デットーリ騎手が同コースの前走・ハードウィックS(GII)で2着を6馬身ちぎり捨ててレコード勝ちした僚馬Doyenに騎乗するため、スラマニにはケリン・マカヴォイ騎手が騎乗した。3連敗が響いて4番人気に評価を落とし、代わって1番人気にDoyenが支持されたこの一戦では内ラチ沿いを通ってよく伸びたものの、直線で先に抜け出して独走するDoyenに全く追いつけないまま3馬身ちぎられ、2着Hard Buckにもアタマ差後れを取って3着に敗れた。
デットーリ騎手が再び鞍上に戻ったインターナショナルS(GI)では、パリ大賞典(GI)などGI3勝を含む6戦無敗の*バゴに次ぐ2番人気に支持された。ここでは再びMillstreetがペースを作っていく展開となったが、残り4ハロン地点でデットーリ騎手は早々にスパートを開始。そのままじわじわと他馬を追い抜いていき、残り50mほどの地点で先頭に躍り出て、そのまま2着の人気薄Norse Dancerに3/4馬身差をつけ、およそ1年ぶりの勝利を飾った。
そして、陣営がラストランと決めたのは、凱旋門賞でもなくブリーダーズカップ・ターフでもなく、ブリーダーズカップの前週にカナダ・ウッドバイン競馬場で行われるカナディアンインターナショナルS(GI・12ハロン)だった。ここで相手となった実績馬はセントレジャーとレーシングポストトロフィーの勝ち馬Brian Boruと前年の凱旋門賞2着馬Mubtakerくらいのものであり、スラマニは単勝1.85倍の断然人気に支持された。
ゲートが開くとスラマニは中団のインにピッタリつけて追走し、そのままじっくり脚を溜めて直線を向いた。そして馬群がバラけたところで大外に出すといつも通りの豪快な末脚を使って前を飲み込み、先頭に立っていたSimonasを並ぶ間もなく差し切って有終の美を飾った。
通算成績は17戦9勝・GI6勝。仏→UAE→仏→英→米→英→加と5ヶ国を転戦し、その全ての国でGIを勝つというのは並大抵の馬にできることではないだろう。引退した2004年にはシンガポール航空国際カップの勝ち馬Epaloと並んでワールドシリーズ・レーシングチャンピオンシップ競走馬部門王者に輝いている。
ターフに別れを告げたスラマニは、ゴドルフィンの生産拠点の一つである英国ダルハムホールスタッドで種牡馬入り。初年度からMasteryがセントレジャーと香港ヴァーズを勝つなど好調な滑り出しかと思われたが、その後が続かず、北半球でのGI馬はMasteryのみにとどまった。フランスに移動した後、ブラジルでシャトル供用中に出した産駒が何頭かGI馬になりはしたが、それでも大成功とは言えず、2011年にイギリスに戻ってきた後の種付け料は2500ポンド(2015年)という安値だった。2017年2月18日に病のためこの世を去った。
| Hernando 1990 鹿毛 |
Niniski 1976 鹿毛 |
Nijinsky II | Northern Dancer |
| Flaming Page | |||
| Virginia Hills | Tom Rolfe | ||
| Ridin' Easy | |||
| Whakilyric 1984 鹿毛 |
Miswaki | Mr. Prospector | |
| Hopespringseternal | |||
| *リリズム Lyrism |
Lyphard | ||
| Pass a Glance | |||
| Soul Dream 1990 鹿毛 FNo.16-c |
Alleged 1974 鹿毛 |
Hoist the Flag | Tom Rolfe |
| Wavy Navy | |||
| Princess Pout | Prince John | ||
| Determined Lady | |||
| Normia 1981 芦毛 |
Northfields | Northern Dancer | |
| Little Hut | |||
| Mia Pola | Relko | ||
| Polamia |
クロス:Northern Dancer 4×5×4(15.63%)、Tom Rolfe 4×4(12.5%)、Backpasser 5×5(6.25%)
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最終更新:2025/12/25(木) 19:00
最終更新:2025/12/25(木) 19:00
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