アガレスト戦記とは、2007年9月23日にコンパイルハートより発売されたPS3用ファンタジーRPG。 後に廉価版やXbox360移植版の『アガレスト戦記 リアピアランス』が、2009年6月25には1000年前の物語を描いた『アガレスト戦記ZERO』が発売された。 また、パワレルワールドを舞台とした『アガレスト戦記2』が2010年10月21日に発売。 北米や欧州でも販売され、Xbox360版の豪華すぎる仕様は話題を呼んだ。 更にシリーズ4作目は初の携帯機向けの新作として『アガレスト戦記Mariage』(PSP)が2012年7月に発売された。
概要
販売こそコンパイルハートが担当しているが、制作はアイディアファクトリー(以下、IF)と『サクラ大戦』や『北へ。』などで有名なレッド・エンタテインメントが共同で行っている。IFの代表作である『ソウルズシリーズ』のシステムやインターフェースを数多く継承していることもあり、いわゆるIFゲーの一つとして世間では認知されており、キャラクターデザインもIFのゲームを多く手がけてきた平野克幸氏が担当している。ただし、それまでのIFの代名詞であった「ネバーランド」に関する設定やキャラクターは一切登場しないという野心作(?)。
基本的にはそれまでのソウルズシリーズ同様、イベントを見た後に次の目的地であるイベントポイントが示され、そこに辿り着くとイベントor戦闘が発生し、それを繰り返すといった流れでゲームは進んでいく。目的地までの道のりはすごろくのようなマス目で表示されており、各イベントポイント間にあるバトルポイントで戦闘を行いながら1マスずつ進んでいく必要がある。そして最後のボス戦を終えることで、その世代での物語は終了し、次世代へと物語が受け継がれていく(後述)。RPGと銘打ってはいるものの、上記の通り実質的には一本道であり、戦闘システムの観点からも、実質的にRPGというよりはSRPGに近い。
同ジャンルの他タイトルと比較して、多数の美少女キャラクターが登場し、彼女らとの恋愛要素や間接的な性的描写などが大きなウェートを占めることが特徴的。中でも本作最大の特徴は、ソウルブリードシステムであろう。色々設定がややこしいので簡潔に言うと、要は子作りできるゲームなのである。
ゲームの舞台である「アガレスト」は5つの大陸から成り立っており、各世代につき1つの大陸を5世代に渡って冒険していき、設定された目的の達成と柱の封印を目指す・・・というのがゲームの目的なのだが、各世代の終了時に3人のヒロインから任意に誰か1人を選ぶイベントが発生する。好きなヒロインを選ぶとその世代での物語は幕を閉じ、次世代へと物語が進行する。なお、選んだヒロインや各ヒロインの好感度*1によって次世代の主人公の容姿や能力は大きく変わるだけでなく、好感度がかなり高い状態だとこっ恥ずかしい告白ムービーとどうみても朝チュンなCGが挿入されるというおまけがつく。これを4回繰り返し、5世代目でラスボスを倒すことでゲームクリアとなる*2。
戦闘
戦闘システムはそれまでのソウルズシリーズで採用されていたものを継承しつつも、それをある程度発展させたものとなっている。各キャラクターを駒のように動かし、毎ターン開始時に貯まるAPを移動やスキル発動などに使ったり、ダメージや攻撃することで貯まるSPを使うことで必殺技であるエクストラアーツを放てる点などはそれまでと変わらない。
戦闘はMoveフェイズとActionフェイズで構成されている。MoveフェイズではAGI(素早さ)の高いユニットから移動先を決め、味方ユニット全員の移動先を決定すると自動的に移動し、Actionフェイズへと移行する。なお、敵も同時に移動するため、こちらが指定したマスに敵がいると途中でユニットが止まってしまうため、注意が必要である。Actionフェイズでは、ターンが回ってきたユニットごとにAPを消費してどのような行動をとるか決定する。この時の行動順はAGIだけでなく、貯まっているAPによっても変わる。敵味方合わせて全ユニットの行動が終了するとActionフェイズは終了し、またMoveフェイズへと移行する。後はこれを繰り返し、敵を全滅させることで戦闘は終了する。
最大の変更点はチャージによる連携システムが撤廃され、新たにエクステンドエリアによる連携システムが導入された点。エクステンドエリアとは、各ユニットごとに定められた特定のマス目であり、このエクステンドエリア内に別のユニットを配置することでユニット同士が鎖で繋がれたようにリンクする。リンクした状態だと、各ユニットの最大射程に応じて攻撃を繰り出すことができるようになり*3、各ユニットの行動開始時に一定数APが回復するというメリットがある。そのため、Moveフェイズでいかに各ユニット同士をリンクさせるかが重要となってくる。また、このシステムの関係上、それまでよりも敵を吹き飛ばす「バースト効果」や各ユニットの「向き」が重要になり、戦術的な面白みも増した。
一方で、連携が重要となる戦闘もそれをあまり考慮しなくていい序盤では単調な作業になりがちであり、そこで見限ってしまうプレイヤーも多い。連携をうまく組まないと全滅しまくるボスが現れてからがこのゲームの本番であり、死にまくりながらボスを倒す方法を見つけるというマゾゲーっぷりこそが、このゲームの醍醐味である。
評価と批判
発売前こそ「どうせいつものIFゲーだろ?」「エリスのために買う(キリッ」といった意見が多く、例によってあまり期待はされていなかったようである。しかし、蓋を開けてみればそれまでのIFゲーより格段に進化したドットやインターフェース、そして例によって掴み所を抑えたキャラや設定は冥界住人だけでなく、一般ユーザーからもそれなりに評価され、結果的にIFゲーとしてはかなりの好評を得た。また、PS3黎明期でありそれまで発表されたゲームの中でSRPGの数が少なかったこともそれなりに高い評価につながっているのであろう。
一方で、インストールしてもロードが長かったり、公式でイベントに力を入れてるヒロインとそうでないヒロインの扱いの差や、容姿や能力が変わるだけで以後のストーリーは展開がまったく同じなうえに明確な告白イベントがあるのにも拘らず、まるでヒロイン全員と結ばれたかのような流れになるところに不満の声が多く挙がる。また、ダンジョンでのターン経過や無機質な戦闘マップにも批判が多いが、こちらは続編の『ZERO』で解消されている。
なお、例によって難易度はかなり高め。後半からは生贄戦法*4が必須となるほどであり、ここら辺は冥界住人以外のプレイヤーにとっては鬼門だったようである。現在では無料で強力な装備や各種強化ポイントをDLCで入手できるため、以前に比べるとマシにはなっているが、それでも難易度は高い。余談だが、これでも昔のIFゲーに比べると難易度は低い方である。訓練された冥界住人はうろたえないッ!
登場キャラクター
メインキャラクター
- レオンハルト(CV:近藤隆)
- 第一世代の主人公。没落貴族出身の青年で、物語開始当初はグリダマス軍辺境地守備軍の補佐官を務めている。「金色のレオ」というダサい異名を持つ。真面目で正義感が強い性格のため、グリダマスの辺境地への侵攻に疑問を抱いており、ひょんなことから命令に背いてハイ・エルフの少女エリスを救ったことで瀕死の重傷を負い、夢の中に現れた謎の女性ディシャナに契約を迫られ魂の器になったことから物語は始まる。
武器は剣。成長率こそ次世代の主人公勢に負けるものの、それでも高い成長率と使い勝手のいいExスキル、強力なWPと至れり尽くせりのキャラクター。成長の自由度が高いことも魅力の一つ。 - ディシャナ(CV:小清水亜美)
- レオンハルトと魂の契約を結んだ張本人。この物語の真のヒロインの一人。冷静沈着で多くを語らず、一切の素性を明かさないミステリアスな美女。感情表現に乏しく、淡々と事務的に主人公たちを導く本作のキーパーソン。やたら露出の多いけしからん恰好をしているが、ゲーム内で特に言及されることは無い。人気は高く、抱き枕がグッズとして販売された。
武器は鎌。全体的に高い成長率と強力な範囲ExスキルとWPを持つ。また、闇属性のスキルを吸収するという隠れ効果を持っているため、他のユニットとは一線を画す実力を誇る。ゲーム序盤から登場するが、仲間にするにはある条件を満たして第五世代まで進める必要がある。 - エリス(CV:植田佳奈)
- レオンハルトに助けられたハイ・エルフの少女。この物語の真のヒロインの一人であり、レオンハルトがディシャナと契約し魂の器となることになった原因でもある。助けてくれたレオンハルトに想いを寄せていたが、結局伝えることはできず、彼の代わりに彼の子供たちを育て見守ることを約束し、次世代の主人公たちの母親代わりとなる。第一世代の時は幼女だが、第二世代以降は美しい少女へと成長しており、性格もやや現実的でキツめになっている。その変貌ぶりには多くの紳士が涙した。
武器は杖。見た目通り、典型的な魔法使い系のキャラ。全体回復技である「リジェネレイト」を覚えることで、全キャラクター随一の射程を誇るようになり、連携の要となる。 - ボーグナイン(CV:永野善一)
- 命の危険を感じたエリスが無意識に召喚した思念獣(ラルヴァ)。強面な見た目通り、寡黙で無愛想であり、エリスの守護者として影のように付き従う。ファンからの愛称は防具9。
武器は拳。見た目通りガチガチのパワーファイターであり、STRとVITの伸び率は高いが、反面AGIとMAGの伸び率は最低クラス。序盤は壁として活躍するが、敵の火力が爆発的に高くなる中盤から終盤にかけてベンチ入りしてしまうこともしばしば。 - ウィンフィールド(CV:加藤将之)
- 力を欲するがゆえに、禁を破りし者。女好きのフェミニストであり、普段は不真面目な言動が多いが、根は真面目で正義感の強い青年。本作のラスボスであるサマリルによって作られた腕輪を所持しており、そのために強力な力と不老長寿を獲得しているが、サマリルによって肉体と精神を蝕まれている。ディシャナに無理矢理同行させられるようになってからは、レオンハルトの息子たちを支え、サマリルの強大な力と戦い続けることになる。シリーズの伝統となった温泉イベントに欠かせないキャラクター。
武器は銃。命中率の悪さに苦しむが、特別なアイテムを盗むExスキルの持ち主であり、攻撃力を底上げするWPのおかげで盗み役としては最高の火力を誇る。強力な銃を手に入れられる終盤で輝くキャラの一人。 - ゼルヴァ(CV:土門仁)
- 第一世代のヒロインの一人であるフューリアの兄。妹同様シリアムという種族であるために長きにわたって迫害された過去を持ち、人間に対して強い敵愾心を持っている。一度はレオンハルトと戦うが、その後フューリアの説得もあり、レオンハルトたちに同行することになる。彼が魂の器となった後は、「恩を返すため」と称して彼の息子たちを育成・補佐する。PTの進行役であり、常識人。
武器は鎌。成長率が微妙、WPが微妙、スキルスロットが微妙とビジュアル以外恵まれていないキャラであり、一軍で使うにはかなりの愛が必要。ただ、シナリオ面では非常にカッコいいため、ネタでもガチでも人気は高く、ファンからは愛されている存在。 - ヴィ・ラ=ロア(CV:富沢美智恵)
- 額に第三の眼を持つオネルテスの女性。その第三の眼によって未来を見通す力を持っており、普段は辺境地の奥でひっそりと暮らしているが、彼女の予言を当てにして足を運ぶ者も多い。レオンハルトが未来に何かしらの影響を与えることを感じ取り、彼らに同行するようになる。
武器は杖。見た目通り典型的な魔法使いキャラ。エリスよりも火力に優れているが、その分防御力やスピードは劣っている。 - バシュタール(CV:楠田敏之)
- 記憶を無くした謎の戦士。海岸に打ち上げられていたところをレオンハルトの息子のラディウスに助けられ、それ以降ラディウスやその息子たちに剣を教える教育係となる。冷静沈着で頭の回転が速く、戦術眼に優れている。また、それ以上に卓越した剣捌きを誇り、「深紅の牙」という異名を持つがあんまり呼ばれることは無い。見事なまでに悪役なデザインをしているが・・・。本作のキーパーソンの一人であり、続編のZEROにも登場する。
武器は剣。主人公以外の剣使いとしては最高の能力と成長率を持ち、ポイントや装備によっては彼らを上回るスペックを持っている。範囲Exスキルを持たないことが弱点であるが、それを除けば非常に使い勝手のいいキャラクター。
各世代ヒロイン
- フューリア(CV:宍戸留美)
- 第一世代のヒロインの一人であり、実質的な第一世代のメインヒロイン。シリアムという種族であり、兄のゼルヴァ共々長きにわたって迫害されてきたため、人間に対しては憎悪に近い感情を持つ。グリダマス軍相手にゲリラ戦を行っていたが、彼らの侵攻を受けたところをレオンハルトによって助けられる。当初は人間への不信があり、レオンハルトに強く反発するが、彼の真摯な姿を目にし、徐々に打ち解けていく。実は86歳。人気は高く、ディシャナ同様抱き枕が販売された。
武器は短剣。それなりの成長率となかなかのWPを持つが、強気が死にWPであることと、Exスキルが物理と魔法の両方に依存する混合型であることにより、中途半端になりがちなことが欠点。 - ルアナ(CV:新谷良子)
- 第一世代のヒロインの一人。戦争孤児であり、旅芸人を装い、間者となってグリダマス軍の動向を探っていた。ひょんなことからレオンハルトと出会い、彼に同行することに。派手な見た目と反して面倒見がよく、明るく快活な人柄もあって、ちょっとしたアイドル的存在。なぜか露骨にエロスなイベントが多く、そのせいか「ビッチ」などとファンからは言われてしまっている。
武器はブレイカ―。射程が長く、エリスが長射程を獲得するまでは連携の要となりうる。成長率やWPはそこそこだが、重要な「行動力」のWPを覚える数少ないキャラクターであり、一軍で使う価値は十分にある。 - エレイン(CV:清水若菜)
- 第一世代のヒロインの一人。由緒正しき名門貴族の出身であり、レオンハルトの家が取り潰しになるまでは彼の許嫁であった。初めて言葉を交わした時から彼に想いを寄せる一途な女性。心優しい性格であり、戦争に疑問を持ち、彼の力になる為に命令に背き、軍を出奔して再会を果たす。
武器は槍。成長率は平均的だが、WP「天才」を覚える唯一の槍使い。部隊の司令官という設定のためか、味方を強化するWPを多く持つ。Exスキルに属性持ちが多いこと以外は特に目立った欠点もなく扱いやすいキャラクター。
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脚注
*1:イベントによって上下する。一応、各世代の終盤に好感度調整イベントが用意されているものの、後述となる温泉イベントを見るためには入念なフラグ管理ならぬ好感度管理が必要である。なお、好感度が低いとそもそも選べないため注意が必要である。
*2:クリア後もIFゲーの伝統通り、裏ダンジョンとも呼べる隠しダンジョンが出現する(Trueルート時のみ)。ここの敵は異常に強く、かなりやり応えのある隠しダンジョンとなっている。また、コレクションなどの要素も入れるとやりこみ要素は多め。
*3:通常では射程1マスのスキルは敵に隣接しないと発動することができない。しかし、リンクした状態であれば、射程は各ユニットの最大射程に応じた物に変化する。例えば、最大射程が6マスであれば6マス離れた敵に対しても射程1マスのスキルを発動させることができるようになる。
*4:敵の攻撃力と素早さがインフレする中盤以降の主戦法。やり方は1~2人を前線に出し、残りは後方で待機させ、敵の攻撃で死んだ味方を残りの連中で即座に復活させるだけ。味方の死亡によってSPは25も貯まるため、ある程度SPが貯まったら総攻撃をかけ、フルボッコにするというシンプルながらも非常に有用性のある戦法である。
関連項目
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- 0pt