葬式鉄[そうしきてつ]とは、狭義では鉄道路線・系統や、今まで活躍してきた鉄道車両の最後の運転・取り扱い日(ダイヤ改正などでの廃止・引退、いわゆる「さよなら運転」「貨物列車取扱い廃止」・線路の大規模付け替え・廃車・疎開回送日)などの当日に駅頭や沿線に詰めかける鉄道ファン、広義では廃車や廃線、列車の廃止などが噂、示唆、そして廃止日や引退日のプレスリリースや確定がなされた途端にその沿線に繰り出す鉄道ファンや、取り巻きなどを指す。以下の概要で詳述。
ただし「葬式鉄」と呼ばれることを是認する「鉄道ファン」はほぼいないので、口述する場合は要注意。
概要
少なくとも、1970年代まではほとんど存在しなかった「鉄道ファン」のジャンルであり、それまでの鉄道路線や車両の最終日は、路線の廃止であれば地元客から乗務員への花束贈呈、代替路線バス転換などの式典、加えて造花などで飾られた装飾電車(「花電車」)の運転、線区によっては最終日、あるいは正午過ぎから最終列車までの無償運送(無料開放。到底現在では考えにくい)など、運転されていた車両であれば愛好家の全国組織である「鉄道友の会」地区支部などから惜別マークなどの提供、有志からの車体装飾などが花を添える程度で、静かな最終日を迎える線区・系列がほとんどであった(1970年代・1980年代に発行された鉄道雑誌の巻末コーナーなどから総合、推定)。
国鉄末期からJR発足以降の間に進められた「赤字ローカル線」廃止の時期には、すでに彼らの源流となる動きが存在した模様である。
表立った動きの始まりとしては、かつて和歌山県を走っていた「野上電気鉄道」の廃線にまつわる一連の顛末が代表的である。同社の事業撤退・放漫経営(例:お世辞にも堅牢とは言えなかった同社線の線路規格にまったく似つかわしくない中古車両の乱脈購入→放置・行政からの補助金をアテにしたと見られる、新品のコンクリート架線柱を線路際に搬入したまま、こちらも放置)などが噂されるようになった時期から、取材を申し入れた各マスコミ・訪問する鉄道ファンと、現業従業員との対立が表面化。更に一部ファンや趣味誌により「情景」を「撮影」・「記録」した結果が「列車行き違い駅における閉塞取扱いの違則扱い」であったことなども暴露される。そのため会社側は態度を硬化し、電車内や構内各所に「撮影を禁止する」旨の文書の掲出、「収録機材を取り出すだけで従業員に怒鳴られる」などの態度を取られた、との記録がweb、文献含め複数なされている。そして同社従業員自体の荒廃もあり、同社は1994年3月末に「悲惨な」最期を遂げる(→1999年、法人格消滅)。
その日に今日で言うところの、いわゆる「罵声大会」などが沿線各所で繰り広げられたことは、想像に難くない。
そして2020年代現在、一部の「葬式鉄」のマナーの悪さ、更に悪く言えば「暴走」が目立っている。
ニコニコ動画では、「それまで見向きもしなかったにも関わらず、最後の運転日やその間近に群がる鉄オタを葬式好きな輩に例えた俗称」や、「周囲に迷惑をかけても平気で、人や生き物の臨終が近付いていることを喜ぶような自己中心的な輩が多いという皮肉」という意味で「葬式鉄」(「葬式厨」)とコメントされることがある。
また、首都圏で使用されてきた車両の廃車回送列車が経由することの多い大宮駅に現れる集団は「大宮レイプ軍団」と呼ばれている。2020年では日野駅付近にて185系の廃車回送を撮影しようとして中央快速線の電車を止めたという話も出ている。また関西でも415系廃車回送の際岸辺駅で椅子に乗って撮影していた撮り鉄を駅長さんが注意した所、「調子のんなよ!」とブーメラン発言を行いながら胸ぐらを掴み、とてとてと逃げていく様子が撮影されている。
このような一部の輩により、善良な鉄道ファンが風評被害を被っている。
問題点
京浜東北線の「209系電車」運行最終日に聞かれたという「鉄ヲタ専用車両で~す!」といった罵声に代表されるように、非常に残念ながら、終焉が近づくと当該路線沿線全般的に「撮り鉄」「音鉄」が抱える問題点の双方を含有し、それぞれを足して3掛け、もしくはそれ以上の悪業が目立つ。
さらに東京メトロ6000系のラストランの際は、乗車しすぎて混雑から体調不良者などが発生し非常停止ボタンが押され電車が止まり、危険な事態となったともにダイヤが乱れてしまった。
中部地方の(過去形ではあるが)某・貨物兼営鉄道現業社員さんの声を拾い上げた限りでは
「敷地外から望遠レンズで撮影する(≒入場券収入などにならない)」「クルマでやってきて、撮って録ってそのまま帰る(旅客列車にも乗ってくれない)」「飲料自販機すら使ってくれない」「用があるのはまさしく駅構内の便所(≒用足し)だけ」…
同社は不定期に「機関車助手席添乗企画」も時折実施していたものの、声をかけても呼応したのは一握り。機関士さん曰く
「貨物列車へのノスタルジーはあるのでしょうが、皆さん財布の紐はキツキツなようです」
といったところが現実である。
財布の紐を固くしなければならないのは、本来鉄道事業者の取るべき行動であり、口と机上の空論だけが得意なのが「自称」鉄道ファン。少しは「投資」をなされたらいがかでしょうか…。
ともあれ、終焉間近で思い出に浸るのはともかく、人混みや罵声にまみれながら記録するのって、果たして「楽しい」のでしょうか?一般人の感覚でしたら、その路線や車両が「普段の風景」であった頃を記録したほうが、平和だと思うのですけど。普段撮影しなくてもせめて新型車両の導入・他所からの転属が決まったらすぐに撮影してほしいところである。
そういった事情もあってか、コロナ禍による三密回避の意味合いもあってかは知らないが、2022年3月ダイヤ改正ではJR西日本の奈良線で運用されていた103系、JR東日本の新潟支社で運用されていた115系が告知なしでサイレント引退した。(もっとも奈良線103系に関しては以前から環境省から置き換えるよう指示があったこと、このダイヤ改正で大和路線を始め各路線で減便する話も出ており、2021年12月には京都鉄道博物館で展示があったことなどずっと奈良線の103系を追っている鉄道ファンならそれらの余剰車を使って置き換えることは想像がついた事などから完全なサイレント引退ではない事を付け加えておこう。)このダイヤ改正ではおおさか東線から201系が引退したこともあり、そちらの撮影に行った撮り鉄からは「鉄道ファンに対する冒涜だ」とのコメントもあったが、ダイヤ改正で引退する車両を告知してもらえるだけありがたいと思ってほしい。(もっともおおさか東線は使用車両が4ドアロングの通勤型から3ドア転換クロスの近郊型になることで混乱を避けるためではあるのだが)
そうは呼ばせないために
関連項目でも述べていますが、鉄道は公共財です。昔は「線路引けばウハウハ」なんて時代もありましたが、規制緩和で事業からの撤退が簡単になってしまった昨今、JR各社はもとより大手民鉄にも存廃の取り沙汰および、自社からの切り離しなどが真剣に検討・論議されている路線が存在しますし、車両の更改計画や路線の付け替えは、公式ウェブサイトの経営計画や支援自治体の中長期的計画などで開示されている(≒どの車両が退役するのか類推できる)場合もあります(該当する路線が、どこの事業者の何線、どの車両なのかは、ご自身で調べましょう。この記事を閲覧することができるなら)。
特殊な路線規格で有名な「黒部峡谷鉄道」や「大井川鐵道井川線」は、財政的にも特殊な庇護のもとに置かれていますが、もっとも両線区とも集客には知恵を絞っています。
ただし、天災で廃線・休止となった路線(JR岩泉線・北陸鉄道金名線・美祢線・日田彦山線の一部区間・高千穂鉄道など)、致命的な破損・故障部位などが突如露見するなどして「さよなら運転」などを行うことなく、二度と本線上を走れなくなった形式(天竜浜名湖鉄道の「そよかぜ」)などは、いたしかたありませんが…。
鉄道ファンの大先輩・宮澤孝一さんの著書から引用させていただきます。
(略)今でも思い続けているのは、”思い立ったら吉日”ということだ。会いたい、と思ったら、とにかく外に出よう。そうしないと(略)2度と会えなくなってしまうのだ。
(弘済出版社「◆鉄道写真◆ 続続・ジュラ電からSL終焉まで」宮澤孝一 著・ 平成13年5月刊より、一部要約引用)
関連動画
関連項目
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