セカイ系単語

セカイケイ
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セカイ系とは、定義不明瞭のバズワードである。

概要

ここでの『セカイ』とは、一般的な『世界』とは違いごく限られた範囲、具体的には主人公とそれを取り巻く環境す。このギャップゆえに世界ではなくセカイと表現される。

もともとは2002年に生まれた言葉であり、「エヴァっぽい(=一人りのしい)作品」「たかだかり手自身の了解を「世界」という誇大な言葉で表したがる傾向」に対する揶揄の言葉だったのが、いつしか主人公とそのごく近くの人間だけで世界の行く末が決まってしまうストーリーに対する揶揄として使われるようになった。

その後も多くの人間作家がこの言葉に言及して独自の見解を示しており、正確な定義というものは存在しない。そのような状態ではあるが大まかに特徴を挙げてみると、

などの点が見られる。

評論家東浩紀らによって発刊された『波状言論 美少女ゲームの臨界点』編集部注による定義では

主人公(ぼく)とヒロイン(きみ)を中心とした小さな関係性(「きみとぼく」)の問題が、具体的な中間項を挟むことなく、「世界危機」「この世の終わり」などといった抽的な大問題に直結する作品群のこと」

『セカイ系とは何か』の著者である前島賢氏によれば

君と僕との関係が具体的な中間項を抜きにして世界運命と直結々」というのは後付の定義であり、元は「エヴァっぽい(=一人りのしい)作品」をすための造語

この言葉の初提唱者であるぷるにえ氏が2021年にTwitterで述べたところexitでは

セカイ系、という言葉は、今でいうところの「あるある」です。アニメマンガゲーム物語や演出によくある類のひとつ。少年少女が出会うラブロマンス世界の存亡が掛かるほどのスケールの大きな出来事が関係するというアレです。

とされている。

重ねて言っておくが、セカイ系という言葉の定義はあいまいであり、これが正解だというものは存在していない

セカイ系の代表作と言われている「新世紀エヴァンゲリオン」では上述の特徴である「きみとぼく」の「きみ」に当たる存在がいないし、
セカイ系御三家と言われている[要出典]「最終兵器彼女」「イリヤの空、UFOの夏」「ほしのこえ」ですら上述の定義を満たしてはいない

概ね「ゼロ年代前半に流行ったものを理やり一つの概念めようとしたもの」と考えればよく、
エヴァンゲリオンっぽい」もしくは「keyギャルゲーっぽい」あたりがパブリックイメージに近いだろうか。
古参ニコ厨には染みの味だろう。

セカイ系としてのエヴァンゲリオン

1995年に放送された『新世紀エヴァンゲリオン』はそれまでのロボットアニメとは全く異質な作品であった。

通常兵器がきかないの巨大な敵とそれと戦う秘密組織とその組織が持つ巨大ロボットというモチーフこそよくあるものだったにせよ、それ以外の点については違っていた。ここでとくに注すべきは主人公碇シンジというキャラクターである。

碇シンジが人兵器エヴァンゲリオンに乗る理由は最初はヒロインが傷ついていたからその身代わりとして、のちには父親に褒められたいから、あるいは周囲に期待されているから、というよう変遷こそするものの『自分が地球を守るんだ、敵を倒すんだ』という強い意志はない。そこにあるのは周囲の期待に応えたいという自分周辺のみの動機であった。

ストーリー上でも敵が登場せずにシンジを描くだけのエピソードがあったりするなど心情描写が重視され、また、最終回前の2話についてはそこまで積み上げてきた伏線をすべて投げ捨てひたすらシンジをはじめとするキャラクターたちの内面描写のみが続き、最後は主人公が自分の居場所を見つけてハッピーエンドという視聴者の度肝を抜くものであった。

映画版ではきちんとそれまでのストーリーにつながる話が開されたものの、その中で世界シンジの乗るエヴァによって滅亡し、しかし、シンジの心の中のによりごくわずか人々が生き残るという悲劇的なものであった。

これをセカイ系に重ねてみると、シンジとその周辺のみで世界危機が展開し、シンジの心情によって世界が滅ぼされたり一部再生されたりと、シンジ世界危機が非常に密接にかかわっているといえる。

この辺からエヴァを受けた作品がセカイ系だ、という言説もあるが、エヴァンゲリオンは当時の流行をふんだんに取り入れた作品であり、従ってエヴァっぽい」と言える要素はそれ以前にもそれ以降にも数に流れとして存在しており、直接的なエヴァだと断言はしにくく、軽率にそれをもってセカイ系認定するのは難しいと言える。

またエヴァの作中では主人公クラスメイトからの反発を受けたり主人公が属する組織の他支部の動きが描写されたりなどもしており、きみとぼくセカイ間に挟まる社会のような中間項がい構造をしていると言うことは難しく、更にはシンジヒロインたちの自意識の問題はそれぞれ個人の中で完結しており、つまり「きみとぼく」の「きみ」にあたるキャラクターも存在していない。
ついでに言えば「きみとぼく」だけで自己のセカイ完結させようとしているキャラクター主人公である碇シンジよりもその父親である碇ゲンドウの方が当てはまる。

セカイ系とエロゲー文化

ゼロ年代前半のオタク文化の中心点の一つは18禁美少女ゲームだった。

それらのゲーム恋愛シミュレーション思春期主人公が同年代のヒロインと仲を深めて行くものが体で、そこで育まれてきたフォーマット世界危機だとかの話をしようとすると必然的に主人公ヒロインの関係がセカイ危機と直結するようなことになりやすい。

要するに「きみとぼく」・「ボーイミーツガール」の話をしやすい媒体が流行していた時代であったのだ。

そんな時代だったゼロ年代序盤に流行したテーマであったりストーリーであったり設定であったり、そういったその時代のそれっぽさをる言葉が『セカイ系』である、というも存在する。

セカイ系と既存の物語との相違点

世界を救う。このテーマ古今東西普遍的なヒロイックサーガテーマとして使われてきた。日本を代表するRPGであるドラゴンクエストファイナルファンタジーもこのテーマは変わっていない。だが、これらの作品とセカイ系は決定的に違う点がある。

これらの世界を救う物語には避けては通れないお約束がある。『世界を救うためには世界中を巡らなくてはならない』がそれである。主人公たちはの中で世界中のの人々とらい、あるいは驚くような冒険を繰り広げ、あるいはその地にはびこる悪を倒し、そして最後に世界の果てで待ち構えている大魔王を倒さなくては世界平和を取り戻せない。

一方、セカイ系は違う。セカイ系の物語では、主人公は最初のから出ようとしない。ことによっては自分のからすら出ようとしない。

ここでいう最初のとは主人公が所属しているコミュニティのことであり、自分のとはコミュニティの最小単位、すなわち家族友人人のことである。世界危機とはの崩壊と同意義であり、伝説武器も倒すべき大魔王の中に存在している。そんなこじんまりとした大冒険がセカイ系の物語である。

セカイ系のメリット

セカイ系の物語の利点として挙げられるのとして、主人公とその周辺へスポットライトを当て続けられることが挙げられる。

ひとりができることは非常に限られている。一人の人間であるはずの主人公世界を及ぼすようになるには本来ならば「主人公→周辺の人間関係(家族友人)→より広がった人間関係(所属組織・学校)→(中略)→際関係(国家)→世界危機世界)」という順に数多くの段階を踏まなくてはならない。その段階を踏んでいく中で、主人公は新しい人間関係を築いたり、組織の仕組みの中に組み込まれていったりするのが通常の世界を救う物語である。

しかし、セカイ系の物語では世界を救うためにはそこまでの段階を必要としない。「主人公→周辺の人間関係→世界危機」あるいは「主人公ヒロイン世界危機」と、おそらくここまで短絡しても世界を救えるのがセカイ系である。

これだけ人間関係が狭ければ、物語の描写のほとんどを主人公とその周辺のみに使えるようになる。物語の中の社会の仕組みや世界危機の正体の説明すら省略してしまうことも可であり、その分主人公の考えや主人公の周辺とのかかわりを緻密に描けるようになる。

その結果、世界危機主人公周辺のみで展開され、日常危機が同居するようになる。遠い戦場で数千人が殺された話を聞くよりも身近な人間一人亡くなった時の方が死を身近に感じるように、主人公戦場に送り込むよりも日常の中においておいた方が読者の共感を得られ、同時に、いざというときにはその日常を崩壊させることにより危機の深刻さを読者に伝えることができる。

世界危機という巨大なテーマ読者の周囲に似た環境に落とし込むことによって、読者主人公への共感度を上げることができるのは非常に大きなメリットである。

セカイ系のデメリット

セカイ系の欠点はそのまま利点の裏返しである。主人公とその周辺しかスポットライトを当てないことにより、物語の中の社会世界危機の正体が説明されず、リアリティが欠如することは否めない。世界には数十億人の人間がいるのにもかかわらず、世界を救うのはたった一人の主人公(およびその周辺)のみである。

大げさに言ってしまえば、世界主人公の意のままであり、主人公の視界に入らない人間はその存在すら認識されない。主人公社会とのつながりではなく、当然あるべき社会理念とのや他人との衝突も薄く、個人の感情の赴くままに行動し、しかしそれでも世界は救われてしまう。そこにあるのは自分とその周辺の狭いコミュニティの利益のみであり、時にそれは『独りよがり』になる。下で記述した否定的意見としてのセカイ系はここに起因する。

また、主人公行動が『楽して世界を救って賞賛されたい』というんだヒーロー願望と受け取られてしまう場合がある。セカイ系の主人公日常に生きている以上、何らかのや血のにじむ努とはなじみが薄い。むしろそれらの要素を入れてしまえば日常から離れてしまう。ゆえに、主人公世界を救うための下準備としての努は取り払われ、その場限りの感情などで世界が救われてしまうことがある。そのような話は因果応報を是としている人たちにとっては受けが悪い。

特に、ネット上の創作作品などで作者が自分自身を主人公投影させている場合、この非難はより強くなる。作者自身の知識不足などが原因で、『結果的に』セカイ系となってしまった場合はなおさらである。

否定的意見としてのセカイ系

使う人間によっては『薄っぺらい思想で世界を救おうとしている話』『主人公と大きな社会の繋がりをなくした独りよがりな話』という意味でセカイ系という言葉を使って作者批判する場合もあり、この言葉を使う際には周囲に誤解を与えないように注意する必要がある。

セカイ系と分類する際の注意点

セカイ系という言葉は繰り返し書いたように固定された定義を持たない。そのため、個々人の感覚によってセカイ系という分類はその幅を大きく変える。

ゆえに、上記のようなセカイ系の特徴に一つでも被る部分があればセカイ系と呼ばれてしまう作品もあれば、セカイ系の特徴に重なる部分が多くてもセカイ系と呼ばれない作品も多い。

時に、単なる非難のためのレッテル貼りとして「○○はセカイ系だからだめだ」というような文脈で使われることもある。セカイ系の特徴をごくわずかしか含んでいない作品に対しても使われるが、それが余計にこの言葉の定義混乱させる一因になっている。

セカイ系の代用として使える言葉

「セカイ系」は上述の通り多義的かつ定義が固定されない雰囲気を表す概念である。
なので「セカイ系らしいもの」の話をしたい時には、「セカイ系」という言葉を使うよりも、より具体的な内容に迫れる概念を使った方が意思の疎通がしやすい。

追記募集中です)

セカイ系と分類されることがある作品

……この一覧を見ただけでも共通点を見出すのが困難なことはいしれるだろう。

人それぞれの捉え方によっては違っている可性こそあるものの、少なくとも上記のほとんどはセカイ系の様式に当てはまる世界観や設定、ストーリー展開をみせている作品である。人それぞれが持った感性による楽しみ方で、セカイ系の世界を楽しんでほしい。

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セカイ系

699 ななしのよっしん
2024/03/06(水) 15:40:36 ID: MOr15MhwiQ
そこを行くと、セカイ系対偶は『西部戦線異状なし』あたりになるのかもしれないと思ったり
お前が死のうが生きようが世界は何も変わらない)
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700 ななしのよっしん
2024/03/07(木) 15:29:32 ID: WQblsnikw6
>>691
それ全部やると壮大になり過ぎるんで、通常はそこから任意のスケールの話を切り取る
個人ので活躍する話は個人周辺の物語になる、世界を巻き込む話は立場相応に成熟済みの主人公が使われる
組織全体の問題と主人公個人の悩みをリンクさせる演出手法は多いが、世界観的に直結させるのではなく物語上偶然する形にはまってしまっている(物理的には入れ替えが効く)形式が多いかと思う
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701 ななしのよっしん
2024/03/07(木) 15:57:56 ID: WQblsnikw6
>>697
セカイ系主人公大人になりきれないモラトリアムで全的な精性であることが望ましいが、その状態で終盤のあなたやヒロインの機嫌で人が死んだり世界が壊れますみたいな展開が耐えきれない
本人が神様になってしまうか本人や世界がぶっ壊れるかになりがち
記憶を失って人間に戻る、特殊を失って大人になれればいい方
本人以外が終盤で突然キーの犠牲キャラになってカルマ持ってって傍観者キャラ転職できるパターンもある(フジリュー封神演義とか)
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702 ななしのよっしん
2024/03/07(木) 16:09:21 ID: gwsVw0eJVJ
なんか難解な単をずらずらと並べて難しいこと言える格好いいだろってドヤ顔してくるようなイメージある
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703 ななしのよっしん
2024/03/07(木) 17:24:26 ID: WQblsnikw6
序盤
一般人:周囲「危ない避難しなさい」主人公助けて
ヒーロー:周囲「危ない避難しなさい」主人公「やってやるぜ」
セカイ系:周囲「君にしかできないんだ」主人公助けて

中盤
共通:主人公「やってやるぜ」周囲「助かる

終盤
一般人主人公にはこれしかできない」周囲「ありがとう!後は任せておけ」
ヒーロー主人公「やってやるぜ」周囲「ありがとう!後は任せた」
セカイ系:周囲「わーもう(世界が)だめだ」主人公「わーもう(精が)だめだ」
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704 ななしのよっしん
2024/03/07(木) 21:36:38 ID: WQblsnikw6
主人公世界危機が直結してるので、序盤は主人公読者危機の全容が明かされない内から責任重い行動を強制されたり知らずに取らされる
序盤展開はヒーロー物でも似たような物はあって互いにそれを装う事もあるが、展開が重くならないよう外部組織のフォローや成長で責任の連動を減らす傾向があるかで差が出てくる
ドラゴンボール序盤とべると未知の敵と戦う事への恐怖とか外部からの戦いの強制や戦った結果の重い責任等がなくのしようがない

終盤に向かって世界危機の知識は明かされる反面脅威の規模が際限なく増大し本人一人で背負える範囲をえる
ジャンルでは主人公英雄的精性を獲得したり、自分の責任の線引きを覚えたり、周囲の組織や仲間責任を分担してを解消するので、勝てるかどうかで悩んでも戦いを挑むかどうかで悩む事は少ない
少年マンガなら前のラスボスを対処する事が自分の役割で後の問題は信頼する仲間や守った人達が解決してくれる、など
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705 ななしのよっしん
2024/03/08(金) 01:16:06 ID: MOr15MhwiQ
>>702
エヴァは言うまでもアブラハムの宗教元ネタだし、封神演義もこれまた同名の中国神話だからね
あの頃まではオタクなら抑えていて当然だよね?みたいな暗黙の了解があったらしくて、他にも北欧神話ギリシャ神話トールキンクトゥルフあたりは当たり前のような面して出てくるし、セカイ系に限った話でもないんだ

少なくとも当時の人の多くは悪気くそういう事をしていて、だからこそ時代の変化に対応できずれた
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706 ななしのよっしん
2024/03/08(金) 01:25:55 ID: WY774SNpUZ
>>705
エヴァジャイアントインパクト説(原初の地球体が衝突しが生まれたという仮説)が元ネタだよ
聖書名前を拝借しただけ
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707 ななしのよっしん
2024/03/10(日) 06:02:38 ID: MOr15MhwiQ
>>706
もう少しこう・・・あるだろ(自分も宗教には疎いので具体的にどこがどうとは言い難いけど)
んで、関係と断じるにしても結局宗教側の内容を把握してないと何も言えないわけで、ある程度の教養をめられる事には変わりが
ジャイアントインパクト説だって方向が宇宙になっただけで構図は何も違わない

それが>>702が言う所の「難解な単をずらずらと並べ」た状態なのだろうと摘している
ドヤ顔してるかどうかは別としてね
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708 ななしのよっしん
2024/03/10(日) 06:11:39 ID: MOr15MhwiQ
そこを行くと、SFが退潮し、ファンタジーなろう系王道の座を明け渡した事もまた、必然なのだろうと思ったり
ナーロッパ」とか言われてるアレ、本物のヨーロッパについての知識さえほぼ必要くて、「RPGでよく見るやつ」でだいたい理解できてしまうからね
今流行りのタイパってやつが桁違いなんだから、そら流行るよ
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