ラヴェリータ(La Verita)とは、2006年生まれの日本の競走馬。芦毛の牝馬。
中央牝馬史上初となる同一重賞3連覇など交流重賞7勝を挙げた、ダート牝馬史に残る女傑の1頭。
主な勝ち鞍
2009年:関東オークス(JpnⅡ)、スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)
2010年:名古屋大賞典(JpnⅢ)、スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)
2011年:エンプレス杯(JpnⅡ)、TCK女王盃(JpnⅢ)、スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)
概要
父Unbridled's Song、母Go Classic、母父Gone Westという血統のアメリカ産馬。
父アンブライドルズソングは名種牡馬Unbridledの初年度産駒で、自身も種牡馬としてWill Take ChargeやArrogateなどを輩出して成功を収めた。日本では直仔の重賞馬はラヴェリータのみだったが、母父としての活躍が顕著で、コントレイルやスワーヴリチャードの母父として名を刻む。
母ゴークラシックはカナダ産馬で、アメリカで6戦3勝。
母父ゴーンウェストはG1ドワイヤーSの勝ち馬で、種牡馬として英2000ギニー馬ZafonicやベルモントS馬Commendable、BCスプリント連覇のSpeightstownなどを輩出した。母父としてもMotivatorやAfrican Story・アフリカンゴールド兄弟、アポロケンタッキーなどを輩出している。
2006年2月14日、アメリカ・ケンタッキー州のDell Ridge Farmで誕生。2007年のキーンランド・セプテンバー・イヤリングセールにて32万ドルで落札され、ノースヒルズの所有となった。
馬名意味は「イタリア語で『真実』」。発音は「ラ・ヴェリータ」である。
レースの真実はいつもひとつ
2歳~3歳:ダート牝馬には目標がない
ビリーヴやローブデコルテでノースヒルズとは縁の深い、栗東・松元茂樹厩舎に入厩。2008年7月13日、函館・芝1800mの新馬戦でデビューしたが特に見せ場なく9着。翌月の札幌・芝1500mの未勝利戦では-20kgとガレてしまい5着に終わる。
一休みして、11月の京都・ダート1400mの未勝利戦で復帰すると、ここを逃げ切り4馬身差で楽勝。続く阪神・ダート1400mのポインセチア賞(500万下)も、従来のレコードを1秒も塗り替える1:23.5のレコードタイムで3馬身半差の逃げ切り圧勝。ダートでの抜けた素質を見せ付ける。
しかし2歳牝馬がダート短距離で2勝を挙げたところで、3歳時に目標となるレースはない。明けて3歳、ヒヤシンスステークス(OP)は3着に終わり、陣営はフィリーズレビュー(GⅡ)で芝に再挑戦、逃げたものの6着に終わる。
ダートに戻り、当時は中京・ダート1700mだった昇竜ステークス(OP)へ。1600mのヒヤシンスSで負けてるし距離長いんじゃないの?と混戦ムードの中3番人気だったが、逃げて突き放す強い内容で1と1/4馬身差の完勝。レース史上初の牝馬勝利を挙げ、ここで初騎乗だった岩田康誠が以降主戦となる。
距離が保ちそうとなれば、目指すは3歳牝馬限定唯一のダート重賞、関東オークス(JpnⅡ)である。前走牡馬に完勝したラヴェリータは単勝1.3倍という断然人気に支持されたが、スタートで他馬と接触して後手を踏み、逃げられず3番手でのレースとなってしまう。しかし問題なく前を追走すると、直線堂々と抜け出してあとは後続を突き放す一方。終わってみれば5馬身差で横綱相撲の圧勝であった。岩田康誠も「すごいスピードがあって大物感がありますね。牡馬にも匹敵するような素質のある牝馬です。これからもっと強くなると思いますよ」と語った。
続いては初の古馬相手となる川崎のスパーキングレディーカップ(JpnⅢ)。メイショウバトラー、ヤマトマリオンといった百戦錬磨のダート牝馬を相手に1.4倍の1番人気に支持されると、逃げ粘ったクィーンオブキネマを力強く差し切って3/4馬身差という着差以上の完勝。古馬を一蹴し、現役ダート牝馬最強の座へ名乗りを挙げた。
現代ならそのままJBCレディスクラシックを目指すところだが、あいにく当時はそんなレースはまだ存在しない。GⅠを勝とうと思ったら牡馬に挑むしかなく、ダート牝馬には大目標となるレース自体がなかった。そうなると、陣営がローズステークス(GⅡ)に出走させたのも致し方ない。しかし結果は13着で、さすがにこれで完全に芝に見切りを付けることとなった。
12月のクイーン賞までダートの牝馬限定重賞はないので、どうせ牡馬相手に挑むしかないラヴェリータはクイーン賞を蹴って武蔵野ステークス(GⅢ)からジャパンカップダート(GⅠ)に果敢に挑戦したが、武蔵野Sは芝スタートで行き脚がつかず、後方から上がり最速タイの脚は見せたものの5着まで。JCダートはさすがに古馬牡馬の壁に跳ね返されて見せ場なく13着。久々に1400mに戻した年末の兵庫ゴールドトロフィー(JpnⅢ)は断然人気に支持されたが、課題のスタートで出負けして後方からになり、残り100mで凄い末脚を見せたが時すでに遅く3着に終わった。
4歳:転戦の日々
明けて4歳はエンプレス杯(JpnⅡ)から始動。古馬牝馬重賞唯一のGⅡ級とはいえ牝馬相手のここは負けられぬと1.4倍の断然人気に支持されたが、立ちはだかったのは昨年のヴィクトリアマイル2着馬でダートは2度目の同じ芦毛馬ブラボーデイジー。2週目の向こう正面でもう2頭轡を並べての一騎打ちに突入、芦毛2頭の800mにわたるマッチレースにクビ差競り負けて2着。
気を取り直して牡馬相手の名古屋大賞典(JpnⅢ)へ。4.9倍の4番人気に留まったが、課題のスタートで思い切り左にヨレて隣の馬にぶつかったりしつつも最内枠から好位を確保すると、2週目の向こう正面でもう先頭に立ち、あとは悠々と押し切って2馬身差で完勝。岩田康誠は力強くガッツポーズを見せた。
ところが続くマリーンカップ(JpnⅢ)では牡馬に勝ったんだしと1.5倍の断然人気に支持されるも、直線で前が壁!をやらかしたのが響き、トーホウドルチェをハナ差追い込み切れず2着。
東海ステークス(GⅡ)では岩田康誠が同日のオークスに乗りに行っていたため和田竜二がテン乗りしたが見せ場なく9着。
内田博幸が騎乗したブリリアントステークス(OP)では紅一点ながら事実上のトップハンデを背負うことになり、8番人気に留まったが、課題のスタートをまずまず決めて好位から抜け出す王道の競馬で勝利。ちなみにスポニチは何を間違えたのか「6戦ぶりの白星」とか書いていた。それは名古屋大賞典の方です。
松元師は「帝王賞に登録したい」と語っていたが、結局は連覇のかかるスパーキングレディーカップ(JpnⅢ)の方へ。鞍上も岩田に戻って1.3倍の断然人気に支持され、中団に構えると向こう正面から早めに進出、マリーンCで不覚を取ったトーホウドルチェをあっさり捕まえると直線で悠々振り落とし3馬身差で連覇達成。
さて、秋はロクに重賞のない牝馬ダート界、ラヴェリータはこの年もJCダートを目標に、10月のシリウスステークス(GⅢ)へ。和田竜二を鞍上に、また実質トップハンデタイを背負う羽目になったが、逃げるワンダースピードを2番手で追走、最後は1番人気キングスエンブレムに競り負けたものの2着。
これで和田とJBCクラシック(JpnⅠ)に果敢に挑戦したが、覚醒したスマートファルコンのハイペース逃げは追走するのが精一杯で8着撃沈。岩田に戻ったジャパンカップダート(GⅠ)も逃げるトランセンドを3番手で追ったものの直線力尽きて7着。やはり牡馬の一線級の壁は高かった。
間違いなく現役ダート牝馬では最強格ながら、牝馬限定ダート重賞の数も少なく、目標となる牝馬限定GⅠ級もない。かといって牡馬の一線級相手に勝ち負けは厳しい……当時の強いダート牝馬につきものの悩みに完全に突き当たってしまっていたラヴェリータ。目指すべきレースがない以上、陣営はこのジャパンカップダートを最後に引退、繁殖入りの予定を立てていた。
だが、JCダートの2日後、牝馬ダート界に激震が走る発表が為された。
――そう、JBCレディスクラシックの創設である。
5歳:初代女王の座を賭けて
JBCレディスクラシック。それまでJBCクラシックとJBCスプリントの2競走のみだったJBCの第3のレース。それは待望の、牝馬限定ダートJpnⅠ競走であった。もっとも新設重賞ゆえ、前哨戦として地方重賞からリニューアルしたレディスプレリュードともどもこの年は格付けなしでの施行とはなったが、事実上のJpnⅠ競走。ついに、ついに、ダート牝馬に「女王」の座を賭けて争う大一番が与えられたのである。ラヴェリータにここを目指さない理由はなかった。引退は撤回、現役続行が決まる。
というわけで意気揚々とTCK女王盃(JpnⅢ)から始動したラヴェリータだったが、ここで彼女の前に生涯最大の強敵が現れた。昨年のJDD4着のあと、レパードSとクイーン賞を連勝してきた1歳下のミラクルレジェンドである。しかも向こうも主戦騎手が岩田康誠で、岩田はミラクルレジェンドを選択。ラヴェリータはミルコ・デムーロがテン乗りとなった。オッズはミラクルレジェンド1.7倍、ラヴェリータ3.4倍。
しかし主戦に加えてダート牝馬最強の座まで奪われるわけにはいかない。レースは直線で5頭が横並びの大激戦となったが、最後に抜け出したのはやはり人気の2頭。残り100m、馬体を併せての熾烈な叩き合いをクビ差制したのはラヴェリータだった。
続くエンプレス杯(JpnⅡ)もラヴェリータ1.8倍、ミラクルレジェンド2.0倍という完全な2強対決。新たに武豊を迎えたラヴェリータは、中団の内で武豊がぐっと我慢させて進むと、直線でも最内を突き、前で叩き合うブラボーデイジーとプレシャスジェムズをまとめてかわしたところがゴール板。大外から届かなかったミラクルレジェンド(3着)をきっちり2戦続けて下し、最強の座を守り通した。以降、引退まで武豊が新たな主戦となる。
東日本大震災の影響で阪神開催となり、被災地支援競走として開催されたマーチステークス(GⅢ)は馬群の中で揉まれた影響か14着に撃沈したが、陣営は強気にかしわ記念(JpnⅠ)に挑戦。3連覇のかかるエスポワールシチーと船橋の雄フリオーソの完全な2強対決ムードの中、29.0倍の5番人気に留まったラヴェリータだったが、前走の反省も踏まえて武豊は強気にハナを切りに行く。エスポワールシチーが出遅れたこともあってグランシュヴァリエと2頭で逃げる態勢に持ち込んだ。グランシュヴァリエが3角で力尽き、4角でフリオーソとエスポワールシチーが迫ってきてフリオーソに並ばれたが、そこから内ラチ沿いで粘る粘る。フリオーソに最後まで食い下がり、エスポワールシチーは寄せ付けず堂々の2着。これまで歯が立たなかった牡馬一線級についに勝ち負けするに至る。
ところが単勝1.6倍の断然人気に支持されたさきたま杯(JpnⅡ)では自分からラチにぶつかりにいくなど気難しいところが出てしまい5着。武豊も首を捻る走りで、牝馬の難しさを感じさせた。
気を取り直し、3連覇のかかるスパーキングレディーカップ(JpnⅢ)へ。牝馬には過酷な58kgを背負わされたこともあって2番人気に留まったが、外枠からハナを取りに行って逃げに持ち込むと、余裕の手応えで後続を突き放し、6馬身差の圧勝で3連覇達成。中央所属の牝馬による平地重賞3連覇はこれが史上初の記録となった(障害ではコウエイトライが達成済)。
貫禄の重賞7勝目を挙げ、あとはJBCレディスクラシック初代女王の座に就くのみ。というわけで前哨戦のレディスプレリュード(重賞)へ向かったラヴェリータ。しかしここではやはり、主戦を奪ったあの女が立ちはだかった。そう、前走関越Sで牡馬を蹴散らしてきた、岩田康誠騎乗のミラクルレジェンドである。オッズはラヴェリータ1.7倍、ミラクルレジェンド3.3倍。
ともに好位の後ろで進めた2頭は、3コーナー前で先にラヴェリータ武豊が仕掛けて前を捕まえに行く。しかし逃げたエーシンクールディが想定外に粘ったため4角で捲りきれず、後ろからラヴェリータを目標に仕掛けたミラクルレジェンドに差しきられて1馬身半差の2着。とはいえ斤量差1kgがあったことを考えれば内容的には互角と言ってよく、決着は本番へ持ち越しとなった。
そして迎えた第1回JBCレディスクラシック。言うまでもなくオッズは完全な2強対決となり、ラヴェリータ1.6倍、ミラクルレジェンド2.0倍。3番人気エーシンクールディが16.7倍である。そしてレースはこのオッズに恥じない、2強の熾烈な激闘となった。
前走同様にエーシンクールディがハナを切るが、そこに外から執拗に競り掛けていったのがブラボーデイジー。3歳馬カラフルデイズがそれについていき、後ろを離して逃げるハイペースの流れとなる。ラヴェリータはそれを離れた4番手で追走、ミラクルレジェンドはその後ろでがっちりとラヴェリータをマークして進めた。武豊は前走の反省を踏まえてじっくり仕掛けのタイミングを待ちながら前との差を詰めていき、直線入口で2頭をかわして抜け出す。――そこへ狙い澄ましたように追いかけてきたのが、やはりミラクルレジェンド。大井の長い直線、そこから完全な2強の一騎打ちに突入した。
このために引退予定を撤回して1年現役を延長したのだ。負けられない。初代女王の座は絶対に譲れない。――だが、残り100m、前に出たのはミラクルレジェンド。必死に食い下がるラヴェリータだったが、差し返すことはできず、3着を7馬身ちぎり捨てた死闘の結果は、3/4馬身差の2着。
武豊は「状態も良く、思った通りのレースが出来ました。それで負けたのですから完敗です」とコメント。追い求めたダート女王の称号は、あと一歩のところでするりと手からこぼれ落ちていった。
元よりこの年限りで引退のラヴェリータ。だが、求めた女王の称号を取りこぼして、それで終わりにはできない。陣営は引退レースとして、3度目のジャパンカップダート(GⅠ)に彼女を送り出した。48.1倍の10番人気という評価に留まったラヴェリータだったが、逃げるトランセンドを好位で追走、直線でも内ラチ沿いでトランセンドとエスポワールシチーに食い下がり、最後はワンダーアキュートにかわされたものの4着。3度目の挑戦で過去最高着順を達成し現役生活に別れを告げた。
通算31戦11勝 [11-6-2-12]、重賞7勝。うち牝馬限定ダート重賞は10戦6勝、2着4回の全連対。JBCレディスクラシックの創設があと2年、いや1年早ければ女王の称号を得ていた可能性は高い。牡馬相手の重賞勝ちこそ名古屋大賞典の1勝に留まり、時代にも恵まれずGⅠの勲章こそ得られなかったが、紛れもなく牝馬ダート史に残る女傑であった。
引退後
引退後はノースヒルズで繁殖入り。初年度はゴールドアリュール、2年目からはディープインパクト、ディープ亡きあとは同じノースヒルズのキズナと超一流種牡馬をつけられたが、今のところ直仔には目立った活躍馬はない。
スタッドブックによると、2024年4月3日、死亡のため供用停止。18歳だった。
その2ヶ月後、ゴールドアリュールとの間に産まれた初仔ネフェルティティの第3仔ラムジェットがJpnⅠ昇格初年度の東京ダービーを勝利。孫世代で見事、自身が獲れなかったGⅠ級ウィナーを送り出した。子孫の活躍を天国から見守っていることだろう。
血統表
Unbridled's Song 1993 芦毛 |
Unbridled 1987 鹿毛 |
Fappiano | Mr. Prospector |
Killaloe | |||
Gana Facil | Le Fabuleux | ||
Charedi | |||
Trolley Song 1983 芦毛 |
Caro | *フォルティノ | |
Chambord | |||
Lucky Spell | Lucky Mel | ||
Incantation | |||
Go Classic 1996 鹿毛 FNo.23-b |
Gone West 1984 鹿毛 |
Mr. Prospector | Raise a Native |
Gold Digger | |||
Secrettame | Secretariat | ||
Tamerett | |||
Seattle Classic 1991 鹿毛 |
Seattle Slew | Bold Reasoning | |
My Charmer | |||
Classy'n Smart | Smarten | ||
No Class |
クロス:Mr. Prospector 4×3(18.75%)
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