ルウム戦役とは、アニメ「機動戦士ガンダム」または「機動戦士ガンダム MS IGLOO」における架空の戦い。
概要
一年戦争序盤、宇宙世紀0079年1月15日から16日にかけて連邦・ジオン公国間で行われた宇宙戦。ブリティッシュ作戦に次ぐ大規模宇宙戦闘である。参加艦艇もブリティッシュ作戦を上回り、作戦規模ではソロモンやア・バオア・クーと同等かそれ以上であると言う説がある。
戦闘開始前
ジオンは宣戦布告直後に行われたブリティッシュ作戦により連邦よりのサイドであった1・2・4を壊滅させた。さらにサイド2の第八番コロニーであったアイランド・イフィッシュを地球に降下(コロニー落とし)させることにも成功し、アースノイドに多大な心理的圧迫を加える結果をもたらした。一週間戦争と言われる一連の戦闘により、人類の総人口の25%に当たる30億人が死滅。人類史上でも類をみない戦果が上がった。
しかし、コロニー落としの本来の標的は連邦総司令部のジャブローであり、これは連邦軍の決死の迎撃によりアイランド・イフィッシュが大気圏突入後に崩壊する形で阻止されてしまう。また、連邦宇宙軍は初戦で壊滅した第四艦隊を除き健在であったため、宇宙での優勢を確保出来てはいなかった。
ジオン公国の最高指揮官であったギレン・ザビはブリティッシュ作戦の結果に満足出来ず、二回目のコロニー落としを実行すべく戦力を再集結させサイド5(ルウム)に向かわせた。一方の連邦軍もジオン軍の動きを察知し、第三艦隊(レビル中将)と第一連合艦隊(ティアンム?)をルナツーより出撃させた。
MS IGLOOでは、第二次ブリティッシュ作戦はルナツーに逼塞する連邦軍艦隊をおびき出すため、ジオン軍が流した偽情報だとしている。つまりコロニー落としまでは視野に入っていなかった事となる。
ジオン軍の戦力
どの作品においても参加可能なほぼ全ての艦艇を動員したと描かれいる。具体的な参加艦艇としてはチベ級重巡洋艦とムサイ級軽巡洋艦が考えられる。また、作品によってはグワジン級戦艦も参加が確認できる。数については不明な点が多いが「機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑」では巡洋艦は73艘とされ、「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」ではグワジン級戦艦は1艘とされる。一方、IGLOOでは少なくとも2隻のグワジン級の参戦が確認できる。
MSはMS-05ザクⅠ(いわゆる旧ザク)とMS-06ザクⅡC型と考えられるが異説も多い。総数は不明だが、巡洋艦73艘説に立つと250機前後が導入されたものと見られる(ムサイの搭載数が3機であるため)。
この他、試作艦隊決戦砲・QCX-76Aヨルムンガンドが実戦導入されている。艦隊決戦の要として絶大な期待が寄せられており、運用する第603技術試験隊の士気も高かった。
連邦軍の戦力
第三艦隊と第一連合艦隊が主力。ブリティッシュ作戦時と同様、マゼラン級戦艦とサラミス級巡洋艦が主力であったと思われる。総数は不明だが、多くの作品では数においてジオン軍を圧倒していると言う描写が目立つ。
当然ながらMSは存在せず、トマホークやセイバーフィッシュと言った戦闘艇や戦闘機が近接戦の主力であったとされる。IGLOOの描写では、何故か1機たりとも艦載機が確認できない。
戦闘の推移
ジオン軍がサイド5(ルウム)に先着。コロニーに核パルスエンジンを装着していた1月15日22時に連邦宇宙軍が攻撃を開始し、戦闘の火ぶたは切って落とされた。反航戦で布陣した両軍は互いに激しく撃ち合った。序盤は連邦軍が数の上で優位であったこと、既にミノフスキー粒子の使用を予測していたためブリティッシュ作戦時のような奇襲が成立しなかったこともあり連邦が優位に戦闘を進める。艦隊戦のノウハウや戦闘艦の性能に関しては連邦が上で、ジオン艦隊から次々にムサイが落伍していく。15日中には核パルスエンジン装着を断念せざるを得なくなり、戦略目標の一つは失敗が確定した。艦隊決戦の要として期待されていたヨルムンガンドも、何故か前線からの間接射撃指示が届かず、戦局に寄与できていない。それでも砲術長ヘンメ大尉の独断で発射され、至近弾を受けた1隻のサラミス級が脱落している。
しかし、16日になりジオン軍はMSを集中的かつ飽和状に導入し、徐々に連邦を押し込み始める。周りを取り付くモビルスーツ隊とジオン艦隊を同時に攻撃できない連邦軍艦隊はどちらか片方に狙いを絞らなければならず、苦戦を強いられていく。さらにザクは核弾頭を装備しており、一撃で沈む艦艇が後を絶たなかった。また連邦軍には多様な人種がいるため機械化が進んでおり、砲撃はオート制御が大半を占めていた。だがザクの機動にそのオート制御が追いつかず、有効弾が出なかった事も敗因の一つとされる。
戦闘開始から2時間後には戦力の50%を喪失し敗勢が表面化。3時にはレビル中将の乗艦であったマゼラン級戦艦アナンケが被弾、ランチで脱出を図ったところをジオン軍の黒い三連星に拿捕され彼自身も捕虜となり指揮系統も壊滅する。投入された試作艦隊決戦砲ヨルムンガンドはサラミス級1隻を至近弾で落伍させ、マゼラン級1隻を轟沈させる戦果を挙げたが、流れ弾で操作員が全滅したため放棄された。
4時、連邦軍の残存艦隊はティアンム中将に率いられて撤退。ジオン側も6時に撤退を開始し戦闘は集結した。
戦闘の勝敗
戦術的にはジオン軍の勝利であり、連邦宇宙軍が壊滅したことにより以後の宇宙での優勢を揺るぎないものとした。ただし、コロニー落としそのものは失敗し、艦艇の損失・損傷を甚大であったため再び宇宙で同様の大規模作戦行動を取ることはできなかった。また、連邦軍の鋭才であったレビル中将を捕虜としたことも大きかったが、こちらはのちに連邦軍特殊部隊により解放されている(異説では戦争の継続を望むキシリアが意図的に逃がしたとも)。
一方、正面決戦で敗れた連邦軍の心理的な圧迫感は大きく、講和を求める声も大きくなったとされる。ルナツーでは戦力の疲弊と合わさって事なかれ主義が蔓延するようになり、ジオン軍の地球降下作戦を全く阻止できない状況に陥ってしまった。この敗北でレビル将軍はモビルスーツの有用性を理解し、V作戦を推進していくようになる。
その後
表裏問わず和平を両者は模索したが、弱気になった連邦軍とは裏腹にジオン軍は居丈高となり無条件降伏に近い要求を突き付け交渉は難航した。しかし、捕虜となったのち帰還したレビル中将はジオン軍の疲弊ぶりを喧伝。連邦もこれに勇気づけられる形となり態度を硬化。交渉は決裂した(なお、この過程で両軍の間に南極条約が結ばれ、核・コロニー落としなどの大量破壊兵器の使用禁止と捕虜の地位が確認されている)。
2月、宇宙での勝利では連邦を屈服させられないと考えたジオン軍は地球へと降下。これ自体は成功し、相当な面積を占領するが戦線は無限に伸び切り泥沼化。膠着状態のまま作品開始時点の時系列である9月にまで続くことになる。
また連邦もこの戦役を境にV作戦と呼ばれるMS開発を開始。さらに既存艦艇にミノフスキー粒子散布下戦闘能力やMS搭載能力を付与するビンソン計画も始められ、以降の宇宙世紀の軍備はこの戦役を基礎としたものとなる。
著名な参加人物
- ドズル・ザビ
宇宙攻撃軍中将。本作戦の現場最高責任者。MS戦は不得手であったとする説と積極的に導入を図っていたと言う説に分かれる。戦闘終了から数日後、非公式ながらジオン・連邦両軍の戦死者に敬意を表した慰霊祭を行った。
- 黒い三連星(マッシュ、オルテガ、ガイア)
戦前より高い技量を期待され独自行動を認められたMSチーム。その期待を裏切らず本作戦で十数艘の艦艇と多数の戦闘艇を破壊。少数精鋭の高いフットワークを生かしてレビル中将を捕虜にすると言う大戦果を挙げる。なお、搭乗機はMS-06ザクⅡC型であったとする説とS型であったと言う説がある。
- シャア・アズナブル
戦役時中尉。本作戦で5艘の戦艦を撃沈し二階級特進を果たし少佐に。その驚異的な戦果は敵の戦艦を踏み台にし推進力を最大限に生かした機動性にあったとされる。この出来事は日本の古の英雄、源義経の『八艘跳び』伝説に因んで『シャアの五艘跳び』と言われ、ある種の伝説となっている。
なお、搭乗機については指揮官用ザク(アンテナ付き)であったとする説とC型であったとする説がある。
- アレクサンドロ・ヘンメ
QCX-76A 試作艦隊決戦砲ヨルムンガンドの砲手。ジオン艦隊の後方で間接射撃指示を待っていたが、一向に届かなかったため独自に砲撃開始。至近弾でサラミス級1隻を脱落させたが、指揮所付近で炸裂した流れ弾により重傷を負う。更に正面からマゼラン級が突っ込んできたが、最期の力を振り絞って引き金を引き、一瞬にして葬った。しかしその直後に彼は息を引き取り、MSの踏み台となる形で生涯を閉じた。
- ガルマ・ザビ
戦役時少佐。「機動戦士ガンダム THE ORIGIN」ではコロニー制圧部隊である空挺部隊を指揮している。
- ジョニー・ライデン
モビルスーツ隊の一員としてザクで出撃。当時は無名のパイロットだった。
- ケン・ビーダーシュタット
詳細は不明だが、ルウム戦役に参加していた。この時に友人を亡くし、以降仲間の生還を願うようになる。
連邦軍
- レビル
連邦軍中将。連邦きっての鋭才と言われていたが、本戦役では一敗地にまみれ捕虜となる。その後、帰還し連邦の事実上の最高指揮官となる。
- ティアンム
連邦軍中将。ブリティッシュ作戦後に再び残存戦力を率い後方予備とし参加。ORIGINでは最前線で戦っている。
- ロドニー・カニンガン
准将。撤退時、乗艦ネレイドで殿を務め多くの艦艇を撤退させ戦死した。
その他よもやま
- ブリティッシュ作戦と並んでMS戦の基礎となった戦役のため、多くの作品で取り上げられ異説も多数存在する。特にORIGINでは本作戦のジオンの勝因を巧みな機動戦とし、MS一辺倒だった従来の解釈に一石を投じている。
- 一方、ブリティッシュ作戦はファースト時代から映像として描かれている(と言っても、冒頭の数シーンのみだが)が、ルウム戦役は1996年の「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」の特典映像「宇宙世紀余話」が初出であり、より本格的な描写は2004年の「機動戦士ガンダム MS IGLOO」が初出である。
- MS IGLOO小説版によると、太陽系内にあるほぼ全ての宇宙船が集結した会戦とされている。人類史上初の宇宙での大規模海戦に相応しい陣容だったと言える。
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関連項目
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