徳川家康(大河ドラマ)
徳川家康とは、1998年に放送された第21作目の大河ドラマである。本記事では、この原作である山岡荘八の小説「徳川家康」や、同原作の派生作品についても説明する。
原作小説は、全26巻に及ぶ日本でも有数の大長編作品であり、1950年に執筆を始めてから、1967年に完結するまで17年間を要した。山岡荘八は大河ドラマ「花の坂道」「独眼竜政宗」の原作「柳生宗矩」「伊達政宗」も執筆しているが、いずれも世界観や人物像を共有しており、いわば小説「徳川家康」のスピンオフ的作品である。
家康の両親・松平広忠と於大の方の婚姻から始まり、家康が75歳で天寿を全うするまでの彼の全生涯が描かれている。山岡荘八は太平洋戦争に記者として特攻隊員を取材した経験などから、平和について深く考えるようになり、200年以上に及ぶ太平の世を築き上げた家康に大きな関心を持つようになった。そのため、本作は美化されているという批判もあるほど家康を徹底的な平和主義の聖人として描かれており、従来の狸親父という家康のイメージを改善した。また、近年の研究により山岡荘八の描いた家康があながち間違っておらず、むしろ史実の家康にかなり近いとも言われるようになっている。
大河ドラマ以外にも様々な媒体で映像化されており、まだ原作連載が続いている1964年にはテレビ朝日で江戸入城までの前半生がドラマ化された。青年時代の家康と長男の松平信康の二役を、後年の大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」「青天を衝け」の家康役だった北大路欣也が演じ、後半の壮年以降の家康を実父の市川右太衛門が演じた。映像は残っていないが、全70話とかなりの大作だったと思われる。北大路は原作を同じくする、翌年の映画版や、1992年のテレビ朝日新春大型時代劇スペシャルでも家康を演じている。1975年には「少年徳川家康」のタイトルでアニメ化されており、映画と同じく桶狭間まで描かれた。当時のアニメとしては珍しく、全20話と2クールに満たない短さであった。
1983年に放送された大河ドラマは、翌年から大河で扱う作品を近代を舞台に路線変更することが決まっていたため、時代劇大河の最終作に相応しい作品として本作が選ばれた。しかし、翌年からの近代三部作「山河燃ゆ」「春の波濤」「いのち」が従来の大河ファンから不評だったことから(但し現代を舞台にした橋田壽賀子書き下ろしの「いのち」は、連続テレビ小説の視聴者層から好評を得て高視聴率を記録した)、1986年の「独眼竜政宗」から再び時代劇に戻った。大河人気を復活させたこの「独眼竜政宗」も、先述の通り本作と同じ原作・世界観の作品であった。一方、従来の時代劇ファンに答える形で、翌年から水曜日に通称“裏大河”と呼ばれるNHK新大型時代劇が放送された(「宮本武蔵」「真田太平記」「武蔵坊弁慶」)。
主演の家康役には、「草燃える」の伊東十郎や「おんな太閤記」の前田利家を演じており、連続テレビ小説「なっちゃんの写真館」でヒロインの夫役で人気を博した滝田栄が選ばれた。家康役の候補には、他にも松平健や江守徹なども挙げられていたが、家康のイメージを一新するために敢えて185cmの長身の滝田が選ばれ、晩年の家康は腰が曲がった状態で演じることとなった。
織田信長役にはまだ無名の若手俳優だった役所広司が抜擢され好演し、翌年の「宮本武蔵」でも主演を務めるなど、役所自身の人気と知名度も大いに高めた。「信長の野望」「戦国無双」などコーエーの織田信長(総髪、太眉と口髭、ワイルドで豪放磊落な性格)は、役所広司の信長像が色濃く反映されており、現在の織田信長のイメージも役所広司によるものが大きい。
脚本は「3年B組金八先生」の小山内美江子が担当。そのためか、豊臣秀吉役の武田鉄矢をはじめ、森田順平・茅島成美・早崎文司など金八先生の出演者も多数参加している。一方、大長編の原作を50話でまとめなければいけないため、1年間の放送でもダイジェストのような薄味になってしまった感も否めず、於大の方のように重要人物が途中からフェードアウトしてナレ死で終わってしまう事例も少なくなかった。本作を大河ドラマとして描き切るには、2年間かけて放送する必要があったという声も多い。
音楽は、大河ドラマ第1作「花の生涯」をはじめ、「天と地と」「新・平家物語」「勝海舟」と初期の大河ドラマを数多く手がけた冨田勲(5作は池辺晋一郎と並んで1位タイ)。冨田勲にとっては最後の大河作品となった本作では、彼の音楽の特徴とも言えるシンセサイザーと男声合唱を駆使した冨田サウンドの集大成といえるものとなっている。OP映像も山中の小川が、華厳の滝を下り、やがて川幅を増して大海原へ辿り着くというものになっている。
掲示板
急上昇ワード改
最終更新:2025/12/18(木) 00:00
最終更新:2025/12/18(木) 00:00
ウォッチリストに追加しました!
すでにウォッチリストに
入っています。
追加に失敗しました。
ほめた!
ほめるを取消しました。
ほめるに失敗しました。
ほめるの取消しに失敗しました。