Modern Monetary Theory 単語

モダンマネタリーセオリー

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Modern Monetary TheoryMMT)とは、日本語現代貨幣理論と訳される理論である。

大手メディアでは現代金融理論と表記されることも多いが、一部から誤訳とされ批判されている。
 

概要

大まかな論点

現代貨幣理論は、通貨本質を説明しつつ政府経済政策を論ずるマクロ経済理論である。2020年現在における経済学(新古典派経済学)のうまく説明できないことを難解な理論数式を多用せずに説明できるため、近年話題になっている。

採用している貨幣論は、信用貨幣論と、国定信用貨幣論租税貨幣論)である。


巷で話題になってる点は大まかに言うと、

  1. 政府の徴税権力により通貨が生み出される(国定信用貨幣論租税貨幣論
  2. 通貨建て国債政府の歳入をまかなっている場合、政府は財政破綻の可性がく、財政的な予算制約が存在しない
  3. 政府赤字民間黒字であり、政府黒字民間赤字であるので、政府は恒常的に赤字支出をする必要がある。ゴッドリーの恒等式を考えて民間黒字すべきである
  4. 政府は、就業保証プログラムJob Guarantee Program JGP)を実行し、全雇用を実現すべきである
  5. 税金は財源ではなく罰金である(機能的財政論
  6. 信用創造とは、銀行から銀行預金をいきなり生み出す行動である
  7. マネーストックの増加がマネタリーベースの増加を引き起こす(内生的貨幣供給理論

という7点である。

このうち、1.から5.まではMMT独特の考え方といってよい。6.と7.はMMTを支持していない人にも同調される考え方である。

現代貨幣理論経済学べて現実経済の説明力が高く

  1. ITバブル
  2. リーマンショックに端を発する世界金融危機
  3. ユーロ危機
  4. 量的緩和政策は効果がない
  5. 日本政府赤字が増えても金利は上がるどころか下がっている

等を予測した実績がある。これらはいずれも経済学では説明ができなかったことである。

また、現代貨幣理論が推奨している政策は

  1. 機能的財政論
  2. 反循環的財政政策
  3. 就業保証プログラムJob Guarantee Program JGP)による全雇用
  4. 金融規制強化
  5. OMF(明示的な貨幣供給)

といったものがあり、経済気、物価、金融)の安定を重視している。


ロイターやWSJ等の海外メディアMMTに関する日本語記事を掲載した後、日経新聞NHK朝日新聞などがMMTに関して批判的に取り上げている。日本財務省MMT批判する論者を収集し、資料exitにまとめて、MMT反対の姿勢を鮮明にした。
 

MMTならではの理論

国定信用貨幣論(租税貨幣論)

MMT国定信用貨幣論租税貨幣論)を採用している。

国定信用貨幣論とは、「通貨は、政府の徴税権の対物である」という考え方であり、「政府は、徴税権力によって好きなように通貨を作り出すことができる」という考えを導き、政府通貨発行権を強く認めるものである。

西村博之は「財政が税収に束縛されないなら国家も可MMT論者応援して国家をめざしましょう」としていたが(記事exit)、MMT国定信用貨幣論を軸とするため、徴税を重視し、国家不可能であると説明する。
 

「統合政府の通貨発行」と「スペンディングファースト」を合言葉にする

国定信用貨幣論政府通貨発行権をはっきりと認める考えであり、政府紙幣の発行を認めるものである。

政府紙幣通貨に採用したときの経済運営は、次のようになる。

政府政府紙幣を発行しながら、必要なだけ支出することができる。何よりもまず政府支出が先行することをペンディングファースト(Spending Firstという。政府紙幣民間にばらまきすぎると金余りになって金利が下がりすぎてしまうので、金余りを抑えて金利を上げるために国債を発行して国債市場に売り飛ばす。国債とは、政府紙幣を回収するための掃除機であり、財獲得のための手段ではない。

 

MMTの提唱者の経済学者は、政府紙幣を理想視しているのか、政府紙幣を使った経済運営と酷似したことをしている。

政府中央銀行と統合政府を形成している。統合政府キーストロークで通貨を発行しながら、必要なだけ支出することができる。何よりもまず政府支出が先行することをペンディングファースト(Spending Firstという。通貨民間にばらまきすぎると金余りになって金利が下がりすぎてしまうので、金余りを抑えて金利を上げるために国債を発行して国債市場に売り飛ばす。国債とは、通貨を回収するための掃除機であり、財獲得のための手段ではない。

以上のことをL・ランダルレイステファニーケルトンがしている[1]。彼らは「政府中央銀行は統合政府を形成していて、政府支出の際は統合政府が即座に通貨発行する」という言い回しが大好きである。


2020年現在アメリカ合衆国も、日本も、政府紙幣ではなく、中央銀行が発行する不換銀行券通貨に採用している。そのため、政府はまず最初に国債を売却して不換銀行券を獲得しなければならず、スペンディングファーストは不可能なのだが、MMT支持者たちはそういう現実無視し、あくまで政府紙幣の「統合政府による通貨発行」という考え方にこだわる傾向がある。

国債売却がファーストで、政府支出がセカンドだ」というと、MMTの支持者は手厳しく批判してくる[2]

不換銀行券を使っているという現実に適応しようとする姿勢がやや薄いところが、MMT支持者たちの欠点といえるだろう。
 

自国通貨建て国債発行の拡大を容認

MMTにおいては、自通貨建て国債で財政破綻した国家はない点と、財政破綻した国家は共通通貨建て国債か外貨建て国債を発行して償還できなかったという点と、自通貨建て国債中央銀行に買い取らせることができる点を強調する。

そのため、政府が自通貨建て国債を発行して国債発行額を増やすことは何ら問題がいとし、税収を上回る政府支出をしてもよいのだ、とすることになる。

国債発行における制約はインフレ率で、財政出動をして政府がモノやサービスの需要を作った場合に上昇するインフレ率を23程度にまで抑えねばならない、と論ずる。

従って、自通貨建て国債発行に際して、金額について考えるのが駄であり、インフレ率についてのみ考えればよい、と論ずる。自通貨建て国債の発行額をひたすら気にして、自通貨建て国債の発行を抑制しようとする心理的傾向を国債恐怖症というのだが、MMT国債恐怖症とは全く正反対の考え方をする。


MMTにおいて頻繁に論じられるのが「政府赤字民間黒字政府黒字民間赤字」という点である。民間黒字をもたらしたいのなら、政府は積極的に国債を発行し、赤字支出をしなければならない、とする。

デフレ時に政府国債発行額を減らすこと、すなわちプライマリーバランス黒字追求をすると、政府以外の経済体、すなわち民間黒字を減らすことになり、デフレが深刻化する。このことを体現したのが、1997年デフレに突入した後の日本だとされる。


実際の世界は、海外との貿易を行っている。このため経常収支のことも考えなければならない。MMTゴッドリーの恒等式を使って経済を論じることが多い。

MMTは、民間部門の黒字すことを非常に重視しており、民間部門が赤字になってバブル経済となることをなんとしても避けるべきだと論ずる。1990年日本バブル崩壊も、2001年ITバブル崩壊も、2007年サブライムローン問題や2008年リーマンショックも、すべて民間部門が赤字になったから発生したと摘している。
 

就業保証プログラム(Job Guarantee Program JGP)

就業保証プログラムJob Guarantee Program JGP)とは、後述する通り米国MMT支持者からされている政策の1つである。「最後の雇い手」と表現されることもある。

おおまかに説明すると、政府が全民に対し、生活できる程度の給与で制限に仕事を供給するというものである。

政府が、ある程度の待遇で労働者を集めるから、ブラック企業においてJGP以下の待遇で働いている労働者ブラック企業から離れ、ブラック企業が淘汰されるであろう。逆に好気になれば民間企業の待遇はJGPより良くなるので、民間企業人に対する供給制約にもならないだろうという政策である。

ブラック企業を撲滅し、労働者を保護する政策といえる。
   

機能的財政論と「税金は罰金」の考え方

MMT国定信用貨幣論租税貨幣論)を軸としており、政府通貨発行権を行使して予算を組むことを容認している。そして、租税というのはインフレを抑制するために行っている、と論じている。これを機能的財政論という。

その考え方をさらに進めて、財を確保するために税金民へ課しているのではなく、民の好ましくない行動に罰を与えて民の行動を誘導するために税金民へ課しているのだ、とする。これは「税金は罰金」の考え方という。

2020年現在において、「税金国家を建設する資金」ととらえ、「税金を払うことは国家の建設に手を貸す行動で、とても名誉な行動」と賛美し、「税金を納めることで、政に発言する権利を受けるのだ」という考え方をする人がしばしば見受けられる。そういう考え方は、高額納税者が低額納税者に対して威圧的な態度を取ることを容認して社会の分断を生んでしまうし、制限選挙(納税額の多寡で選挙権を決める選挙)や格差社会に直結するのである。

MMT機能的財政論は、「税金は罰金」「税金を払うことは、政府の理想視する行動から少し離れている行動をした拠で、あまり偉くない行動」と考える傾向にある。また、納税できない経済的弱者にも選挙権を認める普通選挙をもたらす考え方である。

このように、MMT機能的財政論は、人々の抱く国家観にも大きなを与えるものである。
 

MMTが支持する理論のうち、MMT信奉者以外にも同調者が多い理論

信用創造

信用創造を「返済力があると信用した相手に対し、銀行から銀行預金を生み出して、銀行預金を貸し付ける行動」と考えるのは、銀行関係者の間において常識となっている。

MMTは、銀行関係者の常識をそのまま引き継いでいる。
 

内生的貨幣供給理論

銀行信用創造によってマネーストックが増えていく。マネーストックの増加に伴い、マネタリーベースが必要とされるようになるので、中央銀行マネタリーベースを発行して増やしていく。つまり、マネーストックの増加がマネタリーベースの増加を引き起こす」という考え方がある。この考え方を内生的貨幣供給理論という。

MMTは、内生的貨幣供給理論を支持している。

内生的貨幣供給理論の詳細については、マネタリーベースの記事や買いオペレーションの記事も参照されたい。

内生的貨幣供給理論の反対概念は、外生的貨幣供給理論という。「中央銀行量的緩和マネタリーベースを増やせば、マネーストックの増加をもたらす」という考え方である。
 

「負債」「債務」という言葉に対するMMT独特の定義

MMTは、「負債」「債務」という会計学の用語について、既存の定義からかなり離れた独特な定義を与えている。

MMTは、「通貨とは、政府の徴税債権を消滅させるものである。ゆえに通貨は、政府にとって負債である」という表現をする[3]

これは要するに、「通貨政府債権の対物なので、政府にとって負債である」というわけであり、「債権物は、債権者にとって負債である」と言い換えているのである。

こういう言い方は、あまり一般的ではなく、MMT独自の言葉遣いである。


MMTの言い方を真似ると、次のようになるのだが、

Aが、地Bに対して、土地を請する債権を持っている。この場合、地Bの所有する土地は、Aの債権を消滅させるものなので、Aにとって負債である。

こので囲った文章は、簿記に通じた人を混乱させるものだろう。
 

政治的ムーブメントとしてのMMT(米国)

2016年アメリカ合衆国大統領選挙に向けたアメリカ民主党の予備選挙を戦ったバーニー・サンダース上院議員は、予備選挙後にステファニーケルトンを自身の顧問として迎え入れた。ケルトンは経済学者で、MMT唱者の一人である。

アメリカ民主党では、この予備選挙後にサンダースとも言える急進左補が増加傾向にあり、その代表的存在がAOCニックネームしまれるアレクサンドリア・オカシオコルテスである。彼女下院選の党内予備選挙ベテラン議員に勝利し、ニューヨーク内の選挙区から29歳で下院議員に当選した。これだけならただの若い女性議員だが、過ともいえる経済政策を提案して注されたのだ。

AOCグリーンニューディールと呼ばれる政策を発表した。環境対策に投資するだけでなくインフラ投資により全民に雇用を保障する政策である。このうち全民に雇用を保障する政策は就業保証プログラムJob Guarantee ProgramJGP)と呼ばれ、MMTを唱える学者のほとんどが提案する政策であることに留意したい。

このグリーンニューディールにかかる費用をどう賄うかというところで、AOCMMTを支持したことから、米国では議会FRBを巻き込んだ一大論争となったのだ。米国ではしばしば財政赤字が問題視されていて、政府には債務上限が課せられており、この額をえる政府財政赤字を抱える場合、議会で法案を通さなければいけない。これを財政の崖exitという。AOCは、MMTを支持しつつ、「財政の崖など関係ない」という強硬な姿勢を見せた。

このように米国では左リベラルの側からされているのが現状である。

2017年1月アメリカ合衆国大統領へ就任したドナルド・トランプは、大量に国債を発行しつつ、軍備拡インフラ建設へ政府支出を大量に注ぎ込み、MMTの体現者と評されるほどの行動をとった。積極財政を敢行しながらもインフレ率は2%台と堅調である(資料exit)。ドナルド・トランプは、共和党大統領にしては異色の存在で、労働者保護や雇用創出を重視するなど左寄りの姿勢を見せている。
 

政治的ムーブメントとしてのMMT(日本)

学術面ではポストケインジアンの先生方によって既に紹介されていたが、政治から見たときに日本でのMMTは右によりされたのが最初であろう。

保守系の論客であり経済でもある中野剛志は『富国と強兵exit_nicoichiba』においてMMTを取り上げ、2019年5月には一般向けのMMT解説本を出版し、さらにはネット上でいくつかの記事を著述した。京都大学藤井聡経済評論家三橋貴明も好意的に取り上げている他、立命館大学松尾も一定の理解を示している。

この藤井聡国会議員安藤裕、西田昌司の根拠地が京都であることからか、彼らを中心とした日本MMT支持の一は、財務省がそう呼んだことから京都と呼ばれる場合がある。実態としては西部邁の雑誌『表現者』関係者を中心としている。

2020年現在国会MMTに一定の理解を示す議員は、西田昌司自民党)、安藤裕(自民党)、山本太郎れいわ新選組)、そして大門実紀史(共産党)が挙げられる。そのうち、西田昌司大門実紀史は国会の質疑で肯定的に取り上げている。偶然にも全員関西ゆかりのある人物で、うち山本太郎以外は京都選挙区に含まれる人物である。

2020年現在日本政治において、MMTに右のうち経済(いわゆる財政出動リフは含まない)により支持されるのが中心になっている。しかし、ごく一部ながら左からも支持する勢力が現れている。
 

学者一覧

現代貨幣理論にを与えた学者たちの一覧は、次のようになる。生年日順に並べた。
 

名前 Wikipedia 備考
ゲオルク・フリードリヒ・クナップ exit exit 国定信用貨幣論を提唱
アルフレッド・ミッチェル=イネ exit exit 信用貨幣論を提唱
ジョン・メイナード・ケインズ exit exit
アバ・ラーナー exit exit 機能的財政論を提唱
ハイマン・ミンスキー exit exit 経済・金融の不確実性を論じた
ワインゴッドリー exit exit ゴッドリーの恒等式を提唱
ウォーレン・モズラー exit exit ズラー名刺説を語った
ビル・ミッチェル exit exit
L・ランダルレイ exit exit
ステファニーケルト exit exit

 

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関連項目

脚注

  1. *MMT 現代貨幣理論入門exit_nicoichiba』でL・ランダルレイは「統合政府キーストロークで通貨発行しつつ政府支出する。国債は金利調整のためだけに売り出される」と何度も繰り返し論じている。ステファニーケルトンも同様のをしており、『MMT 現代貨幣理論入門exit_nicoichiba』の530532ページ松尾摘している
  2. *MMT 現代貨幣理論入門exit_nicoichiba』の532ページ松尾が『MMTにとっては、政府支出の財として国債を売って資金調達するというような表現をすること自体が、事態の本質をわかっていないタブー表現扱いである。国債はあくまで事後的な金利調整のために出されているという言い方にこだわる』と摘している
  3. *MMT 現代貨幣理論入門exit_nicoichibaの533ページ松尾が『銀行預金貨幣債務なのはわかりやすいが、MMT政府が出す通貨債務と見なす。政府衆に対して持つ徴税債権相殺・消滅させるものという意味で、政府衆に対する債務だと言うのである』と述べ、図解入門ビジネス 最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本exit_nicoichibaの32ページ望月慎が『端的に言うと、「政府に対する支払手段として使える政府の請権を相殺できる」という意味で、民間保有通貨政府にとっての負債政府に対する債権)に他なりません』と述べている。
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