この記事では、ライトノベル及び漫画・アニメ作品『りゅうおうのおしごと!』の元ネタを解説する。
記事の性質上、物語のネタバレを多分に含むので注意。
プロ棋士・女流棋士名は敬称略で記す。
概要
『りゅうおうのおしごと!』作者の白鳥士郎氏は、執筆にあたり非常に綿密な取材を行なっている。
そのため作中のキャラクター設定には実在するプロ棋士のプロフィールやエピソードが、物語には現実の将棋界で実際にあった出来事が、それぞれ数多く引用されている。
なお、何の因果かアニメ放映期間中のリアル将棋界では、作中描写を上回る出来事がものすごい勢いで発生しまくった(現実文庫)。
勘弁してくださいよ……
キャラクター
九頭竜八一
- 渡辺明
史上4人目の中学生棋士にして、初代永世竜王の有資格者。
何事にも非常に合理的な考え方をする。
著書や本人のブログ、果ては奥方による赤裸々なコミックエッセイなど、多くの媒体でその人柄が公開されており、作者は八一の性格を決める際に参考にしたとのこと。
『渡辺明の思考 盤上盤外問答』や『将棋の渡辺くん』のQ&Aコーナーには、作者が投稿した質問も採用されたらしい。 - 糸谷哲郎
関西在住の棋士で竜王獲得経験者。
一手損角換わりを得意とするなど、八一の棋風の元ネタである。
『受け将棋で、でも玉を固めるんじゃなくて薄い玉形のままバランスを取って粘り強く戦う、角交換係の将棋が得意なプロ棋士』
また監修を務める関西若手棋士ユニット『西遊棋』の発起人でもある。 - 山崎隆之
関西在住で、八一のもう一つの得意戦法『相掛かり』を主力にする棋士。
第1回叡王戦で優勝。
「将棋ソフトの棋風は山崎将棋に似ている」と評されたこともある。
『盤上を複雑化させて、その混沌の中心でサーフィンをするような将棋を指す』 - 森内俊之
2011年度に名人位を獲得するも、その年度は他棋戦の勝率が振るわず『3割名人』と揶揄された。
本人も気にしていたようで、後にその心情をインタビュー等で吐露している。
また3巻冒頭における八一の、対局に負けた悔しさで将棋会館から神奈川まで走って帰ったというのも、元は森内のエピソード。 - 先崎学
現役棋士の中では数少ない(多分最後の)内弟子生活の経験者。
米長邦雄門下にて、同じく内弟子だった姉弟子(林葉直子)に舎弟扱いされたりしていた。
この来歴は物語創作上オイシイのか、『3月のライオン』の主人公『桐山零』の設定にも引用されている。 - 斎藤慎太郎
八一の弟子入り経緯の元ネタ。
小学生時代から追っかけをするほどの畠山鎮ファンで、のちに弟子入りした。 - 塚田泰明
4巻、八一と歩夢が研究会で披露しあっていた角換わりの研究手順は、元は塚田の研究によるもの。
「とりあえず革命は起こした」(参考)
11巻、八一と銀子が福井に行った件(感想戦での「北の国事件」)は塚田が当時交際中だった女流棋士(のちに結婚)と沖縄に行き荒天のため帰れなくなった事件(「南の国事件」)から名付けられたか。 - 増田康宏
コンピュータソフトを積極的に研究に取り入れている若手棋士。
「矢倉は終わった」「詰め将棋、意味ないです」等、物議を醸す辛辣な発言がしばしば飛び出す。
なおその後、「雁木も終わった」「『矢倉は終わった』は言いすぎでした」等の発言も。
雛鶴あい
これといったモデルは存在しない。
よって、純然たる二次元産JSであり、いくら愛でても法的な問題は発生しない。
最高だぜ!
夜叉神天衣
空銀子
- 里見香奈
女性では初の奨励会三段到達者。
銀子の47連勝無敗は大げさにしても、2015~2016年度にかけて女流棋戦成績50勝5敗を記録しているので、その実力はあながち誇張とも言い切れない。
しかし2018年3月4日の三段リーグ戦を最後に、26歳の年齢制限によって奨励会を退会した。
今後は女流棋士としての活動を再開すると述べている(参考)。 - 加藤桃子
棋風や棋歴に関しては、里見よりもこちらが近い。(12巻付録で原作者が言及)
女性奨励会員にして、オープン戦である女王・女流王座のタイトルを複数回獲得。
居飛車党の攻め将棋。
現在は奨励会初段女流三段[1]。 - 林葉直子
米長邦雄門下にて、内弟子生活を送る。
同じく内弟子だった先崎学に対し、姉貴風を吹かせてよく泣かせていたらしい。 - 西山朋佳
女性として初めて三段リーグ次点を獲得した(第66回三段リーグ。同期で昇段した2名と同じ14勝4敗ながら前回の順位差で次点となる)。また女性奨励会員が獲得可能な女王・女流王座・女流王将の三冠すべてを保持しており、第33期竜王戦(女流棋士枠で参加)6組では準決勝で星野四段に敗れ、女性初の5組昇級はならなかった。 - 木村一基
銀子の扇子の元ネタ。
揮毫『百折不撓』は木村によるもの。 - 野月浩貴
大のサッカーファンで、コンサドーレ札幌のサポーターでもある。
サッカー好きで知られる棋士はわりと多いが、アニメ版監修も務めている野月を、ここでは代表として挙げておく。
というか銀子がサッカーファンなのは、作者の白鳥氏自身がサッカーファンだからというのが真相だろう。
清滝桂香
- 伊藤明日香・飯野愛・塚田恵梨花
父親がプロ棋士である女流棋士。
父親はそれぞれ、伊藤果・飯野健二・塚田泰明。 - 高浜愛子
2016年2月5日 岡田美術館杯女流名人戦予選において、負ければ女流棋士引退の状況となる。
無事この対局で勝利を収め、女流2級の資格を得た。 - 中川大輔
米長邦雄門下で、先崎学から見て『年上の弟弟子』にあたる。
清滝一門の入門順と年齢が逆転している設定の元ネタ。 - 本当の元ネタ
3巻あとがきで触れられているとおり『25歳』と題されたエッセイが、清滝桂香というキャラクターの本当の意味での元ネタである(参考1、2、3)。
清滝鋼介
- 米長邦雄
将棋連盟の紹介写真でダブルピース、弟子(先崎)と共に裸踊り、窓から放尿(未遂)など破天荒なエピソードに事欠かない人物。
一方で将棋に関しては非常に真摯であり、晩年に棋力の衰えを自覚すると、若手棋士に教えを乞うべく研究会を発足。『米長道場』と称された。
この効果で好成績を修め、49歳にして悲願の名人位に輝いた。
また将棋連盟会長としても手腕を発揮し、ニコ生将棋中継や電王戦を創始したのもこの人。
将棋がネット上でこれだけ親しまれる文化として定着するための下地を作った。
つまり『りゅうおうのおしごと!』という作品が生まれたのも、元をたどればこの人のおかげかもしれない。 - 畠山鎮
斎藤慎太郎の師匠。
八一の弟子入り経緯の元ネタ。 - 深浦康市
棋風の元ネタ。
苦しくなっても容易に土俵を割らない、大変粘り強い将棋である。 - 谷川浩司
『若々しさ 解き放つ』
誰の口車に乗せられたか解き放ってしまった…… - 神谷広志
『禁断のオッサン流振り飛車破り』という棋書を書いている。
7巻におけるオッサン流の元ネタと思われる。 - 藤井猛
「B1から落ちたら墓場だと思っていた。でもそうじゃないんだ。落ちたらまた上がればいいんだよ。そう思えない精神状態がおかしいんだ。何度でも上がればいいんだから」(将棋世界2012年5月号)(参考) - 森下卓・行方尚史
名人挑戦経験はあるがタイトル獲得経験はない、という条件に該当する棋士。
元ネタというわけではないが、清滝師匠の実力の目安として挙げておく。
彼らだってすごく強いんです。
上にはもっとすごい超天才がゴロゴロいるというだけで……
神鍋歩夢
- 佐藤天彦
ファッションに強いこだわりを持ち『貴族』とあだ名される棋士(参考1、2)。
八一の元ネタである渡辺明とは実際に仲が良い。 - 豊島将之
「豊島?強いよね。序盤、中盤、終盤、隙が無いと思うよ」
八一が内心で歩夢のことを『歩夢きゅん』と呼んでいるのも、豊島のネット上での愛称が『きゅん』であることから。 - 中原誠
- 糸谷哲郎
- 鈴木大介
久留野義経
生石充
山刀伐尽
月光聖市
名人
月夜見坂燎
- 山口恵梨子
『攻めダルマ』『攻める大和撫子』と称される。
『攻める大天使』の元ネタ(参考)。 - 広瀬章人
主にアニメ版で大々的にフィーチャーされてしまったネタ画像の人。
いちおう弁護しておくと、例の写真(参考)は連続写真による中継のうち1枚(2枚)が偶然ああいう写り方をしてしまっただけで、対局に負けたあとの写真というわけではない。
ただし件の将棋が終始一方的な敗北だったことに加え、相手があの人だったのが災いして『魂を抜かれた』説に妙な説得力が生じてしまったのであった。 - 中村修
将棋盤に星(黒い点)のあるない論争をした一人。
なお、結果は……(参考)
供御飯万智
- 上田初美
棋風の元ネタと思われる。
穴熊を多く指し、女流タイトルを2期獲得している。 - 郷田真隆
将棋盤に星のあるない論争をしたもう一人。
ちなみに巻き込まれた八一・銀子のポジションに当たるのは先崎学と羽生善治。(参考)
祭神雷
釈迦堂里奈
鹿路庭珠代
鞨鼓林すゞ
シャルロット・イゾアール
鬼沢談
篠窪太志
蔵王達雄
於鬼頭曜
鏡洲飛馬
椚創多
辛香将司
本因坊秀埋
惣座圭治
室賀央
対局
2巻
その他 小ネタ
1巻
P172:八一がエゴサしている『2ch名人』、『棒銀くん』は実在するサイト。
元ネタ調査においてもお世話になりました。
関連項目
脚注
- 6
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