さあ、頼んだよ!菅原明良!
任せてください、明良さん! 11番、オニャンコポン!
オニャンコポン(英: Onyankopon)とは、2019年生まれの日本の競走馬である。鹿毛の牡馬。美浦・小島茂之厩舎所属。
概要
父エイシンフラッシュ、母シャリオドール、母父ヴィクトワールピサという血統。
父は2010年の日本ダービーと2012年の天皇賞(秋)を制した名馬。天覧競馬となった秋天で鞍上のM.デムーロ騎手が馬上から降りて最敬礼したエピソードは有名。現役時代は長らくGⅠ戦線で馬券内に顔を出し、名前の通り「閃光」と讃えられた猛烈な末脚と「完璧」とまで言われた馬体で多くのファンを魅了したが、種牡馬としては2021年末時点で地方重賞馬を出すにとどまっており、やや苦戦気味である。
母父は日本馬として初めてドバイワールドカップを制した歴史的名馬であり、エイシンフラッシュとは同期のライバルでもある2010年の皐月賞馬。2010年クラシック世代のファンには心躍る配合である。こちらも種牡馬としては期待されたほどの結果を出せず、2020年末にトルコに輸出されてしまった。
母は未勝利馬でその第2仔であるが、さらにその母はイギリスマイルG1サンチャリオットSを2009年から2011年にかけて3連覇し、マイルCSにも3年連続で来日したサプレザだったりする。
父系を辿ると米国産のKing's Bestを経てキングマンボ系に行き着くのだが、父の出自もあって血統表のあちこちに独、英、仏といった欧州の血も散りばめられた国際色豊かな血統である。
2019年2月11日に千歳市の社台ファームで誕生。同年のセレクトセールで田原邦男(主な所有馬に2008年秋華賞馬ブラックエンブレム)に落札されたが、他に手を挙げるオーナーはおらず、落札価格は最低価格の800万円と同セールでは下から4番目の低額落札であった。
落札の決め手は田原オーナーがエイシンフラッシュとヴィクトワールピサのファンだったことだそうである。ここ数年所有馬が勝利を挙げられておらず、もう馬主を辞めようかと思っていたという田原オーナーは、オニャンコポンが結果を出したことで今後も馬主を続ける決心がついたとか。
馬名
一見するとおニャン子クラブでも由来にしたのかといいたくなるような珍名馬にしか見えないが、その実アカン語(西アフリカ・ガーナで用いられている言語)で「偉大な者」という真面目な意味合いを持つ。ちなみにこれはガーナで信仰されている天空神(世界を作った神様)の名前でもある。
田原オーナーによると「オニャンコポン」という単語を知ったのは『進撃の巨人』からで、そのあと上述の神様の名前であることを知ったそうな。それに加えて「クラシックを走る2022年は『にゃんにゃんにゃん』の年」「スタートを『ポン』と切ってくれるように」といった意味も重ね合わせて命名されたという。おかげで本来『オニャンコポン』と一息で呼ぶはずのアクセントが『おニャン子 ポン!』といったアクセントで呼ばれることが多々。あとやっぱりおニャン子クラブのファンだそうである。
なお、彼はデビュー前に改名して現馬名になったのだが、改名前の馬名は「レオンハート」。
余談ながら、田原氏の所有馬はエヴァ、アヤナミ、スタープラチナ、エクシア、シナンジュ、クシャトリア、エスデス、ナイトレイド、グリード、アイオリア、アイアンメイデン…等、分かる人には分かるであろう方向性で非常に濃い。
香港名
京成杯を勝利した際に、田原オーナーは今後香港のレースに出走することがあれば、漢字表記は「天空神」にする予定と発言していた。
しかしながら、香港ジョッキークラブの翻訳は、当地で馬券の販売されるレースに登録されている全ての競走馬に対してなされる。オニャンコポンは該当レースである2022年皐月賞に登録したので、それに先立って香港名がつけられることになった。
HKJCはオーナーの意向を知らなかったため、当初は「偉績豐功」と発表されていたが、オーナーの要望により「天空神」へ変更された。このような変更は認められており、過去にはカレンチャンが「真機靈」から「真機伶」へ変更されたことがある。
偉大な天空神
2歳(2021年)
2021年、数多くの珍名馬が競馬界隈を賑わせていた。プリコネの必殺技が由来の「プリンニシテヤルノ」、食べ物由来の「サバノミッソーニ」「ブタノカックーニ」「スモモモモモモモモ」、オープンまで勝ち上がった「オヌシナニモノ」「アイアムハヤスギル」、GⅠ馬の「アカイトリノムスメ」「アカイイト」などなど…。
そんななか同馬は21年9月に中山の新馬戦(芝2000m)にて、鞍上に3年目の若手騎手・菅原明良を乗せてデビュー。父や母父に未だ目立った活躍産駒がいなかったこともあり12頭立ての6番人気(単勝32.0倍)ながら、直線で楽々抜け出して勝利を飾る。この時には数いる珍名馬の1頭としてさほど気に留められることはなかった。
2戦目は11月7日に行われた2歳1勝クラスの百日草特別(東京・芝2000m)。前年の勝ち馬はエフフォーリア、2年前の2着はこの翌週にエリザベス女王杯を勝つことになるアカイイトという流れの良い出世レースである。
しかしそんなことよりも、実はこの日、各地の競馬場で珍名馬が好走を続けていたのだ。
東京9Rとして開催された本レースにも視線が注がれる中、4番人気のオニャンコポンは前走同様に先行策から直線で抜け出し、迫るホウオウプレミアをクビ差凌いで勝利、オープン入りを果たす。
その後実施のレースでも
と2頭の珍名馬が1着になったことで盛り上がりを見せた。そんな中で本馬の名前がしっかりした由来に基づくことを知った人も多かった。まあ普通ガーナの神様なんか知らないよな…。
無傷の2連勝で次走が注目されたが、陣営は強気にGⅠホープフルステークスを選択。いきなり大舞台で当馬の名が実況されることとなった。本番では単勝17.3倍の6番人気とそれなりの人気を集める。前2走同様に先行するも、熱発での調整不足もあってか、外目の好位につけながら4コーナーあたりから徐々に後退し、直線で完全に失速。結局1番人気のコマンドライン(12着)や3番人気のサトノヘリオス(13着)、5番人気のアスクワイルドモア(10着)らとともに撃沈、キラーアビリティの11着に終わった。
3歳(2022年)
明けて3歳。次走は間を開けず、父エイシンフラッシュの勝ち鞍でもある1月16日のGⅢ京成杯。出走馬中唯一の2勝馬ながら、同条件の前走での惨敗と間隔の詰まりが懸念されてか、単勝13.2倍の6番人気であった。
レースでは好スタートを決めたが道中は中団の前目に抑え、3コーナー手前で一度後方に下げたが、直線で外から力強く伸び、上がり最速の末脚で鮮やかに差し切り勝ち。嬉しい重賞初勝利は父エイシンフラッシュとの親子制覇&エイシンフラッシュ産駒のJRA重賞初勝利となった。また、母父ヴィクトワールピサの馬としても重賞初勝利である。
それまでは母父にも似た前目の競馬であったが、このレースでは父を思い起こさせる差し競馬を披露。
ただの珍名馬ではなく立派な重賞ホースとなったオニャンコポンは、GⅠ皐月賞へと乗りこんだ。枠順はなんと父の2010年皐月賞と同じ6枠11番。21歳の菅原騎手はクラシック初参戦となった。直行馬も多く1番人気ドウデュースが単勝3.9倍という混迷模様のなかオニャンコポンは19倍の8番人気。
レースは中団から進め、前を行くジオグリフを見る位置で直線へ。そこから上がり4位の末脚で追いかけたが追いつけず、勝ったジオグリフからは0.4秒差、3~6着がクビ差という激戦ながら惜しくも掲示板とダービーの優先出走権を逃す6着。とはいえその後、2着イクイノックスは秋天、3着ドウデュースはダービー、5着アスクビクターモアは菊花賞を制し、4着ダノンベルーガも秋天3着に入るという世代の主役たちに次ぐ6着と書けば立派なものである。
続いてはGⅠ東京優駿。今度は母父ヴィクトワールピサのダービーと同じ4枠7番。なんでどっちも勝った方じゃなく負けた方の枠を引くのか。ダノンベルーガ、イクイノックス、ドウデュース、ジオグリフが4強と見られる中、オッズは24.2倍と上位組からだいぶ離されたが6番人気とまずまずの評価を集める。
レースはデシエルトがハイペースで飛ばす流れの中、中段の後方内目につける。しかしこの位置取りが災いして直線では固まった前が壁になり上手く進路を確保できず、最後は外に持ち出したが、レコード決着のなか8着まで。タイムは2:23.0と父(2:26.9)より4秒近く速く、脚を溜めてしぶとく2400mの距離にも対応はできたが、父との親子制覇とはならなかった。
夏は放牧で休養。その間、京都競馬場のアイドルホースオーディションでSTEP1の上位10頭に残ったものの、STEP2の決選投票では上位5頭に入れず、ぬいぐるみ化の権利を惜しくも逃した。
秋はGⅡセントライト記念から始動。京成杯を勝った中山ということもあり、ダービー3着のアスクビクターモア(2.6倍)、上がり馬のローシャムパーク(4.9倍)・ガイアフォース(5.1倍)に次ぐ単勝6.3倍の4番人気に支持される。
台風の接近で稍重の馬場となったレース本番。控えてもこの馬場では末脚勝負は厳しいと見たか、前目でアスクビクターモアを見ながら5番手での先行策を採る。4コーナーでは先頭集団と差のない好位置につけていたものの、そこから前で伸びたガイアフォースとアスクビクターモアにはついていくことができず、直線伸びを欠き7着。菅原騎手は「距離は少し苦しくなったので2000メートル以下でリズム良く走らせたい」とのコメント。
菊花賞に向かうかどうかを含め、秋の路線はこのレースの結果次第とのことだったが、小島師曰く「距離は2000mがぎりぎり」ということで菊花賞は断念し、今後は中距離戦での活躍を期することとなった。
というわけで11月の2000m戦、GⅢ福島記念へ。出走馬唯一の3歳馬ながら、アラタ(4.1倍)に次ぐ4.7倍の2番人気に支持される。レースはユニコーンライオンが逃げ、先行集団と後方集団にはっきり分かれる隊列。オニャンコポンはアラタと並んで後方集団の先頭につけ、3コーナーから徐々に詰めていく。アラタと並んだまま外を回って直線に向き、そこから脚を伸ばしたものの、マイペースに逃げ切ったユニコーンライオンや先行集団で進めたサトノセシルには届かず、アラタにも競り落とされて4着。菅原騎手は「もう少しペースが流れてくれたら良かった」とのコメント。
4歳(2023年)
明けて4歳初戦は距離を短縮し、初のマイル戦となるGⅢ京都金杯から始動。56kgと出走した牡馬の中では一番軽いハンデを貰い、10.4倍の6番人気に支持された。
レースは後方の内から進め、直線では最内を通って上がろうとしたが、前の馬をかわすために外に進路を取ろうとしたタイミングで同じ進路にイルーシヴパンサーが来て塞がれてしまい、勝ったイルーシヴパンサーの後を追いかけたものの6着まで。菅原騎手は「初の1600メートルでしたが、すごくマッチしていると感じました」と前向きなコメントを残す。
続いてはGⅢ東京新聞杯に登録したが、京成杯から1年が経過して出走馬決定賞金の加算ボーナスが無くなってしまい、賞金不足であえなく除外となってしまう。
仕方ないので急遽翌週の阪神・洛陽ステークス(L)へ。菅原騎手に東京の先約があったため、代役で岩田望来がテン乗りとなった。人気が割れる中5.9倍の4番人気。
今回は好スタートから先行集団を行かせて中団でのレースを選択。直線では外から追い込んだものの、伸びきれずに6着に敗れた。
この後は一旦放牧に出して立て直すとのこと。
クラシックで世代の実力馬の一角であることは示し、その後も大崩れはしないものの、今のところ大きなタイトルを獲るにはもう一歩という感じのオニャンコポン。適性距離がどこなのかを含め、まだしばらくは模索と研鑽の日々が続きそうである。
ダービーと天皇賞を制した父や、世界の大舞台を制した母父のように馬名通り偉大な馬を目指して、進撃の道のりは続く。
各メディアの反応
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/netkeiba/status/1529691848415281152
2022年京成杯
ツイートを読み込み中です
https://twitter.com/anime_shingeki/status/1482606740550029313
2022年皐月賞
本馬場入場にてフジテレビ・ラジオNIKKEIが冒頭のように『進撃の巨人』をパロった実況を行った。
しかも、フジテレビがハンジ・ゾエ、ラジオNIKKEIがオニャンコポンのセリフであったため、申し合わせたかのように会話が成立してしまい、話題を呼んだ。
血統表
エイシンフラッシュ 2007 黒鹿毛 |
*キングズベスト 1997 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
Allegretta | Lombard | ||
Anatevka | |||
*ムーンレディ 1997 黒鹿毛 |
*プラティニ | Surumu | |
Prairie Darling | |||
Midnight Fever | Sure Blade | ||
Majoritat | |||
シャリオドール 2013 栗毛 FNo.11-a |
ヴィクトワールピサ 2007 黒鹿毛 |
ネオユニヴァース | *サンデーサイレンス |
*ポインテッドパス | |||
*ホワイトウォーターアフェア | Machiavellian | ||
Much Too Risky | |||
*サプレザ 2005 鹿毛 |
Sahm | Mr. Prospector | |
Salsabil | |||
Sorpresa | Pleasant Tap | ||
Dubiously |
クロス: Mr. Prospector 4×5×4 (15.63%)、Kris 5×5 (6.25%)
関連リンク
関連動画
関連コミュニティ・チャンネル
関連項目
- 14
- 0pt