85年、安田記念。
それは、革命だった。
マイル戦のために進化を遂げたその脚が、名馬の条件を塗り替えた。
その馬の名は・・・
ニホンピロウイナーとは、日本の競走馬である。2頭存在するのだが、ここでは2代目の1980年産のほうを紹介する。
ちなみにニホンピロウィナーではない。ニホンピロウイナー(「イ」は大文字)である。
通算成績26戦16勝[16-3-1-6]
主な勝ち鞍
1982年:デイリー杯3歳ステークス
1983年:きさらぎ賞、CBC賞
1984年:マイルチャンピオンシップ(GI)、スワンステークス(GII)、朝日チャレンジカップ(GIII)
1985年:安田記念(GI)、マイルチャンピオンシップ(GI)、読売マイラーズカップ(GII)、京王杯スプリングカップ(GII)
概要
先駆けとして
まっさらな大陸を
ただ進むだけでは
先駆者とはなりえない颯爽とした足どりで
地図を描き
この冒険の素晴らしさを
世に知らせながら
自らの価値も高めていく彼が成し遂げたのは
そんな仕事だった
父はスティールハート、母はニホンピロエバート、母父チャイナロックという血統。父は名マイラー・ハビタットの産駒で母父にイギリスの歴史的スプリンター・アバーナントを持ち、自身も芝6ハロン(約1200m)の2歳GⅠミドルパークSを制した生粋の短距離馬。母ニホンピロエバートはクラシック2冠馬キタノカチドキの半妹で、フロリースカツプの末裔という良血馬。
そんな血統のニホンピロウイナーは新馬戦を優勝後3連勝でデイリー杯3歳Sを制覇する。しかし、暮れの阪神3歳S(このころは牡馬牝馬混合)では2着に敗れてしまう。そして3歳になってから初戦のきさらぎ賞を勝利してクラシックに進むもスプリングS、皐月賞と惨敗。早々にクラシックをあきらめて短距離路線へと進み、オパールSからCBC賞まで怒涛の3連勝を飾る。(なお、この年の最優秀スプリンターを受賞している)
次の年には短距離路線が整備され、それまでハンデ戦だった安田記念と、新たに誕生したマイルチャンピオンシップがGIレースとなった。当然ニホンピロウイナーも安田記念を目標として、淀短距離Sで優勝するものの、マイラーズカップでは不良馬場が合わずに2着(それでも不良馬場が大の苦手なこの馬にとって2着はすごいのだが)のあと、骨折して春のシーズンを棒に振ってしまう。
それでも秋には復帰し、朝日チャレンジカップをトップハンデの斤量をものともせず勝利すると、次走のスワンSで同期の桜花賞馬シャダイソフィアに7馬身の差をつけ圧勝。これでもうマイルチャンピオンシップはもらったようなものだった。迎えた本番ではその年の安田記念優勝馬、ハッピープログレスを破って優勝。また、2年連続で最優秀スプリンターを受賞した。
5歳になっても現役を続け、初戦の大阪杯は距離不適のため8着と敗れるも、続くマイラーズカップ、京王杯SCと連勝。続く安田記念も勝利して名実共に最強のスプリンターとなった。秋は毎日王冠から始動し、同レースを4着と敗れるも、続く天皇賞秋ではあの皇帝シンボリルドルフ(2着)から0.1秒差の3着と健闘。このことから、中距離でも一線級の相手に通用するところを見せ付けた。引退レースとなったマイルチャンピオンシップでは2着に3馬身の差をつけて快勝。引退の花道を飾った。
引退後は種牡馬となり、北海道のブリーダーズスタリオンステーションで繁養された。その前に下河辺牧場に行っているが気にしたら負け。産駒からはヤマニンゼファー、フラワーパークといったGI馬や重賞馬を多数送り出した。また、受胎率が非常に高く、そのことでも有名だった。2021年に最後の現役後継種牡馬であったエムオーウイナーが引退し、父系の存続はだいぶ厳しくなっているが、2023年に父母にフラワーパークを持つイロゴトシが中山グランドジャンプを制するなど彼の血はしっかりと日本に根付いている。
2005年に心臓麻痺で死亡。驚くべきことに祖母ライトフレーム、祖父キタノカチドキ、父スティールハートも心臓麻痺で死亡しており、生産者は「この馬の血統はそういう体質なのかも」と語っていた。
日本競馬が短距離路線を整備した年の名マイラー。そして、マイルならシンボリルドルフでも勝てないと言われたニホンピロウイナー。時代は違えど短距離界を盛り上げたサクラバクシンオーとともに、もっと評価されるべきだと私は思う。
マイルチャンピオンシップ、安田記念。その圧倒的なスピード、華麗なる足さばき。
勝利につぐ勝利に、人気のプレッシャーは重くのしかかったが
きみは、いつもたやすくはねのけてきた。
マイルならどんな相手にも負けない――史上最強の名スプリンター。
きみのマイル神話は、いつまでも語り継がれることだろう。
血統表
*スティールハート Steel Heart 1972 黒鹿毛 |
Habitat 1966 鹿毛 |
Sir Gaylord | Turn-to |
Somethingroyal | |||
Little Hut | Occupy | ||
Savage Beauty | |||
A. 1. 1963 芦毛 |
Abernant | Owen Tudor | |
Rustom Mahal | |||
Asti Spumante | Dante | ||
Blanco | |||
ニホンピロエバート 1974 鹿毛 FNo.3-l |
*チャイナロック 1953 栃栗毛 |
Rockefella | Hyperion |
Rockfel | |||
May Wong | Rustom Pasha | ||
Wezzan | |||
ライトフレーム 1959 黒鹿毛 |
*ライジングフレーム | The Phoenix | |
Admirable | |||
グリンライト | *ダイオライト | ||
栄幟 |
クロス:Rustom Pasha 5×4(9.38%)、Hyperion 5×4(9.38%)、Nearco 5×5(6.25%)
主な産駒
- ホリノウイナー (1987年産 牡 母 ハードエントリー 母父 *ハードツービート)
- ヤマニンゼファー(1988年産 牡 母 ヤマニンポリシー 母父 Blushing Groom)
- ニホンピロプリンス (1989年産 牡 母 ニホンピロクリア 母父 *ブレイヴェストローマン)
- トーワウィナー (1990年産 牡 母 *スイートランデブー 母父 Quiet Fling)
- ファンドリショウリ (1991年産 牡 母 シュウザンハード 母父 *ハードツービート)
- フラワーパーク(1992年産 牝 母 ノーザンフラワー 母父 *ノーザンテースト)
- ダンディコマンド (1993年産 牡 母 ダイナスワップス 母父 *ノーザンテースト)
- ダイワデュール (1996年産 牡 母 サカエクインヒメ 母父 ホクトボーイ)
- ユーセイシュタイン (1996年産 牡 母 *プリティラッキー 母父 Shirley Heights)
- メガスターダム (1999年産 牡 母 フミノスキー 母父 マルゼンスキー)
- エムオーウイナー (2001年産 牡 母 ミラクルムテキ 母父 *キャロルハウス)
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初代マイルチャンピオンシップ王者の走りをとくとご覧あれ・・・1つ消された(´・ω・`)
気にしたら負け
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関連項目
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