ライジングフレーム(Rising Flame)とは、1947年アイルランド生産の元競走馬・種牡馬である。
戦後日本競馬のあけぼのを飾った偉大なる種牡馬。
血統背景・現役時代
父はアイルランド二冠馬(2000ギニーとダービー)でシリーンやベンドアに遡れるザフェニックス、母はアイリッシュオークス馬アドミラブル、母父ネアルコという血統。
当時まだ後進国だったアイルランドではあったが、そのアイルランドで屈指の両親から誕生した期待の馬であった。
全妹ライジングホープはカツラギエースの父*ボイズィーボーイの母であり、日本とは縁がある。
が、血統に見合う一流といえる結果は残せず英2000ギニー5着、英ダービー着外など大レースではさっぱりで、4歳一杯まで現役を続けて25戦7勝で引退した。
どうもマイラーや短距離系という馬だったらしい。当時グレードがないのでなんともだが重賞の勝鞍もないし、よく見積もっても当時としては二流のスピード馬といった評価になるだろうか。
種牡馬時代(本番)
引退後は一旦イギリスで種牡馬入りしたが、敗戦後の馬輸入禁止が解けた日本の農林水産省によって購買され来日。軽種馬生産農業協同組合静内(現:日本軽種馬協会静内種馬場)で1953年より供用開始となった。
しばらく種牡馬の輸入をしていなかったこともあり、欧米に最初のスピード革命をもたらしたネアルコの入った最新鋭の種牡馬は人気になる……と思われたが、初年度は当時生産頭数が多かったアングロアラブ用途にはそこそこ人気だったものの、サラブレッドはそんなでもなかった。
しかし初年度からアングロアラブ界の伝説・性雄セイユウが誕生。サラブレッド方面でも2年目産駒からは仕上がり早い安田記念馬の初代ヒシマサルや遅咲きの天皇賞馬オーテモンが出現。
一躍人気種牡馬として名牝が集まるようになり、アラブの申し込みを絞ったりして種付数をコントロールするほど。1958~60年には3年連続でリーディングサイアーとなるなど絶好調であった。
3年遅れで輸入されてリーディング4連覇を止めた*ヒンドスタンが本格的に日本に根付き始めると覇を競い合うようになり「質の*ヒンドスタン、量のライジングフレーム」と言われ双璧をなすようになった。
まあ、質と量云々は半分ライジングフレームを揶揄するような面もあった。産駒の傾向として当時は重視されないが下級条件に非常に多い短距離~マイル付近に最も適性があるため重厚なヒンドスタン産駒より順調に数多く勝ち上がるが、当時重賞番組が多く重視される長距離戦ではそんなに強くないため、シンザンやダイコーター、リユウフオーレルら上級産駒が大レースを勝ちまくりたくさんの賞金を咥えてくる*ヒンドスタンに質で劣るということを言われているからである。リーディング奪還も結局の所*ヒンドスタンらに阻まれ叶わず、1966年9月に19歳で死去した。
後継種牡馬はアラブ方面ではセイユウやハマノオーら綺羅星のような活躍馬たちが期待に応え大いに発展させたものの、アラブ競走は徐々に衰退しそれに連れて生産頭数も減り、最終的には地方からの競走番組が消滅した00年代前半には同じくアラブ方面で生き残った*セフトの直系などと共に途絶えてしまった。
サラブレッド方面では内国産種牡馬冷遇の時代にあり、インターナシヨナルやオーテモンがズッコケるなどかなり不利な情勢であったが、ヒシマサルは馬主の阿部氏が手厚く庇護したこともあり安田記念親子制覇達成を果たしたヒシマサヒデを輩出するなど気を吐いた。
しかしヒシマサルはヒシマサヒデで評価を上げる前に有刺鉄線に絡まって無残に事故死してしまいたった3年しか活動できなかったのがあまりにも痛く、マサヒデ以外の活躍馬を出すことは叶わなかった。
そのヒシマサヒデもヒシスピードを輩出したが、ヒシスピードは同期の持ち込み馬マルゼンスキーにフルボッコにされ、ライジングフレームより遥かに血統更新が進んだ海外最新鋭の血には敵わないとなってしまった。
マルゼンスキーはさながらマックス・シャーザーが昭和の日本野球で暴れたとかメッシが日本サッカーリーグで暴れたみたいな感じの存在が反則みたいなヤツだから仕方ない。
それでも重賞勝利を地道に重ね種牡馬入りしたが虚弱体質過ぎてデビューすらままならない産駒を出しやすいという致命的欠陥を抱えたことから種牡馬としては5年で失格となってしまい、ライジングフレーム直系は絶えた。
母父としてはキタノカチドキら、祖母の父としてもニホンピロウイナーらを出すなど軽快なスピードをうまく伝えておりなかなかの活躍を見せ1973年にはリーディングブルードメアサイアーを獲得している。
現在でも日本で根付いた牝系の出身の馬にはライジングフレームの名が見られることはままあることである。
偉大なるレコードホルダー
最多種付けが80頭、50頭以上を相手したのが4年しかなく、1年で北半球+南半球合わせて300を超える数を付けたこともあるモーリスやロードカナロア、230頭以上付けたこともある息子のセイユウやなんかと比べると産駒は少なく同時期でも特筆するほど多くはなかったものの、1958年にJRAでの産駒年間176勝という1999年の*サンデーサイレンスに抜かれるまで41年間残り続けた記録を達成。他にも当時の産駒通算勝利記録・1379勝を達成。通算重賞勝利も62勝と、通算成績の面で*ヒンドスタンをはるかに超える素晴らしい数字を残し歴史に名を刻んでいる。
同じようなタイプで短距離番組が充実した後に活躍したサクラバクシンオーが歴代8位の1435勝、重賞45勝であることを考えると、もっと短距離番組が充実するのが早ければ更に凄まじい数字を残したであろう。
不利な状況もありながら同時期に活躍した内国産のスーパーエース・トサミドリ(1135勝)や質で勝る*ヒンドスタン(1258勝)、少し後に活躍した*パーソロン(1272勝)には負けなかったのだからお見事である。
この金字塔を越えたのは母父に入っていたネアルコのひ孫、80年代最強種牡馬*ノーザンテーストであった。アベレージの高さではライジングフレームにも全く劣らず、29歳まで種付けしたほどに寿命で遥かに上であったための達成であった。
その後は*サンデーサイレンスが16歳で亡くなったにもかかわらず2749勝というアンタッチャブルレコードクラスのとてつもない大記録を樹立し、サンデーの最優の後継者にしてその記録を越えていったディープインパクト、内国産種牡馬記録であったトサミドリの記録を最初にブレイクしたフジキセキ、ディープと並ぶ平成後期社台スタリオンステーションの双璧キングカメハメハ、クロフネやサクラバクシンオーといった独自路線系の名種牡馬など医学の発展で種付け頭数がメッチャクチャに増えた平成世代の種牡馬がホイホイ越えていったため、今では10位の記録となっている。
当時の生産頭数考えたら19歳で亡くなってるのに今でも10位にいるのはなかなかおかしな話。
| 順位 | 馬名 | 勝利数 | 残存現役産駒数 | ラストクロップ世代 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | ライジングフレーム | 1379 | 0 | 1970年クラシック世代 |
| 11 | ダイワメジャー | 1354 | 99(+デビュー前) | 2027年クラシック世代 |
| 12 | パーソロン | 1272 | 0 | 1989年クラシック世代 |
| 13 | ヒンドスタン | 1258 | 0 | 1972年クラシック世代 |
| 14 | ロードカナロア | 1187 | 246(+デビュー前) | 種牡馬現役 |
| 15 | マンハッタンカフェ | 1163 | 2 | 2019年クラシック世代 |
| 16 | ステイゴールド | 1146 | 4 | 2019年クラシック世代 |
| 17 | トサミドリ | 1135 | 0 | 1973年クラシック世代 |
| 18 | ダンスインザダーク | 1110 | 0 | 2018年クラシック世代 |
| 19 | シンボリクリスエス | 1086 | 6 | 2023年クラシック世代 |
| 20 | ネヴァービート | 1064 | 0 | 1985年クラシック世代 |
| 21 | ゴールドアリュール | 1058 | 4 | 2021年クラシック世代 |
今後、ダイワメジャーが追い抜くかどうか(デビュー待ちの1歳・2歳馬が25頭(一部は死んでるかもわからないが)いる)が当面、ライジングフレームが10位にとどまれる時間を左右しそうである。ダイワメジャーが追い抜けないとなるとロードカナロアが追い抜くかどうかになってしまうので、もう少し遅くなりそうである。
血統表
| The Phoenix 1940 鹿毛 |
Chateau Bouscaut 1927 鹿毛 |
Kircubbin | Captivation |
| Avon Hack | |||
| Ramondie | Neil Gow | ||
| La Rille | |||
| Fille de Poete 1935 栗毛 |
Firdaussi | Pharos | |
| Brownhylda | |||
| Fille d'Amour | Hurry On | ||
| Friar's Daughter | |||
| Admirable 1942 黒鹿毛 FNo.2-o |
Nearco 1935 黒鹿毛 |
Pharos | Phalaris |
| Scapa Flow | |||
| Nogara | Havresac | ||
| Catnip | |||
| Silvia 1927 鹿毛 |
Craig an Eran | Sunstar | |
| Maid of the Mist | |||
| Angela | Lomond | ||
| La Danseuse | |||
| 競走馬の4代血統表 | |||
クロス:Pharos 4×3(18.75%)、Cyllene 5×5(6.25%)
主な産駒
- セイユウ(1954年産 牡 セントライト記念、読売カップ(春)、読売カップ(秋))
- ライジングウイナー(1954年産 牡 京都記念(春))
- オーテモン(1955年産 牡 天皇賞(秋))
- シユンエイ(1955年産 牡 タマツバキ記念(春)などアングロアラブ重賞4勝)
- ヒシマサル(1955年産 牡 安田記念など重賞4勝)
- ウネビヒカリ(1956年産 牡 朝日杯3歳Sなど重賞3勝)
- トキノキロク(1957年産 牝 桜花賞)
- チトセホープ(1958年産 牝 優駿牝馬)
- タカライジン(1959年産 牡 京都大障害3連覇、東京障害特別)
- ミスマサコ(1960年産 牝 桜花賞)
関連動画
ニホンピロウイナーあたりは彼の子孫なので彼の動画を見よう!
ヒシスピードが出てるマルゼンスキーの動画でもいいぞ!
関連項目
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- 97年古馬三強
- 競走馬の世代一覧
- 競走馬の短縮リンク
- 競走馬の長寿記録一覧
- 競走馬の香港表記一覧
- ゴールデンハインド
- 皐月賞1番人気馬の一覧
- サラブレッドの馬体重記録一覧
- ステイヤー三羽烏
- 東京優駿2着馬の一覧
- 21世紀の名馬
- ヒシマサル
- ポテイトーズ
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