![]() |
ネタバレ閲覧の権を他人に握らせるな!! |
黒死牟(こくしぼう)とは、漫画『鬼滅の刃』の登場人物である。
「牟」の字には「むさぼる」「奪う」という意味がある。
概略
鬼舞辻無惨の抱える幹部「十二鬼月」の一人で、上弦の壱。いかにも侍というような服装で、非常に長い間生きているとみられる。6つの目を持ち、左の額と右の顎のあたりに炎のような痣がある。その威圧感は他の上弦とは一線を画すものがある。他の鬼と異なり刀を携え、猗窩座が全く反応できない速度で抜刀することができる。また、6つある目はただの飾りではなく、相手の力の流れや弱点を瞬時に見抜く「透き通った世界」を見通す力がある。鬼であるのでスタミナ切れも起こらない上に当然のように高い再生力も備えているのでもはや手が付けられない強さである。
その風貌は呼吸術の開祖によく似ている。また、剣術使いであり痣の形が炭治郎によく似ていることからも、鬼殺隊と浅からぬ繋がりを感じさせる。
- 以下ネタバレを含みます。
概要
人間だった頃の名前は「継国巌勝(つぎくにみちかつ)」で、弟である「継国縁壱(つぎくによりいち)」と共に鬼殺隊として活動していた。月の呼吸という非常に珍しい呼吸の使い手で、呼吸術を弟と共に鬼殺隊に定着させた人物でもある。なんの因果か呼吸術の使える鬼として十二鬼月になった。
如何に剣術を極めようともそれを余すことなく伝承することができる才能を持った人間が現れないことに失望しており、自身の剣術が潰えることを嘆いていた。しかし縁壱は、道を極めた者のたどり着くところは同じ、いつか自分たちと同じ高みに達するものは現れるだろうから何も心配することはない、と対照的な考えであった。
獪岳は黒死牟の手引きにより鬼になった。また、鬼舞辻無惨からは「ビジネスパートナー」であると見られている。ひたすら強さを追い求める猗窩座を評価しており、追いつかれることを楽しみにしていた節がある。霞柱の無一郎は彼の遠い子孫である。
無限城にて、岩柱、霞柱、風柱、玄弥の4人が黒死牟と対峙した。月の呼吸の斬撃を回避するだけで精一杯なほどの激しい攻撃をかいくぐり、玄弥の血鬼術の足止めと霞柱の始まりの呼吸により動きが止まったところを岩柱と風柱の連携により頭部を破壊し、辛うじて黒死牟を退けた。しかし、玄弥と霞柱は命を落としてしまう。
背景
- 物語の核心を含みます。
幼少期
縁壱には生まれたときから額に不気味な痣があった。双子であることが跡目争いの種になる上に痣が縁起が悪いからと殺されそうになったが、母の鬼気迫る抵抗により10になったら出家させるという条件で育てられることになった。巌勝は侍になり家を継ぐために剣術を習うが、縁壱は気にもかけられずいつも母のそばにいた。縁壱と巌勝は着るもの住む部屋習い事何から何まで差をつけられて育てられた。縁壱は耳が聞こえないのかいつまでたっても言葉を話さず、母を見るといつも左脇にしがみつき、一緒に遊んであげても少しも笑わない子供だった。巌勝の剣術の鍛錬を遠巻きに眺めるときも、持ち物の笛をあげたときも無表情だった。巌勝は弟の境遇を不憫に思いつつ、いつまでも母のそばを離れられないほど幼く、同時に気味が悪く見えていた。
ある日の事。縁壱は突然「兄上の夢はこの国で一番の侍になることですか」と語りかけた。大変驚いたが、自分も侍になりたいそうだ。剣術指南役が試しにと木刀を握らせた。巌勝はその指南役に一度も打ち込むことができていなかった。母のそばを離れられない軟弱者には侍になることなどできないと弟の事を侮っていた。しかし、縁壱は端から覗き口頭で手解きを受けただけにもかかわらず、熟練の指南役を技で圧倒し昏倒させる腕前を見せつけた。それ以来、縁壱は剣術を学びたいと言い出さなくなった。
弟に剣技についてなんとか聞きだしたが、不可解なことを語り、実に興味のなさそうな顔をする。弟にとって剣の話は児戯に満たないつまらないことだった。しばらく気が付かなかったが、縁壱は人体が透けて見えるという超常的な知覚について言っていたようだ。巌勝も並々ならぬ才能を持っていたが、弟は遥かに超越する神童であった。
指南役は縁壱の腕を報告しているだろう。跡取りは弟になり自分は狭い部屋に押し込まれ、出家させられる。立場が逆転した。巌勝は気が気でなかった。しかし、弟は唐突に母の死を伝え、夜が明けないうちに家を出て行った。母の死は寝耳に水だった。弟は貰った笛を兄と思って精進するという。笑顔でしゃべるだけしゃべり、去っていった。音の外れたがらくたの笛のなにがいいのか。不愉快だった。
後に見た母の日記によると、縁壱は跡取りにされることを察し、出家を早くしようと決めたという。また、母はひどく体を悪くし、数年前から左半身が不自由だったらしい。
左半身。
その瞬間、巌勝の感情が爆発した。縁壱は母といるときに常に母の左脇にいた。縁壱は母に甘えてしがみついていたのではなかった。母の病にいち早く気付き、満足に動かせない左半身を支えていたのだ。
巌勝は縁壱をを内心見下していた。しかし現実は、素質も、人格も、振る舞いも、弟は何から何まで自分の手の届かない雲の上の存在だった。自分の欲しかったものを全て持ち、それに全く興味がないということが許せなかった。巌勝は激しく嫉妬し、弟を憎悪した。心の底から弟の死を願い、弟がこの世に生まれてきたことを呪いさえした。
青年期以降
縁壱は寺にはついておらず、消息がつかめない期間が続き、縁壱は死んだことになった。その間に妻子を持ち家を継いだ巌勝には平穏な時間が流れた。しかしその後、縁壱は二度巌勝の前に現れた。
野営中に鬼に襲撃され部下が全滅した巌勝の前に縁壱が現れ、鬼を一太刀で葬った。縁壱は到着が遅れ部下を助けられなかったことを侘びた。嫉妬と憎悪が蘇った。しかし、呼吸術を学べば強くなれると知り、家を捨て鬼殺隊に入った。呼吸術の指導を受けてすぐに巌勝にも縁壱そっくりの痣が現れた。しかし縁壱の「日の呼吸」は習得できず、習得できたのは派生に過ぎない「月の呼吸」どまりだった。さらに痣が現れたものは寿命がすぐに尽きることが明らかになった。未だに弟に追い付けない。道を極める時間も未来もない。
そんなときに無惨が現れ、鬼になれと言ってきた。鬼になれば寿命で死ぬことが無くなるという。強さを求め迷わず鬼になった。鬼になれば道を極めしがらみから解放されると確信した。
しかし鬼になって数十年後、老人になった縁壱が現れた。痣があるにも関わらず寿命が来ず、鬼の力を得た巌勝を老人でありながら圧倒した。一太刀で力量差を痛感させ、次の一太刀で死を確信させるものだった。しかし、次の一太刀が来ることはなかった。縁壱は老衰で死んでいた。巌勝には勝ち逃げ同然の結末だった。
強さを極めるために、家を捨て、妻子を捨て、人間を辞めたというのに、縁壱に勝てなかった。日の呼吸の使い手をしらみつぶしに葬ったのに、縁壱の日の呼吸は残り、自分の残したかった物はついに何も残らなかった。侍として死ぬ誇りさえ捨て、醜い怪物になり果ててまで、何を求めたのか?何を得るというのか?
弟の才能に嫉妬し、憎悪し、嫌悪し、同時に惹かれ、焦がれ、太陽のように眩しく覚える。巌勝は縁壱の存在を激しく憎むと同時に、縁壱の生き方に激しく恋焦がれていたのだ。考え得る全てを捨てて理想の生き様を追い求めたのに、自分の理想は実現せず弟の言う道を極めることはついに叶わなかった。
縁壱との対比
巌勝は名家の跡継ぎという境遇に恵まれ、妻子を持ち穏やかな家庭を築き、立派な侍として生きる道があった。しかし、弟への嫉妬ゆえにに歪み、全てを犠牲にしてでも強さを求めるようになった。
縁壱は超常的な知覚、比肩するものは存在しない剣術の才能、理を超越した肉体を全て備えていた。しかし、縁壱は強くなることには興味がなく、小さな家に住み、すぐ隣に愛する人がいるような、つつましやかだが穏やかな家庭を望んでいた。
巌勝は弟を憎悪し、一瞬でも早く弟の顔を忘れたいと思い、弟の存在が消えることを望んでさえいたのに、縁壱の顔はいつまでも鮮やかだった。父母の顔も妻子の顔も忘れたというのに。
縁壱は死の瞬間まで兄からもらった笛を肌身離さず持ち歩いており、黒死牟はその笛を見て涙を流した。黒死牟はその笛を鬼の体が滅びるまで肌身離さず持ち歩いていた。2人の兄弟は愛憎入り混じった深い繋がりがあったのだ。環境さえ違えばあるいはもっと幸せな生き方ができたかもしれないが、ボタンの掛け違いですれ違い続けた2人だった。
月の呼吸
全集中の呼吸と血鬼術を融合させた呼吸であり、斬撃にかまいたちのような三日月形の刃を発生させる効果がある。本人の剣術と呼吸の練度が極めて高くただでさえ強いというのに、一振りで超高速の三日月形の刃が広範囲に乱れ飛ぶ。さらに、たとえ刀が折れたとしても刀も再生させることが出来るほか、それを体から生やすこともできるし、刀の形を変形させて射程距離を伸ばすことも出来るし、ノーモーションで三日月を発生させることもできてしまう。使用する刀「虚哭神去」は刀身には目玉がたくさんついていて気持ち悪い。刀は日輪刀ではなく自分の肉体で作っているため、猩々緋砂鉄に弱く、ゆえに赫刀になれないのが弱点。
呼吸術で現れる炎や水はあくまでもイメージであるということだが、月の呼吸による攻撃は実際に複数の斬撃が発生する。読者からは「三日月エフェクトがファンシーでオシャレ」「セーラームーン」「単なるイメージじゃなかったのかよこれ」「一人だけ魔法みたいなことできてずるい」「鬼殺隊どうすんのこれ」などと驚かれた。
- 壱ノ型 闇月・宵の宮
抜刀して横薙ぎに一閃する。この単純な攻撃すら、異次元の攻撃速度と三日月状の斬撃が合わさり回避困難な一撃と化している。 - 弐ノ型 珠華ノ弄月
切り上げるようにして正面に三連の斬撃を放ち、大きな月型の刃で対象を取り囲んで斬り裂く。 - 参ノ型 厭忌月・銷り
横薙ぎの形の斬撃を月型の刃を纏わせて互い違いに2連続で放つ。 - 伍ノ型 月魄災渦
刀を全く振らずに竜巻の様な斬撃を出現させる。このため、鍔迫り合いで太刀筋を封じることも不可能。 - 陸ノ型 常世孤月・無間
縦方向の一振りで広範囲かつ縦横無尽に無数の斬撃を放つ。 - 漆ノ型 厄鏡・月映え
刀を斜めに一閃し遠距離から複数の方向に地を這う高速の斬撃を放つ。さらに、地を這う斬撃の合間を埋める様に三日月型のうねる斬撃が伴っている。これ以降は三叉の大太刀による攻撃となる。 - 捌ノ型 月龍輪尾
強烈な力で素早く繰り出す抉り斬るような横薙ぎの一閃。壱ノ型の数倍以上に範囲が拡大している。 - 玖ノ型 降り月・連面
刀を背中から前方に振るい、敵の頭上から降り注ぐような軌道の複雑かつ無数の斬撃を放つ。 - 拾ノ型 穿面斬・蘿月
回転鋸のような形状の巨大な二連の刃を横に地面を削りながら複数並べて放つ。 - 拾肆ノ型 兇変・天満繊月
周囲を埋め尽くす量の渦状の斬撃を折り重ねて放つ。 - 拾陸ノ型 月虹・片割れ月
敵の位置を的確に狙い定めた上で、上から地面に三日月を縦に突き刺す様な斬撃を複数放つ。
ネットでの評判
- 初登場時は縁壱と巌勝が双子だと明らかにされていなかったので、呼吸の開祖が上弦の壱になったと予想されていた。
- 無一郎の祖先ということからおじさんの愛称で呼ばれることもある。無一郎に対する態度も親戚のおじさんっぽい。
- 「此方も抜かねば…無作法というもの…」というセリフがウケて、蜜璃さんたちで抜きたいときにこのセリフがよく書き込まれるようになった。その際は、縁壱の「お労しや 兄上」というセリフが兄上のお痛わしい書き込みに対するツッコミとして使用されるのがお約束。
- 本人も本編も至ってまじめなのに所々妙な雰囲気を醸し出していてネタにされやすい。
- 威厳のある当初のイメージは話が進むにつれて崩れていった。知れば知るほどすれ違いが悲しくなる不幸さと縁壱へのひねくれた感情はとても人間臭く共感する声も聞かれる。縁壱の過去含め境遇があまりにもお労しすぎてネタにしにくい雰囲気となることもある。
- 黒死牟は生き恥を晒してまで生きながらえることに抵抗を感じて自壊したが、無惨様は生き恥などお構いなしの最高に生き汚い存在として描かれている。
関連動画
関連静画
関連項目
親記事
子記事
兄弟記事
- 19
- 0pt