651系とは、JR東日本が保有する交直流特急形電車である。
登場時のキャッチフレーズは「タキシードボディのスゴイ奴。」
概要
常磐線特急「ひたち」の485系後継車として1989年3月11日にデビュー。
登場の背景には先ず485系という車両そのものが老朽化していたこと、そして高速バスの勢力拡大により競争力の強化が求められてきたことなどがある。
651系の大きな特徴は、なんといってもほぼ同時期に登場したJR九州783系と共に、「踏み切り区間での最高速度130km/h運転に対応した初めての車両」という点である。
日本の鉄道界では「在来線の踏切がある区間では緊急事態に備え、600m以内で完全に停車できるようにしなければならない」という、いわゆる「600m条項」が今なお暗黙のルールとして存在しており、今までは在来線列車の速度は120km/hが限度であった。
尚、「600m」という数値の由来は「人間が立体視出来る限界の距離」・「鉄道の信号が600m置きに設置されていることから」・「人間が(信号灯の)色を見分けられる最大の距離」など、様々な説があるらしい。
しかし技術の進歩により、10km/h速度を向上した130km/hからでも600m以内の制動が実現出来るようになり、遂に在来線の踏切区間でも130km/hでの走行が可能になった。
在来線の130km/h運転は決してJR化後に浮上した計画ではなく、国鉄時代からも黙々と研究が行われていた。381系の前身である591系試験電車や391系ガスタービン気動車は実際に最高速度130km/hを目標として掲げていた。
651系も、実際は国鉄時代に485系の後継車として研究されていた幻の形式「487系」が前身であるという説もあるとか。
ちなみに現在の技術では、135~140km/hからでも600m条項のクリアが可能と言われており、さらにレールそのものにブレーキを掛ける「レールブレーキ装置」を採用すれば160km/h弱からの600m条項クリアも可能とされている。実際、JR四国では8000系にレールブレーキを装着し、160km/hからの600m条項クリアの実験を行っていたことがある。
しかし荒天時の安定性や、高速からの急制動時の乗客に対する安全性、また140km/h以上での走行による大幅な時間短縮が可能な線形に優れた路線も限られているという面などから「現実的な速度」として130km/hが最高速度となっているのが現状である。
尚、この600m条項は飽くまで「踏切が存在する区間」に於けるルールである。
逆に言えば踏切が無いという条件ならば列車のブレーキ性能を超えた速度での走行も可能ということである。(もちろん、信号システムの強化や「この速度からでは何百m以内で停止出来る」ということを明示するなどの必要はあるものの)
実際、津軽海峡線の青函トンネル内や湖西線では旧式の485系による130~140km/h運転が実施されており(130km/h運転開始は実は湖西線の方が早い)、また北越急行ほくほく線や京成電鉄成田スカイアクセスでは160km/h運転が実施されている。
また、智頭急行や首都圏新都市鉄道(つくばエクスプレス)でも将来的には最高速度を160km/hに向上する計画があるとも言われている。
車体
編成は基本編成がグリーン車を組み込んだ7連(4M3T)、付属編成がモノクラスの4連(2M2T)。
車体は従来同様の普通鋼製であるが、強度計算の進歩によって従来の国鉄型特急形車両より大幅な軽量化を実現した車体となっている。
ビジネス利用を前提として、ドア数は片側2ドア。主に速達タイプの列車に回される本系列が2ドア、こまめに停車し地域間輸送を主眼とする「フレッシュひたち」で運用を行うE653系が片側1ドアなのは何かが間違っているような気がするが、まあ突っ込まないであげましょう。
前面は往年の名車「こだま形」こと151系を意識したと言われるボンネットスタイル。前頭部には大型のLEDディスプレイを用いたヘッドマークが装備されており、列車名や行先などを表示できる。尚、後部標識灯はこのLEDディスプレイと一体化している。
初の130km/h運転対応車ということもあるのか、高運転台方式になっている。
列車名は「スーパー/フレッシュひたち」であり、日立製作所お膝元の日立駅にも停車するが、製造は全車とも川崎重工業である。この車両の受注がとれなかったことは日立社内で大問題になったというが、後継のE653系・E657系では日立も受注に成功、「日立製のひたち」が実現している。
室内
普通車
普通車の座席は4列配置の回転リクライニングシート。シートピッチは国鉄型の910mmから一気に970mmへと拡大された。このシートピッチは、E653系で一旦910mmに戻ってしまうが、E657系で960mmとなった。
座席上の荷物棚について、登場当時は旅客機などで見られるハットラック式だったが、メンテナンス性や使い勝手の悪さなどから更新時に通常の荷物棚に変更されてしまった。
また照明についても、これも登場時は間接照明だったが現在はカバー付き蛍光灯となっている。
グリーン車
グリーン車の座席は3列配置の回転リクライニングシート。シートピッチは1160mmという広大なもの。
尚、一人がけの座席は某異層次元戦闘機と同じく「R-9」という形式のものであるが、バイドは出てこないので安心してくつろいで頂きたい。
登場時は各座席に衛星放送を受信可能な液晶テレビが設置されていたことも有名であったが、更新でこれも撤去された。何故外したし
3列配置という座席配置自体がJR東日本の特急では貴重品であるので、心して利用するように(大げさだったか)。
かつては分煙志向に併せ、グリーン客室中央に喫煙席と禁煙席を区別するパーティションが設けられていたが、JR東日本の全列車禁煙化に伴ないこのパーティション自体が撤去された。
なお、客室出入口の部分には常磐線の沿線の環境に併せ、ゴルフクラブやサーフボード等の大荷物を置けるスペースがあるものの、利用状況は好ましいとは言えない。是非とも使ってあげてください。
機器類
制御方式は205系や211系で実績のある界磁添加励磁制御を採用。
界磁添加励磁制御は抵抗制御の改良型であり、電動機の回転子部分は従来通りの抵抗制御を行う一方界磁部分はサイリスタ等の半導体を用いて弱め界磁制御を連続して行う方式である。
界磁チョッパ制御とほぼ同等の「省エネ化」・「回生ブレーキ」を、特性に優れる直流直巻電動機で実現出来るシステムであり、界磁制御用の半導体も小規模な容量で済ませられるため、「抵抗制御の改良型」と言えばローテクに聞こえるものの実際は低コストで省エネな、実用性に優れたシステムである。
ちなみに交直流車両で界磁添加励磁制御を採用している車両は651系が唯一のものとなっている。
交流区間での回生時は、力行時に整流に使っていたサイリスタブリッジ回路を逆に「インバータ」として転用、交流に変換して架線に送り返す。
主電動機はMT61を使用。MT61は元々、信越線特急の後継車として研究されていた幻の形式「187系」用に設計されていた電動機であるという説があるとか。
駆動方式はこれも実績のある中空軸平行カルダン駆動。ギア比はJR九州783系と同じ20:79=1:3.95。ギア比や足回りなどの面から、考えようによっては783系の遠い親戚に当たる車両とも取れる。
補助電源装置はBLMG、電動空気圧縮機は低騒音型のC-2000L系列。
交直流モード切り替えは手動で行う。ちなみに415系が上野口から撤退した今、最後の「藤代の交直流セクションで電気が消える車両」である。これもまあ、味といわれれば味であろう。
尤もE531系やE653系も、交直流セクションで冷房装置やラインデリア等の空調系が一旦停止するが。
台車はDT50を元に高速安定性を高めたDT56系。ヨーダンパを標準装備する。
先述の600m条項をクリアするため、各車軸には自動車でいうABSに当たる、滑走を検知して一時的にブレーキ力を弱めることにより滑走を止め、結果としてブレーキ能力を引き上げる滑走再粘着装置を搭載。130km/hの高速走行を支える要である。
車内のLEDは停車駅や行先を表示する他、現在の走行速度も表示する。
特筆すべき点としては、運転台にJR東日本の在来線車両で初めての列車情報管理システム・MONを搭載したことであろう。これは当然ながら後のTIMS等に発展していくものである。全てはここから始まった。
性能
となっている。
しかし当初の計画では当時建設中の北越急行での運用も検討されていたと言われており、設計最高速度は160km/hという性能を隠し持っている。(もちろん、大人の事情で封印されているのは言うまでもないが)
このためかどうかは知らないが、運転台には180km/hまで刻まれた電光表示式の速度計が鎮座している。
三菱電機からの衝撃
三菱電機のWebサイトに掲載されていた鉄道部門のPDFファイル上において、「E657系」という未知の新形式用に、JR東日本に電装品を納入したという内容が掲載されていたのである。(その後当該項目は削除・訂正済み)
JRの形式付与のルールからすればこれは明らかに交直流用の特急形電車を指す形式であり、尚且つ「JR東日本の路線で交直流の特急形電車が必要な路線」と言えば、常磐線以外には考えることが難しい。
加えて651系自体も永年の過酷な運用で、車体に激しい傷みが加わっているのは想像に難くない。
さらに現在のJR東日本の方針からすれば、新型車両の置き換え対象は651系である・・・という結論であるのは必然的なものであろう。
そう遠くない将来にE657系が登場した際は、これも今までの経験からすれば瞬く間に651系が置き換えられてしまうということは十分考えられるため、撮影や乗車を済ませておくなら今のうちである。
そして2010年12月7日、JR東日本から正式にE657系の投入が発表された。投入時期は2012年春で同年秋には上野駅発の特急は全てE657系となり、651系を置き換える事となる。そして、2013年3月にE657系に統一され、651系は引退した。2013年9月11日付で、付属編成であるK203編成が廃車となり、651系初の廃車となった。
しかし、E657系が改造工事を行うことになったため、2013年10月から2015年3月まで定期運用が復活していた。その後も波動用として臨時列車の運用に就いている。つまり、まだ651系は活躍し続けるのである。
もちろん、一般利用者と真面目な鉄道ファンには迷惑を掛けないようにしよう!
運行を邪魔するなんてもってほかだぞ!
今のカメラは手ぶれ補正などのありがたい機能がたくさん付いている。三脚の使用は極力控えめに!
フラッシュは絶対にやめよう!
廃車・改造
K101、104、106~109(基本編成)、K206、208、209(付属編成)は直流化改造(後述)が実施されて1000番台となった。それぞれ、OM201~206(基本編成)、OM301、303、302(付属編成)となる。
未改造車については、2013年9月にK203が廃車され、2015年12月にはK204、2016年3月にはK202が廃車となった。なお、K202は東日本大震災の影響で原ノ町駅に放置留置されていた車両で、何も整備されない状態でボロボロになっていた。
直流化改造(1000番台)
2013年10月7日、郡山車両センターへ入場していた651系K109編成に、オレンジの帯を追加され、パンタグラフがシングルアーム型に載せ替えられていることが確認された。また、車番から1000番台となることや、所属が「宮オオ(大宮総合車両センター)」となることが判明。
そして、2014年3月から高崎線で「あかぎ」・「スワローあかぎ」・「草津」として運用開始した。
運用上、直流区間しか走らないため、交流機器の使用停止処置がとられている。交流機器は、交流避雷器などの撤去以外は、回路の遮断のみでほぼ残置されている。その理由は車両の重量バランスの関係によるため。また、積雪対策として、先頭車のスカート下にスノープラウを増設している。
なお、従来の慣例では、交直両用車両に直流化改造工事を施した場合、通常は百の位の数字を「4~6」のいずれかから「1~3」のいずれかへと改番する(場合によっては似た車両の形式に編入される)のが決まりであったが(例:485系→183系)、本形式ではその原則に則らず番台区分の変更のみが行われており、形式名の改番は行われていない。
なお、運用開始当初は、基本編成も付属編成も定期運用があったのだが、2015年3月のダイヤ改正で高崎線の651系運用の特急が全て7両に統一されたため、付属編成は波動用となり、このうち1編成(OM301(元K206)編成)が観光列車「伊豆クレイル」用のIR01編成に再改造され、他は廃車された。IR01編成も老朽化と伊豆半島走行による塩害により2020年6月をもって退役した。
残る編成も2023年3月にE257系に置き換えられ、同月のダイヤ改正をもって運用終了となる。波動用については置き換えたはずの185系が復帰することになったため、651系は引退することになった。
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交直流セクションを通過。
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