篠田節子(しのだ せつこ)とは、日本の小説家。
概要
1955年東京生まれ、東京学芸大学教育学部卒。八王子市役所に勤務する傍ら、カルチャースクールの小説講座で多岐川恭や山村正夫から小説を学ぶ。同じ講座には後の宮部みゆきがいた。
1990年、『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。1993年の『神鳥 イビス』で注目を集め、その頃にはモダンホラーの新鋭として坂東眞砂子や恩田陸と並べられたりもした。1995年、パニック小説『夏の災厄』で初の直木賞候補に。
1996年、『ゴサインタン 神の座』で第10回山本周五郎賞を受賞。1997年、『女たちのジハード』で第117回直木賞を受賞する。その後は2009年に『仮想儀礼』で第22回柴田錬三郎賞、2011年に『スターバト・マーテル』で芸術選奨文部科学大臣賞、2015年に『インドクリスタル』で第10回中央公論文芸賞、2019年に『鏡の背面』で第53回吉川英治文学賞を受賞している。2020年、紫綬褒章を受章。
作風は到底一言でまとめられないほど多彩で、かつ特定のジャンルへの帰属意識が希薄なため、どういう作家かというのを非常に説明しにくい。ホラー、ミステリー、サスペンス、伝奇、SF、幻想小説、オカルトなどにジャンルがまたがり、そういった要素のいずれもない現代ものの女性小説、家族小説、恋愛小説なども多数あるため、どのジャンルの作家と呼んでもそこからこぼれ落ちるものが多すぎるタイプの作家。
宗教がテーマの『ゴサインタン』『弥勒』『仮想儀礼』、出世作の『神鳥 イビス』、折木奉太郎が読んでいたことでも知られる(?)パニック小説『夏の災厄』、近未来ディストピアSF『斎藤家の核弾頭』あたりが代表作と言える(異論は認める)。他にも直木賞受賞作『女たちのジハード』をはじめとする女性小説、『ハルモニア』『カノン』といった音楽もの、『聖域』のような伝奇サスペンスなど色々あり、『コンタクト・ゾーン』『インドクリスタル』など海外を舞台にした作品が多いのも特徴。『斎藤家の核弾頭』『弥勒』『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』『竜と流木』などはSF方面でも評価されている。これから読む人は、あらすじなどを見て、興味を惹かれた題材の作品から読んでみるといいだろう。
作品リスト
赤太字は2024年1月現在新品で入手可能なもの。
小説
- 絹の変容 (1991年、集英社→1993年、集英社文庫)
- 贋作師 (1991年、講談社ノベルス→1996年、講談社文庫)
- ブルー・ハネムーン (1991年、カッパ・ノベルス→1997年、光文社文庫)
- 変身 (1992年、角川書店)
→ マエストロ (2005年、角川文庫[改題])
- アクアリウム (1993年、スコラ→1996年、新潮文庫→2011年、集英社文庫)
- 神鳥 イビス (1993年、集英社→1996年、集英社文庫)
- 聖域 (1994年、講談社→1997年、講談社文庫→2008年、集英社文庫)
- 愛逢い月 (1994年、集英社→1997年、集英社文庫)
- 夏の災厄 (1995年、毎日新聞社→1998年、文春文庫→2015年、角川文庫)
- 美神解体 (1995年、角川ホラー文庫→2012年、角川文庫)
- 死神 (1996年、実業之日本社→1999年、文春文庫)
- カノン (1996年、文藝春秋→1999年、文春文庫)
- ゴサインタン 神の座 (1996年、双葉社→2000年、双葉文庫→2002年、文春文庫→2024年、集英社文庫)
- 女たちのジハード (1997年、集英社→2000年、集英社文庫)
- 斎藤家の核弾頭 (1997年、朝日新聞社→1999年、朝日文庫→2001年、新潮文庫)
- ハルモニア (1998年、マガジンハウス→2001年、文春文庫)
- 弥勒 (1998年、講談社→2001年、講談社文庫→2019年、集英社文庫)
- レクイエム (1999年、文藝春秋→2002年、文春文庫)
- 青らむ空のうつろのなかに (1999年、新潮社)
→ 家鳴り (2002年、新潮文庫[改題]→2012年、集英社文庫)
- 第4の神話 (1999年、角川書店→2002年、角川文庫)
- 百年の恋 (2000年、朝日新聞社→2003年、朝日文庫→2007年、集英社文庫)
- インコは戻ってきたか (2001年、集英社→2004年、集英社文庫)
- 妖櫻忌 (2001年、角川書店→2004年、角川文庫)
- 静かな黄昏の国 (2002年、角川書店→2007年、角川文庫→2012年、角川文庫[新版])
- コンタクト・ゾーン (2003年、毎日新聞社→2006年、文春文庫[上下巻])
- 天窓のある家 (2003年、実業之日本社→2006年、新潮文庫)
- 逃避行 (2003年、光文社→2007年、光文社文庫)
- 秋の花火 (2004年、文藝春秋→2007年、文春文庫)
- 砂漠の船 (2004年、双葉社→2008年、双葉文庫)
- ロズウェルなんか知らない (2005年、講談社→2008年、講談社文庫)
- 賛歌 (2006年、朝日新聞社→2010年、朝日文庫)
- 夜のジンファンデル (2006年、集英社)
→ コミュニティ (2009年、集英社文庫[改題])
- 純愛小説 (2007年、角川書店→2011年、角川文庫)
- 転生 (2007年、講談社ノベルス→2011年、講談社文庫)
- Χωρα 死都 (2008年、文藝春秋)
→ ホーラ 死都 (2011年、文春文庫[改題])
- 仮想儀礼 (2008年、新潮社[上下巻]→2011年、新潮文庫[上下巻])
- 薄暮 (2009年、日本経済新聞出版社)
→ 沈黙の画布 (2012年、新潮文庫[改題])
- スターバト・マーテル (2010年、光文社→2012年、光文社文庫)
- 廃院のミカエル (2010年、集英社→2013年、集英社文庫)
- はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか (2011年、文藝春秋→2014年、文春文庫)
- 銀婚式 (2011年、毎日新聞社→2016年、新潮文庫)
- ブラックボックス (2012年、朝日新聞出版→2016年、朝日文庫)
- ミストレス (2013年、光文社→2016年、光文社文庫)
- ルーティーン 篠田節子SF短篇ベスト (2013年、ハヤカワ文庫JA)
- 長女たち (2014年、新潮社→2017年、新潮文庫)
- インドクリスタル (2014年、KADOKAWA→2018年、角川文庫[上下巻])
- となりのセレブたち (2015年、新潮社)
→ 蒼猫のいる家 (2018年、新潮文庫[改題])
- 冬の光 (2015年、文藝春秋→2019年、文春文庫)
- 竜と流木 (2016年、講談社→2020年、講談社文庫)
- 鏡の背面 (2018年、集英社→2021年、集英社文庫)
- 肖像彫刻家 (2019年、新潮社→2022年、新潮文庫)
- 恋愛未満(2020年、光文社→2023年、光文社文庫)
- 田舎のポルシェ (2021年、文藝春秋→2023年、文春文庫)
- 失われた岬 (2021年、KADOKAWA)
- セカンドチャンス (2022年、講談社)
- ドゥルガーの島 (2023年、新潮社)
エッセイ・その他
- 三日やったらやめられない (1998年、幻冬舎→2001年、幻冬舎文庫)
- 寄り道ビアホール (1999年、朝日新聞社→2002年、講談社文庫)
- 交錯する文明 東地中海の真珠キプロス (2000年、中央公論新社)
- 人間について (2004年、扶桑社) ※日高敏隆との共著
- 「森の人」が食べるブドウの味 (2017年、小石川書店)
- 介護のうしろから「がん」が来た! (2019年、集英社→2022年、集英社文庫)
関連項目