真田太平記とは、
本項では、両方ともに解説する。
概要
「鬼平犯科帳」「剣客商売」など多くの人気時代小説を手掛けた池波正太郎は、江戸時代の時代劇ものだけでなく、戦国時代の真田家に関する歴史小説も数多く執筆した。そもそも池波が小説家として注目を集めるようになったのは、真田信之の最晩年に起こった真田家の家督相続を巡る騒動を描いた短編小説「錯乱」が直木賞を受賞したことがきっかけであり、その後も彼は真田家の人々や、それと大きく関わるオリジナルキャラクターを主人公にした歴史小説を多数執筆するようになった。
そして1974年、池波はそれまでの真田家を題材にした歴史小説の集大成と言える「真田太平記」の執筆を開始する。武田家滅亡から、関ヶ原の戦いや大坂の陣を経て、上田から松代へ移封するまでの、真田家の人々の波瀾万丈の人生を描いたこの作品は、文庫本12巻にも及ぶ超大作となり、完結したのは8年後の1982年であった。
それまで真田幸村だけが圧倒的な人気・知名度を誇っていたのに対して、池波正太郎はその父・真田昌幸と兄・真田信之にも注目し、それまでの彼の作品でも昌幸や信之が主役の小説を執筆しており、本作でもこの3人全員が主人公と言える内容となっている。特に池波正太郎は、信之がお気に入りだったようで、特に彼の描写には力を入れており、父・昌幸と弟・幸村の間に挟まれ、やや影が薄くなりがちだった信之の再評価にも繫がった。
この他にも、「角兵衛狂乱図」の主人公・樋口角兵衛をはじめ、それまでの池波正太郎の真田ものに登場したオリジナルキャラクターも、ほとんど登場している(但し、各兵衛の最期など、「真田太平記」では異なる展開を見せる場合も多い)。また、講談で有名な真田十勇士が登場しない代わりに、本作のオリジナルである真田家の忍び集団「草の者」が活躍しており、「草の者」のくノ一・お江(読みは「おこう」、徳川秀忠の正室・江とは別人)が物語のヒロインとなっている。
2015年12月から2019年9月にかけて、コミカライズ版が週刊朝日増刊号で連載されていた。こちらも全18巻の大長編となっている。作画は細川忠孝が担当。
NHKドラマ版
NHK大河ドラマは、1984年から3年間「山河燃ゆ」「春の波濤」「いのち」と、それまでの時代劇路線を変えて、近現代を舞台にした作品を放送し続けた。これに対して、従来の大型時代劇を見たいという視聴者の声に応え、NHKは水曜日の夜8時に1年間かけて放送されるNHK新大型時代劇の放送を開始、「宮本武蔵」「真田太平記」「武蔵坊弁慶」の3作品が制作された(「武蔵坊弁慶」のみ9ヶ月の放送)。
NHK新大型時代劇は、予算の関係でロケやセットの規模・豪華さでは大河ドラマにやや劣るものの、ドラマのクオリティの高さ、キャストの豪華さなど、大河ドラマと比べても全く遜色なく、現在でも「裏大河」と呼ばれるほどの名作が揃っており、事実上大河ドラマとして扱われている。第二弾としてドラマ化された「真田太平記」も、原作の持ち味を失うことなく、後年の「独眼竜政宗」「武田信玄」に劣らぬ戦国大河の名作の一つに数えられている。
上述した通り、池波正太郎が信之に焦点を置いたこともあって、キャストクレジットの一番手は渡瀬恒彦演じる真田信之(信幸)となっており、幸村は二番手、昌幸はトメが定位置となっている。草刈正雄のクールでニヒルな幸村は彼の当たり役となり、この頃描かれた歴史関係の漫画や初期の信長の野望シリーズにおける幸村の多くは、草刈の幸村をイメージしたものが大多数を占めるようになり、この傾向は「戦国無双」や「戦国BASARA」がヒットするまで続いた。
本作の登場人物は、実名(諱)で呼ばれるケースが少なく、時代考証に沿って官職名で呼ばれることが多い。例として、「昌幸→安房守」「信之→伊豆守(豆州)」「幸村→左衛門佐(読みは“さえもんのすけ”)」「家康→内府」「三成→治部」「大谷吉継→刑部」「大野治長→修理」と言った具合で、身内同士でも官職名で呼ぶことが多く、幸村の名前で呼ぶのはドラマのナレーション以外では稀だったりする。但し、なぜか後藤又兵衛だけは、一般的に知られる通称の又兵衛ではなく、諱の基次で呼ばれている。
スタッフ
キャスト
2016年放送の大河ドラマ「真田丸」では、本作で真田幸村を演じた草刈正雄が、今度は父・昌幸を演じることで話題になった。また、中村梅之助・中村梅雀父子が、ドラマでも実の親子である徳川家康・秀忠を演じており、中村梅雀は2006年の大河ドラマ「功名が辻」の最終回でも、再び秀忠役でゲスト出演している。
- 矢沢頼綱:加藤嘉
- 矢沢頼康:大谷友右衛門
- 鈴木右近:岡村菁太郎
- 於利世:中村久美
- 真田大助:片岡孝太郎
- 久野:香野百合子
- お徳:坂口良子
- お菊:岡田有希子
- 向井佐平次:木之元亮
- 向井佐助:中村橋之助
- 横沢与七:花沢徳衛
- 奥村弥五兵衛:真田健一郎
- おくに:范文雀
- 豊臣秀吉:長門裕之
- 豊臣秀頼:円谷浩
- 高台院:津島恵子
- 千姫:工藤夕貴
- 大谷吉継:村井国夫
- 石田三成:清水綋治
- 石田正澄:和田周
- 上杉景勝:伊藤孝雄
- 加藤清正:竜雷太
- 浅野幸長:本多博太郎
- 片桐且元:山本耕一
- 大野修理:細川俊之
- 後藤基次:近藤洋介
- 木村重成:井上倫宏
- 徳川秀忠:中村梅雀
- 本多忠勝:加藤武
- 小野お通:竹下景子
- 滝川三九郎:三浦浩一
- 本多正信:田中信夫
- 本多忠政:森田順平
- 山中大和守俊房:佐藤慶
- 山中内匠長俊:戸浦六宏
- 猫田与助:石橋蓮司
- 田子庄左衛門:井川比佐志
- 慈海:福田豊土
- 杉坂重五郎:丹波義隆
- 迫小四郎:寺杣昌紀
- 馬場彦四郎:角野卓造
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真田太平記は池波正太郎が書いた真田家関連の作品の集大成であると同時に、最後に執筆した作品でもある。そのため、以下に挙げた「真田騒動」「あばれ狼」「獅子」に収録されている真田ものの短編・中編小説などは、いずれも「真田太平記」より前に描かれたものである。しかし、これらの作品は「真田太平記」のストーリーのネタバレになっていたり(例:樋口角兵衛の出生の秘密)、「真田太平記」の後日譚となっている作品が多いため、まずは「真田太平記」本編を読み終えてから、これらの作品を読むことをお勧めする。
関連項目
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