ヘッドフォンとは、耳に装着して、音や音楽を聴くための装置である。
「ヘッドホン」と表記する場合も。
概要
一般的にヘッドフォンと呼ばれるものの定義は、「ヘッドバンドによって両方がつながっており、耳を覆う形になっているもの」である。
耳の穴に入れて装着するものは俗にイヤフォン(イヤホン)と呼ばれるが、耳の穴に入れて装着するものも広義のヘッドフォンである。インナーイヤー型だからイヤフォンと呼ぶのは誤りであり、商品区分としてイヤフォンというものはモノラルに限り存在する。…だったが、今日イヤフォン型が浸透してきたことで、イヤフォン型ヘッドホンと称するようになった。だだ、それさえ略するのも面倒なので、単純にイヤフォンと呼んでいる企業も普通にある。
2月22日は「ヘッドホンの日」と定められている。これはヘッドホンが左右2チャンネルの出力で音楽を楽しめることから、「2」が重なる日、としたとのこと。また、「Peer to Music (P2M)」で、「みんなと音楽の架け橋に」という思いも込められているのだとか。 (参考) 。
表記・ニコニコでの使用状況
「ヘッドフォン」の他、「ヘッドホン」という表記もあり、どちらの表記も日常で多く使用されている。
ニコニコのタグでは、どちらでも検索できるようにしているのかほぼ同じ90件前後、ニコニコ市場では「ヘッドフォン約9000件」「ヘッドホン約10000件」という結果になっている。[1]
種類
使用する状況に応じて種類を変えたほうが良い。あくまでヘッドホンは音楽や環境の音をそのまま再現するものではなく、メーカーによって音を作り出す装置である。
タイプ | 詳細 |
---|---|
オープンエアー型 |
開放型とも呼ぶ。発生音を外に逃す構造になっており、耳への負担が比較的少ない。解像度は高音が伸びる一方で低音が軽くなりがち。 |
密閉型 |
クローズド型とも呼ぶ。発生音を外に漏らさない構造で、同じグレードならオープンエアー型よりも原音に忠実。解像度も低音をしっかりカバーしている。遮音性に優れているため公共の場でも多少大きい音を楽しめる(上げすぎは漏れる)。 ただし外の音をも遮音してしまうため、近づいてくる自動車に気がつきにくくなる。また、遮音性能を儲けるためにヘッドバンドの締め付けが強くされているため、外耳を痛めやすい。長時間使用すると難聴になる可能性があるので、ちょっと耳が痛くなったら適宜音量を下げた方がいいよ。 |
密閉型 (DJモニタリング向け) |
音響外傷
最近はiPodなどの携帯プレイヤーの普及やPCから直接音楽を再生させることが主流になるなどしており、それに応じて需要と販売数量が増加している。だが、長時間大音量を聴き続けることで耳がバカになることがある。この状態が日常的に続いていると、聴覚細胞が徐々に死滅していき、難聴になってしまう。それが「音響外傷」である。
「ロック難聴」や「ディスコ難聴」とも呼ばれるこの音響外傷は、若者を中心に増加しており、特に高音域(4000hz)周辺から聞こえにくくなっていくので、これが悪化すると言葉が聞こえにくくなり聞き返しが多くなるなど会話にも支障が出る。なお、死滅した聴覚細胞は二度と再生しない。
ロックコンサートのライブ会場、ディスコのダンスホールの他、パチンコ店内やゲームセンターなどに長時間いることで発症する。ヘッドフォンで大音量を流しても同じ効果がある。ヘッドフォンを長時間する人は要注意である。
耳が聞こえにくくなったらすぐに耳鼻科へ行くこと。すぐに行けば完治または改善することが可能だ。手遅れになる前に!難聴になってしまった場合は、耳にダメージが加わらないように生活を改善し、これ以上悪化させないようにしなくてはならない。
各メーカーも「適正音量で正しく使ってください。大音量で聴いているとあなたの聴力を損ねる恐れがあります」と警告している。だが、そこそこの音で普通に聴いているうちには、そこまで聴力が急激に低下したりしないので、そこまで過敏になることもない(騒音レベルの大音量で聴き続けたりしない限りは大丈夫)。
むしろ、音量を上げたり、ノイズキャンセリング機能によって周囲の情報把握が疎かになったりするほうが事故の危険が高い。特に密閉性の高いヘッドホンを装着している場合は注意が必要である。
なお、動画でよく聴力テストとか言って、低周波と高周波を聴かせたりするものもあるが、ヘッドホンの性能によって拾える音域が違うのであまりアテにはならない。どうしてもテストしたいなら、スピーカーの方が良い。
ヘッドホンのブランド
国産メーカー
- SONY(ソニー)
言わずと知れた音響業界の雄。そしてウォークマン、CDを開発し、音楽を最も身近に持ち運びさせたメーカーの一つでもある。ノイズキャンセリングやハイレゾ音質などを作ったのもココ。ヘッドホンは安定したMDRシリーズなどから、重低音に強いものなど幅広い。 - Pioneer(パイオニア)
ソニーに次ぐ音響の名門。オンキヨーも現在パイオニアとタッグを組んでおり、子会社のオンキヨー&パイオニアが設計、製造を行っている。djモニター機に定評があり、最上品は10万以上する。デジタル音、高音域に強い。コスパ良し。 - JVC
同じく音響、映像の名門であるビクターとケンウッドの系統。原音追求というモットーがあり、ウッド材の振動板で、音域の広さに定評がある。JVCとはビクターの略称で、近年はケンウッドと合併して、JVCケンウッドとなった。下に挙げるJBLと紛らわしい。 - Audio-technica(オーディオテクニカ)
通称、「オーテク」。ヘッドホン、マイクといった周辺機器で世界でも評価が高いメーカー(アメリカのヘッドホンブランド調査で1位になったこともあるほど)。アナログ音、高音域に強みを持つ。価格はピンきりだが、総じてコスパは良い。 - DENON(デノン)
CDプレーヤーの発売台数は世界一で、業務用に特に強みを持っていた。元はデンオンだが、国際展開のときにデノンデノン呼ばれてるうちにデノンとなる(今はDCMホールディングスの一ブランド、他にマランツなど)。ウッドハウジングを武器とし、独特の柔らかくも力強い、低音サウンドに定評がある(ただ、低音が五月蝿いとイヤーパッド魔改造の餌になることも多い)。 - Panasonic(パナソニック)
今更説明不要だが、元々Panasonicは海外向けのブランドで後にPCや映像商品に採用、音響はTechnics(テクニクス)ブランドがオーディオファンに知られた。ドンシャリ系のメリハリのある音、またデザインもさながら、総合家電メーカーの強みを活かし、完全遮音や防水など付加価値の技術力に定評がある。 - FOSTEX(フォステクス)
OEMを中心に音響関係にかかわってきたフォスター電機の独自ブランド。平面駆動盤を使った個性的なヘッドホンをリリースしている。かつては、ヘッドホンにおいて垢抜けない二流メーカー的な扱いだったが、ヘッドホンマニアから高い評価を受けたTH-900をリリースしてから、世界からも注目を集めるブランドとなる。なお、Appleの公式イヤホンもここのOEM(加えてBeatsにも提供している)なので、そこそこの性能だったりする。 - SOUND WARRIOR(サウンドウォーリア)
ここ数年評価を鰻登りにさせている、隠れたブランド。製作は城下工業という長野県上田市の真空管アンプなどを作っているメーカーでOEMも多い。ここのヘッドホンを装着したら最後、他のはもう重くて着る気がしなくなるほどフィット感と軽さが凄い。 - STAX(スタックス)
静電型ヘッドホンを手がけるオンリーワンのメーカー。最も安いモデルでも数万以上、そして色々揃えると云10万以上はするが、それでも音質の高さは世界から熱狂的なファンがいるほど。ここまで来ると完全に信仰の世界である。 - FINAL(ファイナル)
音響マニアの社長が自分好みのヘッドホンを作るために創業してしまった、まさにマニアのためのブランド。価格は強気で、最高級品は50万以上、まさに究極(FINAL)なメーカーである。どちらかというとイヤホン型の方が幅を利かせている。 - Roland(ローランド)
電子楽器の世界的ブランドであり、キーボード、シンセサイザーなどはプロにもファンが多い。独自にヘッドホンも作っているほか、V-MODAなどの海外ブランドの販売代行も行っている。
ほかに須山補聴器(FitEar)などイヤホン専業メーカーもあるが、そちらはイヤホン参照。
アジア系
- HIFIMAN(ハイファイマン)
Audezeと並ぶ平面駆動ヘッドホンの雄。中華製随一の高級ヘッドホンブランドで、Shangri-Laは590万という超破格の超弩級ヘッドホン。それ以外の一般普及品も評判が高いが、ここのブランドが中華製だと知らない人は多い。 - Creative(クリエイティブ)
シンガポールに拠点を置く。正式企業名はクリエイティブテクノロジーであり、日本のアイ・オー・データとの合弁企業である。Aurvanaなどが知られるが、国内ではゲーミングヘッドホンのシェアが高い。
アメリカ
- JBL
アメリカの名門音響メーカーで、スピーカー、または高級車のカーステで名高い。今はハーマンカードン傘下で、かつサムスンの子会社となっている。エレベストというかつてのスピーカーのブランドでヘッドホンをリリースしている。 - GRADO(グラド)
拠点はニューヨークのブルックリン。「音漏れ?何それ、音質と関係あるの?」と言わんばかりの開放感満載のヘッドホン。変態紳士御用達といわれ、観光地の土産物のような安っぽい紙箱、民芸品と揶揄されるほどチープなフォルム、小学生の工作ともいわれる手抜き感満載のパーツからは想像を遥かに超える音質を提供する、まさに音を求める求道者のためのブランド。アメリカでも「ファッションとしてヘッドホンを着る人はBeatsやskullcandyを選ぶといいだろう、音を求めてヘッドホンを着る人はGRADOを選ぶだろう」と評価されている。価格もピンきりで最高級品は見た目によらず30万以上はする。 - SHURE(シュア)
元はマイクの名門で、アメリカ大統領の演説のマイクが同社のもの。ヘッドホンに参入したのは割と最近だが、最初にイヤホン型(SRシリーズ)で高い評価を得る。その後、オーバーイヤー型ヘッドホンも評価されるようになり、TIME誌では一番高い評価を受けた。 - Klipsch(クリプシュ)
米最大手のオーディオの名門。日本では専らイヤホン型で知られ、高級イヤホン型ヘッドホンの奔りであり、特にXシリーズはヒット商品となっている。 - Beats by Dr. Dre(ビーツバイドクタードレ)
アップルが買収して、手を組んだことで一気にその名を知られるようになった、ファッション性の高いブランド。性能はピンきりで某雑誌で叩かれまくっていたが、高級品はプロも侮れない性能だったりしており、近年はその品質も上がってきている。 - MONSTER(モンスター)
高品質のケーブルを売りとするプロユース向けの企業で、モンスターケーブルとして知られる。ヘッドホン事業を始める際、Beatsと手を組んでいたが、技術だけ散々盗まれた挙げ句に逃げられてしまう。そんなわけで、Beatsと非常によくデザインが似ている。 - BOSE(ボーズ)
the 重低音。独特の音を作るメーカーといわれており、原曲クラッシャー。だが、その快感なまでの重低音はロック界で信者が多い。業務用スピーカーの大手でもあり、飲食店でもよく目にする。ただ、中華製のパチモンも多いので注意。買うなら正規ルートの方がいいだろう。 - skullcandy(スカルキャンディ)
ソルトレークシティ郊外に拠点を持つ。ヘッドホンにファッションをもたらしたブランドとして有名。重低音に強みを持つが、オーディオ雑誌での評価はおしなべて、音質より生活シーンに彩りを添えたい人向けとなっている。 - Audeze(オーデジー)
知る人ぞ知る名門オーディオブランドで平面磁界型ヘッドホンの雄。ゲーミングヘッドホンでも知られるが、軽く数万クラスはする。 - KOSS(コス)
化石とまでいわれる独特のフォルムのPortaPro(通称ポタプロ)が有名で、安くていい音を鳴らすメーカーとして知られる。だが、あのフォルムのままBluetooth対応機種もあったりする。
ドイツ系・他欧州
- SENNHEISER(ゼンハイザー)
本拠地はドイツのハノーファー近郊。世界で初めていわゆるオープンエアー型ヘッドホンを開発した企業であり、またヘッドホンの高級化志向の奔りとなったブランドである。HD650は世界中でヒットし、高級ヘッドホンが売れることを世に証明した。その後に出たHD800はオーディオファン憧れの一品。全体的に低音域に強く、ファンからは「禅」と呼ばれる。 - Beyerdynamic(ベイヤーダイナミック)
ドイツの名門。名の通り特定音域に強いダイナミックサウンドに定評があるブランド。解像度の高さに定評があり、高音キラキラのTシリーズ、重低音ドカドカのDTシリーズはプロからも信者が多く、ファンの間で「米屋」という愛称がある。一方で、プロユースの商品が多く、材料調達の関係もあって殆どデザインを変えないことで知られる。 - ULTRASONE(ウルトラゾーン)
ドイツ読みでウルトラゾーネとも言われるが、スペルはZONEではなくSONEである。上記二社と比較すると新興の企業だが、ドイツの三強といわれる。高温域に強く、「ゾネホン」と呼ばれる独特の金属的な抜ける高音が特徴。日本ではコロコロと代理店が変わっている(読み方が変わるのもこのせい)のだが、根強いファンが多い。 - AKG(アーカーゲー)
オーストリアのウィーンに本社を置くヘッドホンの名門。ファンからの愛称は「赤毛」。アナログ音とクリアーな高音に定評がある。日本ではけいおん!の秋山澪が劇中で装着していたK701でも有名になり、高級ヘッドホンブームの発端とも。 - PHILIPS(フィリップス)
よくアメリカ系と間違えられるが、拠点はオランダのアイントホーフェンである。ヘッドホンというより総合家電大手であり、日本でいうパナソニックみたいな存在。日本では専ら映像系ブランドとして認知されつつあり、FidelioのXシリーズは屈指の人気商品となっている。 - Bowers & Wilkins(バウワースアンドウィルキンス)
イギリスの名門。特に、高級スピーカーのブランドとして海外でも知られ、近年はコンパクト型も人気がある。日本ではマランツがずっと販売代行を行っているため、案外国内でも入手しやすい。略称はB&Wだが、次に挙げるB&O(バングアンドオルフセン:デンマーク)と略称もラインナップも似てるため、紛らわしい。ヘッドホンのハウジングが四角形という特色がある(痛い)。 - Bang & Olufsen(バングアンドオルフセン)
デンマークの名門。高級志向のコンポで知られるオーディオメーカーで、家具を思わせるシックなデザインが特色。ヘッドホンも大人向けの高級感あふれる意匠が多い。略称はB&Oだが、上のB&Wと紛らわしい。 - Focal(フォーカル)
フランスの名門。サンテチエンヌに拠点を置く。カーオーディオなどで知られるがUtopiaを筆頭に高級ヘッドホンを多数発表。デザインでもパリに専用事務所を置くなどこだわりを見せている。
エージング
エージングとは慣らし運転のことで、購入直後よりヘッドホンを通して音楽を聴かせることでドライバーユニットが洗練されていき音質が良くなっていく…とされているが、果たしてエージングは都市伝説か否かずっと議論され続けている。というのも、企業側の見解ですら以下のようになっている。
- エージングは必要
GRADO(エージング推奨とある)など - エージングはある
オーディオテクニカ(エージングの説明は公式サイトにもあるが、推奨まではしていない)など - エージングは不要
SENNHEISER(当社の製品は既にチューニング済みだから)など - エージングなど都市伝説だ
SHURE(エージングで人が聞き分けられるほど音が変わるとは思えない)など
いずれも世界を代表する一流ブランドだが、その企業で意見がここまでバラバラなのである。ただ、メーカーの共通意見は「エージング用のノイズではなく、普通の音楽を聴かせた方がいいよ」という意見は概ね一致しているようだ。
サブカルチャーとヘッドホン
サブカルチャー界隈では、少女とヘッドフォンを組み合わせる構図がよく見られ、特にSFのジャンルでは割と定番だった。その際は大きいものが好まれる傾向にある。その後音楽アニメ、さらに日常アニメでもヘッドホンとの取り合わせが採り上げられるようになり、そこに登場した機種が売れたりするような現象もちらほら起きており、特に前述したAKG K701はニュースにも採り上げられたほど社会現象とまでなった。
一方、イヤホン型をテーマにしたイラストもpixivなどには多く見られ、その場合は音楽を二人で共有する、仲のいい二人組がテーマとして好まれる傾向にあるようだ。
が…pixiv百科事典の「イヤホン半分こ」の記事で、その真実を知って笑って欲しい。
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イラストは「ヘッドホン + 男」よりも「ヘッドホン + 女」の比率が圧倒的に多い。
関連項目
脚注
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