花の詩女ゴティックメード
(はなのうため ゴティックメード)とは、永野護が”原作”・”監督”・”脚本”・”絵コンテ”・”レイアウト”・”原画”・”全デザイン”・”楽器演奏(ベース)”を手掛けた劇場用アニメ映画である。
概要
永野護の「ファイブスター物語」の前日譚的作品で、大フィルモア帝国成立前の東西フィルモア分割期の惑星カーマインを舞台に、詩女(うため)に選ばれた少女ベリンと、都行(みやこいき)の間ベリンを警護する事になったドナウ帝国の皇子トリハロンの二人を主役に据えて、ラーンの道へとつながる旅と暗殺者の襲撃による戦闘そしてフィルモア帝国伝来の赤い衣と帝国の成立につながる二人の別離が描かれている。
元々は、月刊ニュータイプ2006年5月号~7月号にかけての製作発表後、同誌でのファイブスター物語の連載を休止して制作が行われ、当初は30分程の予定だったものが、公開まで6年程を要するうちに70分の劇場用アニメとなった。
前記の通り永野護が「巨神ゴーグ」製作時の安彦良和のような多くの役職を掛け持っており、ゴティックメードと呼ばれる巨大ロボット「カイゼリン」の装甲表現や動きにムーバブルフレームの創始者である永野護らしさが垣間見える他、IHIジェットサービスの協力を得てカイゼリン独特の駆動音を表現するといったミュージシャンでもある永野護らしいこだわりが随所にちりばめられている。また、永野護の妻で声優の川村万梨阿が、主役ベリンの声の他に主題歌・挿入歌のボーカルも担当しており、夫婦合作ともいえる作品となっている。
ストーリー
茜の大地とも呼ばれる惑星カーマイン。人々を導く詩女(うため)に新たに選ばれた少女ベリンは、女神官アデムや護衛神官ムンセンとナナド、ワラビットの幼獣ラブらと共に、最初の任務である都行(みやこいき)の為、聖都ハ・リへ旅する事となった。
出発の日、ベリンの前にドナウ帝国の皇子トリハロンの現れる。ベリンを狙ったテロが計画されているとして惑星連合評議会の指名で一行を警護する事になったのだが、武器を嫌うベリンは戦艦シワルベそしてトリハロンを遠ざけてしまう。
当初はトリハロンと反目していたベリンであったが、自分の意をくんで戦艦を遠ざけ、騎士=ウォーキャスターでありながら帯剣せずに護衛を務めるトリハロンに少しずつ心を開き、トリハロンもまたベリンの平和への願いを知って心を開いていく。
都行の旅で通った道に故郷の花を咲かせたいと種子をまくベリン。そんなベリンを狙ってテロリストが現れる。トリハロンは自分専用のゴティックメード「カイゼリン」を起動させ、テロリストと戦うのだった。
用語
- GTMとも表記される全高25メートル程の巨大ロボット兵器。
- 急停止が可能なツインスイング関節による超高速戦闘が特徴で、動き始めると瞬時に相手を破壊する。ただしGTM自体が光学兵器を無効化し自己修復能力を持つ強力なヘリオス・キルテッド装甲に身を包んでおり、主兵装である銃剣ガット・ブロウで有効な攻撃を与えるには、関節か操縦者を狙うしかないというほど頑丈。
- 頭部にはシン・ファイアと呼ばれる有機体の電子頭脳が収められており、カイゼリンの様に人語の様な音声を発する事もある。
詩女(うため)
- 惑星カーマインの複数の民族や国家を導く女性指導者。
- 後継者に指名された少女は、生まれた土地の祠や石窟に1年間こもり、代々の詩女の記憶を受け継ぐ詩禊(みそぎ)を行った後、都行(みやこいき)の儀式を経て正式な詩女となる。
都行(みやこいき)
ドナウ帝国
ウォーキャスター
- 終わりの見えない戦いが続いていた数千年前に、数世代に渡る遺伝子操作によって生み出された超人類。
- 体格・反射神経・腕力・脚力・視力・聴力が通常の人間よりも圧倒的に優れている。
- その能力を活かす為ゴティックメードに搭乗する。
- ”天を取る者”という意味の「ヘッドライナー」を自称する者もいる。
ボルテッツ
- ウォーキャスターに対抗する為に先天的な超能力を増幅する事で生み出された超能力者。
- 物理的に作用する能力の他に予知や行動制御など様々な能力が存在するが、単一の能力のみ発動できる者もいれば複数の能力を扱える者もおり、潜在能力のまま開花しない者もいる。
登場人物
- 本名はベリン・ラーン。ベリン・ラーン・アジェリマグダル・ユニオVとも。
- 本作の主人公(ヒロイン)で、黒髪の長髪と黒い瞳の美少女。16歳の時に詩女として誕生した。
- 歴代の詩女の記憶を受け継ぐ詩禊を済ませて人々の前に現れたところから物語は始まる。
- 詩女の最初の任務である都行の旅にでようとする時に、護衛として現れたトリハロンと出会うが、武器や争いを好まないベルンはトリハロンと反目してしまう。しかし自分の意をくんで戦艦を遠ざけ帯剣せずに護衛するトリハロンに心を開いていく。
- 聖都ハ・リまでの旅の中で、通った道に故郷の花が咲くようにと種をまいている。このベリンが種をまいた道が後にラーンの道となる。
- トリハロンとの別れの際に、お互いが流血を招く存在である事と平和の為に尽力する事を伝え、自らが織った赤い布を与えた。
- その後は、惑星カーマインの地位向上と様々な人種の安寧に尽力した功績から、聖都ハ・リがベルンの名にちなんだものに変わる事になっている。
- 本作の主人公(ヒーロー)で、ドナウ帝国の第3皇子。
- 帝国最強のGTMカイゼリンの操縦者を務めるウォーキャスターで高い戦闘力を持つ。
- 惑星連合評議会からの要請で、詩女ベルンの都行の護衛となったが、ベルンの武器嫌いとトリハロンの傲慢で尊大な第一印象から反目してしまう。しかし戦艦を遠ざけ、雨中でも帯剣せずに雨ざらしで護衛する誠実な姿を見たベルンが心を開くようになると、トリハロンもまた誠意ある人物である事を見せていく。
- 帝国有数の戦闘力の持ち主で、テロリストの襲撃の際もカイゼリンを駆って撃退した。
- ベリンが歴代の詩女の記憶を受け継いでいると言う事に懐疑的だったが、ベリンが無事に聖都ハ・リに到着して別れ際、流血を減らす努力をするように要請された際に歴代の詩女の姿を見た。
- 帝国に帰還後は、東西に分かれていた帝国を統一し、統一皇帝としてサイレン・ザ・グレート"フィルモアI"をなのる。ファイブスター物語におけるフィルモア1世である。
- ベルンの教育係と道案内を務める女性神官にして聖都ハ・リの最高神官。
- ベルンの補佐として選ばれた存在であり、ベルンが詩女として誕生するより以前から補佐官としての研鑽を積んできた。ベルンの姉的な立場そして補佐官としてトリハロンやボットバルトに対する。
- 惑星カーマインに棲む動物ワラビットの子供。メス。
- ベリンが詩禊を行った石窟に棲んでいた事から、ベリンのペット的な存在として都行に付き従う。
- 所謂コメディリリーフな存在で、ベリンに足蹴にされたり、トリハロンにボールにされたりする。
- トリハロンに対して心を開かないベリンや神官達と比べて、素直にトリハロンに懐くなど健気なところがある。
- 正体は、ザ・ライブ・オブ・セントリーそしてザ・ゴッド・オブ・ファイブスター・ストーリーズらしい。
- トリハロンに仕える副官にして参謀役。
- ドナウ帝国傘下のバルバロッサ王国の国王で、ドナウ帝国の皇位継承権も持っている。
- ガット・ブロウを所持するウォーキャスターでもあるが、トリハロンのサポートに終始する。
ナナド・フ・リエ CV:幸田夏穂/ムンセン・ル・ゾラ CV:小林由美子
ブラウニー・ライド
- ドナウ帝国のGTMガーランド。ホルガ型GTMの設計・開発を担当。
- トリハロンのGTMであるカイゼリンの設計・開発も担当した凄腕ガーランドで、トリハロンの護衛の旅にも同行した。
- ファイブスター物語に登場するブラウニーライドと同一人物らしい。
- 「謎の男」である。見た目も言動もかなりエキセントリック。
- GTMボルドックスのガーランドで、ベリン暗殺を狙ったテロが問題なく遂行されるよう様々な情報を手配した。
- ファイブスター物語に登場するユーゴ・マウザーと同一人物らしい。
- 「謎の女」である。マウザーに劣らぬ奇抜な外見をしている。
- ウォーキャスターであり、マークII・マークIIIのガーランドでもある。
- マウザーと共にテロの手引きをしたが、実戦には参加せずにトリハロンの戦いを見届けて撤退した。
- 撤退の際、1500年後そして3000年後にまた戻ってくると意味深な発言をした。
- ファイブスター物語に登場するエルディアイ・ツバンツヒと同一人物らしい。
- 角川書店のマーク状の鳳凰の羽根の栞が落ちる漫画のページにクリスティン・Vとダイ・グ・フィルモア5世が登場。
- その後、冒頭に現れる青年と少女は、レディオス・ソープことアマテラス様とファティマ・ラキシス。
- エピローグ・スタッフロール後に登場する2組の騎士とファティマ。
- 1組はクリスティン・Vとファティマ・町、もう1組はファティマ・エストとレーダー9世(と思われる)。
- レーダー9世と思われる男性は、ベリンがトリハロンに贈った赤い布で作られた皇帝の衣をまとっている。
ゴティックメード
作中には、主人公機である「カイゼリン」や敵機「ボルドックス」「マークII」「マークIII」といったGTMが登場する。
詳細は「ゴティックメード」の記事参照。
キャスト
詩女一行 | ドナウ帝国軍 | ||
ベリン・アジェリ | 川村万梨阿 | ドナウ・ガァ・トリハロン | 佐々木望 |
アデム・ライト・ミカレス | 折笠愛 | ボットバルト・デュー・バルバロッサ | 大塚明夫 |
ラブ | 大谷育江 | その他 | |
ムンセン・ル・ゾラ | 幸田夏穂 | 謎の男(ユーゴ・マウザー) | 三木眞一郎 |
ナナド・フリエ | 小林由美子 | 謎の女(エルディアイ・ツバンツヒ) | 三石琴乃 |
初代詩女 | 川村万梨阿 | ナレーション | 榊原良子 |
スタッフ
原作 | 永野護 | 作画監督 | 名倉靖博 |
監督 | 永野護 | 美術 | 小倉宏昌 |
脚本 | 永野護 | 音楽 | 長岡成貢 |
絵コンテ | 永野護 | 撮影 | 佐藤光洋 |
レイアウト | 永野護 | 音響・効果 | 坂口由洋 |
全デザイン | 永野護 | 編集 | 松永ホマレ |
原画 | 永野護、門上洋子、山形厚史 | 特殊効果 | 前村陽子 |
協力 | 吉井孝幸(サンライズ)、内田健二(サンライズ)、石川光久(IG)、安彦良和 | ||
スペシャル サンクス |
植田益朗、南雅彦、生島毅彦、谷明、星野孝太、鎌野久美、岡田麗弥、新名新 富野由悠季、角川歴彦 |
||
企画 | 安田猛、矢野健二 | ||
プロデューサー | 榎本郁子、富樫真 | ||
製作総指揮 | 井上伸一郎 | ||
制作 | オートマチック・フラワーズ・スタジオ、角川書店 |
主題歌
主題歌「空の皇子 花の詩女」 | 作詞:川村万梨阿 | 作曲 ・編曲:長岡成貢 | 歌:川村万梨阿 |
挿入歌「ベリンの数え詩」 | 作詞:川村万梨阿 | 作曲 ・編曲:長岡成貢 | 歌:川村万梨阿 |
EDテーマ「茜の大地」 | 作詞:川村万梨阿 | 作曲 ・編曲:長岡成貢 | 歌:川村万梨阿 |
関連動画
関連項目
関連リンク
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