アーテルアストレア(英名:Ater Astraea)とは、2019年生まれの日本の競走馬(牝馬)である。愛称は「あーちゃん」。
馬名の意味は黒い(ラテン語)+ギリシャ神話に登場する女神・アストライアー(Astraea)。
2023年:名鉄杯(L)、レディスプレリュード(JpnII)
2024年:クイーン賞(JpnⅢ)、スパーキングレディーカップ(JpnⅢ)
概要
父リーチザクラウン、母スターズインヘヴン、母父ワークフォースと言った血統。
父リーチザクラウンは芝の重賞を2勝しており、日本ダービー2着の実績馬。スペシャルウィークの血統を残すべく種牡馬入りし、最近までアロースタッドで種牡馬生活を送っていたが、今年の3月29日に肺水腫を発症し安楽死となった。同期には同じ父を持ち、3カ国で重賞を勝利したクラウンプライドがいる。
母スターズインヘヴンは体質が弱く未勝利クラスを脱出できないまま繁殖入りしており、アーテルアストレアは初仔にあたる。
母父ワークフォースは2010年の英ダービーと凱旋門賞の勝ち馬で、ナカヤマフェスタとのデッドヒートが記憶に残っている人も多いだろう。引退後は社台ファームで種牡馬入りするもディバインフォースやアトミックフォースと言った重賞勝ち馬を出すに留まり、2016年にアイルランドに売却された。母の父としては2023年のエプソムカップを制したジャスティンカフェがいる。
オーナーは新米のフィールドレーシング。ナリタブライアンの三冠制覇を見て馬主になることを決意し、2020年からお手馬がデビューしている。アーテルアストレアは1歳のセレクトセールにて1000万円で落札され、栗東の橋口慎介厩舎の下でデビューすることとなる。橋口厩舎は2014年のダービー馬ワンアンドオンリーや2018年のJBCスプリント勝ち馬グレイスフルリープを輩出しており、現役の同厩にはアルナシームやセイウンハーデスがいる。
黒い女神
2歳
2歳新馬戦(中京芝1400m)では10着と大敗を喫するも、ダートに転向した2戦目の2歳未勝利(新潟ダ1800m)ではハナを切ると直線で更に伸びて2着に2.1秒付ける大差勝ち。
しかし阪神1勝クラスでは好位追走も直線で脚を伸ばせずに12着と大敗してしまう。
3歳
初戦は中京の3歳1勝クラスから始動。ここでは逃げを打つがスタートの出遅れが響き7着。次走のわらび賞では後方から直線一気で伸びるも4着。この辺りから後方に控えて直線一気の競馬に活路を見出すことになる。
年内3戦目の中京3歳以上1勝クラスで2勝目を挙げ、次走は得意の左回りとなる重賞、レパードS(GIII)に登録するも除外となってしまい、小倉の2勝クラスであるRKB賞(ダ1700m)に出走するも4着。新潟の条件戦菅名岳特別を上がり最速で追い込み2着とすると、中京の鳴海特別でも上がり最速で突っ込み3勝目。
4歳
翌年初戦の遠州灘Sも牝馬らしからぬ豪快な追い込みで連勝しオープン馬になると、川崎競馬場の交流重賞エンプレス杯(JpnII)に出走。ラストランのサルサディオーネがハナを奪い、テリオスベルがいつもの捲り逃げをする中アーテルアストレアは6番手につける。しかし小回りなコースが仇となったか伸びを欠いて4着となり、初めての重賞挑戦はほろ苦い結果となった。
その後はブリリアントS(L)3着、スレイプニルS(OP)を5着とし名鉄杯(L)に臨む。中段に控え、コーナーで徐々に進出すると直線で力強く前を捉え、粘り込みを図るメイクアリープをクビ差抑えてゴール。
夏は放牧に出し、秋初戦はJBCレディスクラシック前哨戦のレディスプレリュード(JpnII)へ。主戦騎手の菱田裕二が落馬負傷となった為、代打で武豊とのコンビとなった。有力馬を見る形でレースを運び、直線を向くと力強く前との差を詰めていき、ゴール前でグランブリッジをクビ差で交わして重賞初制覇。エンプレス杯でのリベンジを成し遂げた。
次走は予定通りJBCレディスクラシック(JpnI)へ。武豊は先約がある為M.デムーロに乗り替わり。後方からコーナーで仕掛けたが二番手から上がり最速を繰り出したアイコンテーラーの前では成すすべもなく、3着惜敗。
この後は堅実にクイーン賞(JpnIII)で賞金を積み上げるか、チャンピオンズカップ(GI)で強豪たちに挑むかの両にらみだったが、後者を選択。得意の中京1800mで並み居る有力馬たちを相手することとなった。
このチャンピオンズカップでは前走マイルチャンピオンシップ南部杯(JpnI)を2秒もの大差で圧勝し、国内ダートでは未だに連対を外していないレモンポップ、これまで出遅れながらも全部上がり最速で5戦5勝のセラフィックコール、GI競走3戦で2着と安定感のあるクラウンプライド等と言った豪華なメンツが顔をそろえる中13番人気に甘んじる。
横山武史との初コンビで5枠8番から始動したアーテルアストレアは最後方から追走したが、前残りの展開となってしまい彼女にはかなり厳しい展開に。ラジオNIKKEIの檜川彰人アナにウィルソンテソーロと間違われたが一応直線では上がり2位タイの37.3で追いこむも前を捉えるには至らず9着。
このレースの後は放牧に出し英気を養い、翌年に備える。
5歳
1月12日に帰厩し、予定通り2月開催に変更された船橋のクイーン賞(JpnIII)から始動。鞍上も菱田騎手が復帰。
2枠2番からスタートすると第一コーナーを中段6番手で通過。向こう正面から進出を開始すると4コーナーでは前で粘るテリオスベルとのマッチレースに。直線に入っても驚異の粘りを見せるテリオスベルだったが、残り100mでアーテルアストレアが捉え、1馬身半差を付け1着でゴール。念願の重賞級競走2勝目に加え、自身の誕生日を祝うバースデーVとなった。
次走はクイーン賞と同じくダート競馬改革で園田開催に変わった元TCK女王盃、兵庫女王盃(JpnIII)へ出走。スタートで後手を踏んだアーテルアストレアは1週目のスタンド前で菱田騎手が外に出し先団へ進出。そのままライオットガールに並びかける形で3コーナーに入ったが、位置を上げるのに脚を使ったことが影響したか、ライオットガールに離されて2着と初代女王の座には惜しくも届かなかった。とはいえ右回り、小回り、短い直線と言った苦手条件や不利な展開が重なった中での2着なので負けてなお強しとも言える内容だった。
この後は短期放牧に出し、4月18日に帰厩。次走は予告通り春の大一番であるエンプレス杯(JpnII)に出走。新馬戦から無傷の5連勝で勢いに乗るオーサムリザルトや前走で重賞初制覇となったライオットガールがレベルの高い年上相手に立ち向かうという構図になり、アーテルアストレアはアイコンテーラーやグランブリッジと共に4歳勢を迎え撃つ事となった。
牝馬ダート勢最強馬決定戦に相応しいメンバーが揃う中アーテルアストレアは大外枠から発進。スタートはしっかりと決めいつも通り中段に位置を取る。前は好スタートからオーサムリザルトが逃げ、内にライオットガール、外にアイコンテーラー、その後ろにグランブリッジとマテリアルガールと続き、その後ろのやや外目をアーテルアストレアは追走したが、1周目の直線に入ると掛かりながら前へと位置を上げていってしまう。2週目の向こう正面からペースが上がるとともに菱田騎手も追い始めるが手ごたえが悪く、直線では完全にガス欠と精彩を欠いて6着となってしまった。
2戦目はスパーキングレディーカップ(JpnIII)。ライオットガール・キャリックアリードもここに転戦しており、船橋からは地方転厩2戦目から5連勝中のフーリッシュポピーが参戦。ここでは混戦模様の中1番人気に支持される。僅差の2番人気は3勝クラスを2着4回と燻っていたが、7戦目の上総ステークスで念願のオープン入りを果たしたミラクルティアラ、3番人気ライオットガール、4番人気ヴィブラフォンと続き、6番人気のキャリックアリードまで10倍未満となった。
五分のスタートから先行争いが激化するが、菱田騎手は集団から少し離れた後方2番手からのレースを選択。向こう正面で集団に取りつくと早めに追い始め、3コーナーに入るとムチを1発振るい先団へと進出開始。コーナーを大外からぶん回す豪快な捲りを見せヴィブラフォンを射程圏に捉えると、その勢いのまま一気に先頭へと躍り出る。併せて上がってきたキャリックアリードも負けじと食い下がるが最後まで先頭は譲らずにクビ差押し切って1着でゴールイン。
レース後は放牧に出し、秋初戦は前年同様レディスプレリュード(JpnII)へ向かう。主戦の菱田騎手が落馬による骨折のため、鞍上は武豊へと乗り替わりになった。
エントリーした馬は7頭とかなり少数のメンバーとなったが、グランブリッジ、ライオットガール、アイコンテーラー、ヴィブラフォンと言ったライバルたちが再び顔を揃える中で3番人気となった。スタート直後はいつも通り先行争いには積極的に参加せずライバルの出方を伺うように後方待機策を取る。ヴィブラフォンが逃げ、それをアイコンテーラーがマーク。ライオットガールが3番手に付け、グランブリッジは5番手、その後ろにアーテルアストレアと言った隊列でレースは進んでいく。
直線ではJRA所属の5頭が内外広がっての追い比べ勝負となった。アーテルアストレアもじわじわと追い上げるが先に抜け出したアイコンテーラーとそれを差し切ったグランブリッジにやや遅れた3着でのゴールインとなった。レース後の彼女は悔しかったのか目に涙を浮かべていたとの事。
佐賀開催となったJBCはパスして次は再び得意コースとなるチャンピオンズカップ(GI)へと向かう。怪我で休養していた菱田騎手も無事に間に合い再び彼女の背中に乗ることとなった。国内ダート戦線で圧倒的な強さを誇りこれがラストランとなるレモンポップ、中央ダートGI統一を狙うペプチドナイル、JBCクラシックを勝ち勢いに乗るウィルソンテソーロ、馬場問わずマイルで善戦しているガイアフォース、3歳世代からは上り調子のサンライズジパング、地方からは最後の南関東三冠馬ミックファイアと今年も強豪たちが下半期のダート界最強を競う。
5枠10番から発進したアーテルアストレアは今年も最後方に控え、ロスの少ない最内を通り末脚に賭ける。3コーナー辺りから徐々に外へと進路を切りかえ、直線では大外から一気に末脚を繰り出した。坂を駆け上がってから更にもうひと伸びする等、昨年を超えるパフォーマンスで出走馬の内上がり2位となる3F36.3もの豪脚で追い込んだものの位置取りが後ろすぎたか勝ち馬と0.5差の7着に敗れた。菱田騎手は向正面でペースが落ちた事を敗因に挙げつつ、「いい形で、いい脚を使ってくれた」と愛馬を労った。
この後は放牧に出し、翌年のフェブラリーステークス(GI)を以て引退すると橋口調教師から発表があった。三度牡馬との対戦になるが「最後は得意の左回りで」と言ったニュアンスもある模様。デビュー2戦目以降ずっとダートを走ってきた彼女だが芝スタートのダート戦は恐らく初。それでも中京以上に1周が大きく最終直線も長い府中の舞台で、アーテルアストレアはホクトベガ以来の快挙に臨む。
牝馬ダート路線の中でもひと際目立つ愛嬌を放ち、それとは裏腹にレースでは牡馬にも負けぬ豪快な走りを見せつけてきた女神・アーテルアストレア。引退まで残された時間は少なくなってきたが、その可愛さを、その走りを忘れぬようその脳裏に焼き付けたい。
特徴
8勝中7勝が左回りという「左回り巧者」であり、特に中京では4勝と相性が良い。後述する通り入厩中はSNSで頻繁に情報が発信されており、ファンも多い。また中央開催のレースでは度々誘導馬の近くで立ち止まる所がファンに撮影されている。彼女なりのルーティンなのか…?
余談
オフショットが酒井慎調教助手のX(旧Twitter)で投稿されている。コラムによると食欲旺盛かつ人懐っこい性格で、特に酒井助手とは互いにベットリ。もはやカップル
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https://twitter.com/aidoruobake/status/1856234989953921456
血統表
リーチザクラウン 2006 青鹿毛 |
スペシャルウィーク 1995 青鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
キャンペンガール | マルゼンスキー | ||
レディーシラオキ | |||
クラウンピース 1997 鹿毛 |
Seattle Slew | Bold Reasoning | |
My Charmer | |||
*クラシッククラウン | Mr. Prospector | ||
Six Crowns | |||
スターズインヘヴン 2014 鹿毛 FNo.1-b |
*ワークフォース 2007 鹿毛 |
キングズベスト | Kingmambo |
Allegretta | |||
Soviet Moon | Sadler's Wells | ||
Eva Luna | |||
ハンドレッドスコア 2003 黒鹿毛 |
*ホワイトマズル | ダンシングブレーヴ | |
Fair of the Future | |||
サンデーエイコーン | *サンデーサイレンス | ||
エイコーンカップ |
クロス:サンデーサイレンス 3×4(18.75%)、Mr.Prospector 4×5(9.38%)
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