クラウンプライド(Crown Pride)とは、2019年生まれの日本の競走馬。黒鹿毛の牡馬。
主な勝ち鞍
2022年:UAEダービー(GⅡ)
2023年:コリアカップ(GⅢ)
2024年:マーキュリーカップ(JpnⅢ)、コリアカップ(GⅢ)
概要
父リーチザクラウン、母エミーズプライド、母父キングカメハメハという血統。
父は2009年の日本ダービー2着馬。気性面の問題もあり勝ち鞍はGⅡ止まりだが、父スペシャルウィークのサイアーラインを継ぐため種牡馬入り。初年度産駒の勝ち上がり率が非常に優秀で社台スタリオンステーションに栄転したものの、2021年までに中央重賞馬は2017年のシンザン記念を勝った初年度産駒のキョウヘイのみで、2021年から元のアロースタッドに戻された。クラウンプライドは社台スタリオン時代の産駒である。
母エミーズプライドは地方で27戦9勝。クラウンプライドが初仔である。
母父は説明不要の非サンデー系筆頭の大種牡馬。
スペシャルウィークの直系であることに加え、血統表を見ると、父母父はSeattle Slew、父母母母父にSecretariat。母系は母母父アグネスタキオンに、3代母エミスフェールは父*ホワイトマズル、父父*ダンシングブレーヴ、母父*トニービンを持ち、牝系はマルゼンスキーと同じという、非常に趣深い血統である。
2019年5月4日、千歳市の社台ファームで誕生。社台グループオーナーズ(中央競馬の馬主資格を持つ会員による共有馬主クラブ)の所有馬で、募集価格は1口150万円×10口(=1500万円)だった。名義上の馬主は社台ファーム代表の吉田照哉。
馬名は父名の一部+母名の一部というシンプルな命名。意味は「王冠の誇り」として登録されている。
王冠の誇り
2歳(2021年)
開業2年目の新谷功一厩舎(栗東)に入厩し、デビューは2021年10月3日の中京の新馬戦(ダート1800m)。鞍上は幸英明で、5番人気だった。先行集団を見る位置でレースを進め、砂を被って折り合いを欠きながらも、直線で外に持ち出すとあとは突き放す一方で6馬身差の圧勝デビューを飾る。
続いて11月の1勝クラス・もちの木賞(阪神ダート1800m)。今回も4番人気だったが、今度は砂を被らない位置での先行策で進め、直線で抜け出すと2着は3馬身、3着は11馬身ぶっちぎって2戦連続の圧勝。
この2戦圧勝で陣営は選出されていた兵庫ジュニアグランプリ(JpnII)を回避して、12月の全日本2歳優駿(JpnI)に登録したものの、収得賞金が足りず補欠2位となり出走ならず。ちなみに補欠1位で1頭回避が出たため出走できたのが断然人気で勝ったドライスタウトだったりする。
3歳(2022年)
明けて3歳初戦は2月のヒヤシンスステークス(L)。鞍上はミルコ・デムーロ。3番人気に支持されたが、スタートで盛大に出遅れてしまい、3コーナーから押し上げて追い込んだものの伸びきらずコンバスチョンの6着。
続いてはドバイへ遠征し、コンバスチョン、レイワホマレ、セキフウとともにUAEダービー(GⅡ)へ。鞍上はダミアン・レーン。前方外目の好位からレースを進めると、4コーナーからどんどん押し上げて先頭を狙う。残り200mからぐんぐんと伸び、逃げ粘るSummer is Tomorrowを並ぶ間もなくかわすと、あとは突き放して2と3/4馬身差をつける完勝。
2016年のラニ以来史上2頭目の日本馬によるUAEダービー制覇。新谷師も開業3年目で嬉しい重賞初制覇を海外で飾った。鞍上のレーンもメイダンは初参戦で、「ドバイでの初騎乗のレースで勝てるなんて夢のようです」とコメント。
続いては帰国せずそのままアメリカに向かい、鞍上はクリストフ・ルメールを迎え、日本調教馬として史上4頭目の挑戦となるアメリカクラシック三冠の第1戦・ケンタッキーダービー(GⅠ)に挑んだ。日本ダービー馬の血を引く馬がケンタッキーダービーに挑むのは史上初である。父リーチザクラウンが届かず、祖父スペシャルウィーク・キングカメハメハが日本で手にした"ダービー"の冠に、曾祖父サンデーサイレンスやシアトルスルーがその栄冠を手にしたアメリカ・チャーチルダウンズ競馬場で果敢に挑んだのだが……。
好スタートを決めてあっさり2番手につけたところまでは良かったのだが、スタートダッシュがあまりに速すぎて、先頭で逃げたSummer Is Tomorrowの刻んだラップは最初の800mが45秒36という、現地の実況も驚くレベルの超超超ハイペースになってしまう。日本とアメリカのダートは性質が違い、アメリカ競馬はテンから飛ばしていくのが基本とはいえ、スプリント戦並のこんなペースで2000m保つはずはなく、クラウンプライドを含めた先行勢は直線で全滅。補欠繰り上がりの最低人気馬Rich Strikeが勝つという大波乱の後方で13着に敗れた。
二冠目のプリークネスステークスには向かわず帰国し、次走はジャパンダートダービーを予定していたが、長期遠征やアメリカでの超ハイペース激走の疲れが抜けなかったようで回避。
じっくり秋まで英気を養い、復帰戦は9月の日本テレビ盃(JpnⅡ)。鞍上は初騎乗の福永祐一。JDD組のノットゥルノ、ペイシャエスに加え、地方からは古豪サルサディオーネとミューチャリーが参戦し、ダート3歳勢のレベルを計る戦いにもなった。1番人気はペイシャエス(2.2倍)、2番人気はサルサディオーネ(4.4倍)で、クラウンプライドは5.1倍の3番人気。
フルデプスリーダーがゲート内で暴れ競走除外となり、入れ直しとなって発走が遅れるアクシデントの中始まったレース。いつも通りロケットスタートでサルサディオーネが逃げ、ノットゥルノが2番手でそれをマーク、クラウンプライドはその2頭を見ながら3番手に構える。4コーナーで振り落とされたノットゥルノを横目にサルサディオーネに迫り、直線残り200mで捕まえて先頭――に抜け出した瞬間、外からカッ飛んできたのは7番人気、船橋の8歳馬フィールドセンス! 最後は半馬身差し切られて悔しい2着。JBCクラシックの優先出走権を逃した。
そんなわけでJBCクラシック(JpnⅠ)は賞金的に出走が危ぶまれたが、チュウワウィザードの電撃引退などもあってか無事に選定されたため、引き続き福永を鞍上に参戦。テーオーケインズに次ぐ4.4倍の2番人気に支持される。
レースは積極的に逃げる馬がいなかったため、先行争いの中で先頭に立って逃げる格好に。緩いペースで逃げ、直線でも後続を突き放して粘ったが、外からテーオーケインズにかわされての2着。現役最強の帝王に貫禄を見せつけられた。福永は「ペースが上がらない中で、逃げるのはプランのうち。GIを勝つ力はある。コーナーワークが上手ではないので、広いコースならもっと力を発揮できると思う」とのコメント。
引き続き福永とともにチャンピオンズカップ(GⅠ)へ。JBCクラシックで2着とはいえ、内容的にはテーオーケインズとの勝負付けは済んだと見られたか、1.5倍と断然評価のテーオーケインズに対して14.3倍の4番人気まで評価を落とす。
ところがレースではそのテーオーケインズが出遅れて外回しになる思わぬ展開。クラウンプライドは宣言通りに逃げたレッドソルダードを見ながら道中2番手につけ、直線に入口でかわして先頭に立つ。外回しのせいか伸びないテーオーケインズを突き放し、そのまま押し切るかと思われたが、そこで後ろから飛んできたのはダート転向で覚醒した5歳の上がり馬ジュンライトボルト! ゴール寸前にクビ差かわされ、またしても2着。4着のテーオーケインズには着順の上ではリベンジしたが、悔しい敗戦となった。
4歳(2023年)
明けて4歳はサウジカップ(GⅠ)に登録。レーティング的に招待が届くか危ういところだったが、優先出走権を持つペガサスWC勝ち馬アートコレクターが回避したことで招待枠に滑り込んだ。鞍上にはUAEダービー以来のダミアン・レーンを迎えた。
レースは最内枠からいつものようにパンサラッサが逃げ、クラウンプライドはケンタッキーダービーで戦った(そして一緒に沈んだ[1])アメリカのTaibaとともにそれを追う。途中でジオグリフが上がってきて4番手に下がったが、コーナーでTaibaがついていけなくなり脱落、3番手で直線へ。止まらないパンサラッサを外から追いかけたが、大外から飛んできたCountry Grammerにかわされ、内から来たカフェファラオにも競り落とされて5着。4歳馬としては充分すぎる大健闘と言えるが、今回も勝ちきれなさが出てしまった感じの悔しい結果であった。まあフェブラリーS勝利[2]以上の賞金100万ドル(1億3186万5000円)をゲットしたので、挑んだ甲斐はあったというものだろう。
この好走もあってドバイワールドカップ(GⅠ)の招待が届き受諾。引き続きレーンとともにドバイの大舞台に挑んだ。レースは外枠もあって前目の位置をとれず、そのまま後方からの展開に。しかしこれでパンサラッサとリモースのハイペースに付き合わずに脚を貯めることができたようで、直線では後方から追い込み、ほとんど全く中継画面に映っていなかったのにいつの間にか5着に食い込んだ。サウジカップほどではないが36万ドル(約5000万円)をゲット。
帰国後は上半期の国内ダート大一番・帝王賞(JpnⅠ)へ、初騎乗の川田将雅とともに参戦。ドバイ遠征組のテーオーケインズとジュンライトボルト、かしわ記念を勝ってきた前年覇者メイショウハリオらの実績勢に加え、6歳勢からは遅れて台頭してきたハギノアレグリアスとプロミストウォリアが参戦。同期では大井巧者のノットゥルノと好メンバーが出揃う中、7.3倍の4番人気に支持される。
レースは隣の最内枠のテーオーケインズが少し出遅れたこともあり、好スタートを切ると、逃げるプロミストウォリアの真後ろの4番手という絶好のポジションを確保。直線で最内を突いて抜け出し、後ろを突き放す。完璧な先行抜け出し押し切りを図ったクラウンプライドに、馬群の中からテーオーケインズ、外から捲ってきたメイショウハリオが追い込んできて、最後は3頭横並びの大接戦ドゴーン! ……結果は僅かにハナ差、メイショウハリオに差し切られてまたまたまた2着。
これで国内では4戦連続2着。タイムは2011年スマートファルコン以来の2分1秒台となる2:01.9を叩き出して、それでも栄冠までのあと一歩、ほんの数センチが果てしなく遠い……。
続いては夏休みを経て韓国へ遠征。重賞連勝中の5歳馬グロリアムンディとともに、招待を受諾したコリアカップ(GⅢ)に参戦。グロリアムンディも前2走は川田将雅が騎乗していたが、川田はこちらを選択した(あちらは坂井瑠星が騎乗)。
レースは外枠から好スタートを切って2番手で進め、レース中盤で早々に基礎スピードの違いを見せるような形で先頭へ。そのまま完全な馬なりで直線を向くと、川田将雅が肩鞭をひとつ入れて軽く追うとあとは後続を突き放す一方。ぐんぐん後ろをぶっちぎり、ほとんど公開調教のような内容で2着グロリアムンディに10馬身差をつける圧勝。1年半ぶりの勝利、重賞2勝目を飾った。なお川田はこのレース前のコリアスプリントでもリメイクに騎乗し4馬身差で完勝。改めて今年のダートグレード競走で猛威を振るう鞍上の実力を見せつけたのだった。
遠征の疲労もありJBCクラシックは回避。昨年同様にチャンピオンズカップ(GⅠ)に出走した。この年のチャンピオンズカップは帝王賞でしのぎを削ったメイショウハリオ、テーオーケインズだけでなく、前走南部杯を大差勝ちしたレモンポップ、前走みやこSを後方一気で勝利したセラフィックコールなどが出走し、GⅠ級馬7頭が出走するというハイレベルなレースとなった。
そんな中、クラウンプライドはレモンポップ、セラフィックコールに次ぐ単勝3番人気に推されたが、道中中団で外を回され続けたこともあってか、直線で全く伸びず11着に敗れる。川田将雅曰く「気持ちが入らない中、レースが終わってしまいました」とのことで、掲示板を外したのは3歳のケンタッキーダービー以来となった。
5歳(2024年)
明けて5歳は再び中東遠征でサウジカップ(GⅠ)に出走。鞍上はジョアン・モレイラ。この年のサウジカップの遠征にはBCクラシック2着のデルマソトガケに前走チャンピオンズカップで打ちのめされたレモンポップやおなじみメイショウハリオ、そしてドバイWC連覇を目指すウシュバテソーロとまた強力メンバーが参加。
レースでは道中前目につけて3コーナーあたりまではいい感じで追走していたが、そこからのペースアップについていけず、直線では余力なく9着に終わった。
この結果を受け、ドバイワールドカップへの招待があったが辞退し日本に帰国。復帰初戦は3歳時のヒヤシンスS以来のマイル戦となるかしわ記念(JpnⅠ)となった。鞍上も川田に戻ったが、逃げるシャマルを4番手で追走したものの3コーナーでもう手応えがなくなりズルズル後退、逃げ切ったシャマルからは4秒以上離されたブービー12着の大惨敗。
3戦続けての惨敗、特にかしわ記念での負けっぷりから「馬自身の気持ちが折れてしまったのでは?」と危惧される中、帝王賞を回避して向かったのは盛岡のマーキュリーカップ(JpnⅢ)。鞍上は川田将雅が休養に入ったため、急遽横山武史が代打騎乗することになった。メンバーの中では抜けた実績と近走成績からの不安視と間で、メイショウフンジンと人気を分け合って2.8倍の2番人気。
レースは逃げると見られたメイショウフンジンが1枠1番で行き脚がつききらず地方馬ヒロシクンにハナを奪われる中、クラウンプライドはスムーズなスタートから先行、メイショウフンジンの前につけて2番手を確保。そのまま3角で力尽きたヒロシクンをかわして先頭に立つと、後ろを突き放して直線へ。最後は脚が止まってビヨンドザファザーの猛追に一気に迫られたが、なんとかハナ差残したところがゴール板だった。
ヒヤヒヤながらも重賞3勝目、そして国内重賞は初勝利。内容はまだ立て直しの途上という感じではあったが、ともあれ復活へ向けて大きな勝利であったと言えるだろう。
秋初戦は前年同様コリアカップ(GⅢ)へ。鞍上は引き続き横山武史。日本馬は川田が騎乗するウィルソンテソーロ、川崎記念を勝った地方勢ライトウォーリアが一緒に参戦、ウィルソンテソーロが現地オッズで1番人気となり、本馬は2番人気となった。
レースはライトウォーリアが出遅れたこともあり外枠から悠々と先頭に立つと、そのままマイペースにレースを引っぱる。外を回るウィルソンテソーロやライトウォーリアを尻目に、3コーナーから余裕の手応えで後ろを突き放していく。4角で2番手に上がって来たウィルソンテソーロに約5馬身差をつけて直線に立つと、追いすがるウィルソンテソーロを寄せ付けず、全く差を詰めさせないまま5馬身差で圧巻の逃げ切り勝ち。復活を印象付ける圧勝で連覇を飾った。
次走は順当にいけば帰国して佐賀のJBCクラシックに進むであろうが、今年からコリアカップ勝ち馬にはBCダートマイルの優先出走権と出走登録料・輸送費用の一部負担の特権が付与されるため、そちらの選択肢も視野に入る。マイルだとちょっと距離が短そうなのがネックになるが、陣営の決断やいかに。
過去に3歳でJBCクラシック連対を果たした馬はアドマイヤドン、アジュディミツオー、フリオーソ、サクセスブロッケン、オメガパフュームという錚々たる面々。国内では実力を見せながらあと一歩勝ちきれずシルコレ街道が続くが、偉大な先達に並び立つべく、誇りある王冠を掲げることを目指して戦いは続く。
血統表
リーチザクラウン 2006 青鹿毛 |
スペシャルウィーク 1995 黒鹿毛 |
*サンデーサイレンス | Halo |
Wishing Well | |||
キャンペンガール | マルゼンスキー | ||
レディーシラオキ | |||
クラウンピース 1997 鹿毛 |
Seattle Slew | Bold Reasoning | |
My Charmer | |||
*クラシッククラウン | Mr. Prospector | ||
Six Crowns | |||
エミーズプライド 2012 鹿毛 FNo.5-g |
キングカメハメハ 2001 鹿毛 |
Kingmambo | Mr. Prospector |
Miesque | |||
*マンファス | ラストタイクーン | ||
Pilot Bird | |||
エミーズスマイル 2004 栗毛 |
アグネスタキオン | *サンデーサイレンス | |
アグネスフローラ | |||
エミスフェール | *ホワイトマズル | ||
グレイエミネンス |
クロス:*サンデーサイレンス 3×4(18.75%)、Mr. Prospector 4×4(12.50%)
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脚注
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