サウンドノベルとは、ゲームジャンルである。チュンソフトの登録商標。
(※チュンソフト以外の同系統のゲームについては「ノベルゲーム」の記事も参照されたい)
概要
テキストタイプのアドベンチャーゲームの一種で、一枚絵をバックに画面全体にテキストが表示され、一部の選択肢を除いてはほぼ文字送りのみの操作となるのが特徴。ゲームというより、文字通り「BGMやSEの付いた小説」といった色合いが強い。
いわゆるゲームブックにも近い構造だが、文字送りに対応して効果音やBGMを鳴らして各種演出ができるため、「小説」とも「ゲーム」とも違う独自の表現形態であるとも言える。たとえば効果音だけで時間経過やシチュエーションを表現したり、BGM(無音にする、という演出も含む)によって登場人物の心理状態を表現できる。また、視覚的には巨大文字やインデントを駆使したフォントいじり、常軌を逸した長文(画面いっぱい「クケケケケケ」という笑い声で埋め尽くすなど)が使用でき、1クリックに対して一度に表示する文章量や表示速度も制御できるため、狭いテキストウィンドウ形式よりも表現の自由度が高い。
また、選択肢制が採用できるのもサウンドノベルの特徴の一つである。この選択肢制によって蜘蛛の巣状的、もしくは、樹形図的なストーリー分岐・展開が可能となった。この選択肢での選択により、結果が変化してゆくシミュレーションゲーム的要素や、別人物からの視点で進行するサイドストーリー要素が盛り込めるようになり、さらに、二周目以降や”全ての選択肢やエンディングを見る"などの条件により選択肢が増えるという要素が加わったことで、二周目以降のプレイヤーの意欲を駆り立てる効果が期待できるのも、一般に書籍のノベルには見られない特筆点である。(ただし、「外伝」や「異聞」 「☓☓王子編」的なシリーズ展開している書籍はこの限りではない)
以上のような表現的・容量的理由から、サウンドノベルのテキストをそのまま小説や書籍化にしようとしても、簡単には成立しない場合が多い。
言葉としての初出はスーパーファミコンのゲーム「弟切草」(1992年)で、もともとはアクションゲームやシューティングゲームといった一般名詞ではなく、チュンソフトの一連のサウンドノベルシリーズのみを指す言葉。
サウンドノベルブーム
「弟切草」を上回るヒットとなったスーパーファミコン「かまいたちの夜」以降、上記の「一枚絵をバックに画面全体にテキストを表示するタイプのアドベンチャーゲーム」がチュンソフト以外からも発売されるようになっていく。特に90年代のSFCでは一時期サウンドノベルブームが起こり、「学校であった怖い話」「晦‐つきこもり」「魔女たちの眠り」「夜想曲」「夜光虫」「月面のアヌビス」「ざくろの味」などのヒット作が生まれた。いずれも弟切草&かまいたちの影響下にあるタイトルで、ホラー、ミステリにギャグ要素が加わったものが多い。「学校であった怖い話」「夜光虫」のように縦書き表現が可能なのも、サウンドノベルならではの特性と言える。
とはいえ前述のとおり「サウンドノベル」自体はチュンソフトの商標なので、厳密にはチュンソフトの関わっていないゲームは「サウンドノベル」ではない。このあたりは「ピアニカ」「エレクトーン」「メロディオン」などと同じようなものだろう。
サウンドノベルの一覧
公式に「サウンドノベル」とされている作品は以下のとおり。効果音やBGMの挿入が可能な点からミステリ、サスペンス系の分野と相性が良い。各ゲームの詳細は各ゲームの項目に飛んでください。
- 弟切草
- SFC。チュンソフトの自社ブランド1作目にして、記念すべき世界初のサウンドノベル。TV脚本を多く手がける大御所・長坂秀佳による、ホラー色の強い作品。この時点ではドット絵の背景が表示される、従来型のADVの見せ方に近かった。ホラーゲームの例に漏れず、実況系のプレイ動画が人気。
- かまいたちの夜シリーズ
- SFC。推理作家・我孫子武丸が脚本を手掛け、記録的なヒット作品となった。ゲーマーだけでなく一般人気も非常に高く、サウンドノベルの代名詞とも呼べる、まさに金字塔である。弟切草以上に複雑なフラグ管理と分岐を実現しており、ゲーム性という面でも影響力が大きい。グラフィックも大幅に進化し、実写取り込みの背景に人物をシルエット表示するスタイルを確立した。後発の類似ゲームはほぼこの作品のフォーマットを踏襲しており、「かまいたち」発売から15年経つ今でもノベルゲームはまったく進化していないと言われるほど。派生作品や続編もいくつか存在し、チュンソフトのドル箱と言える。ピンクのしおり、金のしおりといったキーワードにティン!と来る人も多いはず。犯人当てが醍醐味なだけに、ネット時代にプレイする際はネタバレに注意されたい。
- 街/街〜運命の交差点〜
- セガサターン。再び長坂秀佳を起用し、シルエットを廃して、大量の実写スチルを使用した大作。TIPSシステムや複数主人公制、マルチ視点からのザッピングシステムなど画期的な試みも多くなされており、根強いファンを持つが、長い開発期間と投じた予算に対して売り上げは必ずしも見合うものではなかった。大ヒットに至らなかった理由はいろいろ考えられるが、やはり「実写」に対する拒否反応、食わず嫌いが多かったというのが主原因であろう。後にPS、PSPに移植された際には、サブタイトル「運命の交差点」を付けたり、シルエットモードを搭載するなど、チュンソフトのサターン版へのトラウマを感じさせる要素が追加された。なお、無名時代の窪塚洋介が下っ端AD役で出演している。
- 忌火起草
- PS3、Wii。弟切草以来の、サウンドノベルの原点回帰とも言えるホラー作品。「街」の反省を踏まえてか、スチルで人間の顔が見えないように作られている。台詞部分は音声が実際にボイスとして再生される。
- 428〜封鎖された渋谷で〜
- Wii。街の続編という位置付けではないまでも、お蔵入りとなった「街2」の企画を流用し、再び渋谷を舞台に据えたリベンジ作とも取れる。「街」の反省を踏まえてか、美男美女を多く起用し、さらにボーナスシナリオは我孫子武丸にくわえTYPE-MOONの奈須きのこ、武内崇コンビによるもの。セガ&チュンソフトのなりふり構わない姿勢がうかがえる。ファミ通レビューで40点満点を獲得した(セガ、チュンソフトともに史上初)。
類似ゲームおよび「ビジュアルノベル」
それまでの主流だったテキストタイプのアドベンチャーゲーム(画面下部にテキストウィンドウがある、台詞中心のゲーム)との区別のため、「サウンドノベル」というジャンル名はユーザー間では広く定着したものの、チュンソフトの商標である「サウンドノベル」を他社は公式に謳えないため、他社から発売されるノベルタイプのゲームはそれぞれバラバラのジャンル名を付けていた。
中でも有名なのは「ビジュアルノベル」というジャンル名で、主にアダルトゲームブランドLeafがリリースした「雫」「痕」「To Heart」という作品群「リーフビジュアルノベルシリーズ」を指す。シルエットキャラを使用したチュンソフトのサウンドノベルに対して、グラフィックを前面に押し出していることから「ビジュアルノベル」の名称を使用したものと考えられる。これらの作品は、チュンソフトのサウンドノベルの影響を多大に感じさせるフォーマットで制作されていた。
なお、のちにコナミが「ビジュアルノベル」を商標登録しようとしたが、却下されている。
現在では「ノベルゲーム」「ノベル系」といった呼称が一般的であろう。
美少女ゲーム界での定着
上記のように、「絵」「テキスト」「音楽」というごくシンプルな要素があれば成り立つサウンドノベル形式は、優秀なシナリオライターと絵描きさえいれば低予算・少人数での開発が可能なこと(BGM、SEはフリーで使用できるものが数多く公開されている)、また「ゲーム性やシステムよりも絵やテキストのほうが大事」という特性から、特にいわゆるギャルゲー・エロゲーの世界で広く採用され、定着していった。
特に影響力の大きかったのは前述のリーフビジュアルノベルシリーズで、これらが登場した90年代の後半からは「ときめきメモリアル」や「同級生」などのようにシステムに寄った美少女ゲームは激減し、ゲーム性よりもシナリオと絵を重視したノベルタイプのゲームが増えていくこととなった。
また、サウンドノベルツクール、NScripter、吉里吉里など開発支援ツールも充実しており、同人ゲームの世界でも定番のジャンルとなっている。TYPE-MOONの「月姫」、07th Expansionの「ひぐらしのなく頃に」などが代表的で、特に「ひぐらし」に至っては選択肢すら存在せず、「音」による演出を最大限に生かしていることから、まさに字義通りの「サウンドノベル」と言える。
ニコニコ動画でのサウンドノベル
東方、アイマス、VOCALOIDの御三家をはじめ、サウンドノベルのフォーマットで制作された二次創作動画が数多く投稿されている。フリーソフトの紹介や、実況・非実況問わずプレイ動画も多い。
関連商品
関連項目
- 8
- 0pt