いや、戦士です。
女になったのですよ…
ファラ・グリフォンとは、黒カトルアニメ「機動戦士Vガンダム」の登場人物。担当声優は折笠愛。
略歴
宇宙世紀0153年の時点で22歳。生まれはサイド2(のちのザンスカール帝国)の死刑執行人の家系であったらしい。
経緯は不明だが軍人(ベスパ)をこころざし、初登場時は中佐でラゲーン基地の司令官を務めていた。劇中序盤に出て来たベスパの幹部の中では最も高い役職に就いていた人物である。
この時代の地球連邦軍は既に弱体化しており、地球上で組織的な抵抗を行っていたのはリガ・ミリティアと呼ばれるレジスタンスのみであった。それらを掃討するため、クロノクル・アシャーらの所属する地上部隊イエロージャケットのパイロット達を指揮する立場にあった。副官はキャラオケが趣味のゲトル・デプレ大尉だが、あまり仲は良くない。また側近で恋人でもある、メッチェ・ルーベンスを傍に置いていた。
だがVプロジェクトと呼ばれたリガ・ミリティアのMS製造計画が軌道に乗り、天才的なパイロットであるウッソ・エヴィンがこれに参加するとヨーロッパ方面でのベスパの覇権にも陰りが見え始め、焦ったファラは占領した各地にギロチンを設置して恫喝を本格化する。
その中で、クロノクルの活躍もありリガ・ミリティアの指導者であるオイ・ニュング伯爵の逮捕に成功する。彼女はこれを恫喝を先鋭化し抵抗分子を掣肘する好機と捉えたのか、捕らえた伯爵を尋問を加えた後、本国の指示を受けることなく彼をギロチンで公開処刑する。しかしこれは結果として、敵の更なる団結と抵抗の激化を呼び込んでしまう。
(伯爵はファラから尋問を受けている際、自ら「私をギロチンにかけるがいい」「しかしそれは更にレジスタンスを結束させるだけだ」「やってみるがいい」と告げており、ファラもそのリスクを知りながらも、中々口を割らない彼個人への苛立ちとも見れる描写となっている。)
その後公開処刑の強行を重く見た本国からは召還命令が下るが、それを受けた直後も功を焦った彼女はマスドライバー施設アーティジブラルタルを占領する為奮闘するなどしたが、そこでもリガ・ミリティアの抵抗を受けるなど失態を繰り返したまま、本国から召還命令を受け宇宙に上がることとなった。宇宙軍・カイラスギリー艦隊に召還されたファラは、艦隊指令であったタシロ・ヴァゴ大佐に「本国に戻るまでもない。私が軍法会議だ」とその場で詰め腹を切らされ(表向きはオイ・ニュングに対するギロチンの無断使用により)宇宙漂流刑に処せられ、ここで物語から一度退場する(第15話)。
しかし、実はこれは彼女を自分の部隊に引き抜きたいタシロの謀略であり、実際に宇宙に放出されたものの後に救出され、その後は彼の直属の部下となる。(ただし放出されすぐに救出されたようではないようで、救出される直前には「気が狂うくらいなら…」と手持ちのナイフで自殺未遂を図っており、本人も後に「恐怖」であったと語っている。)
宇宙漂流以降の作中での再登場は後半になってからであり(第43話)、MSザンネックを使った高空からの射撃でウッソの心胆を寒からしめた。充電期間中にMSのパイロットになった彼女は、強化人間となるように手術(宇宙漂流刑の際に酸素欠乏や宇宙線によって精神が歪んだ可能性もある)を受けたとされ、鈴の形をしたサイコミュ増幅器をつけた影響もあり、完全に理性を失った状態であった。
再び宇宙に上がったウッソたちを苦しめ続け、ザンネック喪失後はゲンガオゾに乗り換えるなど引き続き強力な試作MSを使いこなし互角以上の戦いを繰り広げる。エンジェル・ハイロゥ付近の戦いでは、タシロの反乱をサポートし、タシロが女王マリアの拉致を行ってエンジェル・ハイロゥを離脱するまで、ウッソのV2ガンダムを足止めした。
そして激しい戦いでお互い損傷しながらもクーデター成功を見届けると、手を抜かんとばかりに接近戦を展開。もはやウッソでさえ敵とは思えないほどに圧倒し(本人いわく遊んでやってる)増加パーツ込みのV2ガンダムをコア・ファイターにするまで追い込むなど、戦場を縦横無尽に駆け抜ける。しかしその戦いに割って入った、妊娠していたマーベットの胎内の子供の鼓動に圧倒され、茫然自失となっていたところをウッソに撃墜されてしまう。
人物
ラゲーン基地では部下に恐れられる厳格な性格の持ち主であり、かつ死刑執行人の家系と言う血生臭い印象とは裏腹に、プライベートでは私服で私人として町に赴きパブで一杯のビールをたしなんだり、その場にいたスージィにチョコパフェを奢ってあげる、町が戦場になることを知っていたためその場で会ったウッソらに当地から退去するように勧めるなど、穏やかなエピソードも存在する。
スージィの亡くなった姉に似ていたらしく、彼女からはなつかれていた。また、男性関係でも、部下であり恋人でもあったメッチェは作戦の失敗の責任を負い彼女のために戦場命を捨てるなど、周囲と常に距離を置いているカテジナ・ルースや、部下からも恐れられるルペ・シノなどよりは、よほど恵まれていた交友関係を持つ側面も見られる。
強化人間になった後はタシロと同衾(小説版)しており、新たに部下になったキル・ダンドンをメッチェ代わりに可愛がるなどやや奔放な行動を取っている。だが前者はもともと自分をこのような境遇に陥れた人物であり(タシロ自身もギロチンにかけられそうになったことがあり、同病相憐れむ的な心情はあったのかもしれないが)到底愛情など持ちようもなく、後者もメッチェほどの器はなかったとされ最後は自ら銃殺している。
その一方で、強化後はやたらと独り言のようにギロチンの家系や、その象徴であり身に付けている鈴に拘る発言をし続ける姿は、その身を穢し命を殺めるという血の宿命(幸せになれない道を歩むこと)からもがき苦しみ、まるで真っ当な女性になりたいと叫んでいるかのような哀れさも漂わせる。
メッチェへの愛情は深かったらしく、撃墜されて死亡する寸前に叫んだのも彼の名前であった。ウッソは「女性でありすぎた」と評しており、これはZガンダムにおけるエマ・シーンによるレコア・ロンドに対するものと同様の評である。
搭乗機体
宇宙漂流前までは前線の指揮を執り、厳密にはリカールもメッチェが操縦する機体に同乗しているだけであったが、タシロの配下となって以降は自らパイロットとなり複数のMSに搭乗する。
- ZM-A05G リカール ・・・メッチェの操縦する、大気圏内用の円盤型指揮官用MA。長距離メガ粒子砲を装備し、その形状から「フライパン」とも呼ばれる。内部には15名程が搭乗でき、基地からの移動手段としても使用された。
- ZMT-S29S ザンネック ・・・成層圏から地表を砲撃し雲をも引き裂く威力を誇るザンネック・キャノンと、大気圏突入離脱が可能なザンネック・ベースを装備したMS。サイコミュを搭載し、遠距離の敵を確実に狙撃できる。ちなみに初期のデザイン段階ではザンコックという超巨大MSになる予定だったが、ほぼお蔵入りになり現在の姿になった。
- ZMT-S28S ゲンガオゾ ・・・サイコミュによって遠隔操作されるバックパックユニットが特徴。白兵戦用にビームメイスというモーニングスター系のビーム兵器を採用している。劇中最後に搭乗した機体。初期のデザイン段階ではゴクアックというMSとしてデザインされたが、こちらはその意匠を色濃く残しており、モチーフは風神(ザンコックは雷神)。
- ZMT-S37S ザンスパイン ・・・Gジェネレーションシリーズ初出のIF機体。ファラ・グリフォン専用として開発された、ミノフスキードライブとサイコミュのいいとこ取りをした高性能機。詳細は当該項目を参照。
主な台詞
- 恋人を殺されれば、ああもなろう。…例え話だ。憎しみはどんな武器よりも力を発揮する。
- ふふっ…中尉殿?女は無闇に信じない方がいい…というのが、女の私からの忠告であります…!
- 私はじとじとと苦しめるようなやり方は嫌いでね。伯爵?
- スペースコロニーでギロチンを使ったことで、ザンスカール帝国は、あっという間に新国家の建設が出来たのだよ?その意味を、伯爵は読み違えていらっしゃる…
- 我々は、ザンスカールのベスパだということだ。ガチ党の、イエロージャケットだということだ。それ故に、ザンスカールに刃向うものは、こうなることを思い知ってもらう。
- チョコレートなら、いいだろう?あるかい?
- 一緒に暮らせる仲間がいるというのは、良いもんだよ。
- メッチェ…優しいな。貴公は…
- 宇宙に戻っても失敗を続けたこの私だ。メッチェがくれたこの命も、どうなるか…
- クロノクル、その気持ちだけで嬉しいよ。ギロチンの家系が、ギロチンにかけられたらお笑い者だものな。これでいい…。大佐、いままで目をかけていただき…ありがとうございました…
- クソォォォッ!!!!
- ウフフフフ…♪寄ってくる寄ってくる。蜂が蜜に寄る様に上がってくる…♪ギロチンの家系が着けなければならない鈴が!ザンネックの鈴になり!その鈴がマシンの動きの周波数に連動して、あたしの頭の中に敵の姿を感じさせるんだよ…
- ザンネックのビームに驚いたときには、お前らは死んでいるよ!!
- 心眼を開け。宇宙にこだまする光を聞け…。
- まだ落ちてないよ坊や…♪
- そこのパイロットが、港町で会った坊やだってのは分かってるんだよ。お前にも、あたしの味わった恐怖を教えてあげるよ。あの、宇宙漂流にあった時の恐怖をね…
- ビームを細く絞り過ぎた…!お前はメッチェの代わりにもならん。
- 止めを刺さないと、いつまでもギロチンの鈴が鳴るぞぉ!?
- 白い奴は何でも使ってくるんだ。敵のモビルスーツを使うなど、得意なところなんだよ?
- この…娘っ子が!!
- フッフフフフ♪姫様、姫さんかぁい…ンッフフフ、姫さんやぁ…アッハハハハ!!!待ってなさいよ、このお荷物をとどけたら、相手をしてやるからさ♪
- あたしが行くまで元気にやるんだよ、坊やたち…
- 敵じゃないと言ったろぉ?ビームメイスを受けられるかい!!
- フンッ、タシロめ、次のステップにすすんだのかい。もうあたしと坊やの戦いをじゃまするものは、何もない!!
- 坊やぁ…ほんとに可愛いよぉ…(舌なめずり)
- 坊や、あたしの前で他の女に気を取られるのかい!それは目の前の女に対して!無礼だろうが!!!
- お前には、メッチェのところに行ってもらいたいんだよ!!
- ふざけてんじゃなぁい!!みんなギロチンで、一刀両断にしてやるッ……なんだぁぁぁ!??
- ひとつの命の中に、ふたつの命があるというのか…!何故だ!!!!
- 子供がぁぁぁ!!
- 首を落とせば、命も消える!そうすれば、命の輝きに脅かされる事も無い!!
- 坊主がああああ!!!
- あれも光…命も光…ギロチンの刃(は)も光る…。タシロォ!!あとはお前1人でやってみなぁ!!
- メッチェ…!今、行くからね…
その他
- ギロチンの家系(ヨーロッパでは死刑執行人は世襲が多い)や鈴の飾りなどはかつて存在した制度をモチーフにしている。
- 原作者である富野監督はVガンダムの企画の根底はギロチンとファラにあったと取材で証言している。
- 富野作品における顕著な作品傾向として、妊婦や乳児は強い(崇高である)というコンセプトがあるが、それを示す代表作として、イデオンに次いで彼女とマーベットの戦闘シーンを挙げるファンも多い。
- 戦死した次の回(48話)のナレーション
ウッソは、ファラ・グリフォンの抵抗を突破することができた。しかしそれは、マーベットが妊娠していたからだ。
そのことがこの戦場を大きく支配していることを、男たちは知らなかった。
は本作を象徴するものという評価がある。
関連動画
関連コミュニティ
関連項目
- 機動戦士Vガンダム
- ザンスカール帝国
- ウッソ・エヴィン
- ガンダムシリーズの登場人物一覧
- ザンスパイン
- 鈴
- 軍票 (軍隊に支給される代理紙幣。第12話で、酒場に行ったファラ・グリフォンは軍票で支払うが主人に嫌な顔をされた)
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