機甲創世記モスピーダとは、1983年から翌84年までフジテレビ系列にて放送されたタツノコプロとアートミックとの共同企画・制作のロボットアニメである。全25話。
概要
『超時空要塞マクロス』の後番組『超時空世紀オーガス』の制作から外されたタツノコプロが制作にあたっており、メカデザインにアートミック、キャラデザに天野嘉孝、BGMに久石譲と小笠原寛…と当時の新進気鋭の者達が集まった。英語版タイトルにある「Genesis Climber(意訳:新時代を駆け上がる者達)」は主人公スティック達一行を指すだけでなく、彼ら若い製作スタッフ達をも指していたのだ。
しかし、「関東圏での裏番組が当時人気絶頂だった『パーマン』であった」こと等から視聴率・玩具の売上共に低迷。そのあおりを受けて3クールを予定していた放映期間も2クール25話に短縮…と製作スタッフにとっては不完全燃焼に終わる結果となってしまった。放送短縮決定が比較的早かったため(ムックに掲載された脚本家へのインタビューから察するに、恐らく2クール目突入の前後)、話を綺麗に畳むだけの時間的猶予が与えられていたのは不幸中の幸いだったと言える。
とは言え30年以上経過した現在でも一部で根強い人気があり、「モスピーダ2083」と称した新デザインのライドアーマーが発表されたりフィギュアが発売されたりと長く愛されている作品である。
ストーリー
西暦2050年。地球は異星生命体インビットの攻撃を受け、総人口の99%を失う大打撃を受けてしまった。
人類の首脳陣は火星の基地「マルスベース」に逃れ、軍備の立て直しを図っていた。
一方地球を完全に制圧したインビットは、北米大陸に一大拠点「レフレックス・ポイント」を建造。様々な「実験」を行っていたが、取り残された人類に対しては反抗しない限りは手を出さず、好きにさせていた。
インビットによる地球征圧から30年後。
「機は熟した」とみた人類は地球を奪還するべく降下作戦を行うが、再び大敗を喫してしまう。しかし、この作戦で得たデータを元に兵器の改良を行い、さらに3年が経過した西暦2083年、新兵器を伴った第二次降下作戦が行われようとしていた。
という大筋があるにはあるのだが、基本的にはレイやスティック達が行く先々で出会う人々や仲間たちと繰り広げる一話完結のロードムービーものである。(まれに超展開な謎回がある)
人類側サイド
前述したとおりインビットとの交戦にて総人口の99%が失われたため、2083年現在でも総人口は火星に2~3000万人、地球に残った人類はもっと少ないものと思われる。
インビット達は地球に残った人類にはほとんど手を出していないが、第一次降下作戦の生き残りを「軍人狩り」と称して摘発させたり、各種機械の動力源である高エネルギー資源「HBT」を徹底的に管理することで反撃の芽を摘んでいる。
これらのインビット側の策略に対してスティック達がどう対抗するか?が本作の見どころの一つとなっている。
主人公一行
- スティック・バーナード:島田敏
- 第二次降下部隊の生き残り。地球への降下に成功したものの、その際に恋人マリーンを含む同僚全員を失ってしまった。それ故インビットを強く憎んでいる。
第1話は彼の視点から始まり、以降もリーダーシップを発揮しているため主人公のようにも思えるが、一応はレイが主人公であるらしい。 - レイ:大山尚雄
- 地球生まれの青年。スティックと最初に出会った地球生まれの人間で、以降なし崩し的に仲間に加わる。
お気楽な性格ゆえに軍人気質のスティックとはたびたび衝突するが、お互いに大切な仲間だと思っており、最後まで一行と行動を共にした。「インビットの地球征圧後に生まれ、その後孤児になってしまう」という重い設定があるのだが、彼の過去は作中で語られることはなかった。 - ミント・ラブル:室井深雪
- 13歳の少女。戦闘員ではないが「旦那様探し」と称してスティック達についていくことに。
- 「ミントさん語」と呼ばれる独特の口調と、いかなる時でもとにかく明るい性格が特徴のムードメーカー的存在。彼女が一時的に離脱した第15話では残りのメンバーが日ごろの不満を爆発させギスギスしたことも…。
ちなみに次回予告は彼女が担当しており、高いテンションと毎週変わる方向性で楽しませてくれる。 - フーケ・エローズ:土井美加
- 地球生まれのツッパリ少女。家を飛び出してあちこちを旅していたが、第3話でスティック達に出会ったことをきっかけとして一向に加わる。レイとは何かと突っかかることも多いが、互いに意識している模様。
- イエロー・ベルモント:鈴置洋孝(男)/松木美音(女)
- 第一次降下部隊の生き残り。「インビット側の軍人狩りから逃れるため、普段は女性歌手として活動している」という今から見てもぶっ飛んだ設定。実際男性時と女性時でCV含めて別人のように描かれている。あと水浴びシーンも多いお色気担当。
- とはいうものの心の根底は軍人であり、スティック達の戦いを見た結果彼らに素性を明かして同行する。
なお女声担当の松本美音は本職が歌手であり、本編中の挿入歌だけでなくED曲も担当している。 - ジム・ウォーストン: 西村知道
- 第一次降下作戦の生き残り。ごつい見た目とは裏腹に憶病ではあるが気のやさしい性格。しかしその性格ゆえに敵前逃亡をしてしまい、地球ではつまはじきものにされていた。
元整備兵なので修理を担当し、基本的に戦闘には参加しないが、兵器の残骸から物資を回収する等補給面を支える大事なメンバーである。 - アイシャ:高橋美紀
- 第10話でレイに発見された少女。インビットに襲われて記憶喪失になったものと一行に思われ、以後同行することに。共に旅を続けていくうちに言葉を話すようになり、感情も豊かになり、やがてスティックと相思相愛になっていく。しかし…。
ちなみに彼女はマリーンと声優が一緒である(おそらく意図的なものであるが)。
メカニック
ライドアーマー
本作の看板メカその1。パワードスーツに変形する可変バイクであり、タイトルに冠せられている「モスピーダ」はライドアーマーの一銘柄である。
移動時はバイク形態による高速移動を行い、戦闘時はパワードスーツに変形後搭乗者に装着され、火力と防御力を高められる。しかしバトルウォーマーに対しては火力の低さ故に分が悪く、グラブを倒せれば御の字といったところである。
- VR-038L「バートレー」
- 第一世代型ライドアーマー。女性兵士専用のため、各種装甲が女性向けに調整されている。
作中ではフーケが搭乗。彼女のバートレーは最期を看取った女性兵士の形見であり、フーケ用にアジャストされているため他のメンバーは使用不可。 - VR-041H「ブロウスーペリア」
- 第一世代型ライドアーマー。「強烈な一撃」の名の通り、両腕に高周波ブレードが搭載されている近接戦闘特化型。作中ではイエローが搭乗。
- VR-052F/T「モスピーダ」
- 第二世代型ライドアーマー。第二次降下作戦にて使用された新型で、F型は指揮官用、T型は一般兵士用。F型には両腕に2×2発のミサイルが搭載されている。打ち切り型で弾数も乏しいが、グラブまでなら撃破できる火力は切り札たりうる。
作中ではスティックがF型に、レイがT型に搭乗。
最終盤ではHBT反応を抑えてインビットから探知されにくくした第三世代型ライドアーマー「ダークモスピーダ」も登場。
レギオス
本作の看板メカその2。戦闘機形態の「アーモファイター」、中間形態の「アーモダイバー」、人型形態の「アーモソルジャー」に変形可能な可変戦闘機。第一次降下作戦にて投入された第一世代型アーモファイター「コンドル」の発展機で、コンドルにはなかったアーモダイバー形態への変形機構と、単機での大気圏突入能力が持たされている。
放映当時の時点で「もしかしなくても→バルキリー」とアニメファンからは囁かれていたが、『超時空要塞マクロス』でもスポンサーを務めていたイマイが参加していたため、その要望で入れられた、とする説もある。作中ではHBT不足や閉鎖空間での戦闘…といった「レギオスでは活躍できないシチュエーション」をふんだんに用意することで、ライドアーマーの存在が霞んでしまわない様配慮されている。
- AFC-01Η「レギオス・エータ」
- 第二世代型アーモファイター。青色のカラーリングの指揮官用機体。
作中ではスティックが搭乗。 - AFC-01Ι「レギオス・イオタ」
- 第二世代型アーモファイター。緑色のカラーリングの一般兵士用機体。
作中ではレイ、イエロー、ジムが搭乗。 - AFC-01Ζ「レギオス・ゼータ」
- 第二世代型アーモファイター。赤色のカラーリングの一般兵士用機体。
大気圏内での航行能力が強化されている。
作中ではフーケが搭乗。 - AFC-01X「ダークレギオス」
- 第三世代型アーモファイター。黒色のカラーリングの最新鋭機。
ダークモスピーダ同様のステルス機能と、新兵器「シンクロトロン砲」を搭載している。
作中では最終盤のレフレックス・ポイント攻略戦にて登場、有人機だけでなくAI制御による無人機も投入された。
トレッド
第二次降下作戦にて投入された爆撃機。
航空機形態の「アーモボンバー」と、人型形態の「アーモソルジャー」の2段階変形機構を有するほか、レギオスの強化オプションパーツとしても機能する。
作中ではアーモファイター形態のレギオスにドッキングして速度を高めたり、さらにドッキングしたままレギオスがアーモソルジャー形態に変形する…といった芸当を見せている。
インビット側サイド
現在の人類をはるかに上回る科学力を有している。特に遺伝子工学などの生命を操作する技術に長けており、「地球における生命の進化の歴史」をわずか30年で学習、現在の地球に再現して見せた。
しかし、それだけの科学力を有していながらも、自分達が住みやすくなるよう環境を激変させることはしなかった。地球の大気が多くの同胞にとって致死の猛毒であるにも関わらず。
主要キャラ
- レフレス:小原乃梨子
- インビットを統率する女王。「レイトウの導き」に従い、とある目的のため行動している。
- バットラー:大塚芳忠
- 地球の環境に完全に適応した、人間型インビットのうち男性型の方。
- 人類を排除して地球に住まうべきだと考えている過激派であり、最終的にこの物語の事実上のラスボスに。
- ソルジィ:加藤友子
- 地球の環境に完全に適応した、人間型インビットのうち女性型の方。
- 当初はバットラー同様人類を敵視していたが、敵であるはずのイエローと出会ったことで謎の感情を抱き…。
メカニック
バトルウォーマー
敵対勢力インビットが搭乗するメカ。戦闘服であると同時に、地球の大気から身を守るための防護服でもある。また、全ての機体にはHBT反応を感知するレーダーが搭載されており、HBTの使用が許されていない場所で反応が見つかると、巡回中のバトルウォーマー編隊がすっ飛んでくる。
当初はイーガーやグラブなどの下級バトルウォーマーが主力であるが、レフレックス・ポイントに近づくに従って、より強力なバトルウォーマーが登場し始める。
- イーガー
- 最下級のバトルウォーマー。全高2.5mと小柄で、主武装も両腕のクローによる引っ掻き攻撃がメインと貧弱。タイマンならばレギオス&トレッドの敵ではなく、ライドアーマーでも十分対抗できる。
- しかし、「数の暴力」と言うべき膨大な数が配備されているため(一例として、大気圏に構築された防衛ラインには、最低でも500万体以上のイーガーが配備されている)、集団で襲い掛かられるとレギオスでも撃破されてしまう。
- グラブ
- イーガーから進化したバトルウォーマー。全高5.1mと巨大化し、それに伴って装甲も分厚くなった。ただし、重装甲の代償として機動力はイーガーと比して大きく落ちている。
主武装はイーガー同様両腕のクローだが、巨大化した分破壊力も上昇。また、両肩にレーザーカノン砲を搭載したタイプも登場する。 - レギオス&トレッドならば互角以上に戦えるが、ライドアーマーの貧弱な火力では厳しい戦いを強いられる。コクピットと直結しているカメラアイを正確に撃ち抜くか、あるいはF型の虎の子のミサイルを使うしかない。
- ガーモ
- グラブから進化したバトルウォーマー。グラブからさらに巨大化し、全高は7.1mにも達する。
両肩に搭載されたヒートカノン砲の一撃は、食らえばレギオスといえどもただでは済まない。さらに、単独での大気圏突入能力や、驚異的な精度のHBT探知能力も備えている。 - プロテクト・インビット
- イーガー達とは別系統の進化形態。全長は2.5m程と小柄で人間型に近い。
施設の巡回警備に当たっていたり、協力的な人間との交渉の場に現れること等から、指揮官・上級階級向けのバトルウォーマーと考えられている。 - 戦闘力はイーガー以下で、ライドアーマーの標準装備である携行ビームガンでも装甲を撃ち抜けるため脅威とはならない。
- ゴース
- バトルウォーマーの最終進化形態で、人間型インビット専用。バットラーとソルジィが主に搭乗する。変形機構こそないものの、右手のビーム砲&多連装ミサイルランチャーを搭載した「アンチレギオス」とでもいうべき最強の機体。
余談
- OPは金田伊功が手がけた事で有名。
- 本来この作品の後番組としてメガゾーン23が企画されていた事もあって、いろいろと共通項も多い。
- メインスポンサーは学習教材で知られる出版社の学研。雑誌『アニメディア』での特集が組まれた他、おもちゃやプラモデルが発売された。学研のマークの付いたおもちゃが売られる光景は、正直なところかなり異様であった。
- キャラ人気においてはイエロー・ベルモントが女子ファン層を中心に人気を博した。
人気投票でも上位に食い込み、イエローのコンサートを題材としたOVAが発売された。サントラのジャケットも天野嘉孝氏が描いたイエローのイラストが飾っている。 - 米国においては『超時空要塞マクロス』『超時空騎団サザンクロス』 とひとまとめにした『ロボテック』シリーズが展開されている。
- 2クール25話と放映話数が少ないせいか、DVDボックス、BDボックスともに安価となっている。
- 作中にて登場するエネルギー源の「HBT」。「『複合水素』といった感じのよくわからんがすごいエネルギー」とのことだが、実はこのネーミング、「ガス(GAS)」のアルファベットを1文字後ろにずらしただけというオチだった。しかし、放送当時ある大学の研究機関から「我々も似たような名称のエネルギーを開発しているのですが…」とガチの問い合わせが来たという。
視聴について
2019年現在では、DVD/Blu-ray以外にもHuluやamazonプライム、フジテレビオンデマンドといった配信サイトにて有料配信されている。
ニコニコ動画では「タツノコ劇場」チャンネルで配信されていたが既に閉鎖されており、今はdアニメストア ニコニコ支店で視聴できる。
関連動画
関連リンク
- 機甲創世記モスピーダ -GENESIS BREAKER-
※2020年7月に発表された新プロジェクト。
- なぜ今、「モスピーダ」なのか? 監督・メカデザイナーの荒牧伸志氏が、80年代メカのロマンを語る!【アニメ業界ウォッチング第69回】
2020.9.26
関連項目
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