「金田伊功」とは、1970年代から80年代の日本アニメの作画に革命をもたらした伝説のアニメーターである。
「作画がすごい日本アニメ」の話に必ず登場する人物であり、少ない枚数で描かなければならない日本アニメの制作事情から後述する「金田スタイル」を編み出し、業界に多大な影響を与えた。
概要
アニメの通信教育及び専門学校を経て東映動画(現:東映アニメーション)に入り、荒木伸吾のスタジオZ、師匠となる野田卓雄のスタジオNo.1所属を経て、『ゲッターロボ』で原画マンとして活躍を始める。
その後は、『大空魔竜ガイキング』等の東映動画作品や、『超電磁マシーンボルテスV』『無敵超人ザンボット3』『無敵鋼人ダイターン3』等の日本サンライズ(現:サンライズ)の巨大ロボットもの作品に原画マンとして参加し、ダイナミックさを強調した独自の表現方法により注目を集め、フォロワーとなるアニメーターを多数産み出した。
『銀河旋風ブライガー』『魔境伝説アクロバンチ』『機甲創世記モスピーダ』等のOPにはその技術の粋が詰め込まれている。
※金田伊功によるOPと本編との落差が激しすぎる主に国際映画社制作のアニメはOP詐欺と呼ばれている。
『宇宙戦艦ヤマト』『銀河鉄道999』『幻魔大戦』等の劇場用作品でもその卓越した表現力を発揮し、1980年代半ばからは宮崎駿の『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ『』魔女の宅急便』『紅の豚』『もののけ姫』等のスタジオジブリ作品で原画マンとして活躍した。
彼の仕事ぶりを見た宮崎駿は金田の作画に関して以下のように語っている。
その説得力は、重力も慣性も、その他もろもろのこの世界の法則を、自分の生理にとり込んだうえで、「このほうが気持ちがよい」という感性の部分で作画する能力から生まれてくる、彼の仕事を真似て、荒っぽいポーズや理屈ぬきの動きを描けばよい、と考えるのはあやまりである。 宮崎駿
あまりに独自性が強い金田伊功に、宮崎駿らは非常に悩まされたらしいが、『天空の城ラピュタ』の竜の巣など金田伊功が担当したシーンは、彼以外には出来ないと言われる程のクオリティとなっている。
1998年に劇場用フル3D映画作品『ファイナルファンタジー』に参加したことから、スクウェア・エニックスの所属となり、3D映像技術を学びながら『半熟英雄3D』『武蔵伝II』『半熟英雄4』等のアニメーション部分の監督を務めたりする中で、「戸隠三郎」名義で『ガイキング LEGEND OF DAIKU-MARYU』のOPに参加して、名前を隠しても見ただけで解るダイナミックさに衰え知らずである事を見せ付けた。また、本作では2ndOPのCDシングルのジャケットも手がけている。
スクウェア・エニックス所属となって以降はアニメ作品に関わる機会が極端に減っていた。
金田伊功自身はインタビューにおいて「一生、「一アニメーター」で行ければいい」と応えていたが、2009年7月21日・・・師匠の一人である小松原一男の元へと旅立った。
金田スタイル
金田伊功がもたらしたメカアクションやエフェクト関連で革命的な技法の数々には、それぞれ「金田」の冠がついている。
※個人の名前がついた技法には他に板野一郎の「板野サーカス」等がある。
金田伊功が日本アニメ界もたらした革命的技術の主なものは以下の通り。
金田パース
パースをあえて大胆に崩す・歪ませることによりダイナミックさを強調する技法。
手前にある物体を強烈に誇張して大きく(時には奥にあるものを強烈に小さくする事もあわせて)描くことで遠近感が強調されたかっこいい絵を見せる。
金田ジャンプ
ガニマタながらも手首や足首を曲げる動作及びデフォルメを組み合わせることでかっこよく見せる技法。
金田伊功が手がけたOPで登場人物がよく行っている。「金田跳び(飛び)」とも。
金田光り
光の反射によって発生するレンズフレア現象を、円形のゴーストを重ねて表現する技法。
金田ビーム
円形から一旦落雷の様な感じに散らばった後に収束する金田伊功得意のエフェクト技法。
現在ではアニメの他ゲームのエフェクトにおいてもかっこいいビーム描写の基本となっている。
金田デフォルメ
金田パースが動きの中で行われるのに対して、主に止め絵的に使用されるカットで行われる、手前にある物体を誇張して描いて飛び出してくるような迫力を出す技法。
また、炎やそれに類する表現にも定評があり、特に少ない枚数で炎を表現できるのは金田伊功の前にも後にもいないと思われる。
1980年代から1990年代にかけて、『六神合体ゴッドマーズ』『うる星やつら』の山下将仁や『ムーの白鯨』『鉄人28号(新)』の亀垣一、『学園特捜ヒカルオン』の越智一裕など、金田伊功に影響された「金田系アニメーター」により金田式は繁栄を極めた。90年代の後半になると、番組数の激増もあって、技術の必要な金田式が用いられる機会は少なくなったが、『天元突破グレンラガン』の今石洋之など、熱烈なフォロワーは決して少なくない。
金田伊助
金田伊功(かなだ・よしのり)はその名の読みにくさから「かねだ・いこう」とよばれたり、大空魔竜ガイキングのED等で「金田伊助」と誤記されることがあった。
しかし本人も「IKO」とサインする事があったり、『とっても!ラッキーマン』で「金田伊助」名義を使用する等しており、公認の愛称と言える。
余談であるが、師匠である小松原一男は金田のことを「イスケ」の愛称で呼んでいた。
関連動画
その他の関連動画や、フォロワーによる作画などはこちらからどうぞ。
関連項目
関連作品(TVアニメ・OVA) |
関連作品(劇場映画) |
関連リンク
親記事
子記事
- なし
兄弟記事
- あおきえい
- 赤根和樹
- アレックス・ハーシュ
- 庵野秀明
- 幾原邦彦
- 板野一郎
- 一石小百合
- 出渕裕
- 伊藤和典
- 井上善勝
- いのまたむつみ
- 今石洋之
- 岩根雅明
- ウォルト・ディズニー
- 冲方丁
- 馬越嘉彦
- 榎戸洋司
- 尾石達也
- 逢坂浩司
- 大島美和
- 大塚正実
- 大沼心
- 大張正己
- 大森貴弘
- 岡田麿里
- 岡村天斎
- 加々美高浩
- 加藤寛崇
- 加藤陽一
- カトキハジメ
- 椛島義夫
- 河森正治
- 岸誠二
- 岸田隆宏
- 窪岡俊之
- 倉田英之
- 黒田洋介
- 劇団イヌカレー
- 高坂希太郎
- 小田部羊一
- こだま兼嗣
- 小柳達也
- 今敏
- 近藤喜文
- 斎藤久
- 酒井和男
- 坂井久太
- 佐光幸恵
- 貞本義行
- 佐藤好春
- 塩山紀生
- 芝山努
- 島沢ノリコ
- 下笠美穂
- Shuzilow.HA
- 首藤剛志
- 新海誠
- 新房昭之
- すしお
- 鈴木典光
- 高畑勲
- 高松信司
- 高村和宏
- 田中宏紀
- EunYoung Choi
- 千羽由利子
- 鶴巻和哉
- 天衝
- 富野由悠季
- ドン・ブルース
- 中嶋敦子
- 中村隆太郎
- 長井龍雪
- 南家こうじ
- 錦織敦史
- 西島克彦
- 西田亜沙子
- 西村博之
- 西屋太志
- 花田十輝
- 林静香
- 原憲一
- 細田守
- 堀口悠紀子
- 真下耕一
- 松尾祐輔
- 松竹徳幸
- 松本憲生
- 水島努
- 宮崎駿
- 室田雄平
- 元永慶太郎
- 森田宏幸
- 森本晃司
- 森康二
- 安彦良和
- 山口晋
- 山下宏幸
- 山田尚子
- 大和屋暁
- 山本寛
- 湯浅政明
- 横手美智子
- 吉成鋼
- 吉成曜
- 吉野弘幸
- 米林宏昌
▶もっと見る
- 15
- 0pt