Watchmenとは、アラン・ムーア原作のアメリカンコミックである。
出版社は『スーパーマン』や『バットマン』などアメコミの大手・DCコミック。1986年9月~1987年12月、全12巻が発行された。
タイトルは古代ローマの詩人・ユウェナリスの風刺詩第6歌『女性への警告』に由来する。
noui consilia et ueteres quaecumque monetis amici,
"pone seram, cohibe".
sed quis custodiet ipsos custodes
cauta est et ab illis incipit uxorI hear always the admonishment of my friends:
"Bolt her in, and constrain her!"
But who will watch the watchmen?
The wife arranges accordingly, and begins with them私は我が友の忠告を常に聞く
「彼女に閂を掛け、拘束せよ!」
しかし、誰が見張りを見張るのか?
妻は手筈を整えて、彼らと事を始める
本作品はカービー賞、アイズナー賞というアメコミ界の最も権威ある二つの賞を受賞し、さらにヒューゴ賞という世界最高のSF作品に特別枠で受賞。さらに漫画でありながらタイム誌の長編小説ベスト100に選ばれるなど、高く評価され、また愛されている作品である。
本作品と同時期に発表された『バットマン:ダークナイト・リターンズ』と共に、子供だましだと思われていたアメコミにリアル志向を示し、成人層のファンを呼び戻した。
2009年には実写映画版が公開。日本においても同映画の公開に合わせて絶版になっていた翻訳版が復刊されている。
またニコニコ動画でもMUGENのキャラクターとして製作されたロールシャッハの活躍を中心に人気を博し、2010年には本作の設定を所謂魔法少女物の作品に置き換えたライトノベル『アンチ・マジカル ~魔法少女禁止法~』(作:伊藤ヒロ)も刊行された。
2017年より正式な続編『Doomsday Clock(ドゥームズデイ・クロック)』の連載が開始。
舞台は本編から7年後の1992年、世界がかの悲劇の『真実』を知った後の物語である。何故か前作で死んだ筈の人物が登場するなど、謎が多いが……?
なお本作ではDCコミックスでおなじみのヒーロー、スーパーマンやバットマンが登場するクロスオーバー作品となっている。
2019年、テレビドラマ化。全9回。
本編の34年後の2019年、「Doomsday Clock」とは異なる世界線の物語となる。
1921年に人種差別に基づく虐殺事件が起きたオクラホマ州タルサにて、白人至上主義を掲げ、ロールシャッハのマスクをかぶった非合法の自警団と、ヘイトクライムに立ち向かう警察が衝突。署長のジャッドと刑事のアンジェラは、正体を隠したヒーローとして自警団と戦う。その後、FBI捜査官となった2代目シルクスペクターことローリーも、タルサの事件の捜査を担当する事となるが……
概要
現実世界にヒーローが居ればどうなるか。
高いテーマ性とシミュレーションの元に作られた、暗く暴力的で現実的な作品である。
この作品のヒーローは、世界でただ一人の超人「DR.マンハッタン」を除けば、いたって普通の人間である。
常人以上に強靭な肉体を持ち、科学兵器等を装備している者もいるが、それでも「人間」の範疇を超える者はいない。科学の力を借りなければ空を飛ぶことはできず、まともに銃弾を食らえば死亡する、そんな「現実」の世界である。
物語は一人の人物が殺害されることから始まる。
ヒーローによるヒーロー活動を制限する「キーン条例」が施行され、大半のヒーローが引退に追い込まれていく最中、その事件は起きた。
条例施行後もたった一人で活動を続けている政府非公認のヒーロー「ロールシャッハ」は、殺害された人物が政府公認のヒーロー「コメディアン」であることに気が付き、何者かがヒーロー狩りを行っていると推測。昔の仲間に警告して回る。
だがこのとき彼はまだ、世界の行く末を決める陰謀と真実、そして恐怖を知らない。
ちなみに「ウォッチメン」とは、原作ではヒーローたちに対するかなり軽蔑的な意味の呼称。
ウォッチメンというグループが存在しているわけではない。
登場人物
注意:いずれもヒーローとしてのコードネームで、これとは別に本名も存在する。
キャラクター名の下は実写映画のキャスト/吹き替えを担当した声優名。
- ロールシャッハ(本名:ウォルター・ジョゼフ・コバックス)
- 演:ジャッキー・アール・ヘイリー/CV:山路和弘
- 個別記事が詳しいのでそちらも参照のこと。
- トレンチコートにソフト帽、全頭でうねうねと模様が変わる気味の悪いマスクを着用している。
ある事件をきっかけに神や法、正義、人間そのものに絶望している。「尋問する前に相手の指を必ず折る」など暴力的、独善的、女性蔑視とおよそ最悪の性格だが、子供には唯一優しい。キーン条例成立後も唯一自警活動を続けているため、警察からも犯罪者からも煙たがられる存在。
武器と呼べるものは所持していないが、移動用のワイヤーガン(ナイトオウル2世発明)を所有している。また状況を武器に変えることに長けており、高いピッキング技術も有している。 - ナイトオウル2世(本名:ダニエル・”ダン”・ドライバーグ)
- 演:パトリック・ウィルソン/CV:咲野俊介
- 1930年代に活躍したヒーロー「ナイトオウル」にあこがれ、彼が引退すると同時に親の遺産をつぎ込んでデビューしその名を世襲したヒーロー。
自身が発明した多数の科学兵器に身を包んでおり、戦闘スーツはもちろん移動用のオウルシップ(火炎放射機等を搭載している)や、前述のワイヤーガンを保有している。
キーン条約以降正体を明かさずに引退宣言したが、現役時代はロールシャッハと手を組み、ギャングを壊滅させるなどの功績をあげている。しかし引退してからは胸に秘めているものを吐き出せずにいる日々を過ごしている。 - DR.マンハッタン(本名:ジョナサン・”ジョン”・オスターマン)
- 演:ビリー・クラダップ/CV:藤原啓治
- アメリカ政府公認のヒーロー。全身青で全裸。額に水素をモチーフにした記号を書き込んでいる。
- この世界における唯一の超人で、アメリカの最終兵器にして最強の存在。
元は普通の人間だったが、とある事故によって「超人」となって復活した。原子を操り、人間を自在にワープさせたり、自由自在に巨大化するなど途方もない能力を有している。
ソ連は彼の存在を「西側の脅威」とみなしており、この為東西関係には緊張が高まっている。
人間である事を「やめた」が故に、人間離れした独自の価値観を持つ。 - コメディアン(本名:エドワード・モーガン・ブレイク)
- 演:ジェフリー・ディーン・モーガン/CV:土師孝也
- アメリカ政府公認のヒーロー。強靭な肉体を有しており、年齢の割にすさまじい体をしている。
- 単独で小国の独裁政権を倒してくるほどの戦闘能力の持ち主であり、太平洋戦線やベトナム戦争でも活躍した。また、ニクソン政権下でさまざまな政府の「裏仕事」に手を染めていたとされる。
「暴力を合法的に振るえるからヒーローになった」という歪んだ思想の持ち主だが、一方で敬虔な一面もある。チンピラ同然の言動から多くのヒーローに蔑まれているが、一方で徹底的な現実主義と鋭い観察眼を評価する者もいる。
条例成立後、正体を明かさずに引退していた彼が何者かに殺されたことにより物語が始まる。彼の死は何を意味するのか……? - 2代目シルクスペクター(本名:ローレル・ジェーン・”ローリー”・ジュスペクツィク)
- 演:アリン・マッカーマン/CV:甲斐田裕子
- スーパーヒロインの母親「シルクスペクター」から英才教育を受け、スーパーヒロインをやっていた女性。母とコメディアンとの関係などから、ヒーロー稼業には否定的だった。キーン条例成立後は正体を明かさず引退。
物語開始時点ではDR.マンハッタンと付き合っているが、彼の人間離れした行動や思想に困惑気味。 - オジマンディアス(本名:エイドリアン・ヴェイト)
- 演:マシュー・グッド/CV:飛田展男
- 精神の鍛錬で、自分の体の能力をフルに発揮できるようになった「生身の人間としては最高スペック」の男。エジプトのファラオ・オジマンディアス(ラムセス2世)に傾倒した結果このコードネームを名乗っていた。
ヒーロー引退時に素性を明かし、以降はその頭脳と名声を生かして大企業・ヴェイト社を経営。DR.マンハッタンと共に無公害の新エネルギー開発を目指している。
一連の事件の黒幕。アメリカとソ連の核戦争を回避する為にニューヨークで異星人による大虐殺に見せかけた大量殺人を敢行、皮肉にもこれにより核戦争回避の目的は達成されてしまう。
続編の『Doomsday Clock』ではやらかしが世間にバレて一転窮地に追いやられる。だが治療不可能な脳腫瘍に苦しむなど、単純にざまぁとは言えない状態になっており……
関連動画
関連項目
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