ダノンファンタジー(Danon Fantasy)とは、2016年生まれの日本の競走馬。鹿毛の牝馬。
牝馬最強世代の主役にはなれなかったが、4年連続の重賞6勝を挙げ意地を見せた阪神巧者の2歳女王。
主な勝ち鞍
2018年:阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)、ファンタジーステークス(GⅢ)
2019年:チューリップ賞(GⅡ)、ローズステークス(GⅡ)
2020年:阪神カップ(GⅡ)
2021年:スワンステークス(GⅡ)
父ディープインパクト、母*ライフフォーセール、母父Not For Saleという血統。
父は説明不要、2010年代の無敵のリーディングサイアー。
母はアルゼンチンの馬で、2011年のG1ラプラタオークス(アルゼンチンにおける優駿牝馬。ダート2000m)・G1ブエノスアイレス州大賞(ダート2200m)など重賞6勝を無敗で挙げた馬。通算10戦8勝。ノーザンファームに輸入され、ダノンファンタジーは第3仔。
母父ノットフォーセールもアルゼンチンの馬で、G1ブエノスアイレス市大賞(ダート1000m、娘が勝ったのとは別の競馬場の別のレース。紛らわしい)の勝ち馬。
2016年1月30日、ノーザンファームで誕生。2017年のセレクトセール1歳の部にて4000万円からスタートし、9000万円(税抜)でダノックスに落札された(下記動画の87:40~、上場番号34番)。
ノーザンファーム早来の村上隆博厩舎で育成されたダノンファンタジーは、ダノンプレミアムが所属する、開業5年目の栗東・中内田充正厩舎に入厩。仕上がり早く、新馬戦開始初週の2018年6月3日、東京・芝1600mの新馬戦にてダノン軍団の主戦・川田将雅を鞍上にデビューを迎えたが、この新馬戦は2頭の牝馬が人気を分け合っていた。その一角であった彼女は2.9倍の2番人気。では1.8倍の1番人気は? 誰あろう、グランアレグリアである。
好スタートからスムーズに4番手の好位を取ったダノンファンタジーに対し、外から上がって行くグランアレグリア。直線を向いて持ったまま先に抜け出したグランアレグリアを追いかけたが、ステッキ一発で悠々と押し切ったグランアレグリアに2馬身離されて2着。グランアレグリアの勝ち時計1:33.6は新馬戦コースレコードで、4着以下を2秒以上離して1:33.9で駆け抜けたダノンファンタジーも充分ただ者ではなかったのだが……。
一休みして9月の阪神・芝1600mの牝馬限定未勝利戦に向かうと、+18kgながら1.3倍の断然の支持に応えて、持ったまま先頭に抜け出し、川田将雅が軽く追い出すだけで後ろを突き放して2馬身差で完勝。
続いて向かったのは自らの馬名を冠する(わけではないが)ファンタジーステークス(GⅢ)。1.5倍の断然人気に応え、中団からゆったりレースを進めると、直線では大外から鋭く伸びて1と3/4馬身差で快勝。川田将雅は「(鞭は)外から一発、練習がてら入れた。動き出してからは期待通りの脚。特に言うことはなく、期待しかしていない」と余裕たっぷりのコメントであった。一方グランアレグリアはひと月前にサウジアラビアRCを圧勝しており、新馬戦で激突したこの2頭がライバルと見なされるようになる。
ちなみにこれがキャリア唯一の阪神競馬場以外での勝利であった。
迎えた2歳女王決定戦、阪神ジュベナイルフィリーズ(GⅠ)。川田将雅が香港に行っていたためクリスチャン・デムーロがテン乗りとなったダノンファンタジーだったが、ここにグランアレグリアの姿はなかった。なんとあちらは牡馬相手の朝日杯FSに向かったのである。最大のライバル不在となった彼女は2.6倍の1番人気に支持された。そしてこのとき3.6倍の2番人気に支持されたのが、前走アイビーSを快勝してきたクロノジェネシスであった。
外目の7枠13番だったダノンファンタジーは、スタートは五分に出たがC.デムーロが抑えて後方に構える。出遅れたクロノジェネシスがその後ろでマークしてきて、4コーナーでダノンファンタジーが外に出すのに合わせてクロノジェネシスが被せるように進出。直線では大外で2頭馬体を併せ、最後方から直線いっぱいの熾烈な追い比べとなる。前の他の馬たちはもう眼中にないといった風情の2頭の一騎打ちで一気に前を呑み込み、最後はしぶとくクロノジェネシスを半馬身競り落としてゴールへと飛び込んだ。
グランアレグリアのいないところでは負けられぬと3連勝で2歳女王に戴冠したダノンファンタジー。グランアレグリアが朝日杯FSを3着に敗れたこともあり、この年のJRA賞最優秀2歳牝馬を満票……に1票足りない275票で受賞した(残り1票は「該当馬なし」。なんで?)。
明けて3歳、桜花賞をめざして王道のチューリップ賞(GⅡ)から始動。鞍上も川田に戻り、単勝1.3倍という圧倒的支持を受けたダノンファンタジーは、最内枠から好スタートを切って3番手で先行。直線入口では前が壁だったが、外に進路を確保すると鋭く脚を伸ばし、シゲルピンクダイヤやノーブルスコアの追撃を寄せ付けず勝利。ダノン軍団悲願のクラシック制覇へ向けて視界良好の4連勝を飾る。
というわけで本番、桜花賞(GⅠ)。朝日杯から直行してきたグランアレグリアとは新馬戦以来、クイーンカップをきっちり勝ってきたクロノジェネシスとは阪神JF以来の再戦となり、この3頭の3強ムードとなったが、その中でダノンファンタジーは2.8倍の1番人気に支持された。
外目の7枠15番から前目の好位を確保したダノンファンタジーだったが、道中やや掛かる素振りを見せ、川田がなだめながらの追走となる。目の前にいたのはグランアレグリア。新馬戦で敗れた相手のことを覚えていたのか……。4角でグランアレグリアがもう先頭に立ち、ダノンファンタジーは好位からそれを追いかける。いざ、新馬戦のリベンジ! ――の、はずだったのだが……。
しかし先頭は、グランアレグリア止まらないか、
スピードの違い、見せ付けるかグランアレグリア!
しかし外から来たぞぉー!! 新馬戦の再現なるか!
ダノンファンタジー来た! 逆転か! それとも再現か!
グランアレグリアが抜ける! ダノンファンタジー2番手!
シゲルピンクダイヤ、ビーチサンバ、クロノジェネシスしかし!
グランアレグリアーー!!
突き抜けたグランアレグリアの背中は遠いまま、全く差が縮まらない。最後は後ろから追い込んできたシゲルピンクダイヤとクロノジェネシスに並ばれかわされ、無念の4着。新馬戦の2馬身差が決定的なポテンシャルの差であったことをまざまざと見せ付けられた完敗であった。
続いて優駿牝馬(GⅠ)に向かったが、さすがにここでは距離が不安視されて混戦ムードの中6.4倍の4番人気。クロノジェネシスをマークしながら好位グループでレースを進め、直線でも脚を伸ばしたものの、同じ好位グループから抜け出したカレンブーケドールと後ろから豪脚で薙ぎ払ってきたラヴズオンリーユーには2馬身半以上突き放され5着。ダノックス悲願のクラシック制覇は夢と散った。
クラシックは夢破れど、秋は最後の一冠、秋華賞が残る。ダノックス初の三冠タイトルを目指しローズステークス(GⅡ)から始動。グランもラヴズもクロノもいない(シゲピンはいた)となれば2.2倍の1番人気に支持される。レースは好スタートを切りすぎ、ハナには行きたくないので抑えて中団へ。直線で外に出すと鋭く脚を伸ばし、前で粘るビーチサンバとウィクトーリアをクビ差捕らえきってレコード勝ち。重賞4勝目を挙げ、2歳女王復活を強く印象付けた。
というわけでラスト一冠、秋華賞(GⅠ)。グランアレグリアは短距離~マイル路線に向かい(休養中だったけど)、ラヴズオンリーユーは回避となったため、相手はカレンブーケドールとクロノジェネシス、上がり馬エスポワールといった面々となり、ダノンファンタジーは3.5倍で再びの1番人気に支持された。
最内枠から好スタートを切り3番手につけたが、レースは稍重の馬場で1000m58秒3というハイペースになってしまい、直線では外に出して抜け出しを伺ったものの、道悪ハイペース追走で脚が止まり、あえなく8着に撃沈。
グランアレグリア、ラヴズオンリーユー、クロノジェネシス。3頭が3頭とも歴史的名馬となったこの年の牝馬三冠。主役のはずだったダノンファンタジーにとっては、苦く悔しい敗戦の記憶となった。
明けて4歳、ヴィクトリアマイルを目指して4月の阪神牝馬ステークス(GⅡ)から始動したダノンファンタジーだが、ここからもなかなか苦しいレースが続く。1番人気に支持されたここは好位でレースを進めたが、休み明け+22kgの太め残りも響いたか直線伸びず5着。
本番のヴィクトリアマイル(GⅠ)では-20kgときっちり絞ってきたが、ここでは現役最強馬アーモンドアイの前に全く手も足も出ず5着。相手が悪い……。
秋は府中牝馬ステークス(GⅡ)から始動、ラヴズオンリーユーに次ぐ2番人気に支持され、2番手でレースを進めたものの直線いっぱいになり8頭立て6着に撃沈。
エリザベス女王杯はどう考えても距離が長いということで、1400mに距離を短縮し阪神カップ(GⅡ)へ。川田がホープフルSでダノンザキッドに乗りに中山に行っていたので藤岡佑介がテン乗りとなり、昨年のマイル王インディチャンプが断然人気の中9.6倍の4番人気に留まったダノンファンタジーだったが、インの好位で進めて直線鋭く抜け出すと、後続を寄せ付けず1と3/4馬身差をつけて完勝。ローズSから1年3ヶ月ぶりの復活勝利で重賞5勝目を挙げた。
これで5歳となった2021年は短距離~マイル路線に進むことになったが、始動戦の阪急杯(GⅢ)では内枠からスタートで出遅れて中団後ろになってしまい、1歳下の2歳女王レシステンシアのレコード逃げ切りの前に見せ場なく5着まで。
本番の高松宮記念(GⅠ)では川田はダノンスマッシュに回り藤岡佑介が再び騎乗したが、初の1200mで苦手な道悪ではどうにもならず12着撃沈。
ヴィクトリアマイル(GⅠ)では桜花賞以来となるグランアレグリアとの顔合わせになったが、もはや押しも押されもせぬ現役最強マイラーとなったあちらが1.3倍の断然人気に対して、引き続き藤岡佑介騎乗のダノンファンタジーは58.7倍の9番人気。そしてレースはグランアレグリアが貫禄の4馬身差圧勝の後ろで見せ場なく7着。かつてのライバルの背中はあのときよりもはるかに遠くなっていた。
しかし、だからといって腐っても燃え尽きてもしまわないのが、2歳女王ダノンファンタジーの意地。秋初戦は京都競馬場改修の影響で得意の阪神開催となったスワンステークス(GⅡ)。久々に川田が戻ると、3.7倍の1番人気の支持に応え、中団に構えたダノンファンタジーは直線で外に出して鋭く脚を伸ばし、力強く抜け出して快勝。4年連続重賞勝利、重賞6勝目を挙げる。
連覇と最多タイの阪神重賞6勝目を目指した阪神カップ(GⅡ)では4度目の藤岡佑介とのコンビとなり、好位から外に出して脚を伸ばす黄金パターンでグレナディアガーズの3着。
このレースを最後に、翌年1月に現役引退、繁殖入りとなった。通算18戦7勝 [7-1-1-9]。
うち、阪神競馬場は10戦6勝 [6-0-1-3]。阪神競馬場の重賞5勝はゴールドシップに次ぐ2位の記録である。
同期の三冠を分け合った3頭のような、競馬史にその名を燦然と輝かせるような歴史的名牝にはなれなかった。しかしGⅠ勝利が阪神JF(阪神3歳牝馬S)1勝のみで5歳まで4年連続重賞勝利を記録したのは、彼女の他にはスティンガーだけ。GⅠを複数勝利した馬を含めても4年連続重賞勝利の2歳女王はメジロドーベル、ウオッカ、ブエナビスタ、ラッキーライラックが挙がるのみである。
単なる一介の早熟馬で終わらず、超強力な同期や現役最強馬に蹴散らされても腐らず心折れず、5歳まで活躍を続けた彼女もまた、ひとかどの名牝であったことに疑いはない。
引退後は故郷のノーザンファームで繁殖入り。初年度はエピファネイアをつけたが不受胎で、かわりにつけたレイデオロの牝馬が生まれている。2年目は改めてエピファネイアをつけたようだ。
同期のグランアレグリア、ラヴズオンリーユー、クロノジェネシス、カレンブーケドール、シゲルピンクダイヤらも揃って同時期に引退したので、母としても同期として競い合うことになる。2019年クラシック世代牝馬たちの第2ラウンド、子供たちの戦いは2025年から幕を開ける。
ディープインパクト 2002 鹿毛 |
*サンデーサイレンス 1986 青鹿毛 |
Halo | Hail to Reason |
Cosmah | |||
Wishing Well | Understanding | ||
Mountain Flower | |||
*ウインドインハーヘア 1991 鹿毛 |
Alzao | Lyphard | |
Lady Rebecca | |||
Burghclere | Busted | ||
Highclere | |||
*ライフフォーセール 2008 鹿毛 FNo.7-a |
Not For Sale 1994 鹿毛 |
Parade Marshal | Caro |
Stepping High | |||
Love for Sale | Laramie Trail | ||
Museliere | |||
Doubt Fire 2001 鹿毛 |
Ski Champ | Icecapade | |
Ski Goggle | |||
My Little Life | Ghadeer | ||
Dimane |
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最終更新:2024/12/02(月) 04:00
最終更新:2024/12/02(月) 04:00
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