鉄腕アトム(てつわんあとむ)とは、1951年から長きに渡って連載された手塚治虫の漫画、およびそれらを原作とするTVアニメーションのタイトル。日本の漫画・アニメ史に名を刻む作品として知られている。
月刊誌「少年」(光文社刊)、鉄腕アトムクラブ(虫プロ刊)で主に連載されたSFロボット作品。
21世紀を舞台に、科学技術の粋を結集して作られた「感情を持つロボット」アトムが活躍する。
アトムは戦後の少年たちに、明るい未来世界を描いて希望を与えた。
しかし、単に明るい未来像を描くだけではなく、時には科学を盲信する人類に対しての警鐘を鳴らすような真面目な内容を含み、ロボット法を始めとしたロボットへの差別や人間との対立が根底に燻る世界観が、読む者を惹きつける。
元々は「アトム大使」という漫画の登場人物の一人だったアトムを主人公にして「鉄腕アトム」と改題したもの。
続編・派生作品・短編作品に「アトム今昔物語」「アトム還る」「アトムの最後」「アトム二世」「ジェッターマルス」などがある。3度のアニメ化もされ、2009年にはアメリカでCG映画「ATOM」が公開された。
アニメ1作目は日本初の本格的なTVアニメとして誕生し、日本で大ブームを巻き起こした。また世界四十カ国で放送されるなど、海外でも大人気だった。
英語圏ではアトムという言葉が隠語として問題があるため、「AstroBoy(アストロボーイ)」に題名が変更されている。
また派生作品の『アトムキャット』は隠れた名作として名高い。
あるところに天馬飛雄(トビオ)という一人の少年がいた。
天馬飛雄は父に買ってもらった玩具の車に乗って遊んでいたところ、交通事故にあって死亡する。[1]
愛する子供を失った科学省長官の天馬博士は気が狂い倒錯するようになる。
そして自らの手で息子を再現すべく、ロボットの飛雄を製作した。しかし、出来上がった飛雄は、所詮人間では無かった。
天馬博士は子供のままで成長しないロボットの飛雄に愛想をつかし、飛雄はロボットサーカス団に売られてしまう。
ロボットサーカスに売られた飛雄は過酷な日々を送る。
しかし、偶然ロボットサーカスを見に来ていた新たな科学省の長官であるお茶の水博士が飛雄に気付き、「アトム」という名前をつけ引き取る。[2]
アトムは「7つの威力」を持っている。
他のロボットにはないアトム特有の7つの力。特殊能力というよりは、機能や仕様をひとまとめに表記したような物である。
また、作品や時期によって内容が変更されている。
上記のタイトルが、愛好家の間では現在まで語り草となっている。
なお連載当時「青騎士」はアトムを悪役にして人類に反抗したことで、当時の人気は最低であったと作者は語っている。再評価されたのは、富野由悠季が演出を手がけたアニメ1作目の「青騎士」放送以降。
2003年には人気漫画家の浦沢直樹により「地上最大のロボット」をリメイクした『PLUTO』がビックコミックオリジナルで連載されていた。
1960年代にはTVアニメーションシリーズが制作された。
これは1話30分形式で毎週放送するアニメとしては日本初のものである。
手塚治虫はこのために、虫プロ(アニメプロダクション)を設立した。同時期にTVアニメの制作を始めたタツノコプロ、東映アニメーションなどと共に、現在の日本のTVアニメーションの発展の礎を築いた。虫プロからは数多くの作家が育ち、また出身者が独立して数多くのアニメスタジオが誕生した(サンライズ、マッドハウス、シャフトなど)。
機動戦士ガンダムで知られる若かりし頃の富野由悠季が多くの演出を手がけたことでも知られる。手塚治虫が直々に富野を演出に抜擢した。
当時、予算の関係からか多くの声優を雇えなかったため、俳優の愛川欣也が一番組内で、ほぼすべての脇役の声を一人でこなした事もある。
前述のとおりアニメ版は世界中でヒットし、日本でも『ヤクルトアトムズ』(現・東京ヤクルトスワローズ)という、鉄腕アトムをマスコットにしたプロ野球球団が存在したほどである。
アニメは今までに二回リメイクがされている。アニメ第二期では原作にも登場したロボット・アトラスがシリーズを通じてアトムのライバルに位置づけられ、視聴者の興味を誘っていた。
アニメ第三期は天馬博士とアトムの関係に焦点が当てられ、高い評価を得ている。最終回は必見。
鉄腕アトムのアニメ一作目の最終回はアトムが地球を守るためにカプセルを抱いて暴走した太陽に突っ込むという内容であった。
そのため、当時の子供たちから「アトムを殺さないで!!」「アトム死んじゃいや!」という悲痛なハガキや電話がテレビ局や虫プロのもとに殺到したという。
まだ娯楽が少ない時代に視聴率が当時最高40%もあった番組のため、当時の視聴者には衝撃的なラストだったと思われる。
鉄腕アトムは掲載誌だった『少年』が昭和43年に休刊となったことで作品が一旦終了したが、その後も発表媒体を変えて鉄腕アトムの物語は描かれ続けた。一応、漫画の事実上の最終回は「火星から来た男」であるが、その続きも描かれた。
手塚治虫の生前中のアニメ版は2作作られているが、どちらも手塚治虫本人が脚本を手がけた最終回である。
アニメ版での最終回の後日談なども手塚本人の手によって描かれており、その中にはアトムの物語の終焉を描いたものもある。
アニメ1作目の最終回はアトムが悲劇的な最後を遂げるが、昭和42年に連載されたサンケイ新聞版「鉄腕アトム」ではアニメの続きが描かれた。しかしサンケイ新聞版アトムは更に悲劇的な内容であった。
まずアニメ1作目の最終回でアトムは太陽に突っ込んだ後、宇宙を漂っていた宇宙人によって奇跡的にも助けられるも、代わりに50年前の日本にタイムスリップしてしまう。
エネルギーを補給することができないアトムは、時に休眠しつつ自分の生まれる時代まで待つことになる。
ある日アトムが街をさまよっていると、アトムは「ドロッピーのトム」という心を閉ざした少年と出会う。
ドロッピーのトムは事件に巻き込まれていたが、アトムはドロッピーのトムを危機から助け出し、ドロッピーのトムは次第にアトムに心を許すようになる。そして、ドロッピーのトムは将来アトムのようなロボットを作ろうと思うようになった。
やがて彼は執念で科学省の長官にまで上り詰めた。
大人になったドロッピーのトムは『天馬博士』と呼ばれるようになる。
しかし、悲しいことに天馬博士の息子は交通事故で死んでしまった。そこで彼は科学省の粋を尽くし、昔自分を助けてくれたロボットに似せてロボットを作り始める(原作ではアトムと飛雄が似てないのはこれが原因)。
しかし、その様子を見守っていたアトムはあることに気づく。そう、このままではアトムが同時に2体存在してしまい、歴史がおかしくなってしまう。
そのためアトムはタイムパラドックスを防ぐために自殺を決意し、自分自身=もう一人のアトムが誕生した時に発生した電気エネルギー波に飛び込み死亡する。
その後、新たに誕生したアトムは「アトム誕生」の物語に続くように冒険を始める。しかし死んだアトムと生まれたアトム、両者は全く同じアトムであるがその後に冒険した内容は異なる。何故なら、タイムパラドックスによる時系列分岐で誕生した、違うアトムの物語(漫画とアニメで設定が異なる理由)だからである。
…上記の内容は衝撃的すぎたためか、単行本化の際にドロッピーのトムのエピソードはごっそり削除された。
このエピソードは少し前に流行した「都市伝説ドラえもんの最終回」(大人になったのび太がドラえもんを作ったという内容の二次創作)に酷似しており、鉄腕アトムではこの都市伝説が流行るとっくの昔に同じアイデアを使っていたということになる。
上記のサンケイ新聞版の鉄腕アトムを大幅に内容を変えて、単行本化の際に名前を変えたもの。
結構内容が違う。また、一番重要な「アトムの死亡」の場面も異なる。
サンケイ新聞版のアトムの死亡が残酷だったための変更だが、こっちの方がもっと子供にトラウマを与えていることは内緒。アトムが草むらで朽ち果てる様子はちょっと衝撃的。
昭和45年に別冊少年マガジンに掲載された。アトムは主役ではなく、エピソードの終盤に登場する。
このエピソードではさらに衝撃的な結末が描かれている。それは結局ロボットと人間はわかりあえず、2055年の地球では人類はロボットに支配されアトムも破壊されて終了という悲痛な最後である。
当時の子供たちのトラウマ作品。
手塚治虫は作品解説として当時の学生運動の影響を受けた作品だと話している。また、「これが、アトムの全作品の最後だとは全然思っていません」とも話している。
昭和47年に「小学四年生」にて連載されたエピソード。このエピソードもアニメ第1作の最終回の後日談となる。
掲載誌が小学館の学年誌だったため途中で終了。単行本には前半のエピソードのみが収録されている。
太陽に突入したアトムはルル星人という宇宙人達によって救出され、彼らの技術によって修復・改造される。復活したアトムにはタイムマシン機能も付けられており、それを使って様々な時代を旅し生まれた時代に戻ろうとする。
…実は『アトム還る』では衝撃的な内容が語られている。
「鉄腕アトム」は読者の100人中100人が『未来の物語』だと信じて疑わなかったと思われるが、実は鉄腕アトムの世界は我々読者の世界から見て数万年前の『過去の物語』である。
我々読者のいる世界は鉄腕アトムの世界の人類が滅びた後、また猿から新しい人類が進化した世界である。
…我々、現在の人類は鉄腕アトムの世界の『ロボットと人が殺しあって滅びた過去の人類』の歴史を絶対に繰り返してはならない。
一度滅んだ人類と新たに進化して再び生まれた新しい人類とそれを見守る存在という流れは『火の鳥』未来編に似ている。アトムが登場する構想が組まれていた「火の鳥再生編」の伏線かもしれない。
昭和50年に文藝春秋デラックスに掲載。手塚治虫本人によるセルフパロディギャグ作品。
太陽に突入したアトムは何者かの手により救出されはしたが、どこか遠い惑星に置き去りにされ、そこから地球に帰る手段はなかった。
お茶の水博士はがっかりするものの、政府から新しい、完全なアトムを作るよう依頼が入り、アトム二世を作り始める。しかし、人間そのものを目指して作られたアトム二世は、人間のダメな部分もそのままになってしまい、人々を失望させるのであった。
手塚治虫が描いた、鉄腕アトムを猫ちゃんにした作品。鉄腕アトム本編とは関係ないセルフリメイク作品。
隠れた名作。
漫画「鉄腕アトム」を読んでいる現実の小学生が主人公。ある日、猫を拾うが死んでしまう。
そして少年が漫画「鉄腕アトム」を読んでいたおかげで、宇宙人により猫ちゃんは漫画で有名な「鉄腕アトム」として生き返る。
2009年にアメリカで作られたCGアニメ映画。アニー賞の脚本賞受賞。
設定が大幅に変更されているので、従来の鉄腕アトムファンが見るとちょっと戸惑う。
アトムが「yhaaaaaaaa!」とか「cool!」とか喋り、なんだかアメリカンになっている。
でも別作品だと割りきって見るとわりと名作である。アトムが服を着ているのもお国柄がでている。
トビオは、交通事故による死亡ではなくなり、悪のロボットに殺されたことになっている。
そしてアトムがトビオの代わりに作られアトムはそのロボットに立ち向かう。
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最終更新:2025/01/20(月) 07:00
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